30代未経験で転職は厳しい？転職を実現させるポイントや業界・職種を解説

30代の転職は、経験を活かす転職だけでなく「未経験領域にチャレンジする」という選択もあるでしょう。ただし、未経験領域への転職を実現するためには、未経験をカバーするためのアピールや業界・職種選びも重要になります。そこで、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に、30代で未経験領域に転職するためのポイントや注目の業界・職種、転職活動の注意点などについて伺いました。

30代未経験での転職は厳しい？

リクルートエージェントを利用して転職した方の2013年度～2022年度分の転職データを分析したところ、未経験の転職が増加していることが分かりました。

転職先の仕事を業種と職種に分け、経験を活かして転職したかどうかを「同業種×同職種」「同業種×異職種」「異業種×同職種」「異業種×異職種」の4象限に分類し、年代別に変化を見たところ、30～34歳では「異業種×異職種」の転職が35.7％、35～39歳では31.4％という結果になりました。30～34歳では「異業種×異職種」の転職が一番多く、35～39歳でも2番目に多い転職となっています。30代で未経験領域に転職することは、可能であると言えるでしょう。

出典：「異業種×異職種」転職が全体のおよそ4割、過去最多に 業種や職種を越えた「越境転職」が加速（株式会社リクルート）

30代未経験の転職のポイント

30代で未経験業種・職種に応募する場合、同じ求人に経験者も応募していると、職務経歴を比較されて「スキル不足」という印象になる可能性もあります。そのため、応募する仕事で活かせるスキルをアピールしたり、応募する求人の幅を広げたりすると良いでしょう。未経験での転職の5つのポイントをご紹介します。

「ポータブルスキル」をアピールする

業種や職種が変わっても持ち運びができるスキルを「ポータブルスキル」と呼んでいます。例えば「課題遂行力」「マネジメント」などが挙げられますが、ポータブルスキルは業務遂行を通じて磨かれます。未経験業種・職種に応募する場合は、応募する仕事で発揮できるポータブルスキルをアピールすると良いでしょう。

求人を絞り過ぎない

希望条件がいくつもあると、応募できる求人が限られる可能性もあります。中途採用の場合は、即戦力となる経験者が評価される可能性が高いため、選択肢を増やしておくことが重要です。未経験業種・職種の場合は、面接で話を聞いて初めてキャリアの将来性や仕事のやりがいなどの魅力を知ることも多いものです。応募段階ではどうしても譲れない条件のみを設定し、面接で企業から具体的な話を聞くようにしましょう。

在職中の場合は現職で高く評価される経験を積む

30代で未経験業界・職種へ転職するには、現職で実績に裏付けされた「語れる経験」を積むことが大切です。例えば、社内のプロジェクトに主体的に取り組み、創意工夫して成功させて評価されたといったエピソードです。さらに、その経験を活かして、他の取り組みにも応用したという「再現性」も、プラスの評価になるでしょう。

もし、転職活動中に自分の経験不足を感じた場合は、現職で経験を積んだ上で転職活動を再開するのもひとつの方法です。例えば、新人や後輩の育成担当を買って出る、新たなプロジェクトを提案してリーダーを引き受けるなどの経験によって、自分の価値を高めることができるでしょう。

説得力のある「キャリアの軸」を持つ

なぜ転職したいのか、なぜ未経験分野なのかについて、自分と向き合い、理由を明確にしましょう。企業は自社で活躍してくれる人材を採用したいと考えています。「心機一転出直したいから」「今の仕事が嫌だから」という理由だけでは、評価には結びつきにくいでしょう。

未経験業種・職種に転職する場合は、これまでの経験と応募する仕事との共通点をリストアップして、「新たな職場で経験や知識をどのように活かして活躍したいか」という観点を持つことが大事です。

転職市場の相場感を把握する

転職にあたっては、自分の経験年数に対して転職市場が求めるレベルを理解しておくことが大切です。興味を抱いている業界・職種に関する情報収集や、必要な知識の学習を始めるのはもちろん、自分の市場価値を客観視して、どのような企業に応募すればより転職実現に近づけるかを考えてみましょう。

なお、ひとりで転職活動を進めていると、転職市場の相場観が掴みにくいこともあります。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談し、転職市場での経験・スキルの評価や転職の選択肢についてアドバイスを受けるのもお勧めです。実際に求人に応募しながら相場感を探り、キャリアアドバイザーと二人三脚で企業研究を深めていく方法もあるでしょう。

30代の未経験でも転職が実現できそうな業界・職種

未経験で転職を実現できる可能性がある業界・職種の一例をご紹介します。

狙い目は「成長中」の業界

近年の産業変容によって新たなビジネスモデルが次々に誕生しており、成長中の業界では、事業を拡大する過程で様々な経歴を持つ人材を積極的に採用する企業もあります。一例をご紹介します。

Web3.0

Web3.0とは、「ブロックチェーン上で、暗号資産等のトークンを媒体として『価値の共創・保有・交換』を行う経済」（トークン経済）と経済産業省が定義しています。ブロックチェーンやNFTのスペシャリストだけでなく、幅広い経験を持つ人材が求められるでしょう。

テック系企業

「HRテック（人事×テクノロジー）」「Finテック（金融×テクノロジー）」など、めざましく進化するITの技術と、既存業界の知見と融合させて新たな商品やサービスを生み出すのが「テック系」企業です。各分野で拡大を続けており、人材の採用も見受けられます。

環境・エネルギー・新素材

近年多くの企業がSDGsに取り組む中で、バイオマス、陸上風力、洋上風力などの再生可能エネルギー業界や、環境負荷の低い新素材などの業界は、急速に成長しています。

経験者が少ない職種

誕生してから年数の浅いビジネスモデルでは、新たな職種が登場するケースがあります。例えば、近年注目されている「サブスクリプション型（継続課金）ビジネス」を提供している企業では、顧客の成功のために積極的にフォローや提案を行うことで自社の利益を生む「カスタマーサクセス」という職種が活躍しています。新しい職種は経験者が少ないと考えられるため、キャリアチェンジの可能性があるでしょう。他にも下記のような職種に注目しても良いでしょう。

これまでの経験と親和性が高い業界・職種

未経験者にも門戸を広げている求人の中には、「できれば経験者を採用したいが、なかなか採用できないため未経験者も募集対象にしている」という企業もあります。関連業界で働いたことがある、似たタイプの商品やサービスを扱ったことがある、IT関連の勉強をして資格を取ったなど、これまでの経験・スキルと親和性が高い業界・職種にチャレンジすることで、未経験者も採用される可能性はあるでしょう。

30代未経験の転職活動の注意点

30代で未経験業界・職種への転職を検討している場合に、気をつけておきたいことを解説します。

待遇は中長期で考える

未経験分野に転職する場合、「キャリアの再出発」となるため、前職より給与水準の高い業界へ移る場合を除いて、収入減になる可能性もあると考えておいた方が良いでしょう。自分にとって優先順位の高い希望条件以外はこだわり過ぎず、妥協点を見いだすことが大切です。

成長性がある業界や企業を選択したり、入社した企業で成果を出したりすることで、中長期的に見ると待遇アップの可能性もあります。現状の条件面だけではなく、その他のメリットも含めて総合的に考えるようにしましょう。

転職活動の長期化も想定する

未経験者歓迎の求人であっても、他の応募者に経験者が含まれていた場合、選考で経験を比較され見送られてしまう可能性があります。そのため、可能な限り応募数を増やして選考に残る機会を作るようにしましょう。そして不採用になっても落ち込まず、前向きにチャレンジする気持ちが大切です。転職活動が長期化する可能性を念頭に、在職中の場合は先に仕事を辞めてしまわず現職で成果を上げながら、じっくり取り組んでいくことが大切です。

家族・パートナーに相談しておく

転職は、育児と仕事の両立や、パートナーの仕事にも影響を与えることがあります。そのため、家族やパートナーがいる場合は、事前に相談しておくと良いでしょう。

特に、未経験分野にチャレンジする場合は、年収が下がる、福利厚生が減るなど、経済面での見通しが変わることも考えられます。事前に相談せずに転職先が決まったところ、思わぬ反対にあったというケースもあります。家族やパートナーとの信頼関係維持のために、事前に相談しておくことを検討しましょう。

30代未経験の転職は転職エージェントに相談を

未経験業界・職種への転職は、自分の経験・スキルがどのくらい通用するか分からず、不安なことも多いものです。転職エージェントに相談すると、転職市場の相場観や効果的なアピール方法など、転職活動で役立つアドバイスを受けられるでしょう。また、自分の経験・スキルが活かせる意外な業界・職種・企業が見つかるかもしれません。転職活動で不明な点や不安がある場合は、転職エージェントに相談しておきましょう。