転職して3ヶ月が経つ時期、慣れない仕事にストレスを感じていたり、職場に馴染めずに孤独感を味わっていたりすることで「仕事を辞めたい」と悩んでしまうケースもあります。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、「転職3ヶ月の壁」や、転職して3ヶ月で退職したいと思うよくある理由と対処法、辞めるかどうかを判断する方法などを解説します。
目次
転職3ヶ月の壁とは?
「転職3ヶ月の壁」とは、中途採用で転職してから3ヶ月が経つ時期に、退職したいと感じて悩む現象を指します。
転職後、3ヶ月程度の時間が経つ頃は、それまで仕事を習得することに必死になったり、慣れない職場環境や人間関係に馴染もうと努力してきたりしたことで、ストレスのピークを迎えやすい時期とも言えます。
転職3ヶ月の壁にぶつかったことで、「もう限界」「きつい」「しんどい」と感じて、退職を考えてしまう人もいますが、環境の変化に馴染むまでには一定の時間がかかるものでしょう。
転職3ヶ月で退職したいと思う理由と対処法
アドバイザーの粟野氏の経験をもとに、転職3ヶ月で退職したいと思う人によく見られる理由と対処法を紹介します。
「仕事についていけない」と感じている
転職先で新しい仕事を習得する過程の中では、覚えるべき知識が多かったり、これまでと違う仕事の進め方を把握する必要があったりするため、「仕事についていけない」と感じて自己肯定感が下がる人もいるでしょう。こうした場合、一つひとつの業務を習得するために、手一杯になってしまっている可能性があります。
また、入社3ヶ月という短期間では、仕事の本質や求められていることをすべて理解することは難しいものです。しかし、「以前の職場と同じように、スムーズに仕事を進めることができない」と感じることで落ち込んでしまうケースもあるでしょう。
【対処法】仕事の全体像をつかむことを意識する
まずは、仕事の全体像や目的をつかむことが大事です。その上で、それぞれの業務の意味や意義を理解していけば、「何のためにそれをするのか」「何を達成すればいいのか」を把握しやすくなるでしょう。また、仕事で求められることについて、上司や先輩社員などに聞いてみることでも、全体像をつかみやすくなるはずです。
転職先の職場や人間関係に馴染めない
新しい職場や人間関係に馴染むことができず、「自分に問題があるのではないか?」と感じてしまうケースもあります。特に「コミュニケーションが苦手」だと感じている場合は、ストレスを感じやすいでしょう。
【対処法】「信頼関係を築くには時間がかかる」と考える
多くの場合、人間関係を構築するまでには一定の時間がかかるものです。急に距離を縮めようとするのではなく、焦らずに日々のコミュニケーションを重ねていくことが大事だと考えましょう。コミュニケーションが苦手な場合でも、毎日、挨拶したり、何らかの会話を重ねていったりすることで、相手との関係性を少しずつ構築していくことができるでしょう。
「仕事ができない自分」に自信喪失している
中途採用は、即戦力として採用されることが少なくないため、「すぐに仕事ができない自分や、ついていけないと感じていることに自信喪失してしまった」というケースもあります。
また、わからないことを質問したくても「こんなことを聞いたら、仕事ができないと思われるかもしれない」と思って聞けなくなってしまい、その結果、仕事内容をきちんと理解できないままにしてしまう人もいるようです。
【対処法】質問したほうがお互いのためになると考える
わからないことがあった場合は、遠慮せずに質問することが大事です。仕事を進める中でわからないことがあると、よりストレスを感じやすくなってしまいますし、質問したほうが早く仕事を覚えることにつながるはずです。自分だけでなく、相手や周囲のためになると考えましょう。
周囲の先輩などが忙しく、質問しにくい場合は、上司に相談してみることで解決策が見つかることもあります。
「前の会社のほうが良かった」と後悔している
新しい職場や仕事に対し、「前の会社のほうが自分に合っていた」と感じてしまうケースもあります。「以前の職場に戻りたい」と後悔するあまり、転職先の職場や仕事に対するストレスが増し、「もう限界」「しんどい」と感じてしまう人もいるでしょう。
【対処法】過去を振り返るより、今現在のことに集中する
過去の職場や仕事を思い出しても、後悔するだけになってしまい、仕事にも自分の精神面にもマイナスの影響を及ぼす可能性があります。過去を振り返るより、今やるべきことや、目の前の仕事や周囲の人々との関係性を構築することに集中したほうが、仕事の面白みや職場のいいところに気づけるようになるでしょう。
また、転職先の魅力について考えてみることもおすすめです。いい点を見つけてクローズアップすることで、「今の職場も実は悪くない」と思える可能性があります。
入社前のイメージとギャップがある
入社前に思い描いていた仕事内容、職場環境、労働環境などに対し、ギャップを感じて「辞めたい」と感じてしまうケースもあります。「こんなはずではなかった」と不満や後悔を抱えながら働くことで、よりストレスが増してしまったり、職場に馴染めなくなったりしてしまう人もいるでしょう。
【対処法】ギャップがあって当然だと考える
仕事においては、自分がイメージしていた業務以外にも、さまざまな雑務をこなさなくてはならないことがあるものです。また、職場の雰囲気や社風がイメージしていたものと違ったり、繁忙期と閑散期の残業時間が大きく違っていたりすることで、そこにギャップを感じてしまうケースもあるでしょう。
あらかじめ、「ギャップがあって当然」「自分の想定していたことと違う状況もある」と考えておくことで、しんどさやきつさを軽減しやすくなります。
前の職場のような評価を得られないことが不満
前職では大きな実績を挙げて評価されていたため、新しい職場で同じように評価されないことに不満を感じるケースもあります。
また、仕事においては、過去の実績に応じて裁量権を任されたり、周囲の協力を仰ぎやすくなったりするものです。しかし、新しい職場ではゼロベースからのスタートになるため、自己肯定感が低くなったり、仕事の進めにくさを感じたりするケースもあるでしょう。
【対処法】小さな実績を積み重ねていく
新しい職場の上司や同僚には、前職で自分が挙げた実績まで知られていないことは少なくはないでしょう。ゼロベースからのスタートであることを意識し、小さな実績を積み重ねて周囲の信頼を得ていくことも大事です。
目の前の仕事にコツコツ取り組み続ければ、やがて信頼関係を築くことにつながったり、協力者を得られるようになったりするものだと考えてみましょう。
また、成果を出せないことに悩んでいる場合は、上司などに評価されるポイントを聞いたり、評価されている先輩などに意識していることを聞いたりして、参考にしてみることで、より成果を挙げやすくなるでしょう。
「頑張らなくてはいけない」と過剰にストレスを感じている
転職後、「早く仕事に慣れたい」「職場に馴染まなくては」と考え、「もっと頑張らなくてはいけない」と自分を追い詰めてしまうことで、過剰なストレスを感じてしまうケースもあります。
【対処法】「頑張りすぎないことも大事」と考える
過度に頑張りすぎてしまうことで、体調不良になったり、精神的な限界を感じてしまったりする人もいるでしょう。こうした場合は、「頑張りすぎないことも大事」と考え、適度に休養し、リフレッシュすることも必要です。ストレスを溜めないようにメリハリをつけ、心身のバランスをとるように意識しましょう。
転職3ヶ月で退職するかどうかを判断するポイント
環境の変化に対応できるまでには一定の時間がかかるものなので、転職後、すぐに仕事や職場に馴染めないことは当たり前と言えるでしょう。目の前の仕事にしっかり取り組み、日々のコミュニケーションを大事にすることをしばらく続けていくうちに、自然に仕事や職場に慣れていくケースは少なくありません。
しかし、その一方で、早期に退職・転職を検討してみたほうがいいケースもあります。ここでは、転職3ヶ月で退職するかどうかを判断するポイントを紹介します。
明らかに労働環境が悪い場合
「人手不足などで残業時間や休日出勤が多く激務である」「慢性的にパワハラ・セクハラなどのハラスメントがある」などの場合は、明らかに労働環境が悪いと言えるでしょう。過度な疲労やストレスに耐え続けることで、体調不良に陥ってしまうケースもあるので、労働環境が明らかに悪い場合は、転職3ヶ月でも退職を検討したほうがいい可能性があるでしょう。なお労働環境が悪くなくとも心身の不調が起きている場合も、退職を検討してもいいかもしれません。
自分では判断できない場合は、信頼できる周囲の人に相談し、客観的に判断してもらう方法もあります。家族やパートナー、友人などに今の状況を伝え、アドバイスをもらうこともおすすめです。
一時的な感情ではなく、慎重に検討した上で辞める判断をした場合
一時的な感情に流されることなく、慎重に検討した上で「辞める」という結論を出しているかどうかも重要な判断ポイントになるでしょう。客観的かつ冷静に状況を整理・分析し、第三者などにも相談した結果、「やはり、辞めるべきだ」という判断に至った場合は、十分に納得できていると言えます。
転職3ヶ月の時点では「辞めたい」と思っていた場合でも、1年後や半年後に「辞めなくてよかった」と感じるケースもあるので、検討の際にはこうした点も考慮することが大事です。周囲の同僚に「今の会社の良い点は何か」を聞いてみたり、「1年後や半年後にどのような活躍ができているのか」をイメージしてみたりすることをおすすめします。
将来に役立つ経験・スキルが身につかない場合
転職先の会社で一定期間働くことで、将来目指すキャリアに役立つような経験・スキルを身につけられる場合は、すぐに退職せず続けたほうが今後のためになる可能性もあります。もしも再度の転職をした場合は、また新たな仕事を覚えることや職場の人間関係を構築することを一からやり直すことになり、経験・スキルを身につけるまでの時間がさらにかかってしまうことになるでしょう。
ハラスメントや激務の労働環境がある場合を除いて、「将来に役立つ経験・スキルが身につくか」「一定期間、続けることが難しいか」という視点から辞めるかどうかを検討してみる方法もあります。
転職エージェントなど、第三者に相談してみる方法もある
「転職3ヶ月で辞めてもいいのかを自分では判断できない」「周囲に相談できそうな相手がいない」という場合は、転職エージェントなど、第三者に相談してみることもひとつの方法です。
転職支援のプロであるキャリアアドバイザーの面談を受けることで、自分の考えを整理しやすくなりますし、客観的な視点からのアドバイスをもらうことも可能です。また、自身の経験・スキルや希望にマッチする求人や、採用の可能性がある企業を紹介してもらえるため、今の会社と比較してみることで辞めたほうがいいかどうかを判断しやすくなるでしょう。
また、転職エージェントを活用したからと言って、必ずしも転職しなくてはならないわけではないので、今の会社に在職したまま、興味を持った企業の選考を受けてみる方法もあります。より自分にマッチする企業が見つかる可能性もありますし、ほかの企業と比較することで「今の会社のほうが自分に合っている」と感じて納得できるケースもあります。
転職3ヶ月で辞めてもいい?次の転職に不利になる?
「転職3ヶ月で辞めると、職場に迷惑をかけてしまうことになるのでは?」「次の転職に不利になるのでは?」などと考え、迷いや不安を感じる人も少なくはないでしょう。どう考えればいいのかを解説します。
辞めるかどうかをしっかり検討し、納得できる決断をすることが大事
先にも述べたように、明らかに労働環境が悪い場合や、心身に不調が起きている場合、自分が目指すキャリアの方向性と違っている場合などは、早く辞めたほうがいい可能性もあります。「職場に迷惑をかけてしまう」と考え、労働環境が悪いことに耐えたり、今後のキャリア構築において遠回りになる道を選んだりすることで、時間が経ってから後悔するケースもあります。転職3ヶ月という早期のタイミングであっても、辞めるかどうかをしっかりと検討し、自分自身で納得できる決断をすることが大事だと考えましょう。
次の転職に不利になるかどうかはケースバイケース
転職3ヶ月で退職したことが次の転職に不利になるかどうかは、ケースバイケースと言えます。3ヶ月で辞めている場合は、企業から「採用してもまた早期離職するかもしれない」という懸念を抱かれる可能性があります。
しかし、応募書類や面接などで、退職理由や再度転職する理由、今後目指したいキャリアにおいて一貫性がある回答をすることで、企業の懸念も払拭しやすくなるでしょう。また、入社後の定着性をアピールするために、中長期的なキャリアビジョンを伝えることも大事です。説得力を持って回答できるようにするためにも、しっかりと自分の考えを整理しておきましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。