20代~30代で2回目の転職を考えるとき、「転職を重ねるごとにマイナスイメージを持たれないか?」という不安を抱く人は少なくないようです。2回目の転職は企業にどう捉えられ、選考でどんな点に注目されるのか。また、プラス評価を得るにはどうすればいいのかについて、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
2回目の転職を気にしない企業は増えている
「転職歴」に対する考え方は、業界や企業によって大きく異なります。1~2回の転職でも懸念を抱く企業もあれば、求める経験・スキルさえ持っていれば転職回数をまったく問わない企業もあります。
例えば、IT・Web業界などは人材流動が激しい業界なので、転職回数には寛容である傾向が見られます。転職を重ねることで最新のスキルやノウハウを身につけていれば、むしろプラス評価につながることもあります。
なお、2017年に『リクナビNEXT』が企業の採用担当者を対象に行ったアンケート調査では、「転職歴は何回目くらいから気になるか?」という質問に対して、最も割合が高かった回答は「3回目」(40%)でした。「2回目の転職だと気になる」は8%、「1回目でも気になる」は2%にとどまり、「気にならない」は15%という結果となりました。
時代が進むにつれて、転職は一般的になってきているので、2回目の転職でもそれほど気にしない企業は増えているといっていいでしょう。ただし、企業が納得できる「転職理由」を語れるかどうかで、評価は変わってきます。
2回目の転職と1回目の転職で違うことは?
2回目の転職では、選考において「転職理由」「志望動機」がより注目されます。1回目の転職は、「社会に出て仕事を経験してからの気付きや価値観の変化が転職につながった」というストーリーが納得を得やすいのですが、2回目となると1回目以上に「目的意識」が問われるのです。
1回目の転職と2回目の転職の理由に一貫性が感じられない──例えば「1回目は年収を上げたかった、2回目は社風を大事したい」など、ギャップがある内容を面接で語ると、「キャリア観や目的意識があいまいな人」という印象を与える可能性があります。
2回目の転職は履歴書・職務経歴書で何を見られる?
履歴書・職務経歴書では、まず、1社目と2社目の「在職期間」が注目されるでしょう。特に、2社目となる直近の勤務先での在職期間が、評価や印象を大きく左右します。
2社目で長く経験を積んでいればスキルが身についていると思われますが、数カ月~1年程度などであれば「安易に企業を選んだ」「不満があればすぐ辞めるのではないか」といった懸念を持たれがちです。
もちろん、「事業撤退・縮小」や「仕事内容や待遇が面接時の話とまったく異なっていた」など、会社側の事情や本人に非がない事情などがある場合は理解を得られます。
また、1社目と2社目の「業種・職種の関連性」も見られるポイントです。一つの分野で経験を積んできたのか、あるいはキャリアチェンジを図ったのか。そして、その経験が自社にどうつながるのか。
そこで、採用担当者が「これまでの経験・スキルが自社で活かせる可能性がある」と判断すれば、転職の意図や目的を確認するため面接に招くことになるでしょう。
面接で重視されるのは「退職理由」「志望動機」「経験・スキル」
面接では、1社目・2社目についてそれぞれ「退職理由」「志望動機」「得た経験・スキル」が問われます。
このとき、「退職理由」と「志望動機」に一貫性を持たせることが大切です。「○○がやりたかったが、現職企業ではできないので退職した」と語っておきながら、応募企業を志望した動機が「○○ができる」ではないとしたら、「目的が明確でない」「転職に対して本気ではない」と思われる可能性があります。
しかし、企業がそれ以上に重視するのは、「経験・スキルを活かして自社で活躍できるかどうか」です。2つの会社での在職期間に関わらず、「こんな経験を積み、こんなスキルを身につけた。それを御社でこのように活かせる」という具体的なアピールができれば、プラス評価につながります。
2回目の転職で不採用になりやすい人の特徴とは
2回目の転職活動でなかなか採用に至らない人には、いくつかの特徴があります。これらの傾向を踏まえて選考対策を行ってください。
2社目での在職期間が短い
「行き当たりばったりで転職する人」という印象を持たれがちですので、採用担当者が転職理由を聞いて納得しなければ採用を見送られてしまいます。
なぜ短期間で転職することになったのか自己分析を行い、反省すべき点があれば正直に反省を述べましょう。そして、今回はキャリアについてしっかり考えたこと、相手企業を十分に研究した上で志望したことを伝えてください。
「退職理由」と「志望動機」に一貫性がない
先ほども触れたとおり、退職理由と志望動機にズレがある場合は納得を得られません。退職の理由となった「不満」が応募企業で解消できること、前の会社でやりたくてもできなかったことがきることを、一貫性のあるストーリーで語れるように準備しましょう。
キャリアに対して主体性が感じられない
「これまで2社で経験を積みました」だけで終わってしまい、主体的に取り組んだこと、成果を挙げたこと、学んだことなどを語らない人もいます。
1社目・2社目それぞれについて、どんな活動に力を入れたか、それによってどんな成果を挙げたか、その経験で培ったスキルやノウハウを応募企業でどのように活かしたいと考えているかを語れるようにすることが大切です。
「転職2回」がプラス評価につながった成功例
目的が明確であれば、2回の転職経験がプラス評価され、キャリアップにつながっていくケースもあります。
営業、経理の経験を活かしてM&Aコンサルタントに転職
Aさん(20代後半)の事例をご紹介しましょう。Aさんが新卒で入社したのは保険業界。しかし、「経理を経験したい」という希望がかなわず、営業部門に配属となりました。異動で経理部門に移ることは難しいと判断したAさんは、簿記2級資格を取得し、1年ほどで退職。経理職を「未経験OK」で募集していた人材サービス会社に転職しました。
2社目で約3年、経理・財務および子会社の経営企画も経験した後、「さらにキャリアの幅を広げたい」と、2回目の転職を決意。保険業界の営業として身につけたコミュニケーション力・折衝力、人材業界で得た経理・財務・経営企画の経験を組み合わせてアピールし、M&Aコンサルタントへの転職に成功しました。
大手企業とベンチャーでの経験が買われてスタートアップに転職
Bさん(30代前半)は、新卒で大手メーカーに入社。営業からスタートし、マーケティングやサービス企画などにも携わりました。しかし、細かなマニュアルやルールに縛られる風土に抵抗感を抱き、入社3年目に「スピード感」「自由な裁量」があるITベンチャーに転職しました
その5年後、Bさんは2回目の転職を決意。より成長が期待できるAIサービス分野を目指し、市場から有望視されているスタートアップに転職を果たしました。
そのスタートアップのターゲット顧客は主に大手メーカー。Bさんは1社目の経験から「大手メーカーが抱える課題」「大規模組織の決裁の流れ」などを理解しており、かつ2社目のベンチャーでは「スピード感」「主体的な行動力」「幅広い業務への対応力」を培っていた経験とスキルが評価され、採用に至ったのです。
2回目以降の転職を成功させるポイントまとめ
転職回数が多い場合、次のポイントを押さえて職務経歴書および面接で伝えることで、ネガティブなイメージを払しょくできる可能性があります。
- 転職歴の中で築いてきたキャリアに一貫性がある
- キャリアに一貫性がなくても、応募先で活かせる経験・スキルがある
- 今回の転職の目的が明確であり、採用担当者が納得できる
今後、終身雇用の崩壊や「ジョブ型採用」の拡大などを背景に、転職はさらに一般的になっていくでしょう。転職を繰り返すにしても、中長期でどんなキャリアを築いていきたいのかを考え、そのためにどんな転職をすべきなのかを見極めて動くことが大切です。
そんなキャリアのストーリーをしっかりと語れれば、転職回数の多さでマイナス評価をされることはないでしょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。