転職によってキャリアアップを実現するケースは少なくありません。しかし、「自分が転職でキャリアアップするには、どうすればいいのか」「そもそも何を目標にすればいいのか」と考えている人もいるでしょう。また、キャリアアップを実現するための計画となる「キャリアプラン」について面接で聞かれるケースもあるため、「どう答えればいいのかわからない」と悩んでいる人もいるでしょう。
今回は、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント・粟野友樹氏が、キャリアアップの考え方や目標例、キャリアアップを実現するためにやっておきたいことについて解説します。また、面接でキャリアプランについて聞かれた場合の答え方、回答例文なども紹介するので、今後の転職活動の参考にしてみましょう。
目次
キャリアアップとは?
キャリアアップとは、一般的に「より深い知識や経験・スキルを身につけて能力を向上させ、自分の職務経歴を高めること」を指すことが多いでしょう。わかりやすい例としては、「プロジェクトメンバーからリーダーやマネジャーなどにポジションが上がった」などで、人材としての市場価値を高めることが挙げられるでしょう。また、派遣社員から契約社員、正社員などに雇用形態が変わることも、キャリアアップと呼ぶケースもあるようです。
キャリアアップとスキルアップの違いは?
スキルは「技能」を指しているため、スキルアップとは、あくまで「技能を磨いて高めること」を意味すると考えられます。例えば、業務に役立つ専門知識や語学を学んだり、新しいソフトウェアやツールなどの操作スキルを身につけて専門性を高めたりすることを意味しています。自身のスキルを磨いてキャリアアップを果たす例もありますが、前述した通り、自分の市場価値を高めるキャリアアップとは意味合いが違うことを理解しましょう。
キャリアアップとは具体的にどういうもの?目標例を紹介
キャリアアップについて、「昇進・昇格・昇給を実現すること」と考える人もいますが、人それぞれが大事にしている価値観によって、その内容は異なるものです。自分が目指す将来像や目標に向かってキャリアアップしていくことが大事だと考えましょう。
キャリアアップの目標例
キャリアアップの目標例を紹介するので、自分が目指したい将来像に重なるものを探してみましょう。
【キャリアアップの目標例】
・専門性の高い仕事で活躍する
・中小企業で幅広い業務に対応して能力を高める
・起業してやりたいことを実現する
・役職者を目指す、管理職に就く
・仕事の専門性を高め、プロフェッショナルとして活躍する
・自分にとってやりがいのある仕事に転職する
・年収をアップさせる
・仕事の幅を広げ、さまざまな経験を積む
キャリアアップのためにやっておきたいこと【キャリアプランの作り方】
キャリアアップを目指すには、将来目指したい姿を思い描いた上で、現在の自分に足りていない能力を見極め、その差分を埋めていくことが必要です。キャリアアップのためにやっておきたいことを3つのステップに分けて解説します。
キャリアの棚卸しを行い経験・スキルを認識する
まずはキャリアの棚卸しを行いましょう。これまでのキャリアを洗い出して、どのような経験・スキルが身についているのかを明確にすることがポイントです。仕事内容だけでなく、過去に経験したプロジェクト、担当した業務、そこで担った役割・ポジションなどを振り返り、どのような経験・スキルを積んできたのかを詳細に書き出していきましょう。
「将来こうありたい」を考えて必要な経験・スキルを洗い出す
次に、将来的に目指したいキャリアを考えましょう。「コンサルティングもできる○○職を目指す」「○○領域のスペシャリストを目指す」など、中長期的な視点で自分の理想像をイメージしてみましょう。将来に「こうありたい」と考える姿を実現するために、どのような経験・スキルが必要なのか洗い出していくことが大事です。
現在の自分の経験・スキルとの差分を考える
現在、身についている経験・スキルと、将来目指したい姿に必要な経験・スキルを整理した上で、どのような差分があるのかを考えましょう。その上で、「差分を埋めるために、どのくらいの期間をかけ、どのようなことに取り組み、どうやって足りないものを身につけていけばいいのか」という計画を立て、キャリアプランを作成することがポイントです。これによって、キャリアアップするための現実的な道筋が明らかになるでしょう。
キャリアアップするための3つの方法
キャリアプランを作成したら、実現するための方法を考えましょう。実現するための方法は様々ですが、今回は現職のままで実現する方法と、転職によって実現する方法をご紹介します。
現職のままでキャリアアップする道を検討する
現職のままで、自分のイメージするキャリアを実現できる方法がないか考えてみましょう。異動・昇進の可能性だけでなく、キャリアチェンジや希望のプロジェクトへの参画などを実現できる社内制度の有無なども調べてみることで、キャリアアップできる道筋が見つかるかもしれません。
転職する場合は、事前のリサーチや準備不足で「社風が合わない」「職場の人間関係になじめない」「仕事の進め方が合わない」「企業理念に共感できない」などによって後悔するケースもあります。また、現職の会社に不満を抱き、「ほかの会社ならキャリアアップできるはず」と考えて、キャリアのイメージを固めないまま転職を目指す場合は、面接で説得力のあるアピールができずに苦戦する可能性もあるでしょう。
さらにいえば、転職先ではこれまで築いた社内人脈や周囲からの評価などがリセットされます。現職のままで、積み上げてきた信頼や実績を活かした方がスムーズにキャリアアップできるケースもあります。まずは現職でキャリアアップできる方法を考えてみましょう。
キャリアアップ転職の可能性を考える
現職でキャリアアップを実現できる見込みが薄い場合は、転職を検討してみることもできます。キャリアアップするために、現時点で足りていない経験・スキルを積める企業を探しましょう。一時的に年収が下がる可能性もありますが、転職先で成果を出したり、転職市場で人材価値を高めて再度転職したりすることで、年収アップを実現していくことが可能でしょう。
年収条件など、待遇面だけにとらわれず、将来目指す姿に向かって段階的に経験・スキルを獲得できる企業を探すことが大事です。
副業やボランティア活動で経験・スキルの幅を広げる
「現在の会社には、キャリアアップできる環境がない」「転職する勇気が出ない」などの場合は、副業やボランティア活動をすることでも経験・スキルの幅を広げていくことができます。自分の職業上の専門性や知識・スキルを無償で提供する社会貢献活動「プロボノ」に挑戦する方法などもあります。
キャリアアップするなら転職と社内、どちらがおすすめ?
転職によるキャリアアップと社内でのキャリアアップについて、「どちらを目指すべきなのか」と悩む人もいます。それぞれのメリット・デメリットを解説するので、自分に合う方法はどちらなのかを考えてみましょう。
社内でキャリアアップすることのメリット・デメリット
まずは、現職のまま、社内でキャリアアップを目指すメリット・デメリットを解説します。
メリット
現職の会社の場合、「積み重ねた経験・実績が評価される」というメリットがあります。しっかり実績を積んできた場合は、部署異動やプロジェクトへの参加などの希望も叶えやすいといえますし、これまでに築いた信頼関係があるため、上司など周囲の人々の協力も得やすいでしょう。また、職場環境や人間関係を大きく変えずに済む安心感がある点や、社内の制度やキャリアパス、先輩社員のキャリアステップなどの情報を調べやすい点もメリットといえます。
デメリット
現在の会社の職種やビジネスの中でしか経験・スキルを積めないため、自分の能力の幅を広げにくかったり、キャリアアップに必要となる経験・スキルを身につけられなかったりする可能性があります。また、その会社が用意しているキャリアパスが自分の目指す姿にマッチしていない場合は、そもそもキャリアアップを実現できる道筋がないといえるでしょう。
転職でキャリアアップすることのメリット・デメリット
次に、転職でキャリアアップを目指すメリット・デメリットを解説します。
メリット
転職する場合は、現在の会社にはないキャリアアップの環境を得られる可能性があります。新たな環境や仕事内容の中で、新しい領域の知識や経験・スキルを身につけることができるでしょう。また、即戦力として自分の経験・スキルや専門性などが評価されれば、年収をアップすることも望めます。さらに、これまで身につけた経験・スキル・知識・手法を転職先に活かせば、より活躍できたり、評価を高めたりすることもできるでしょう。
デメリット
転職先の仕事の進め方を習得したり、新たな人間関係を構築したりすることには時間がかかりますし、企業文化や職場の風土など、新しい環境になじむまで苦労するケースもあります。また、先にも述べたように、前職で築いてきた評価や信頼関係は、転職先ではリセットされるため、再度、積み重ねていくことが必要です。経験・スキルが足りない業界・職種に転職する場合は、年収が下がることもあるでしょう。
キャリアアップが望める職場の具体例は?
第一に、自分が目指すキャリアの実現に必要な経験・スキルを身につけられる仕事に就けることが大前提となります。また、職場の風土・環境や人事制度・社内制度などにも着目しましょう。きちんと成果を評価し、昇進や昇格・昇給などを実現できる風土・環境があるかどうかも大事です。人事制度の面で年功序列を重んじる会社の場合は、成果を出しても管理職などのポジションに就くまで一定の年数がかかるケースもあります。
一方、制度面では、身につけたいスキルを習得できる教育・研修制度があるのか、目指すキャリアを実現できるようなキャリアパスや社内制度があるのかを確認することも重要です。
転職でキャリアアップを実現するためのポイント
キャリアアップ転職を実現するために意識したいポイントを紹介します。
待遇面だけにこだわり過ぎない
キャリアアップを目指す転職では、収入や地位などの待遇面にこだわり過ぎないことが重要です。年収アップのみを追求して後悔する例として、「年収は高いが目標達成のプレッシャーが強く、長く働き続けることができない」などのケースが挙げられます。また、希望の役職に就くことにこだわって管理職に転職したものの、企業文化の違いからギャップを感じ、早期退職に至ったケースもあります。
待遇面だけに焦点を当てるのではなく、自分のキャリアプランを中長期的に考えて、必要な経験・スキルを身につけられるかどうかを重視しましょう。
現在の自分の市場価値を把握する
自分の市場価値を高めるために、大きくステップアップできる企業への転職にチャレンジするケースもあります。しかし、「現状の自分の経験・スキル」と「企業が求めている水準」に大きなギャップがある場合は、転職活動に苦戦する可能性があります。
また、必要な経験・スキルがある場合でも、給与や待遇が良い求人の場合は、より高度なスキルが求められ、競争率も高いものです。自分の市場価値をしっかり把握し、段階的にキャリアアップすることも想定した上で転職先を探しましょう。
「自分のキャリアアップ」のみを志望動機としない
キャリアアップすることを志望動機として伝える場合、「組織にどう貢献できるのか」という視点も合わせて考えておくことがポイントです。自分がキャリアアップするための意欲のみを伝えた場合、「キャリアプランに合わない仕事はしないのでは?」「必要な経験・スキルを身につけたら再度転職するのでは?」など、組織への貢献度や定着性を懸念される可能性があります。
これまでの経験・スキルを棚卸しした上で、「応募企業でどのように活躍してキャリアアップしていきたいのか」「これまでの自分の経験・スキルを活かして、どのような貢献ができるのか」を伝えましょう。
転職でキャリアアップできる人の特徴は?
「なぜキャリアアップしたいのか」「将来どうなりたいのか」という軸を明確にしている人は、転職でキャリアアップを果たしやすいでしょう。キャリアアップの目標を持っているため、それを実現できそうな企業や仕事を選ぶことができますし、現在の自分に足りない経験・スキルがある場合は、それを身につけられる転職先を選ぶことができます。ビジョンと計画性を持って転職先を選び、目標に近づくために必要なことを積み重ねていけることが大事です。
キャリアアップのために転職エージェントを活用するのも方法
先に述べた通り、キャリアアップ転職を実現するには「待遇にこだわり過ぎない」「自分の市場価値を把握する」ということが大事です。しかし、自分一人では、転職市場の相場観をつかんだり、自分の市場価値を理解したりすることは難しいものでしょう。
転職エージェントでは、転職市場に詳しいキャリアアドバイザーが相談に乗ります。さまざまな情報を教えてもらえる上、キャリアの棚卸しのサポートも受けられるため、客観的な自分の市場価値を把握できるでしょう。また、目指すキャリアを実現していくための方法や道筋について、アドバイスをもらうこともできます。キャリアアップを考えている場合は、転職エージェントに相談して、現在のキャリアプランに無理がないか、キャリアップ転職をどのように実現できるのかを確認してみましょう。
面接でキャリアプランを聞かれたときの答え方のポイント【例文あり】
転職活動の際、面接でキャリアプランを聞かれるケースもあります。企業がキャリアプランを聞く理由や、答え方のポイント、回答の例文を紹介するので、参考にしてみましょう。
面接でキャリアプラン聞く理由とは?
企業によってキャリアプランを聞く理由は様々ですが、自社が提供できるキャリアパスと、応募者が望んでいるキャリアパスがどれくらいマッチしているのかを確認することで、入社後の定着性を見極めていることが考えられます。また、キャリアや仕事に対する価値観、こだわりを知ることで、自社のカルチャーにマッチするかどうかも見ているでしょう。さらに、応募者が自分自身のキャリアに真剣に向き合っているかどうかを知り、成長意欲や向上心があるかどうかを推測しているケースもあります。
また、キャリアプランについて聞く際には、「キャリアプランを教えてください」という質問だけでなく、「キャリアアップを考えている理由は何ですか?」「キャリアアップしたい理由は何ですか?」などの質問をされるケースもあるので、そうした点も整理しておくことが大事です。
キャリアプランの答え方で意識したいポイント
自分が目指したい将来像を明確にした上で、「現在の自分がその目標に近づくために、入社後にどのようにしていきたいのか。現在、どのようなことに取り組んでいるのか」を伝えましょう。自分の言葉で具体的に話せるように、整理しておくことが大事です。また、応募企業で実現可能なキャリアプランとすることや、実現することによってどのような貢献ができるのかまで伝えることも意識しましょう。
営業職の回答例文
営業チームを率いるプレイングマネジャーとして、より大きなビジネスチャンスを生みだす力を身につけたいと考えております。
そのため、現職では、営業リーダーとして2名の後輩の育成指導を担当する中、自分自身のマネジメント力を向上させていくことを目指しています。また、社内の取引額において上位20%に入る大口クライアントを4社担当し、大企業に向けた提案力やプロジェクトマネジメントの力を磨いております。
御社に入社後は、まずは営業チームのリーダーとしてメンバーの育成・指導を手がけ、入社3年後を目標に、マネジャーとして業績を牽引するチームを作ることに貢献していきたいと考えております。
事務系職種の回答例文
経理・財務の領域で身につけた知識と専門性を活かし、経営企画を目指したいと考えております。
現職では、財務会計だけではなく、管理会計の知見を身につけたいと考え、上長に相談して、予実管理や収益性分析などの経験もさせてもらいました。また、金融機関からの融資だけではなく、より多様な資金調達の経験を積むため、グループ会社のエクイティファイナンスをサポートし、実践的にその仕組みを学ぶ努力を重ねてきました。
守りを固める経理の知識に加え、攻めに役立つ資金調達などの財務知識や管理会計の基礎力などを活かし、将来的には経営企画として御社の成長に大きく貢献したいと考えております。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2023年06月28日
記事更新日:2024年04月11日 リクルートエージェント編集部