営業職に興味がある皆さんに、営業の種類や特性、営業のやりがい、必要なスキル、向いているタイプなどについて、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
営業とは?
営業職とは、自社の商品・サービスを販売するため、見込み客あるいは既存顧客にアプローチして、商材の魅力や活用法の情報提供、提案を行う仕事です。職種名としては「セールス」と呼ばれることもあります。
営業の種類は対象顧客によって違う
営業職の種類は多様であり、業種・商材・顧客層・販売手法などによって活動が大きく異なります。ここからは、対象顧客による営業職の分類をご紹介します。
法人営業
企業や団体などを顧客として営業活動を行います。商談の相手は、大手企業向けであれば部門の担当者、中小企業向けであれば経営者など、対象企業によって異なります。また、扱う商材によって、特定の業界を対象にすることもあれば、幅広い業界を対象とすることもあります。
個人営業
個人を顧客として営業活動を行います。対象となる年代や属性、商材などによってコミュニケーションの取り方が変わります。一般家庭に電話や飛び込み訪問で新規開拓するスタイルがある一方、時間をかけて関係を築きながら商材を販売する営業もあります。
扱う商材による営業の種類
営業で扱う商材には、有形と無形があります。それぞれ営業の進め方も変わります。
有形営業
明確な形がある商材です。個人向けであれば住宅・自動車・芸術品・宝飾品・消費財など、法人向けであればオフィス機器や設備、生産用の機械・部品・資材など。消耗品か耐久品か、既製品かオーダーメイド製品かなどによっても営業の進め方が異なります。
無形営業
明確な形がない商材です。個人向けであれば、生命保険などの金融商品、冠婚葬祭、旅行など。法人向けであれば、システム・Webサービス・広告・人材など。形がないだけに、顧客のニーズに応じた提案を行います。
営業形態の違いによる営業の種類
メーカー営業、代理店営業、商社営業というように、どのような形態で営業をするのかによっても営業の方法が変わってきます。
メーカー営業
メーカーに所属する営業は、自社商品を販売します。生産部門とコミュニケーションをとって納期の調整・交渉を行ったり、顧客からの意見や要望を商品企画部門にフィードバックしたりする役割も担います。
代理店営業
自社の商品・サービスを販売してくれる「販売代理店」を開拓します。契約後は、営業活動の支援を行います。
商社営業
メーカーの営業が自社の商品だけを販売するのに対し、商社の営業は幅広い商品を扱います。顧客の課題やニーズを聞き、最適な商品・サービスを選択して提案します。
営業手法の違いによる営業の種類
新しい顧客を開拓する営業手法、すでにつながりがある顧客に営業する手法、興味を持って訪れてくれる顧客に対する営業手法があります。
新規開拓営業
まだ取引がない「見込み客」にアプローチし、自社の商品・サービスのメリットを紹介して販売・契約を目指します。
ルート営業
すでに取引がある顧客に対し、新たなニーズに対応するため、定期的にコミュニケーションをとります。信頼関係を築くことで取引を継続させます。
カウンターセールス
店舗・ショールーム・モデルルームなどで、来店客に対応する「内勤営業」です。例えば、住宅の売買・仲介を手がける不動産会社、保険ショップ、旅行会社、カーディーラーなどがあります。
営業のスタイルや役割は変化・多様化している
かつての営業活動では、「電話がけ」「飛び込み訪問」などによる新規顧客開拓が中心でした。既存顧客に対しては、頻繁に足を運んで訪問することで人間関係を築く手法が多くとられていました。
しかし、こうした活動は近年減少傾向にあります。コロナ禍の影響で、対面だけではなくオンラインでの営業力も求められるようになってきました。
また、今はさまざまなMA(マーケティングオートメーション)ツールの活用により、見込み客のリストアップやダイレクトメール・資料の送付などの営業プロセスが自動化されています。データやツールを効果的に活用しながら、戦略を立てる営業活動が求められるようになっています。
近年の営業の仕組みとして広がっているのが「The Model(ザ・モデル)」です。マーケティング・営業のプロセスを分割した体制です。
主に次のように役割を分けています。
- インサイドセールス……メール・電話・DMなどで見込み顧客にアプローチする
- フィールドセールス……商品に興味を示した顧客に対して提案・商談を行い、契約を結ぶ
- カスタマーサクセス……既存顧客をフォローし、自社商品への満足度を高め、契約を継続・増加させる
クラウドでソフトを提供する「SaaS」サービスを手がける企業では、こうした営業体制をとっていることが多く、さまざまな業種でも取り入れる動きが見られます。
営業の仕事のやりがいは?どんな人が向いている?
上記のように営業の種類は多様なため、感じられるやりがいや向いている人物タイプは、それぞれ異なります。しかしながら、多くの営業職に共通しているやりがい、向いているタイプとして、次のようなポイントが挙げられます。
人とコミュニケーションをとり、信頼関係を築ける
人と対話することが好きで、人と信頼関係を築くことに喜びを感じる人に向いています。コミュニケーション力が欠かせませんが、必ずしも言葉巧みに話せる必要はなく、「相手の話をじっくり聴ける人」が業績を挙げている事実もあります。
自分が得意とするコミュニケーションスタイルの営業を選ぶことで、成果を挙げやすく、やりがいが感じられるといえるでしょう。
悩みや課題を解決し、感謝される
顧客の悩みや課題を自社の商品・サービスで解決することで喜ばれることも、営業のやりがいの一つです。特に、企画・提案型の営業の場合、自身のアイデアで顧客を良い方向へ導けることにやりがいを感じられます。
成果が「数字」という目に見える形で表れる
自身の働きが、「売上高」「顧客獲得数」といった数字で表れ、明確に評価される点でやりがいを感じる人が多数です。ただし、数字が上がっていないときはプレッシャーを感じることになるため、ストレス耐性も必要といえます。
収入アップを目指せる
企業の報酬体系にもよりますが、営業成績を挙げるとインセンティブなどが得られ、収入アップにつながります。高額商品を扱い、かつ歩合給率などが高い企業を選ぶことで高収入を実現している人もいます。
営業に必要なスキルは?
営業に必要なスキルは、営業の種類によって異なります。一例を挙げてみましょう。
無形商材の営業
顧客のニーズや課題を引き出すヒアリング力、企画提案力など
有形商材の営業
製品の機能・特性・使用方法などをわかりやすく説明する力。納期などのスケジュール管理力、生産部門や仕入れ先などとの折衝・調整力など
個人向け営業
初対面の人とも早く打ち解け、安心感を持ってもらえるコミュニケーション力など
法人向け営業
正しいビジネスマナー、論理的なプレゼンテーション力など。中小企業向け新規開拓であればフットワークの軽さ、大手企業向けに高額商品を営業する場合などは、関連部署との連携力など
このほか、扱う商材や顧客層、営業手法などにより必要なスキルが異なります。コロナ禍以降は、対面の商談ができなくなり、オンライン商談に移行した企業も多数あります。非対面でのヒアリング力やプレゼンテーション力、関係構築力なども重視されるようになっています。
営業に役立つ資格は?
業界ごとに、営業職に必要な資格、役立つ資格をご紹介します。
金融業界
ファイナンシャルプランナー、証券外務員、生命保険募集人など
不動産業界
宅地建物取引士、マンション管理士など
広告・Webマーケティング業界
Google広告認定資格、Web解析士など
業界で評価される資格を取得しておくことで、顧客から信頼を得たり、採用選考で有利にはたらいたりする可能性があります。
なお、経営課題を解決する商材・サービスを扱う法人向け営業職の中には、「中小企業診断士」を取得する人も多く見られます。
営業の転職市場について
企業が収益を挙げるために欠かせない営業職は、転職市場で常にニーズがあります。現在、幅広い業界で採用が活況です。
中途採用では基本的に即戦力が求められますが、未経験者を受け入れている求人も多数あります。未経験からでも営業の仕事を始めやすいのは以下の業界・分野で、いずれも採用は活況です。
SaaS型サービスを扱う企業
SaaS型サービスを主力とするIT・Web企業のほか、最近では金融・不動産・人材・広告などさまざまな業界がSaaS型のサービスを開発・リリースしています。
こうした企業では、先ほど触れた「The Model」の営業体制をとり、営業未経験者を「インサイドセールス」として受け入れられるケースが多く見られます。経験を積んで、「フィールドサービス」「カスタマーサクセス」などへキャリアを展開していく道もあります。
人材サービス企業
人材紹介・人材派遣・求人広告など。企業に対して採用コンサルティングを行う営業職、求職者に対して求人を紹介するアドバイザー、いずれも未経験者に門戸を開いています。前職の業界・職種経験を活かし、その業界・職種を担当するケースが多く見られます。
生命保険
個人向けの生命保険の営業には、「保険ショップでのカウンターセールス」「フルコミッション」などの種類があり、いずれも未経験から始めやすいといえます。
不動産・住宅
住宅・マンションの売買仲介、住宅リフォームなどの営業は未経験者も対象とした求人が多数あります。
上記以外にも、金融商品、広告、医療機器・MR(医薬情報担当者)、EC、動画、ゲーム、フードデリバリー、決済サービスなど、多様な業種で営業のニーズがあります。
営業未経験でも、何らかの専門知識や業界知識、あるいはコミュニケーション力・課題解決力といったポータブルスキル(持ち運びできるスキル)、ポテンシャルが評価されて採用に至ることもあります。
転職エージェントにも相談し、自身のこれまでの経験が、どのような種類・タイプの営業職で活かせるかを探ってみてはいかがでしょうか。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。