履歴書には志望動機欄が設けられている様式があります。志望動機は、転職活動では必ず聞かれる質問であり、面接までにしっかりとまとめておく必要があります。履歴書の限られたスペースに志望動機を書く場合、どのようなポイントを押さえておくと応募企業に響きやすくなるのでしょうか。そこで、履歴書に記載する志望動機の例文やポイント、注意点について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹が解説します。
職種別の志望動機例文集
職種別の志望動機の例文をご紹介します。リンク先の記事で詳しくご説明しているので、応募職種の記事をご覧ください。なお、応募する企業を示す場合、履歴書で使用する場合は「貴社」、面接で使用する場合は「御社」を選びましょう。
一般事務の志望動機例文
4年間、法律事務所にて一般事務全般を担当し、進捗管理業務のクラウドツール化や紙資料のデジタル化、業務に合わせたカスタマイズ、運用ルールの工夫を行ってきました。こうした工夫で「業務の効率が上がった」と喜ばれることにやりがいを感じています。
この過程でITツールへの興味が湧き、御社(貴社)のユーザビリティが高いクラウドサービスや、それを生み出す柔軟な社風に魅力を感じました。今後、組織の拡大にあたって効率的な事務オペレーションの構築にも携わり、事業の成長に貢献したいと考えております。
営業の志望動機例文
これまでも営業をしてきましたが、私にとっての何よりの喜びは「○○さんなら安心して任せられる」「○○さんに頼んでよかった」と言われることです。しかし、前の会社ではサービスプランの型がある程度決まっており、提案の自由度には制限がありました。オーダーメイドにこだわりを持つ御社(貴社)であれば、お客様により最適なプランを提案し、組み立てることができると考えています。
Webデザイナー・Webディレクターの志望動機例文
私はこれまでWeb制作会社でさまざまな業種のサイト制作を行ってきました。その中でも、ファッション関連のサイトを作ることにやりがいを感じ、この分野に特化して制作していきたいと考えて、御社(貴社)を志望致しました。御社(貴社)のサイトを拝見し、「肩の力を抜いて自然体の自分でいられるように」というコンセプトに強く共感しています。
私はナチュラルテイストのデザインを得意としており、御社(貴社)のコンセプトをビジュアルで実現できるのではないかと考えています。御社(貴社)ブランドをより多くの人に知っていただきたく、デザインのみならず、集客アップのためのコンテンツ企画などにも携わっていきたいと考えています。
ケース別の志望動機例文
経験者、未経験者など、転職ケース別の志望動機の例文と、ポイントについてご紹介します。
経験を活かして転職するケース
同業同職種への転職では、そこでしか実現できないことや、同業他社にはないキーワードに言及できると、志望動機により説得力が増し、意欲も伝わります。
未経験で転職するケース
業界・企業・職種に関してよく調べ、未経験なりに理解を深めておくことが重要です。過去の経験と応募企業との接点や、現職と希望職種の共通項を洗い出し、新たな職種でどのように活かせるかをイメージできるようにしましょう。
管理職に転職するケース
管理職の中途採用の場合、企業が求めるマネジメントスキルはピンポイントであることが多いものです。応募企業でのミッションと自分の経験との接点を探し、どのように貢献できるのかを具体的に示すと良いでしょう。
第二新卒で転職するケース
第二新卒について企業が懸念するのは、「またすぐに辞めてしまうのではないか」という定着性です。その懸念を払拭するには、自分がまだ成長過程にあることを正直に述べながら、長期就労の意欲を示しましょう。
志望動機の基本構成
志望動機がなかなか書けない場合は、基本構成を理解していると書きやすくなります。「経験を活かして転職するケース」でご紹介した志望動機例文を参考にして、3つの構成を解説します。
書き出し
「書き出し」とは、志望動機の冒頭です。最初に自分が大切にしていることや志望のきっかけなどを端的に伝えることで、人物像が掴みやすくなります。
応募企業を志望する理由
書き出しの次は、応募企業を志望する理由を続けて記載します。できるだけ「応募企業ならでは」の志望理由を記載することが理想ですが、難しい場合は「現職企業では実現できないこと」を挙げてから志望理由の順で記載すると、説得力が増します。
入社後に貢献できること
最後は、入社後に貢献できることで締めます。貢献できることは、できれば「転職理由」で伝えた「転職後に実現したいこと」や「自己PR」で伝えた「自身の強み」との一貫性があると、人物像のアウトラインがくっきりします。
企業が志望動機で確認していること
企業は志望動機を通じて、応募者の「志望意欲の高さ」と、「理解度の深さ」を確認しています。企業研究が不十分な場合、入社後にギャップを感じて辞めてしまう可能性があります。また、志望意欲が高くない場合も、入社後に困難が訪れた時にモチベーションを維持することができないため、定着性や活躍可能性に不安を抱かれてしまいます。志望動機を作成する際は、応募する業界や企業研究を行い、自分がやりたいこととのミスマッチがないかしっかりと確認しておきましょう。
履歴書の志望動機の書き方
履歴書の志望動機の書き方を、3つのステップでまとめています。
転職理由を振り返る
転職理由を明確にすることは、転職活動で重要なポイントのひとつです。転職理由が曖昧だと、志望動機もぼんやりしてしまい、採用担当者に的確に伝えることができません。まず、現職(前職)の状況を振り返って、転職によって何を実現したいのかを考えてみましょう。例えば「残業時間が長い」「給料が安い」など、転職の理由が不満だけの場合は、企業を納得させる志望動機になりません。「不満が解消されれば、どの企業でもいいのでは?」と判断されてしまいます。不満はあくまでも転職のきっかけと位置づけ、前向きに言い換えましょう。
【言い換え例】
残業が多い→「より効率的に仕事をし、新しい知識やスキルを得て成長したい」
給料が安い→「成果や実績を正当に評価される環境で働きたい」
上司が強権的→「自分でより良い仕事の進め方を創意工夫していきたい」
企業研究を行う
転職理由が明らかになったら、転職理由を実現できそうな企業を探します。企業のホームページや求人などの情報から、魅力を感じる点や共感できる部分を探りましょう。例えば「効率的に仕事がしたい」という転職理由であれば、「成果重視」「生産性を高める取り組みを行っている」という企業に魅力を感じるでしょう。自分が実現したいことと共通点のある企業を探して、「好きなところ」を掘り下げていきましょう。
志望動機としてまとめる
前述した「志望動機の基本構成」に従って、志望動機の文章をまとめていきます。転職で実現したいことや志望理由を自分の言葉で表現し、入社したらどのように活躍できるのかを具体的にアピールします。これまでの自分の経験・スキルと、求人に記載されている募集要項との共通項を見つけるのがポイントです。募集職種のコアスキルとなるキーワードを探し出し、共通する自分の経験・スキルをピールしましょう。
志望動機作成の注意点
志望動機を作成する際に、気をつけておくことを3つご紹介します。企業研究が不十分な場合は、履歴書は簡潔にまとめておき、面接までに準備することをおすすめします。
転職理由や自己PRとの一貫性を意識する
多くの企業では、応募書類として履歴書と職務経歴書を提出します。企業の採用担当者は、履歴書を確認してから職務経歴書を読み込みますが、履歴書に記載されている志望動機と、職務経歴書に記載されている自己PRの方向性が大きくずれていると、人物像をつかむことができません。志望動機を作成したら、経歴や自己PRとの一貫性があるかどうかを確認しておきましょう。なお、転職理由は応募書類に記載する必要はありませんが、面接では聞かれることの多い項目なので、志望動機との一貫性を意識しておきましょう。
履歴書に記載する場合は簡潔にまとめる
履歴書の志望動機欄はそれほど大きくはないため、読みやすさを考慮すると200~300文字程度が目安です。履歴書の志望動機欄に書ききれず、志望意欲を伝えたい場合は、履歴書は要点のみを箇条書きで記載し、詳細を職務経歴書で伝えたり、「志望動機書」を履歴書とは別に作成したりする方法もあります。
企業研究できていない場合は履歴書に書かない
履歴書には様々なフォーマットがあり、志望動機欄がないものがあります。まだ企業研究が十分でない場合は、無理やり書いて「あまり企業研究ができていないようだ」と評価を下げるよりも、志望動機欄が設置されていない履歴書を使用するという方法があります。その場合は、応募書類で「会って話を聞いてみたい」と採用担当者に感じてもらえるように、職務経歴書の経歴や資格・スキル、自己PRをしっかりとまとめておきましょう。
志望動機に迷ったら転職エージェントに相談を
転職エージェントのキャリアアドバイザーは、応募書類の添削や面接対策も行っています。効果的な志望動機を熟知しているので、もし志望動機の作成に迷ったり、作成した志望動機に不安があったりする場合は、転職エージェントに相談してみましょう。
志望動機は、応募企業に志望意欲を伝える重要な項目です。迷っている場合は転職エージェントに相談し、効果的な志望動機にブラッシュアップしましょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。