転職エージェント トップ > 転職成功ガイド > 転職準備 > 35歳転職限界説を聞くと正直不安。転職するには遅い?キャリアの活かし方を教えてください

35歳転職限界説を聞くと正直不安。転職するには遅い?キャリアの活かし方を教えてください

35歳転職 めんどくさい

コロナ禍を機に自身の働き方を見つめ直し、転職を考え始める人が増えています。一方で「35歳が転職の限界」なのではないかと、不安を抱く声も聞こえてきます。そこで、「35歳以上の転職市場」や、経験・スキルが活かせる転職を実現する方法について、リクルートのHR統括編集長・藤井薫が解説します。

35歳転職限界説って本当?転職するには遅い?

かつて転職市場には「35歳の壁」があると言われていました。しかし、その壁はすでに崩れており、30代後半はもちろん、40代以上での転職も活発化しています。35歳を過ぎて転職活動を始めても、決して手遅れということはありません。キャリアアップや年収アップを果たしている事例も多数あります。

「35歳の壁」崩壊の背景1:構造的な人材不足

この変化にはさまざまな背景があります。一つが、「構造的な人材不足」。リクルートが行った「2021年度下半期 中途採用動向調査」(『リクルートエージェント』利用企業11,749社の回答結果)では、中途採用計画を満たせなかった企業が約8割に達していました。

景気の良し悪しに関わらず、人材不足が続いている状況。こうした環境下で、企業は求める人材要件を変更し、採用対象の幅を広げています。以前は20代を中心に採用を行っていた企業が、30代以上の人材を迎えるケースも増えてきました。

出典:リクルートエージェント 2021年度下半期(2021年10月~2022年3月)中途採用動向調査

「35歳の壁」崩壊の背景2:既存事業の短命化

もう一つの背景が、「既存事業の短命化」です。ビジネス環境の変化のスピードが加速する中、あらゆる業種の企業がビジネスモデルの変革に取り組んでいます。

自動車メーカーが「モビリティサービス」を打ち出したり、飲食業界が「接客」から「体験の提供」へシフトしてデリバリーサービスを強化したりしているのは、象徴的な動きといえるでしょう。事業の変革や拡大に向け、人材要件を変更する企業も増えています。

出典:リクルート「人的資本経営と人材マネジメントに関する人事担当者調査」

特に、新たな分野の事業に進出するにあたっては、自社にない知見・スキルを持つ人材が必要となります。そこで、ビジネスモデルの変革や新規事業推進を担える人材として、プロジェクトマネジメントなどの経験を持つ30代~40代の人材を歓迎。これにより、業界の枠を越えた転職も増えているのです。

出典:リクルート「人的資本経営と人材マネジメントに関する人事担当者調査」

35歳以上の人々が転職を考える理由

一方、働く個人にも目を向けてみましょう。2021年リクルートが実施した「転職検討中・転職活動中の方々にアンケート調査」によれば、「コロナ禍で将来のキャリアを見つめ直した」と回答した人が58.8%に達していました。

コロナ禍で転職活動を開始したきっかけをたずねると、「会社の戦略や方向性に不安を感じた」(35.1%)に次いで、「よりやりがいのある仕事をしたいと思った」(26.7%)という回答が多数。企業に応募する際の重視項目としては、「やりたいことを仕事にできる」が56.3%と最多でした。

転職エージェントへ転職相談に訪れる方々の傾向から見ても、「仕事をする意義」「裁量」を重視するようになっています。「終身雇用」以上に、「終身自在」へ。「やりがいと自己裁量を両立し、「将来にわたり自身を成長させる環境・機会」を求める志向が強くなっていると感じます。

企業が35歳以上の転職者に期待すること

35歳以上を対象とする採用においては、専門知識・スキルやマネジメント経験も重視されますが、近年の傾向としては次の要素を求める傾向が見られます。

変革を推進する力

先ほども触れたとおり、ビジネスモデルの変革や新規事業の創出にあたり、それを推進していく力が求められています。具体的には、課題設定~プランニング~実行までの一連のプロジェクトをリードしていく力です。これまでとは異なるビジネスパートナーやステークホルダーとの関わりも生まれるため、さまざまな人を巻き込む力も欠かせません。

変化に適応していくためには、「指示を待たず主体的に動く」「困難な状況も前向きに受け止め、建設的に考える」「謙虚な姿勢で意見を聴く」といった姿勢も重要です。

「拡大期」のマネジメント力

30代~40代の転職では、大手企業からベンチャー企業へ移るケースも多く見られます。企業の成長ステージは、「草創期」「拡大期」「多様期」「成熟期」などに分かれますが、拡大期から成熟期の企業で経験を積んだ方は、拡大期のベンチャーから「組織整備を担ってほしい」という期待を寄せられます。

例えば「従業員数十人規模から数百人規模へ組織を拡大」「東京で成功したモデルを全国へ展開」「○○業界を対象にしていたサービスを△△業界へも提供」といったプロセスにおいて、これまで「拡大」フェーズを経験してきた人の知見・ノウハウが重宝されるのです。

担当の細分化や専門化が進む中での組織基盤作り、品質の維持・管理などをマネジメントする役割において、ミドル層が活躍しています。

「アンラーニング」の姿勢

これまでに培った経験・スキルを活かす一方で、経験したことがない手法を取り入れたり、新しい環境やカルチャーになじんだりする必要があります。こうした変化に対応するために、これまでの知識や価値観を再定義し、新たに学びほぐす「アンラーニング」が求められています。

経験が豊富であるほど、過去へのプライドという「分厚いコート」を着込んでいる状態。これを脱ぎ去り、衣替えすることをいとわない姿勢が重要です。

35歳で転職する際のキャリアの活かし方

先にも触れたとおり、異業種・異職種・異なる規模・異なる地域への転職の可能性が広がっています。そこで、専門知識やスキルに加え、業種・問わず持ち運べるスキル=「ポータブルスキル」を活かすことで、選択肢が広がります。「仕事の進め方」「人との関わり方」などの観点で自身の経験を因数分解し、「強み」を整理してみましょう。

もう一つ、おすすめしたいのは、「キャリアデザイン」に加え、「ライフデザイン」を意識することです。人生で何を大切にしたいかを考え、それを軸にキャリアを描いてみてください。

ハーバードビジネススクールで使われる言葉に、「Knowing」「Doing」「Being」があります。「Knowing」=転職市場の相場を知る事や自分自身の持ち味を知るなど、知識を付けることは大切ですが、それだけでは頭でっかちになります。「Doing」=実践によって自身の力となり、キャリアの選択肢が広がります。

「無理だろう」とあきらめてブレーキを踏んでしまっている方も多いのですが、可能性を広げる行動を意識してみましょう。未経験の領域に目を向けるほか、最近はテレワーク環境が整っているので、全国の企業で働くことも可能です。

そして、次の道を選ぶとき、「Being」=自身がありたい姿、生き方や価値観などを認識できていれば、「何のために転職するのか」という目的が明確になるでしょう。

ありたい姿を描く、今の転職市場の相場や自分の持ち味を知る、幅広く異なる領域にアクセスする。「Being」「Knowing」「Doing」。その活動の先に、「Becoming」があらわれます。自分も知らなかったワクワクする自分になる。「Becoming」こそ、多くのビジネス経験をお持ちになる35歳以上の方々が、転職活動で味わう醍醐味ともいえます。

35歳以上の転職における不安Q&A

35歳以上で転職にするにあたっては、「未経験でも転職できるのか」「年収はアップできるのか」などの不安を感じる方もいると思います。

未経験者でも転職できるか?

転職のパターンには、「同業種×同職種」「同業種×異職種」「異業種×同職種」「異業種×異職種」があります。2020年度にリクルートエージェントを通じて転職した方々のデータを見ると、「異業種×異職種」への転職が最多で、36.1%となっています。

35歳以上の層を見ても、「異業種×異職種」「同業種×異職種」「異業種×同職種」といった、未経験分野への転職事例は数多く見られます。

業種や職種が異なっても、例えば「プロジェクトマネジメント」「チームビルディング/チームマネジメント」「課題発見・解決」といった経験を活かすことができます。自身の経験を棚卸し「汎用的な強み」を明確にすれば、未経験の業種や職種への転職チャンスが広がります。

年収はアップするか?

35歳以上の転職で、年収アップを果たす事例は増加しています。リクルートが行った、2022年1−3月期の「転職時の賃金変動状況」の調査によると、「前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者数」の割合は32.6%と、過去最高値を更新しました。

転職時に賃金が増加した転職者の内訳を見ると、36歳以上の層の賃金アップも、全体の賃金増加に寄与している事実が見てとれます。あらゆる業界が人材獲得に苦戦している中、求める経験・スキルを持つ人材に対し、企業は年収アップを提示しているのです。

出典:リクルート労働市場レポート「転職時の賃金変動状況」P9より

35歳からの転職をおすすめしたい人とは

「今の仕事に対して没頭できない」
「今の職場で、自分の才能を開花できる機会がない」
「自分の強みは自覚しているが、今の職場では活かすチャンスがない」

このような状況が長く続いているのであれば、一度社外にも目を向けてみてはいかがでしょうか。いきなり転職するのではなく、「副業」というスタイルで新しいチャレンジをしてみる手もあります。

テレワークが普及した現在では、首都圏あるいは海外に住みながら、地方都市のビジネスに参加することも可能です。

業種・職種・地域の壁がどんどん溶けている今なら、自分をより活かせる場所に足を踏み出しやすくなっています。ぜひこの環境を活かして、可能性を探ってみましょう。

株式会社リクルート HR統括編集長 藤井 薫

1988年リクルート入社。以来、人材事業の企画とメディアプロデュースに従事。TECH B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長などを歴任する。2007年からリクルート経営コンピタンス研究所に携わり、14年からリクルートワークス研究所Works兼務。2016年4月、リクナビNEXT編集長就任。2019年4月、HR統括編集長就任。コーポレートコミュニケーション、リサーチ、コンテンツマーケティングなどを兼任。著書に『働く喜び 未来のかたち』(言視舎)。