中途採用では、面接の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれることが多いです。この質問は、一般的に「逆質問」と呼ばれています。逆質問の機会を活かして疑問点や不安に思っていることを聞くだけでなく、入社意欲の高さをアピールすることも可能です。
そこで、逆質問の目的や好印象につなげるポイント、例文などを組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
企業が逆質問を通じて知りたいこと
企業は、面接の逆質問を通じて、応募者の入社意欲を知りたいと考えています。また、逆質問の内容から、応募者の興味関心を知って、人柄や価値観、仕事への姿勢などを判断する材料にしているケースもあります。興味関心だけでなく、不安事項なども把握することができるため、的確に答えて不安を払拭することで内定辞退を防ぐ目的もあります。
そのため、逆質問はしっかりと企業研究を行い、入社するかを見極めるために気になる点を聞くことが重要なポイント。「何も聞かないとマイナス評価になるのでは」「アピールにつながる質問をしなければ」と焦って、無理やり質問をするのではなく、「知りたいことを率直に聞くこと」が大切です。
逆質問を好印象につなげるためのポイント
逆質問は、志望意欲や興味関心の高さを伝えることができます。好印象につなげるためのポイントを3つご紹介します。
「働きたい」という意欲が伝わる具体的な質問にする
求人に記載している「求める人物像」や「仕事内容」をしっかりと読み込んで、実際に入社して働いる姿をイメージしてみましょう。「求人には『○○業務をお任せしたい』と書かれているが、具体的にどのレベルを期待しているのだろう?」「チームの構成と教育体制、情報共有の場にはどのようなものがある?」「1年後のあるべき姿と、3年後、10年後のキャリアパスは?」など、業務内容や職場環境、将来的なキャリア形成など、入社後のイメージを膨らませていくと、詳しく知りたいことが出てくるものです。事前に入社後のイメージを描いておき、疑問点を洗い出しておきましょう。
「転職で実現したいこと×アピールポイント」を軸にする
逆質問は、「転職によって何を実現したいのか」を軸に、応募企業との接点を考えるといいでしょう。仕事のやりがい、キャリア構築、自己成長、職場との相性、働き方などにおいて、自分が転職先に求めることを軸とした上で「その企業でどう実現できるのか」「どのようなことを実現していきたいのか」を具体的に考え、より深く聞きたいことを探すことがポイントです。
相手の担当職務などに合わせた質問をする
中途採用の面接は、1次、2次、最終面接と、2~3回行われることが一般的です。順序は企業によって異なりますが、人事担当者、現場責任者、役員クラスなどが面接を担当します。そのため、相手の職務や役職などに合わせて質問を調整しましょう。
例えば、人事制度や入社手続きなどの細かい確認を、役員クラスの面接担当者に質問するのは適切ではありません。一方で、将来的な事業展開や、重要な経営判断などは、役員クラスに聞くのが最適でしょう。疑問点は事前に洗い出しておき、面接の担当者のポジションに合わせて質問をするようにしましょう。
入社意欲や熱意の高さをアピールする逆質問例
入社意欲や熱意の高さをアピールする、逆質問の例文とポイントをご紹介します。
逆質問例
- ○○サービスを担当するとご説明いただいたのですが、他のサービスに関わる機会はありますか?
- チームで日常的に使用されている業務ツールを教えていただけますか?
- 入社まで○日あります。それまでに、読んでおいた方がいい書籍などはありますか?
- 入社後は、しばらく営業同行をしていただけると聞きました。何日くらいで営業として独り立ちするのでしょうか?
- 15~30分程度で構いませんので、同じチームで働く先輩にお話をお伺いする面談の機会をいただくことはできませんか?
入社意欲や熱意の高さを伝えるポイント
志望企業の商品や仕事内容などに、強い興味・関心を持っていることをアピールする逆質問です。この逆質問は、現場責任者が面接を担当している時に聞くといいでしょう。「自分がその会社で働くとしたら」「このようなことにチャレンジしたい」など、入社後のイメージに結びつけて考えていることも伝えれば、評価につながりやすくなります。
自分の強みをアピールする逆質問例
自分の強みをアピールする、逆質問の例文とポイントをご紹介します。
逆質問例
- これまでは○○を中心にデザインを行ってきました。○○の経験を活かせる仕事はどのくらいありますでしょうか?
- 職務経歴書には細かく記載していませんでしたが、○○の経験があります。先ほどのお話では、御社の顧客イベントで経験を活かせそうですが、将来的にお任せいただける可能性はありますでしょうか?
- より良いサービス開発のために、継続的なユーザーヒアリングを行ってきました。御社では調査やリサーチなどは行っておりますか?
- 学生時代に語学留学の経験があり、現在も英会話教室に通っています。御社で語学力を活かす機会はございますか?
- 現職では自主的に定期的な勉強会を主催していました。御社では、勉強会を開催する機会はありますか?
自分の強みを伝えるポイント
自分の強みをシンプルに伝えた上で、応募企業の仕事や組織、事業において「どのように活かせるのか」「どういった場面で活躍できるのか」を確認することで、アピールにつなげることができます。この質問は、人事または現場責任者が面接を担当している時に聞くといいでしょう。
その際、仕事の進め方や事業展開の方向性などを調べていることも伝えれば、「企業研究をきちんとしている」という評価につながりやすいでしょう。応募企業の働き方や事業内容、組織体制などを想定し、自分の強みと重なりそうな場面について詳しく聞くことがポイントです。
興味関心や共感をアピールする逆質問例
興味関心や共感をアピールする、逆質問の例文とポイントをご紹介します。
逆質問例
- 御社には「○○○」という行動指針があります。これを体現している従業員の方のエピソードを教えてください。
- テレワークが中心とのことですが、コミュニケーションを図る機会はありますか?
- 御社の「○○○」という理念に共感しています。今後、○○分野を伸ばしていく計画はありますか?
- 御社はフラットな組織風土が魅力ですが、他部門とのかかわりはどの程度ありますか?
- 若手社員に求める姿勢や気構えとして、「どうあってほしい」というイメージはありますか?
興味関心や共感を伝えるポイント
応募企業の文化や理念、働き方、制度などに合致した資質を伝えることで「企業文化とマッチする人材であること」「企業が求める人材像に重なる人材であること」をアピールできます。この質問は、人事または役員クラスが面接を担当している時に聞くといいでしょう。
企業文化に共感した点や、その企業で求められることを積極的に行っているなど具体的に伝えながら、より掘り下げていく質問が有効です。
逆質問の注意点
逆質問で気をつけておきたい、代表的な注意点を6つご紹介します。
「特にありません」で終わらせない
「質問はありますか?」と聞かれて、「特にありません」と回答すると、場合によっては「志望度が低い」「自社に興味を持っていない」と捉えられる可能性があります。もちろん、採用担当者の説明で十分納得できて、企業研究もしっかり行っていて、本当に「特にない」という状況もあるかもしれません。
ただ、内定が出た時に「これを聞いておけばよかった…」と後悔する方も一定数います。「入社するかもしれない企業について直接話を聞けるチャンス」なので、気になる点は質問することをおすすめします。
調べればわかることを聞かない
求人や企業の採用ページに掲載されている情報など、調べればすぐにわかることを質問するのは避けましょう。「企業研究をしていない」「志望度が低い」といった判断をされる可能性があります。また、事前にきちんと調べずに「○○と聞いたのですが…」と、曖昧な根拠を元に質問するのも避けた方がいいでしょう。
面接担当者がすでに説明していることは聞かない
面接ですでに説明されていることを繰り返して聞くと、「話をきちんと聞いていないのでは」「入社意欲が低い」と判断される可能性があります。複数社の面接を受けていると、どの企業でどのような説明をされたのか分からなくなってしまうので、面接で聞いたことはメモしておき、より掘り下げる質問をしましょう。
また、無理にほかの質問をしようとするケースもありますが「この点について質問したいと考えておりましたが、面接の中で確認することができました」と伝えれば問題ありません。
待遇などの条件のみを聞く質問は避ける
給与やボーナス、昇給制度、残業時間数、休日数、有休取得率などの「条件面」ばかり質問することは避けたほうがいいでしょう。「条件面のみに興味がある」と判断され、仕事とのミスマッチを懸念される可能性があります。なお、条件面を含めていくつかの逆質問を聞くのは問題ありません。
面接の時間内に質問しきれなかった疑問点は、面接終了後にメールなどで聞いたり、他の従業員との面談を設定してもらって、実際の働き方などを直接聞いたりする方法もあります。
漠然とした質問や抽象的な質問はしない
「御社の将来性を教えてください」「どのような人が働いていますか?」など、漠然とした質問をしても、採用担当者は答えにくいものです。また「企業研究をしていない」「仕事やキャリアなどに対する明確な考え方を持っていない」と判断される可能性もあります。質問の意図をきちんと説明し、具体的に何を知りたいのかまで伝えることが大事です。
逆質問をしすぎない
面接の時間は限られています。逆質問をしすぎて、時間をオーバーすることがないように注意しましょう。2〜3点の質問を目安とし、残り時間に応じて切り上げる判断が大切です。予定終了時刻が近づいてきたら、「恐れ入りますが、あと3点聞きたいことがあります。後ほどメールでお送りしてもよろしいでしょうか?」と聞いてみるといいでしょう。
逆質問に悩んだら転職エージェントに相談を
転職エージェントは、求人の紹介だけでなく、具体的な面接のアドバイスも行っています。もし逆質問の聞き方や質問内容に迷っている場合は、転職エージェントに相談し、逆質問のポイントや聞き方について教えてもらいましょう。また、一度でも模擬面接をやってみると、思っていたよりも自信がつくものです。事前準備を万端にして、面接に臨みましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。