転職活動を無料でサポートする転職エージェント。利用に際して、「断られてしまうのでは」「断られるケースを知りたい」と不安を感じる方もいるようです。そこで、転職エージェントが利用を断るケースがあるのかなどを、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
利用は断られないが、求人を紹介できないケースはある
転職エージェントは、正式には「有料職業紹介事業者」と呼ばれます。有料職業紹介事業とは、厚生労働大臣の許可を受けた民間の職業紹介会社のことです。有料職業紹介事業では、紹介してはならない職業として「港湾運送業務」と「建設業務」が定められています。そのため、港湾運送業務や建設業務の、転職エージェントでは取り扱えない求人は紹介できません。
なお、リクルートエージェントでは、「お申し込みの際の注意」として、取り扱いが少ない求人や取り扱いをしていない求人を明示しています。
特に、職種・業界・エリアなどに特化している転職エージェントの場合は、希望条件によっては求人紹介が難しい可能性があるかもしれません。利用したい転職エージェントが決まっている場合は、ホームページなどを調べて希望する領域の求人を取り扱っているか確認してみましょう。申し込みの際に、特定の領域の求人を希望していることを伝えて回答を待つという方法もあります。
転職エージェントからの求人紹介が難しい可能性があるケース
具体的に、転職エージェントからの求人紹介が難しい可能性がある代表的なケースを2つご紹介します。
希望するエリア・職種・業界が対応範囲外
前述の通り、希望するエリア・職種・業界が転職エージェントの対応範囲外だった場合は、求人を取り扱っていないため紹介は難しくなります。例えば、エンジニアに特化した転職エージェントに、事務職の求人の紹介依頼をするようなケースです。幅広い求人を取り扱っている「大手・総合型」の転職エージェントの場合は対応できますが、特定領域に特化している「中小・特化型」の転職エージェントの場合は、強みを発揮できない領域外の求人紹介は難しいケースもあるでしょう。また、都市部の転職エージェントに地方の求人紹介を依頼した場合も、「サービスエリア外」という理由で求人の紹介が難しいケースもあります。
経験・スキルと希望条件にマッチした求人がない
求職者の経験・スキルと、希望する仕事内容や年収、ポジションなどの条件が大幅に合わない場合も、「希望に沿った求人を紹介できない」という理由で求人紹介が難しい可能性があります。例えば、職歴が短い若手が大手企業のCxOポジションを希望する、募集職種の実務経験も語学力もない中で即戦力人材を求める外資系企業を希望する、などのケースです。
この場合、キャリアアドバイザーから求人がない理由とともに、希望条件の緩和を提案されることもあります。提案を受けて希望条件を見直すことで、マッチする求人が見つかる可能性があるでしょう。
転職エージェントから求人紹介が難しいと言われた時の対処法
転職エージェントから求人紹介が難しいと言われた場合は、原因を探ることが重要です。原因別に対処法をご紹介します。
別の転職エージェントに登録する
希望するエリア・職種・業界が範囲外で求人紹介が難しいと言われた場合は、他の転職エージェントに登録してみましょう。その際は、幅広い求人を取り扱っている「大手・総合型」の転職エージェントに相談するといいでしょう。希望するエリア・職種・業界に特化している転職エージェントを中心に探すのも有効です。
なお、求人紹介が難しいとされた理由が明確でなかった場合も、他の転職エージェントに相談することで、理由が分かる可能性があります。再度チャレンジして、活路を見出しましょう。
希望条件を見直してもう一度依頼する
提示した希望条件を全て満たす求人がなく求人紹介が難しいと言われた場合は、希望条件を見直すことでマッチする求人が見つかる可能性があります。希望条件を「譲れない」と「あれば尚可」の2種類に分類し、優先順位をつけた上で、もう一度同じ転職エージェントに依頼する方法もあります。優先順位をつけられない場合は、転職エージェントに率直にその旨を伝えてアドバイスを求めてもいいでしょう。
転職エージェント以外の方法を使う
転職エージェントによって求人紹介が難しいと判断する理由は様々ですが、もし複数社に相談しても対応してもらえない場合は、他の転職方法を模索するという方法があります。代表的な方法をご紹介します。
転職サイト
求人を数多く掲載しているのが転職サイトです。求人に直接応募できるので、興味を持った求人があれば積極的に応募してみましょう。
ハローワーク
公共職業相談所であるハローワークは、無料で職業紹介や就職支援などをサポートしています。無料で求人を掲載できることから、豊富で多様な求人を探せる点が特徴です。
スカウトサービス
職務経歴や希望条件などを登録しておくと、経歴を見た企業や転職エージェントからスカウトが届くサービスです。自分で求人を探す必要がない点が魅力です。
企業の採用ページ
多くの企業が、自社のホームページに採用情報を掲載しています。希望する企業が決まっている場合は、採用ページから直接応募してもいいでしょう。
ビジネスSNS
スカウトサービス同様に、職務経歴や希望条件などを登録しておくと、企業からメッセージが届きます。カジュアル面談から始まるケースもあります。
転職イベント
複数の企業が合同で出展するのが転職イベントです。様々な企業に一度でリアルな話を聞けるため、情報収集として活用するという方法もあります。
リファラル採用
従業員の紹介で自社にマッチした人材を採用するのがリファラル採用です。人脈を活用して、自分に合ったポジションを募集していないか確認してもいいでしょう。
転職エージェントから求人紹介が難しいと言われないためには?
転職エージェントから求人紹介が難しいと言われないようにするには、自分の希望条件や属性にマッチした転職エージェントを選ぶことが重要です。転職エージェントの選び方と効果的な活用方法をご紹介します。
自分に合ったタイプを選ぶ
前述の通り、幅広い求人を扱うのが「大手・総合型」、専門領域に特化しているのが「中小・特化型」の転職エージェントです。すでに応募する業界・職種・エリアが明らかになっている場合は、「大手・総合型」と自分の方向性に合った「中小・特化型」を選びましょう。未経験領域にチャレンジする場合は、選択肢を増やすために「大手・総合型」を選ぶといいでしょう。
なお、第二新卒や20代の若手、ハイクラス、経営層など、特定のキャリアや年齢層を対象としている転職エージェントもあります。自分の属性とマッチする転職エージェントを選ぶことが重要です。
転職エージェントの強みを見極める
転職エージェントによって強みが異なります。特定の業界・職種・エリアや属性以外にも、業界・職種出身のキャリアドバイザーが在籍している、地域密着型で地場企業に強いパイプがある、丁寧なフォローで入社までサポートするなど、独特の強みを持つ転職エージェントもあります。ホームページを見て強みや特徴を確認してみましょう。
複数の転職エージェントに相談する
複数の転職エージェントに申し込んでおくと、1社に求人紹介が難しいと言われたとしても他の転職エージェントで転職活動を進めることができます。また、複数の転職エージェントを利用すると、キャリアアドバイザーの視点も異なるため多角的なアドバイスを受けられるのもメリットのひとつです。
なお、必要以上に多くの転職エージェントを利用すると、やり取りを負担に感じる可能性もあります。まず、2~3社に申し込んで面談で話を聞いてみて、納得度の高いサービスを見極めると、効率よく転職活動を進めることができるでしょう。
希望条件が妥当か確認する
強みや専門領域が自分にマッチした転職エージェントを選んだとしても、希望条件が高すぎると求人が限られるため転職活動が難航してしまいます。自分の希望条件が転職市場のニーズに合っているのかを、キャリアアドバイザーに相談するといいでしょう。キャリアアドバイザーは、数多くの転職支援実績から転職市場のニーズや採用動向を把握しています。中立的な視点で、適切なアドバイスを得ることができるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。