転職したいと思っても「スキルに自信がない」「転職活動を始める勇気が出ない」「未経験転職がしたいけれど、どうせ無理だろう」などを理由に、一歩を踏み出せない人もいるでしょう。また、慎重に検討しないまま転職することで、「現実は思っていたものと違っていた」などの後悔をするケースもあります。
今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、「転職したい」と思ったときにやっておきたいことや、不安を解消する方法などを解説します。
目次
「転職したい」と思ったとき、やっておきたいこと3つ
まずは、転職したいと思ったときに、3つのやっておきたいことを紹介します。
転職することで不満を解消できるか考える
現在の職場への不満から「転職したい」と衝動的に思うケースは少なくありません。最初に、「何が不満なのか、それを解消できる方法はないか」を考えることが大事です。
例えば「人間関係が悪い」「やりたい仕事と違う」などの場合は、苦手な相手との関係性を構築するためにコミュニケーションを工夫したり、部署異動や自分で手を挙げて興味のあるプロジェクトに参加したりするなどの行動で不満や悩みを解消できるケースがあります。
また「給与・待遇が不満」「ワークライフバランスの環境が不満」などの場合は、現職の昇給制度でどの程度の給与アップが見込めるのか、自分がスキルアップすることで残業を減らせるのかなどを考えてみることも大事です。
一定の期間、現職のまま頑張ってみることで不満を解消できるケースもあるので、まずはその方法がないかを探してみましょう。場合によっては、現職での改善を試みるのが有効なこともあります。
転職で実現したいことを考える
転職する目的を明確にせず、現職への不満のみを理由に転職した場合、ミスマッチな企業を選択して後悔するケースも少なくありません。
現在の職場への不満が転職したい理由の場合でも、そこから「転職先で実現したいこと」「転職する目的」について考えてみることが大事です。
これをもとに「転職先に望む希望条件」が明確になり、今後の転職活動でより納得できる企業を探せるようになるでしょう。
5年後、10年後の自分をイメージしてみる
5年後、10年後などの将来に「なりたい姿」をイメージしてみましょう。長期的なキャリアの目標や、理想のライフスタイル、実現したいライフプランなどを考えてみることが大事です。今の会社ではその実現が難しいと感じた場合は、転職を視野に入れることもできます。
また、「転職しないで現職を続けた場合の10年後の姿」もイメージし、今の会社でどのような働き方をしているのか、どのようなキャリアを築けるのかも考えてみましょう。経験やスキルを積み重ねていく中でやりたい仕事ができるようになったり、給与や待遇、ワークライフバランスなどを納得いくものにできたりする可能性があります。
よくある転職したい理由トップ5を紹介
厚生労働省の調査(※)によれば、「令和4年1年間の転職入職者が前職を辞めた理由(個人的理由)」は、「その他の個人的理由」除くと、男性・女性別に以下の順となっています。
<男性>
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(8.3%)
3位:給料等、収入が少なかった(7.6%)
4位:会社の将来性が不安だった(7.1%)
5位:仕事の内容に興味を持てなかった(4.5%)
<女性>
2位:職場の人間関係が好ましくなかった(10.4%)
3位:給料等、収入が少なかった(6.8%)
4位:仕事の内容に興味を持てなかった(5.9%)
5位:会社の将来性が不安だった(4.4%)
(※)出典:「令和4年雇用動向調査結果の概況」(厚生労働省)
転職して後悔したという人の特徴
勢いで転職した結果、後悔するケースもあります。ここでは、「転職して後悔した」という人の特徴を解説します。
現職への不満のみが転職したい理由になっている
「今の仕事が向いていない・合わない」「職場の人間関係がうまくいっていない」など、現職への不満のみが転職したい理由になっているケースは、転職先に希望することが明確になっていないと言えるでしょう。こうした場合、ミスマッチな転職先を選んでしまうこともあるので、慎重に判断する必要があります。
また、「今の仕事が辛いから、とにかく逃げたい」と思っている場合は、転職後もまた同じような不満を感じ、さらに意図しない転職を繰り返す可能性もあるでしょう。仕事の習得には一定以上の期間がかかるため、数カ月などの短期間で転職を繰り返す場合、経験・スキルを身につけられず、転職するたびにキャリアが思うように重ねられない恐れもあります。
転職で実現したいことを明確にしていない
転職して何を実現したいのか、転職の目的が明確になっていない場合は、ミスマッチな企業を選択したり、転職活動がうまくいかずに長期化したり、焦って希望とは異なる企業に転職したりするケースがあります。
納得のいく転職を実現するためには、転職の目的を明確にし、転職先に希望する条件や期待すること、叶えたいことを洗い出すのが重要です。
勢いで転職したいと考えている
仕事でミスをしたり、人間関係でトラブルがあったりしたことで、感情的になってしまい、勢いで「転職したい」と考えてしまうケースもあります。一時的な感情で会社を辞めた場合、転職活動中や転職後に「やっぱり辞めなければ良かった」と後悔する可能性があるでしょう。
冷静になって、今の状況を客観的に見つめ直し、「本当に転職したいのか」を考えてみることが大事です。
現職のままでも直近のキャリアに期待できる
直近に、自分の希望する部署に異動できそうな場合は、転職しないで経験を積む方法もあります。また、昇級・昇進などの予定を直近に控えている場合は、転職せずにキャリアアップや給与アップできる可能性があるでしょう。
このほか、現職で担当しているプロジェクトで一定以上の成果を挙げられそうな場合なども、プロジェクトを完遂するまで今の仕事を続けることで、転職活動の際によりアピールにつながる材料を得られるケースがあります。
こうした場合は、現職のままでも自分の希望を叶えられる可能性があるので、転職してから後悔するかもしれません。
転職した方がいいと考えられる人とは?転職を検討すべきかどうか判断する方法
転職した方がいいかどうかは、人それぞれの状況や考え方が大きく影響するものです。ここでは、転職を検討すべきかどうかを判断する方法を紹介します。
今の会社で「なりたい自分」を実現できるか
現職のままでは、「5年後、10年後になりたい姿」を実現できない場合は、転職を検討してみるのも方法です。今の会社に対し、「部署異動できる可能性や、自身の希望を叶えられそうなキャリアパスがあるか」「昇級・昇格制度や給与水準、働きやすい制度も含めた福利厚生面などによって、目指すポジションやライフスタイルを実現できるのか」を調べてみましょう。自分のイメージを実現できるかどうか、しっかりと考えてみることがポイントです。
自分の力では解消できない問題があるか
今の仕事や職場環境などにおいて、自分の力では解消できない問題があったなら、このまま働き続けても悩みを解決できる可能性は低いと言えるでしょう。
「人間関係が悪いけれど、ほかの部署に異動することは難しい」「給与水準そのものが低い」「慢性的な人手不足で労働時間が長い」などの場合は、転職を検討してみてもいいかもしれません。
過剰なストレスがかかっていないか
過剰なストレスがかかっていると感じたら、環境を変えることも1つの方法です。「労働時間が長い」「人間関係が悪い」「仕事そのものが向いていない」などで、ストレスが溜まって仕事に行くことが辛い場合は、転職を検討した方がいい可能性があります。
スキル・キャリアに自信がない人が転職を実現するポイント
「スキルに自信がないから、転職は厳しいかも…」「転職活動でアピールできるようなキャリアがない」「今の自分にできる仕事はない気がする」など、転職できるかどうか不安を感じている人もいるでしょう。
こうした場合、自分の経験・スキルの棚卸しをすることが大事です。これまで経験した業務を振り返り、自分の強みや発揮できる力などを探し、どのような領域で活躍・貢献できそうかを考えてみましょう。さらに、転職したい業界・職種に必要なスキルを身につけたり、資格を取得したりするなどでも不安を解消できます。
また、転職エージェントに相談してみるのも1つの方法です。経験・スキルの棚卸しをサポートしてくれますし、現在の自分の市場価値に対し、どのような企業なら転職できる可能性があるのかアドバイスをもらえる場合もあります。
「転職したいけれど何がしたいかわからない」どうすればいい?
「転職先で実現したいこと」「転職の目的」を整理し、どのような職種・仕事ならそれを実現できそうか考えてみると良いでしょう。具体的には、下記のような方法があります。
・自分の経験・スキルを活かして活躍・貢献できそうな仕事を考え、その中で興味を持てる領域を探してみる
・5年後、10年後にどのような自分になっていたいかを考え、それが実現できそうな職種・仕事を探してみる
「自分では整理できない」という場合には、転職エージェントで自己分析のサポートを受ければ、転職の目的を明確化できます。また、転職の目的にマッチする仕事や職種についてアドバイスもしてくれるため、自分にはない視点の新しい選択肢が見つかるでしょう。
「転職したいけど勇気が出ない」よくある理由と対処法
転職したいと思っても、一歩を踏み出す勇気が出ないというケースは少なくありません。しかし、ためらっていることで、転職するタイミングを失って後悔する人もいます。
転職に踏み切る勇気を出せない人によくある理由と対処法を紹介するので、今後の参考にしてみましょう。
転職したいけれど決心がつかない
「転職活動=転職すること」と考えている人もいますが、転職活動をしたからといって、必ず転職しなくてはならないわけではありません。自分にマッチする企業が見つからない場合は、企業に在職中であれば現職にとどまる選択をすることもできることをまず理解しておきましょう。
また、転職活動を定期的に行い、自分の市場価値の確認に役立てている人もいます。転職活動をすることで「自分の市場価値で転職できるのはどのような企業なのか」を知れますし、現職の会社と比較もできます。また、将来実現したいキャリアに対し、今の自分に足りないスキルや経験などを知ることもできるでしょう。
勇気が出ない場合は「自分の可能性を広げるために、まずは転職活動を始めてみる」と考える方法もあります。
転職先が見つからないことが怖い
転職活動を始めてみることで、これまで知らなかった仕事や企業、キャリアの方向性などを発見できるかもしれません。これにより、転職先の選択肢が広がったり、自分では想定していなかった転職先が見つかったりすることはよくあるものです。
また、最初に応募した企業の選考に落ちてしまうことで「本当に転職できるのだろうか」という不安を抱えるケースもありますが、応募書類の改善や応募先企業の選定、面接対策のブラッシュアップなどをしっかりと行えば、内定をもらえる可能性を高められるでしょう。
一方「どこからも内定をもらえなかったら怖い」「自分に価値がないことを知るのが怖い」と考えてしまう人もいますが、内定をもらえなくても自分の価値を冷静に見つめなおす機会と捉えることもできます。むしろ、自分の市場価値を知ることは、今の自分に足りないものを身につけるきっかけとなるでしょう。今後のキャリアをより良いものにするための機会と捉えてみることで「怖い」という気持ちも解消できるかもしれません。
転職先の職場や仕事に馴染めないことが不安
「転職先の職場の人間関係に馴染めるのか」「自分の能力が通用するのか」などの不安を持つ人もいますが、転職活動を始める前から考えても取り越し苦労になると言えます。実際に転職活動を進めてみた結果、自分に合う環境が見つかる可能性もあるでしょう。
転職活動を進める中では、面接で職場の雰囲気や仕事について質問できます。また、選考に関係しない面談の場を設けてもらい、先輩社員などに直接話を聞くこともできます。リアルな情報から自分が働くイメージを持てる企業を選択すると良いでしょう。
今の仕事と転職活動を並行できない気がする
在職中に転職活動を進める場合は、現職の仕事と並行することが必要なため「多忙な中で転職活動を進めていけるのだろうか」「転職活動が長引いたらモチベーションを維持できないかもしれない」などの不安を感じる人も少なくはないでしょう。
しかし、転職活動にかかる一般的な期間は、準備から内定・退職まで含め、3カ月程度が目安とされています。そのうち、応募から内定を得るまでの期間は2カ月程度で、早ければ1カ月で内定を得るケースもあります。この期間を乗り切る意識を持てば、転職活動のモチベーションを維持できるでしょう。
在職中の転職活動に不安を感じている場合は、転職エージェントを活用すると良いでしょう。応募書類の作成や面接対策などのサポートを受けることも可能ですし、応募企業との面接日程の調整なども任せられるので、負担を軽減できるはずです。
転職を何度も繰り返すことになるのが怖い
転職をすでに経験している人に多いケースと言えるでしょう。「転職しても、また転職することになるかもしれない」と不安を感じている場合は、転職に臨む際の準備をしっかりとすることが大事です。
転職の目的や転職先で実現したいことを明確にした上で、企業研究を行いましょう。自分にマッチする企業を選ぶことができるようになれば、転職を繰り返すことにならないはずです。
【初めての転職準備】転職したいと思ったら何から始めればいい?
初めて転職活動をする場合は、「何から始めればいいのかわからない」「転職活動のやり方を知りたい」という人もいるでしょう。転職準備を始める際にやっておきたいことを紹介します。
キャリアの棚卸しと自己分析を行う
まずは、キャリアの棚卸しで、これまでの業務内容から経験・スキルを洗い出し、自分の強みを明確にすることが大事です。また、自己分析を行い、自分が転職先に望むことや転職で実現したいことを明確にしておきましょう。
「どうやって進めればいいのかわからない」という場合は、キャリアの棚卸のやり方や自己分析のやり方を紹介する記事を参考にしてみると良いでしょう。
また、リクルートエージェントでは、無料の自己分析セミナーも開催しているので、自分1人では難しいと感じたら、活用してみることもおすすめです。
情報収集を行い、転職市場の相場観を把握する
転職サイトやハローワークなどで求人情報を調べてみましょう。どのような仕事があるのか、どういった条件で、どのような人材を求めているのかを知ることができます。転職市場の相場観がわかり、転職できる可能性があるかどうかも把握しやすくなるでしょう。
転職エージェントに登録してみる
何から始めればいいかわからない場合は、転職エージェントに登録してみるのもおすすめです。転職エージェントでは、キャリアアドバイザーとの面談で、転職先に求めることを明確にしたり、キャリアの棚卸しのサポートを受けたりすることもできます。また、希望に合う求人を紹介してくれるため、転職市場の相場観の把握や情報収集にも役立つでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。