面接を通過するために、職務経歴をどのようにアピールすれば効果的なのでしょうか。職務経歴の伝え方や面接での回答例、企業は職務経歴をどのような観点で見ているのかについて、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
面接で職務経歴を聞かれたときの答え方
まず面接の場で職務経歴について聞かれたら、次のポイントを意識して答えましょう。
シンプルかつ具体的に答える
アピールしたい経歴が複数あったとしても、あまりたくさんの情報を盛り込みすぎないようにしましょう。応募企業で活かせる経歴をピックアップし、「○○職を○年経験してきました」など、簡潔に伝えます。
加えて、相手企業で活かせる要素を「5W1H」で伝え、具体性を持たせます。「When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれに)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように)」を盛り込むことで伝わりやすくなります。
例えば、営業職であれば「大手企業の顧客に向けて」「業務効率化を実現するシステムを」「チームワークを駆使して提案」といった具体的要素を伝えます。
経験だけでなく、実績や成果も伝える
担当してきた業務内容だけでなく、自身が挙げた実績や成果も伝えましょう。成果をアピールするなら、「○人中でトップの業績」「目標を○%達成」「○%の経費削減に成功」など、具体的な数値を示すと説得力が増します。
また、単に成果を伝えるだけでは「たまたま運が良かったからではないか」「チームのリーダーやメンバーが優れていたからではないか」と思われる可能性もあります。そこで、成果を挙げるに至ったプロセスについては、ストーリーを立てて語れるようにしておきましょう。
その際のポイントはどんな課題意識を持ち、どんな戦略を立て、どんな工夫や行動をしたかを整理して伝えることです。
なお、転職回数が多い人は、次のような内容を語れるように準備しておくことをおすすめします。
●転職を繰り返した理由・目的を前向きな言葉で伝える
●経験業種・職種がバラバラであっても、一貫した「軸」「こだわり」を伝える
●複数企業での経験を経て身につけた幅広い知識・スキルをアピールする
●経験だけでなく「姿勢」「能力」をアピールする
応募先に貢献できそうな経験やスキルを伝える
職務経歴書には、基本的にこれまで所属した企業・部署・担当職務をすべて記載します。しかし、面接の場で「職務経歴について聞かせてください」と問いかけられた場合は、すべてを話すのではなく、強調して伝えたい部分のみを話しましょう。
強調すべき部分とは、先ほども触れたとおり「応募企業で活かせる経験・スキル」です。求人情報をしっかりと読み込んで相手企業が求めている要素をつかみ、それに合致している経験・スキルにフォーカスして話すことでプラス評価につながります。
面接で職務経歴を聞かれたときの回答例
面接で職務経歴を聞かれたらどのように伝えるか、職種別に回答の一例をご紹介します。
営業職
新卒で○○社に入社し、6年間、法人営業の経験を積んできました。主に従業員500~1000名規模の中堅企業を顧客とし、管理部門の業務効率化を支援するITサービスの提案から導入支援までを行っていました。
直近では20社の既存顧客を担当するほか、年間15~20社程度の新規顧客を獲得しています。ただサービスを案内するだけでなく、顧客の経営課題を分析し、経営層に対して解決策を提案する活動に力を入れてきました。その経験は、御社のサービスのコンサルティング営業を務める上でも活かせると考えています。
エンジニア職
プリセールスエンジニアとして約○年、中堅製造業を対象に、サーバ、ネットワーク、セキュリティ、情報系システム等の導入を行ってきました。最大○拠点を結ぶネットワーク構築も経験。プロジェクトリーダーとして、約15名のメンバーマネジメントも担っています。
直近の業務内容は、営業の商談同行から受注後の要件定義、論理設計、物理設計までの上流工程が中心で、サブリーダーに落とし、進捗の管理、収支管理までを行っています。また、進捗状況の報告を受け、開発に遅れが生じている場合は、人員補充など手配を指示することもあります。このような経験を経て、プロジェクト管理手法を身につけてきました。
マーケティング職
化粧品メーカーのマーケティング担当として、20代~30代向けのスキンケアブランドを担当した後、50代向けのスキンケアブランドの立ち上げにあたり、PR戦略を担当しました。新たな顧客層の取り込みに向け、大規模な消費者アンケートを実施し、最適なメディアの選定から商品PRイベントの企画までを行いました。
ターゲット層が抱くスキンケアへの課題意識を抽出し、その声に寄り添ったPR戦略を展開した結果、○○サイトのコスメランキングで年間5位に入るヒット商品を生み出すことができました。近年はSNSマーケティングも活用し、登録会員の200%増も実現しています。
面接で好印象を与える職務経歴の回答ポイント
面接で職務経歴を聞かれた際、どのように答えれば好印象を与えられるのか、ポイントをご紹介します。
具体的なエピソードを伝える
職務経歴書に記載してある内容をそのまま伝えるのではなく、面接担当者が興味を持ちそうなポイントに絞り、具体的なエピソードを語るといいでしょう。
どのように創意工夫したのか、その経験を相手企業でどのように活かそうと考えているかを伝えれば、プラス評価につながりやすくなります。
表情・視線・言葉使い
面接の場では、緊張のあまり早口になってしまう人が多く見られます。「ややゆっくりめ」を意識して話すといいでしょう。また、面接中、終始同じトーンで話すよりも、強調してアピールしたいポイントについては話すスピードをゆるめる、一呼吸おいて話すなど、メリハリをつけるのも効果的です。
緊張していると無表情になったり目が泳いだりもしがちです。アピールしたい場面では、相手としっかり目線を合わせ、真剣な表情で話しましょう。身振り手振りを交えるのも、相手をこちらの話に注目させる効果があります。
話す時間は1分程度
最初に職務経歴の説明をする際には、1分程度の時間に収めるようにしましょう。話が3分、5分…と長引くと相手の集中力が続かなくなり、情報量も多いので印象に残らなくなります。
「これから始まる対話で面接担当者から質問を受け、深く掘り下げてもらう」ことを前提とし、自分から行う最初の説明は「概要」「重要ポイント」だけに絞りましょう。
企業は職務経歴をどのように見ているか
企業は応募者の職務経歴について、どのような観点に注目しているのでしょうか。判断のポイントをご紹介します。
職務経歴と募集職種との関連性
募集職種・ポジションで即戦力となり得る経験・スキルを持っているかを見ています。また、即戦力となるような同業界・同職種の経験がなかったとしても、何らかの関連性や共通点があるかどうかを見ています。
例えば、営業職の場合、扱う製品がまったく異なっていても「顧客層」「営業手法」などが共通していれば、即戦力として評価することもあります。異業界・異職種に応募する場合も、これまでの経歴から「関連性」「共通点」をピックアップして伝えるといいでしょう。
社風になじめるか
自社の仕事の進め方や人材に求める要素と、応募者の仕事に対する姿勢や価値観がマッチしているかどうかを見ています。一例を挙げると、「慎重さよりもスピードを重視する」「指示待ちではなく主体的な行動を求める」「単独行動に走らずチームワークを大切にする」などです。
企業サイトや採用サイトなどを読んで「社風」をつかみ、職務経歴の中でその社風に合うような行動がとれることを伝えるといいでしょう。
活躍してくれそうか
これまでの職務経歴の中で特に「成功体験」に注目し、それを自社でも再現できるかどうかを見極めようとしています。
ただ成果を挙げた実績を伝えるのではなく、「なぜその成果を挙げられたのか」というプロセスを語れるようにしておきましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。