応募書類でも、面接でも、必ず問われるのが「志望動機」。採否を左右する、重要な項目の一つです。しかし、「何を書けばいいのかわからない」「企業ごとに合わせて書くのが難しい」と悩む人が多いようです。
今回は機械系エンジニアの志望動機例について、「リクルートエージェント」のキャリアアドバイザーが解説。研究・設計職、生産・品質管理職、サービス職にわけてご紹介します。
目次
志望動機で確認しているのは「定着性」「入社後活躍」「意欲」
企業が志望動機から確認しているポイントは、主に「1.定着性(当社に定着し長く働いてくれそうか)」、「2.入社後活躍(強みを活かして活躍してくれそうか)」「3.意欲(当社への入社意欲が高いか)」。この企業が知りたい3つのポイントをうまく盛り込み、志望動機としてまとめるといいでしょう。
それぞれのポイントの考え方とまとめ方はこちら→志望動機・志望理由の書き方と伝え方
それでは、「企業が知りたい3ポイント」で構成した志望動機例を以下にご紹介します。この例では、3つのポイントについてわかりやすく「1つ、2つ」と挙げながら段落を分けてまとめていますが、一つの文章にまとめても、もちろん問題ありません。
【研究・設計職】の志望動機の例文
「コピー機メーカーの機械設計者がFA機器(工場の自動化装置)メーカーに応募する場合」
御社を志望した理由は大きく3つあります。
1つは、成長産業で最先端技術に携わりたいと考えたためです。現職ではOA機器という成熟した産業の製品を担当していたため、あまり技術革新がなく、市場も縮小しているため、会社の研究開発に関する投資額も縮小。予算が年々縮小していく中で、自由度の高い開発や奇抜なアイディアを試すチャレンジがしにくい環境になっていました。
2つ目は、今まで培った「精密機器」の設計スキルが活かせる点です。製品のサイズや単価はやや異なりますが、大量のパーツで構成されている製品の設計である、アクチェータを使って精密な機構、駆動を伴う設計が求められる、という点では現職での経験を活かして御社に貢献できる部分があると考えました。
3つ目は、御社の製造業という枠に留まらず、トータルソリューションを顧客に提供し続けるという姿勢に共感したためです。実は御社の競合に勤めている方の話を伺う機会があったのですが、その方がおっしゃるには、御社のアフターフォローメンテナンスは業界内でも群を抜いている、とのことでした。
私もモノづくりのエンジニアとして、「ユーザーにより長く、より安心して使って欲しい」という思いが強くあり、売り切り型でない顧客第一主義の御社で働いてみたいと思うようになりました。
≪解説≫スキルが重視されるので、2の「入社後活躍」の視点がポイント。今まで培ったどの経験、スキルが活かせるのか、深掘りして伝えましょう。
【生産・品質管理職】の志望動機の例文
「機械部品メーカーの品質管理担当者が、電気電子部品メーカーの品質管理職に応募する場合」
御社を志望した理由は大きく3つあります。
1つは、品質業務のスキル向上が期待できると感じたためです。私が現職で扱っている製品は電子基板が載らない機械部品であるため、サイズや欠損がないかなどの外観検査が中心でした。現職で積める品質業務のスキルに頭打ちを感じ、今回転職を決意いたしましたので、より難易度の高い製品に携われることに魅力を感じました。
2つ目は、私が今までの業務で学んだ「調整力」が活かせる職場であると感じた点です。現職の品質部門は社内では設計・製造・保守、社外ではお客様や協力会社など、非常にさまざまな部門と複雑に関わり合います。それぞれの利害関係やパワーバランスを把握し、全体最適を考えた業務の進め方は、御社でも発揮できるのではと考えます。
3つ目は、御社が顧客の声をしっかり汲んだ製品開発に取り組んでいることです。御社のホームページを拝見し、「ある製品開発プロジェクトが顧客のクレームを受けた品質部門から立ち上がった」という記事を拝見しました。顧客の声を最も知る品質部門が開発部門にフィードバックし、一体となってより良い製品を創っていくというストーリーに感銘を受け、自分も品質エンジニアとしてそんな仕事を体現してみたいと思うようになりました。
≪解説≫生産・品質管理は、たとえ同業界であっても企業によって任されている仕事、範囲が大きく異なるので、スキルの一致は研究・設計職ほどは求められません。3つのポイントをまんべんなくアピールしましょう。なお、理念や思想のマッチングが重視されやすい職種であるため、「5W1H」の観点で自身と応募企業の接点を見つけ、アピールするのもお勧めです。
【サービス職(経験者)】の志望動機の例文
「半導体製造装置のサポートエンジニアが介護医療機器のサポートエンジニアに応募する場合」
御社を志望した理由は大きく3つあります。
1つは、出張が多い現在の働き方が改善できるためです。現職では国内外の出張が年間150日も発生する働き方であるため、もっと家族と一緒に過ごせる時間を作れる職場に移りたいと考えました。御社は全国にサービス拠点を構え、いち早くお客様の元に駆け付けられる体制を整えているため、急な呼び出しや転勤の可能性があることは覚悟しておりますが、家から出社し、家に帰る働き方は実現できると考え志望しました。
2つ目は、「機械いじり」の仕事を続けたいと考えたためです。元々、小さなころから機械いじりが好きで進学も工業高校を志望しました。現職を希望した理由も、見たことないような高額で大きな装置に触れることにやりがいを感じたためです。プライベートでも車やバイクを自分でカスタムするなど、常に機械に触れてきました。業界は変わっても、メンテナンスの仕事であれば御社に貢献できると思い、志望しました。
3つ目は、御社の「一人でも多くの患者と介護者の苦しみを減らしたい」という理念に共感したためです。私の祖父も高齢で介護が必要であるため、母や叔母が交代で毎日病院に通い、祖父の介護を続けています。私自身も介護を手伝った経験があり、その大変さを身をもって知りましたので、御社の理念には自然と共感を覚えました。
≪解説≫顧客と直接やり取りする機会の多いサービス職が軸とすべきは「人柄」。経験者の場合、誠実に業務に対応してきた経験をアピールするといいでしょう。クレーム対応の経験もアピール材料となります。
【サービス職(未経験)】の志望動機の例文
「飲食店スタッフから、サービスエンジニアに応募する場合」
御社を志望した理由は大きく3つあります。1つは、「技術的な仕事に携わりたい」と考えたためです。元々大学の専攻では機械工学を学んでいましたが、学生時代は飲食店のアルバイトに没頭し、今考えれば浅はかだったのですがそのままアルバイト先に就職を決めてしまいました。学生時代の同期がみな技術系の仕事に就き、活躍している話を聞くたびに、「手に職をつけて専門性を身に付けなければ」と危機感を感じるようになり、自分も機械に携わる仕事がしたいと思うようになりました。
2つ目は、飲食店で学んだ接客スキルが活かせると感じた点です。御社の仕事は保守メンテナンスだけでなく、アフターパーツ交換の提案や新機種導入の提案など、接客の場面が多く発生する仕事であると求人情報で拝見しました。私としても顧客対応は得意する分野なので、今後も活かしていきたいと考えております。
3つ目は、御社の「社員は家族」という仲間意識の強い社風に魅力を感じたためです。私は働くことが大好きなので、職場の雰囲気を重視しているのですが、御社のホームページでバーベキューやボーリング大会で盛り上がっている写真を拝見し「本当に仲が良い職場なんだな」ということが伝わってきました。この会社なら自分らしく働けるのでは、と感じております。採用いただいた暁には、私もイベントの幹事を務めてみたいと考えております。
≪解説≫顧客と直接やり取りする機会の多いサービス職は、コミュニケーション力や誠実さが求められます。未経験の場合はこれらをメインにアピールしつつ、新しい仕事への意欲を示しましょう。
モノづくりエンジニアの志望動機の効果的な書き方・伝え方
モノづくりの工程は、研究・開発から始まり、設計を経て、生産しながら品質管理を行い、そして世に出たものをサービス担当がフォローする、という流れになりますが、上流工程であればあるほどスキルが重視され、顧客との接点が増える下流に行けば行くほど、人物面が重視される傾向にあります。志望動機を構成する際、そして面接でアピールする際には、重視される点を厚めに伝えるといいでしょう。
すなわち研究開発や設計職は、スキル面のアピールを前面に押し出し、サポートエンジニアなどのサービス職は、コミュニケーション力をアピールできるエピソードを入れ込み、面接では明るくハキハキと伝えることを意識しましょう。生産・品質管理は両側面が見られるため、スキル面、人物面をバランスよく盛り込みましょう。
ただ、採用背景によっては、重視する項目が変化する可能性はあります。例えば、スキル重視の研究・設計であっても、業績好調を背景に増員を考えている場合は、若手育成の観点でポテンシャル採用を行う場合もありますし、未経験者にも門戸を開いているサービス職であっても、主軸となる人材が辞めてしまい即戦力がほしいというケースもあります。採用背景をつかんでアピール方法を考えることが大切であり、キャリアアドバイザーに是非確認してほしいポイントです。