20代で未経験の業界・職種への転職を考えている皆さんに、「未経験採用」のトレンド、企業選びのポイント、未経験から狙える職種などについて、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
20代は未経験でも転職できるチャンスが多い
中途採用においては、「即戦力」となる経験者を求める傾向が強いのですが、20代に対しては経験・スキルより、「ポテンシャル」を重視して採用するケースが多々あります。「未経験OK」の求人も豊富であり、異業種・異職種に転職できるチャンスが十分にあります。
20代が未経験でも転職しやすい理由
20代前半で社会人経験1年~3年の求職者は、「第二新卒」と呼ばれます。近年、少子化にともない、企業は若手人材の獲得に苦戦しています。大手企業であっても新卒採用で採用予定数が充足せず、「第二新卒」を対象に中途採用を行う企業が増えています。
20代後半になると、業界・職種の経験を求める求人がある一方、まだまだ「ポテンシャル」に期待する求人も多数あります。新しい環境や仕事の進め方に適応できる柔軟性があり、入社後に成長できると考えられています。
20代の転職で求められるスキルと経験
20代を対象とする採用において、求めるスキル・経験は企業によって大きく異なります。しかしながら、厚生労働省が実施した「若年者雇用実態調査(平成30年)」から、大まかな傾向を読み取ることができます。
若年正社員の採用選考をした事業所に対し、中途採用者の選考で重視した点をたずねたところ(複数回答)、以下の結果となりました。
1. 職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神……76.0%
2. コミュニケーション能力……62.9%
3. マナー・社会常識……60.1%
4. 組織への適応性……47.8%
5. 業務に役立つ専門知識や技能……35.9%
出典:平成30年若年者雇用実態調査の概況(厚生労働省)
※調査概要/事業所調査:調査対象数 17,112 事業所、有効回答数 9,455 事業所、有効回答率 55.3%。平成30年9月22 日~10月15 日に実施
ビジネスの経験・スキル以上に、意欲やポテンシャル、社風に合うかどうかが重視されていることが見てとれます。平成30年(2018年)の調査結果ですが、この傾向は大きく変わっていないと考えられます。
20代・未経験者が企業を選ぶポイント
20代で未経験分野への転職を目指すなら、企業を選ぶ際に次のポイントに注目しましょう。
自分が目指すキャリアに合っているか
例えば、同じ業界の営業職採用でも、「営業としてキャリアを積み、営業チームのリーダー・マネジャーを目指してほしい」と考えている企業もあれば、「いずれはマーケティング・企画・管理部門など、志向に応じて社内異動が可能」というキャリアパスを用意している企業もあります。
入社後、5年先・10年先などを見据え、自身が積みたいキャリアを築いていけるかどうか、企業の人材に対する考え方や育成方針を確認しましょう。
成長が期待される業界であるか
比較的新しい業種、かつ、これから市場の伸びが期待できる業種は、組織拡大のため大量採用を行っていること、「経験者」がまだ転職市場に少ないことから、未経験者にも門戸を開いています。
例えば、最近はクラウドでソフトを提供する「SaaS型」のビジネスモデルが拡大しています。こうしたSaaS企業では、「インサイドセールス」や「カスタマーサクセス」などの職種の採用で未経験者を受け入れています。成長が期待されるビジネスのトレンドにもアンテナを張っておきましょう。
自分に合った働き方・評価・報酬・条件が実現できるか
例えば、「リモートワークやフレックスタイムなど、柔軟な働き方ができる制度が導入されている」「人事評価では、成果だけでなくプロセスも重視される」「業績を挙げた分だけ報酬に反映される」「研修プログラムが充実している」など、自身が望む条件にマッチするかどうかにも着目しましょう。
未経験で入社するからには、すべての理想条件を満たすことは難しいかもしれませんが、将来的に叶えられる可能性があるかどうか、選考段階で確認しておくといいでしょう。
職種別:20代の未経験者が挑戦しやすい理由とアピールポイント
職種別に、20代が未経験から転職できる可能性がある分野をご紹介します。まったくの未経験でもチャンスがある職種もあれば、近しい経験が求められる職種もあります。
一見関連性が薄い職種でも、これまでの職種経験の中から、希望する職種と共通する思考法や活動経験を抽出してアピールすることで、門戸が開かれる可能性が高まるでしょう。
営業・販売・カスタマーサービス
全般的に求人数が多く、未経験者OKとする求人が多数あります。業界や商材の知識がなくても、コミュニケーション力、提案力、ホスピタリティ、数値管理能力、目標達成意欲などをアピールすることで転職できるチャンスが豊富です。
企画・マーケティング
求人が多いのは「Webマーケティング」の分野。Web広告代理店などでの営業経験があれば、マーケティング未経験でも受け入れている求人があります。企画職を目指すなら、コンサルタントやマーケティングなどの経験から企画に近い業務経験をアピールするといいでしょう。
管理業務・事務
専門性が必要とされる管理部門専門職(法務・IR・内部統制など)に未経験で就ける可能性は低め。しかし、「経理」であれば、簿記資格を持つ未経験者が採用されるケースもあります。
また、「人事」の中でも採用担当のポジションでは、営業経験者が「自社の魅力を伝えるプレゼン力」などが買われて採用されている事例があります。一般事務職は求人数が少なく、経験者がライバルとなるため狭き門ですが、PCスキル・業務の正確性・ホスピタリティなどをアピールすることで受け入れられる可能性があります。
物流・購買・貿易・店舗開発
物流・購買などは、メーカーの営業職や生産管理職などが業務の一環として経験していれば、専門職への転職可能性があります。貿易は英語での折衝力があればチャンスあり。流通・外食などの店舗開発は、未経験から入りやすい店長候補・スーパーバイザーからエリアマネジャーを経て目指すことができます。
コンサルタント
「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「SDGs」「M&A」などのテーマのほか、「中小企業向け」「業界特化」など、コンサルティングニーズは多様。コンサルタント経験がなくても、特定の業界やテーマに関する知識、課題分析・提案力、論理的思考力、成長意欲、タフさなどをアピールすることで転職できる可能性があります。
金融専門職
職種そのものの経験がなくても、近しい経験があれば受け入れられる可能性があります。例えば、「銀行・証券の法人営業経験を活かしてM&A専門職へ」「戦略コンサルタントの経験を活かしてベンチャーキャピタリストへ」「銀行の法人営業経験を活かしてストラクチャードファイナンスへ」「監査法人・公認会計士の経験を活かして公開引受へ」などが挙げられます。
不動産専門職
不動産業界は、営業職であれば未経験から入りやすい業界です。不動産営業として経験を積んだ後は、不動産管理・リーシング・プロパティマネジャー・アセットマネジャー・仕入れなどの専門職を目指す道があります。
クリエイティブ
ニーズが高いWeb系クリエイターであれば、未経験でも独学やスクールなどでWebデザインやコーディングを学び、作品を制作してアピールすることで採用されるチャンスがあります。編集・ライターなども、営業職などで培ったコミュニケーション力、企画提案力を活かせば可能性があります。
エンジニア
人材不足のITエンジニアは、未経験からでも転職しやすい職種です。SIer(システムインテグレーター)や、SES(システムエンジニアリングサービス)と呼ばれる技術者派遣企業などでは、独自の研修体制を整えて未経験者を受け入れ、ITエンジニアとして育成しています。ただし、「入社してから学ぼう」という意識では受け入れられにくく、独自に学んでいる人や資格を取得している人が歓迎されます。
建築・土木・設備
建築施工管理・現場監督などは人材不足のため、未経験でも受け入れられる可能性があります。現場で働く職人や協力会社、工事を行う近隣地域住民、施主など、多様な人とのコミュニケーション力・折衝力、スケジュール管理能力、現場をとりまとめられるリーダーシップ、臨機応変な対応力などがアピール材料になり得ます。
医療・医薬・化粧品
医療機器の営業職は、未経験でも転職しやすい職種です。また、製薬業界の営業・マーケティング活動を請け負うCSO(Contract Sales Organization/医薬品販売業務受託機関)を中心に、未経験者を対象としたMR(医薬情報担当者)採用が行われています。いずれも、法人向け営業経験があればチャンスがあります。
医療のバックグラウンドを持ち、責任感や正確性を備えた人であれば、臨床開発モニターや治験コーディネーターへの転職も可能です。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。