転職で重要になるのが自己PRです。選考に通過するために、自己PRについて「どうすれば受かる内容にできるのか」「応募書類の書き方や面接で評価される伝え方がわからない」と悩んでいる人もいるでしょう。
今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、書類選考に通過する自己PRの書き方や、面接に受かる伝え方のポイントについて伺いました。自己PRの例文やテンプレートからポイントを解説します。
目次
自己PRを3ステップで作れるテンプレート
自己PRのまとめ方に悩んだら、テンプレートに沿って考えると作成しやすくなります。3つのステップに従って、自己PRを作っていきましょう。
(1)結論となる「強み」
冒頭で端的に強みを伝えます。最初にエピソードを言ってから強みを伝えるよりも、採用担当者が自己PRを理解しやすくなります。
(2)根拠となる「具体的なエピソード」
強みを伝えてからエピソードを続けると、イメージがしやすくなります。エピソードはできるだけ具体的に伝え、実績や効果は数値を交えるといいでしょう。
例:「現職(前職)では○○の業務において、○○に取り組む経験をしました。その際、○○が課題であると考え、○○や○○などの工夫をしました。その結果、営業目標をXX%達成できました」
(3)強みを活かして「貢献・活躍できること」
最後に、強みが応募企業でどのように活かせるのか、どのように貢献できるのかをまとめます。採用担当者が、入社後の活躍イメージを描けるように伝えましょう。
職種別の自己PR例文
職種別の自己PRとして、営業職、事務職、技術職の例文を紹介します。
営業職の自己PR例文
私の強みは計画性だと考えております。
現職では、大手企業向けソフトウェア営業を担当し、ソフトウェアベンダーとのパートナーシップを構築した後、中堅企業向けの営業も担当することになりました。顧客対応の質を低下させないことが課題と考え、中堅企業向けの体制として複数の営業協力会社とアライアンス体制を構築し、私自身は大手向けの営業に注力できる環境を作ることにしました。各社の顧客対応の質を平準化するために自ら勉強会の開催も行い、安定的に業績を挙げられるようになった結果、前年比売上120%超を達成、新規開拓社数はアライアンスの効果で前年比2倍を達成できました。
この経験を強みとし、貴社に入社後は中長期目線の計画策定力を活かして安定的・継続的な業績向上に貢献していきたいと考えております。
事務職の自己PR例文
私の強みは、会社への貢献を考えて多様な業務に対応する柔軟性です。
現職では、総務として設備・機器・備品・文書管理などを担当していましたが、IT担当者の退職に伴い、管理部門へのRPA導入プロジェクトも経験しました。RPAベンダーからレクチャーを受けて学び、未経験からIT知識を習得。事業部門のエンジニアにサポートしてもらいながら導入に向かい、自らマニュアルの作成も行いました。導入後は、経理部門全体の業務時間を月○時間削減できたことが評価され、正式な社内IT担当者として他部門への導入も任されました。
この経験を強みとし、貴社に入社後は、未経験の業務でも柔軟に対応しながら、組織に役立てるように力を発揮していきたいと考えております。
技術職の自己PR例文
私の強みは、先を見据えた計画力と実行力だと考えております。
現職では、ITサービスを展開する事業会社のエンジニアとして、大手企業向けサービスの提供や将来的な海外展開も見据え、ISMS認証を取得する必要性を提案して責任者となりました。外部のコンサルタントとも協業しながら、情報資産の洗い出し、リスクアセスメント、対応策の策定、従業員教育などのロードマップの作成などを計画的に実行。また、取得後の業務負荷を想定し、現実的な運用体制の構築も進めました。
その結果、経営層の要望通り、約9カ月で認証を取得できました。納期内のゴール達成と、導入後のスムーズな運用が評価され、社内表彰も受けました。
この経験を強みとし、貴社に入社後は、目の前のゴールの先を見据えた計画力と実行力を発揮し、今後の事業展開に貢献していきたいと考えております。
自己PRの書き方の3つのポイント
自己PRを書く際に、押さえておきたいポイントを解説します。
アピールする強みは1つに絞る
自己PRに複数のアピールポイントを盛り込むと、一つひとつの情報量が少なくなるため、強みの根拠が伝わりにくくなってしまいます。かといって情報量を増やすと、伝えたいことが散漫になってしまいます。
企業の求める人物像と自分の強みを照らし合わせ、最も活躍・貢献できるイメージが伝わる自己PRに絞ることがポイントです。アピールポイントを複数伝えたい場合は、箇条書きにして簡潔に表現し、具体的なエピソードなどは職務経歴書で補足すると良いでしょう。
客観的な根拠となる数字や成果を盛り込む
エピソードでは、強みの裏付けとなる具体的な数字や成果を盛り込むことがポイントです。キャリアの棚卸しや自己分析をした際に、書き出したことから数字や成果を探してみると良いでしょう。また、携わったプロジェクトの規模感や実績、周囲から評価された点など、客観的事実を書くことで説得力を増すことができます。
応募企業との接点を意識する
求人に記載されている「求める人物像」や「仕事内容」を確認し、自分の強みが活かせそうな接点を意識することが重要です。他にも、応募企業の企業理念やミッション・ビジョン・バリュー、仕事の進め方などと重なるエピソードを盛り込んでも良いでしょう。企業文化との相性の良さを伝えたり、チームワークや個人成果主義などの職場で求められることにマッチしそうな内容を伝えたりすることで、入社後に働くイメージを想像してもらいやすくなります。
なお、未経験の業界・職種に応募する場合も、応募企業の業界や募集している職種で活かせるような強みを探しましょう。
自分の強みが見つからない場合
自分の強みが見つからず、なかなか自己PRを作れない場合の方法をご紹介します。特にキャリアの棚卸しは、自己PRだけでなく職務経歴書の作成にも有効です。転職活動を始める際は、必ず自己のキャリアを洗い出しておきましょう。
自分のキャリアを棚卸しする
これまでの経験・スキル・実績を時系列で振り返り、自分のキャリアの棚卸しをしましょう。携わった業務、プロジェクトに加え、上司や顧客などから客観的に評価されたことや自分が得意とすることを書き出し、自分の強みを洗い出していきます。また、強みの根拠となる経験・実績なども具体的に書き出し、関連するエピソードも振り返っておくと良いでしょう。
強みを言語化する
キャリアの棚卸しで洗い出した自分の得意分野・強みを言語化します。いいキーワードが浮かばない場合は、自分に合った強みを一覧から探してみましょう。
自分に関わる力
他人に関わる力
課題に対する力
エピソードをまとめる
強みが明らかになったら、その根拠となるエピソードをまとめましょう。応募企業の採用担当者がイメージしやすいように、専門用語・業界用語は避け、自分なりに工夫した点を分かりやすくまとめます。成果や実績は、できるだけ数値を交えて伝えることで、説得力が増すでしょう。数値で表せない場合は、上司や顧客の声として評価を伝えることも有効です。
履歴書の自己PRの注意点
履歴書に記載する自己PRの注意点をまとめています。自己PR欄がない履歴書のフォーマットもあるので、「履歴書用に短くまとめることができない…」と悩んでいる場合は、自己PR欄がない履歴書を使用し、自己PRは職務経歴書に記載するという方法もあります。
200〜300文字程度を目安とする
履歴書の自己PRの記入欄はスペースが限られているので、まず、スペースに余裕のある職務経歴書に記載する自己PRを作成し、特に伝えたいことを抜粋したサマリ版を履歴書に記載します。履歴書の自己PR欄の文字数の目安は、200〜300文字程度です。
差別化を意識する
「調整能力がある」「チャレンジ精神がある」などの曖昧な表現では、ほかの応募者と差別化しにくいため、より自分らしさが伝わる表現を意識することがポイントです。採用担当者が応募書類を目にしたときに、「会って話を聞いてみたい」と感じさせる自己PRにするために、例えば「部署をまたいでプロジェクトを推進する調整能力」「目的達成した後にも、さらなる成長・改善を目指すチャレンジ精神」など、具体的かつ端的に強みを表しましょう。
面接の自己PRの注意点
面接でより効果的な自己PRをするためのポイントを紹介します。
1〜3分以内を目安とする
応募書類に書いたことを、面接で掘り下げて聞くのが一般的です。自己PRの回答も基本的には書類と同じ内容にしましょう。「1分以内」「3分で」などと時間目安を設けるケースがあるので、1分程度で端的に伝えるパターンと、3分程度でしっかりと伝えるパターンを準備しておくと安心です。
採用担当者は、応募者の回答後に掘り下げて聞きたいことを再度質問するので、全てを話しきろうとするのではなく、要点だけ伝わるようにすることが大切です。
事前に練習しておく
せっかく書類選考を通過したのに、面接の準備が不十分で不採用となってしまうのはもったいないことです。面接でスムーズに話すことができるように、事前に口に出して練習しておきましょう。
自分ではきちんと話ができていると思っていても、採用担当者にうまく伝わっていないケースは多いものです。鏡の前で練習するか、練習風景を動画で撮影し、話している内容が適切か客観的に確認しましょう。また、話すスピードだけでなく、話し方や声のトーン、表情なども確認し、好印象を与えられるように改善することがポイントです。
事前練習をしておくと、面接に余裕が生まれます。相手の反応を見ながら話すスピードなどにも注意し、意図が伝わっているかを確認しながら伝える意識を持つと良いでしょう。
他の質問との一貫性と役割の違いを理解しておく
面接で必ず聞かれる質問は、自己PRの他に「転職理由」や「志望動機」が挙げられます。転職理由や志望動機で伝えた「入社後に実現したいこと」が、自己PRの強みや「入社後に貢献できること」と大きく異なる場合、一貫性が失われてしまいます。また、面接の冒頭では「自己紹介」を聞かれます。自己PRと自己紹介の違いを理解しておかないと、人物像がうまく伝わらない可能性があります。
面接に臨む前に、面接で聞かれる質問と、その回答の一貫性や役割の違いを理解し、それぞれで話す要素をきちんと考えておくことが大切です。
迷ったら転職エージェントに相談を
「自己分析が苦手」「キャリアの棚卸しのやり方がわからない」など、どのようなことを自己PRすればいいのかわからない場合は、転職エージェントを活用するのも一つの方法です。転職エージェントを活用すると、キャリアの棚卸しや企業研究のサポートだけでなく、応募企業にアピールできる強みや自己PRの内容のアドバイスも受けることができます。書類作成や面接対策のサポートも行っているので、的確に強みをアピールできるようになれば、書類選考や面接にも受かりやすくなるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2022年12月24日
記事更新日:2023年6月30日 リクルートエージェント編集部