「IT業界を目指したいが、何か資格を取っておくと転職に有利になるだろうか」――そう考えている皆さんに、目指す職種・分野にはどんな資格があるのかをご紹介します。IT業界への転職にあたり、資格を取得するメリットがあるかどうかについてもお伝えします。
目次
IT系の資格とは?
IT系の資格には、大きく分けて「国家資格」と「ベンダー資格」があります。国家資格は情報処理推進機構(IPA)が試験を実施しており、分野・レベル別に13種類の資格があります。
ベンダー資格は、IT関連製品の製造・販売を行う事業者(ベンダー)が、自社製品についての知識・スキルを認証する民間資格です。ベンダーの製品を導入している企業の採用では、そのベンダー資格を持っていることが応募要件となるケースもあります。
IT資格の取得は転職に役立つか
ITエンジニアの中途採用においては、基本的に「実務経験」が重視されます。目指す分野にもよりますが、「資格を取ってから転職活動をしよう」と考えて勉強に時間を費やすよりも、未経験、あるいは経験が浅くても受け入れられる採用ポジションを探し、経験を積むほうが有効といえます。
とはいえ、職種・ポジション・企業によっては、資格を「必須」あるいは「優遇」とする求人もあります。自身が興味を持っている分野にどのような資格があり、どの程度重視されるのかを調べてみるといいでしょう。
なお、未経験からITエンジニアを目指す場合、初級レベルの資格を取得することが、採用選考でプラスになる可能性があります。IT業界は変化のスピードが速く、常に勉強して最新情報をキャッチアップしていく意欲と姿勢が欠かせません。資格を取得することで、「主体的に学習する意欲がある」というプラス評価につながるかもしれません。
これからIT業界を目指す未経験者におすすめの資格
ITを初めて学ぶ人のための「入門資格」をご紹介します。
ITパスポート
ITに関する基礎的な知識を証明する国家試験。略称は「iパス(アイパス)」。情報処理推進機構(IPA)が実施しており、情報処理技術者試験の中でもっとも難易度が低い「入門レベル」の資格とされています。
ITの最新技術の概要に関する知識(AI・ビッグデータ・IoT など)、新しい開発手法の概要に関する知識(アジャイルなど)、経営全般の知識(経営戦略・マーケティング・財務・法務など)、ITの知識(セキュリティ・ネットワークなど)、プロジェクトマネジメントの知識など、幅広い範囲の基礎知識を習得します。
ITエンジニアに限らず、システムを活用して仕事をする幅広い職種の人が取得しています。
※ITパスポート記事が公開されたらリンク
エンジニア向けのおすすめ資格
ここからはエンジニア向けの資格を取り上げ、概要を簡単にご紹介します。いずれも、情報処理推進機構(IPA)が試験を実施する国家資格です。
基本情報技術者
ITに関する基本的な知識や技術、実践的な活用能力を問う国家資格であり、「ITエンジニアの登竜門」とも言われます。コンピュータシステム、システム開発と運用、ネットワークやデータベース・セキュリティなどの技術要素をはじめ、プロジェクトやサービスのマネジメント系、システム戦略や経営戦略などのストラテジ系まで、幅広い領域にわたって出題されます。
応用情報技術者
基本情報技術者より上位に位置付けられる国家資格。ソフトウェア開発者として、技術・管理・経営など、幅広く応用的知識や技能が問われます。このレベルまで取得すると、高度なレベルのIT人材として、採用においてもプラス評価につながります。
システムアーキテクト
システム開発の要件定義やアーキテクチャの設計など、上流工程を担当する上級エンジニア、プロジェクトマネージャー、ITコンサルタントを目指す人向けの資格です。情報システムおよび組込みシステム・IoTを利用したシステムの知識・実践能力が問われます。試験の難易度は高く、転職活動においても有利となる可能性の高い資格と言えるでしょう。
ネットワークスペシャリスト
ネットワークエンジニアやインフラ系エンジニアを目指す人向けの資格。ネットワークに関する固有技術の幅広い知識と、目的に最適なネットワークシステム基盤の構築・開発から運用・保守までの専門技術を認定します。
データベーススペシャリスト
データ分析基盤を提供するデータベース管理者、インフラ系エンジニアを目指す人向けの資格。企業活動を支える膨大なデータ群を管理し、パフォーマンスの高いデータベースシステムを構築して、顧客のビジネスに活用できる力を認定します。
エンベデッドシステムスペシャリスト
組込みエンジニアやIoT系エンジニアを目指す人向けの資格。スマート家電や自動運転など、あらゆるモノがネットつながる組込みシステムの開発において、ハードウェアとソフトウェアを、設計書や仕様に基づいた設計・構築・実装・テストを実施する力を認定します。
情報セキュリティマネジメント
セキュリティエンジニアを目指す人向けの資格。情報セキュリティマネジメントの計画・運用・評価・改善を通して、情報セキュリティ管理に必要となる基本的なスキルを認定します。
情報漏洩のリスクの低減、トラブル発生時の適切な対処法などの知識が問われます。
システム監査技術者試験
監査人や情報システム責任者などを目指す人向けの資格。情報システムに関するリスクの分析や点検・評価・検証を行うための知識が問われます。セキュリティ評価基準や脆弱性評価を問う情報セキュリティの専門知識に加え、プロジェクトマネジメント、経営やビジネス視点から改善を提案できるスキルも求められます。
情報処理安全確保支援士
セキュリティエンジニア、セキュリティコンサルタントを目指す人向けの資格。サイバーセキュリティに関する専門知識や技能を認定する資格です。情報システムや情報セキュリティに関する知識、サイバーセキュリティ対策に必要な要素技術、業務遂行スキルが求められます。
ITサービスマネージャ
IT企業や事業会社のシステム部門などで、システムの「運用管理・保守」を担う人が目指す資格の代表格。安全性・信頼性の高いITサービスを継続的に提供し、企業のIT投資効果の最大化を図る力が問われます。
マネジメント向けのおすすめ資格
ITスキルをベースに、マネジメントポジション、経営に近いポジションを目指す人を対象とする国家資格として、次のような資格があります。
プロジェクトマネージャ
プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャのポジションを担う人向けの資格。プロジェクト全体の意思決定を行い、スコープ・要員・資源・予算・スケジュール・品質・リスクなどを管理しながらプロジェクトを推進する力を認定します。
ITストラテジスト
CIO、CTO、ITコンサルタントなどを目指す人向けの資格。経営戦略に基づきIT戦略を策定する力、ITを活用した事業革新、業務改革、競争優位性が高い製品・サービスの創出などを企画・推進する力を認定します。
インフラエンジニア向けのおすすめ資格
インフラエンジニアの専門性をさらに高め、証明するための代表的な資格をご紹介します。
下記はいずれも「ベンダー資格」です。
インフラ整備においては、これまでのオンプレミス環境からクラウド環境へ移行しているのを背景に、3大クラウドプラットフォームである「AWS(Amazon Web Services)」「Azure(Microsoft Azure)」「GCP(Google Cloud Platform)」の知見・経験を求める求人が増えています。いずれもベンダー資格制度を設けています。
AWS認定試験
AWS(Amazon Web Services)に関する専門知識・スキルを認定。基礎レベル、アソシエイトレベル、プロフェッショナルの3段階が設定されています。また、「ネットワーキング」「データアナリティクス」「セキュリティ」「機械学習」「データベース」など、専門知識ごとの認定資格もあります。
Microsoft認定資格プログラム(MCP)
マイクロソフト社の認定資格である「MCP(マイクロソフト認定プログラム)」には、Microsoft Azureの認定資格があります。初級レベルでは、開発者向け、AIエンジニア向け、データエンジニア向けなどがあるほか、中級レベルではデータサイエンティスト向けやセキュリティエンジニア向け、上級レベルでは管理者向け、DevOpsエンジニア向け、ソリューションアーキテクト向けなどの認定資格もあります。
Google Cloud認定資格
基礎レベルでは、クラウドの概念、 Google Cloud のプロダクト、サービス、ツール、機能などに関する幅広い知識を認定します。アソシエイトレベルは、デプロイや保守に関する基礎スキルを認定。6か月以上のGoogle Cloud構築経験が推奨されています。
プロフェッショナル認定資格では、Google Cloudや設計や実装、管理に必要な高度なスキルが評価されます。アプリケーション開発やデータエンジニアリングなど、8種類の専門的分野の認定資格があります。1年以上のGoogle Cloud構築経験と3年以上の開発経験が推奨されています。
シスコ技術者認定プログラム
シスコシステムズ製品に関する知識・スキルを認定する、グローバルなベンダー資格。ネットワーク分野においての技術力を証明するもので、エントリー、アソシエイト、プロフェッショナル、エキスパート、アーキテクトの5段階が設定されています。
初級レベルの「CCNA(Cisco Certified Network Associate)」、その上位資格である「CCNP(Cisco Certified Network Professional)」がよく知られ、採用時の応募条件とする企業も多く見られます。
オラクルマスター
日本オラクル社が運営するベンダー資格。データベースの管理・運用やSQL知識を認定します。習熟度に応じてBronze、Silver、Gold、Platinumの4段階が設定されています。
Java SE 11 認定資格(Oracle)
日本オラクル社がJavaスキルを認定する資格で、Bronze、Silver、Goldがあります。言語未経験者向けの入門資格であるBronzeは、Java 言語を使用したオブジェクト指向プログラミングの基礎知識を認定。Silverは開発初心者向けで、プログラミングスキルに加え、プロジェクトで発生する状況への対応能力を認定。Goldは中上級者向けで、独自での機能実装スキルを評価します。
LPIC
正式名称は「Linux技術者認定試験(Linux Professional Institute Certification)」。オープンソースである「Linux」における正確な知識とスキルを認定する、グローバルで広く認知されている資格です。レベル1・レベル2・レベル3の3種類の試験があります。
さらに専門性を身につけたい人向けおすすめ資格
ITエンジニアとして専門技術を深めたい人に、各種分野の専門資格をご紹介します。
G検定
公式名は「ジェネラリスト検定」。ディープラーニングに関する基礎知識をはじめ、事業に活用するための能力や知識を評価する、2017年に開始された検定です。試験では、人工知能をめぐる動向や問題、機械学習の具体的手法、ディープラーニングの概要・手法、ディープラーニングの社会実装などの知識が問われます。
ITコーディネータ
「ITコーディネータ(ITC)」は、経営者の立場に立って経営とITを融合し、経営に役立つITサービス利活用を推進・支援するプロフェッショナルと定義されています。経済産業省が推進する資格「ITコーディネータ資格」は、ITコーディネータ協会が運営。ITコーディネータ試験の合格、ケース研修修了の両方を4年度間に満たすことで取得できます。
Python3エンジニア認定基礎試験
「Python」は、近年注目を集めているプログラミング言語。プログラミング初心者でも扱いやすい特徴があり、AI(人工知能)など最先端分野の開発でも活用されています。Pythonの資格認定試験の代表格が、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営するPython3エンジニア認定基礎試験です。Pythonの仕組み・活用法、文法などの知識が評価されます。
Project Management Professional(PMP)
米国に本部を置くNPO法人プロジェクトマネジメント協会(PMI)が実施・認定する国際資格。プロジェクトマネジメントの実務経験者を対象とし、プロジェクトマネジメントに関する経験・知識をはじめ、マネジメントに対する姿勢などを評価します。
・「Project Management Professional(PMP)」概要
ETEC
ETEC(Embedded Technology Engineer Certification:組込み技術者試験制度)は、一般社団法人組込みシステム技術協会(JASA)が開発・運営する、組込み技術者向けの試験制度です。初級レベルの「クラス2」では、組み込み技術に関する技術要素・開発技術・管理技術・通信などの知識が問われます。上級の「クラス1」では、要求・設計工程・テスト工程における知識から分析能力までの総合力、実装の実務能力が評価されます。
UMTP UMLモデリング技能認定試験
特定非営利活動法人UMLモデリング推進協議会が運営する、モデリング技術者の技能検定です。システム開発の上流工程で必要とされる、モデル構築の知識・スキルを評価します。試験では、実体を抽象化する能力、対象・対象間の関連を把握して整理する能力などが問われます。
転職エージェントの情報を活用しよう
資格がなくても、IT業界に転職するチャンスは豊富といえます。どの分野からスタートし、どのようなキャリアを築いていくか、自身の志向に合うのはどの分野か、前職での経験・スキルをどのように活かす道があるかをつかむためには、転職エージェントを活用する方法もあります。
まずはIT業界の現状や転職市場のトレンドについて転職エージェントから情報を入手するとともに、ご自身にどのような可能性があるかを相談してみてはいかがでしょうか。