「20代前半。転職を考えているものの、まだ社会人経験が浅いので転職が可能か知りたい」という方の疑問にお答えします。20代前半の転職事情、未経験分野への転職を成功させるポイント、転職活動の進め方について、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
20代前半の転職が急増。異業種×異職種への転職が半数超
昨今、転職は一般的なものとなっています。リクルートエージェントでの転職決定者の推移を見ると、2022年度のZ世代(26歳以下)の転職はほぼ5年で約2倍に増加しました。
20代前半を含む18~26歳の転職者数は、他の年代以上の伸びを見せています。
「Z世代(26歳以下)の就業意識や転職動向」
実際に転職した20代前半の多くは、未経験の分野を選んでいます。2022年度に転職した人が「同業種×同職種」「同業種×異職種」「異業種×同職種」「異業種×異職種」のどのパターンで転職したかを調査したデータでは、「異業種×異職種」へ転職した人は20~24歳で53.5%と、半数を超えています。
【年齢別】転職時の業種・職種異同のパターン別割合(2022年度)
20代前半の未経験転職を成功させるポイント
このように20代前半でも転職できる可能性は十分にありますが、納得のいく転職を叶えるためには事前準備や選考対策が必要です。転職を成功させるために、次のポイントを押さえたうえで転職活動を開始しましょう。
「第二新卒」採用枠を活用しよう
企業側の採用動向に目を向けると、「第二新卒」をターゲットとして採用を行う企業が大幅に増加しています。第二新卒とは一般的に、学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、3年以内の人を指します。
リクルートエージェントにおける「第二新卒歓迎と記載がある求人」の推移
近年、少子化を背景に、企業は人材獲得に苦戦。新卒採用で採用予定数を満たせず、第二新卒を対象に中途採用を行うケースが増えています。
また、創業からの年数が浅く、教育体制が整っていないスタートアップやベンチャー企業などでは、他社でビジネスマナーの基本を身に付けた人材を採用したいというニーズもあります。
そして、採用にあたって「本人の潜在的成長力や伸びしろを重視する」と答えた企業は半数以上。かつての中途採用といえば、経験や専門性を持つ即戦力採用が主流でしたが、「ポテンシャル」を重視する企業が増えているのです。
採用にあたって本人の潜在的成長力や伸びしろを重視しているか
このように、20代前半で転職活動を行う場合は「第二新卒」枠を狙うといいでしょう。未経験の業種・職種にもチャレンジできるチャンスがあります。
第二新卒採用においては、経験・スキルよりもポテンシャルを期待される傾向にあるでしょう。ビジネスへの取り組み姿勢や成長意欲の高さが認められれば採用される可能性があります。
将来のキャリアを描き、転職の目的を明確にする
転職を考えた理由は、仕事や職場環境、人間関係などへの不満かもしれません。しかし、その状況から「逃げる」ことを転職の目的にしてしまうと、転職後に別の不満が生じて満足感が続かなかない可能性があります。
きっかけは不満であったとしても、「これから何をやりたいのか」「何を目指すのか」を考え、転職によって実現したい未来に目を向けましょう。
面接では多くの場合、「転職理由」をたずねられますが、目的が明確になっていれば、説得力がある受け答えができます。「不満から逃げる人」ではなく、「自社で成長できそうな人」という印象を持ってもらえるでしょう。
自分の強みを整理する
粟野氏のご経験をもとにすると、企業は社会人歴が浅い応募者の選考において、高い専門性や実績というより自身の「強み」や「仕事に取り組む姿勢」などを重視する傾向が強いといえます。「仕事ぶり」をイメージして、自社で活躍できそうかどうかを見極めようとしています。
そこで、これまでの仕事に対して「どのように向き合ってきたか」「どのような工夫・行動をしてきたか」「上司や顧客からどのようなことで褒められたか」などを振り返って整理し、「自分の強み」を洗い出しておきましょう。
自身の強みを言語化するためには、以下を参考にしてください。
自分に関わる力
決められたことをやり抜く力/忍耐力/継続力/粘り強さ/実行力/活動意欲/集中力/ストレス耐性/主体性(自分で考え行動できる力)/挑戦心・チャレンジ精神/改善・成長意欲/前向き志向/学ぶ姿勢/度胸・本番に強い/感情をコントロールする力/タフさ(精神力)/使命感・責任感/目標指向性・達成意欲/パッション(情熱)/探究心/どのような仕事でも面白みを見つける好奇心/変化対応力・柔軟性
他人に関わる力
親しみやすさ/気配り・ホスピタリティ/チャーム(可愛がられる要素)/素直さ/誠実さ/真面目さ/約束を守る/協調性・チームワーク力/指導・育成力/働きかける力(巻き込み力)/わかりやすく伝える力/傾聴力/プレゼンテーション力/理解力/調整・交渉力
課題に対する力
論理的思考力/物事の本質を突き止める力/課題発見力/企画力/計画力/想像力/提案力/分析力/広い視点で捉える力/正確性/スピード/PCスキル/文章作成力/計算能力
20代前半の転職活動の進め方【企業の選び方】
転職活動の進め方と、そのプロセスで20代前半の方々が意識しておきたいポイントをお伝えします。
企業選びの「軸」を決めて優先順位をつける
多数の求人の中から応募先企業を選ぶには、迷うこともあるでしょう。そのため、先ほどお伝えしたとおり、「今回の転職で実現したいこと」を明確にしておくことが大切です。その軸に沿って、企業を選ぶ際の項目に優先順位をつけましょう。
下記の項目それぞれについて「どのような状態が理想的か」を考えてみてください。そのうえで優先順位をつけておくと、企業を選ぶ基準が明確になり、候補企業を絞り込みやすくなります。
企業を選ぶポイント
- 企業理念
- ビジョン
- 事業戦略
- 事業・商品の特徴
- 仕事内容
- タスク
- 社風
- 経営者
- 社員
- 評価・教育制度
- 給与
- 設備
- 勤務場所
「入社後のキャリアパス」に注目する
希望職種で未経験OKの求人が見つからない場合、まずは未経験OKの職種から入り、いずれ希望職種に異動できるチャンスがある企業を狙うのが得策です。「入社後のキャリアパス」に注目して企業研究を行い、面接で確認するといいでしょう。
「企業理念」「ミッション・ビジョン・バリュー」「パーパス」に注目する
「社会的意義を感じられる企業」「SDGsに取り組んでいる企業」などを希望する方もいるでしょう。
興味がある企業を見つけたら、ホームページで「企業理念」「ミッション・ビジョン・バリュー」「パーパス」などのページをチェックしてみてください。そこに書かれているメッセージを読んで、自身が共感できるかどうかを考えてみましょう。
ただし、経営陣がこだわりの理念を持っていても、現場の社員に浸透していない企業も少なくありません。選考過程で現場のメンバーと話をさせてもらうなど、共通の理念・価値観を持っているかどうかを確かめることも大切です。
20代前半の転職活動の進め方【応募書類の作成・面接でのアピール】
続いては、応募書類の作成と面接でのアピールポイントについて紹介します。
応募書類での注意点
応募時には、「履歴書」「職務経歴書」の提出が求められます。20代前半の方々が職務経歴書を書こうとすると、所属部署名と担当職務のみの1行~数行程度で終わってしまうこともあります。
そこで、仕事ぶりや強みが伝わるように、「自己PR」欄を活用しましょう。自己PR欄には、日々の仕事のなかで心がけていること、工夫していること、主体的に行動を起こしてきたことなどを記載します。
「コミュニケーション力」「課題解決力」「調整力」「交渉力」など、仕事で培った「強み(業種・職種問わず持ち運びができるスキル)」をアピールするのも有効です。例えば、「営業」から「コンサルタント」への転職を目指すなら、コンサルタントに必要な「課題分析力」「提案力」などを、これまでの営業経験でどのように発揮していたかを伝えることで採用される可能性が高まるでしょう。
また、未経験の業界・職種を目指す場合は、「志望動機」欄を設け、その業界・職種に興味を持った理由やエピソードも記載すると、熱意が伝わりやすくなります。
面接でのアピール方法
上記のとおり、職務経歴書に「仕事で大切にしていること」「工夫していること」「主体的に行動を起こしたこと」や強みを記載することを前提に、面接ではその具体的なエピソードを語れるようにしておきましょう。
どのような場面で、どのように考え、どのように行動したのかを、一連のストーリーで伝えるのです。そうすれば、採用担当者は自社での活躍のイメージを描きやすくなります。
また、自分が自信を持っていることを一方的にアピールするだけでなく、「企業側のニーズ」を踏まえてアピールすることも大切です。
同じ業種・職種でも、企業によって求めている要素が異なります。例えば、「独自で判断して行動を起こせる人がほしい」と考えている企業もあれば、「チームワークを大切にする人がほしい」と考えている企業もあります。
その企業の社風や価値観などは、ホームページや採用ページなどを隅々まで読み込めば、ある程度つかむことができます。企業が求めている要素と自分自身の強みの「共通点」を見つけ出し、それをアピールするといいでしょう。
20代前半の転職で気をつけたいこと
20代前半で転職活動をするときに陥りがちなパターンを知っておき、対策をしておきましょう。
新卒の就活と同じ感覚で転職活動をしない
新卒の就活時の感覚で、企業の知名度やブランドイメージを優先して応募企業を選ぶ方も見られます。
しかし、最初の就職先で仕事を経験するなかで、働くうえで自分が大切したいことに気付いたり、目指すキャリアビジョンが見えてきたりしたのではないでしょうか。それらを整理し、企業選びの「軸」を定めましょう。
面接に臨む際も、「興味」「意欲」をアピールするだけでなく、仕事の経験で身に付けたスキルを応募先企業でどう活かせるか、今後どのようなスキルを伸ばしていきたいかを伝えることが大切です。
また、新卒の就活では内定から入社まで長い期間がありましたが、転職の場合は内定を受けてから入社まであまり時間がないこともあるでしょう。
在籍中の企業との退職交渉、業務の引継ぎなどに要する期間を踏まえ、スケジュールを立てて進めましょう。繁忙期など、タイミングによっては退職しづらい時期もありますので注意が必要です。
目先の不満を解消するだけを目的にしない
「現職で感じている不満を解消したい」「今のつらい状況から脱したい」という意識だけで転職先を選ぶと、現状の不満は解消できても、別の不満が生じることもあります。
目先の問題だけでなく将来へ目を向けて、中長期でどのようなキャリアを築いていくかを考えてみましょう。その実現のために、今、転職すべきかどうか、転職するならどのような条件を重視して企業を選べばいいのかを検討してください。
転職エージェントを活用し、自分の強みを明らかにしよう
これまでお伝えしたとおり、社会人歴が浅い場合の転職では「ポテンシャル」が重視されます。しかし、自身の「ポテンシャル」をどう伝えればいいのか迷う方、自分の強みがわからない方もいるでしょう。
転職エージェントのキャリアアドバイザーに、キャリアの棚卸しや自己分析をサポートしてもらってはいかがでしょうか。プロの客観的な視点でのアドバイスにより、気付かなかった自身の強みを発見できるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。