
派遣社員として働いた期間がある人の中には、転職の際に履歴書に職歴として派遣の経験を書こうとしても、書き方が分からず、困惑している人もいるのではないでしょうか。「派遣元や派遣先をどのように記載すればよいのか」「複数の派遣先に勤務したため、職歴欄には書ききれない」など、その悩みは各ケースで異なるでしょう。
ここでは、派遣の職歴の書き方を、社会保険労務士の岡佳伸氏、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が、具体例を交えて解説します。
履歴書の書き方は「派遣元」「派遣先への就業」「契約期間満了につき退職」
派遣社員として働いた経験は「職歴」となるため、履歴書に記載しましょう。記載しなかった場合、派遣社員として経験してきたことの経験・スキルをアピールできない上に、ブランク期間とみなされかねません。経歴詐称と判断される可能性もあるでしょう。
派遣社員の経験を記載する際は、「派遣元」の会社名と、働いていた「派遣先」の会社を記載しましょう。まず「派遣元」の会社を書き、次の行に「派遣先」の会社名を書きます。また、派遣先で配属された「部署名」と、担当した「業務内容」はさらに次の行に記載します。

働き始めは「入社」ではなく「登録」と記載する
正社員は入社して働き始めますが、派遣社員の場合、「入社」という言葉は使いません。「登録型派遣」で働く場合は、派遣社員は派遣元に登録後、就業開始時に派遣契約を締結します。したがって、履歴書にも「入社」ではなく「登録」という言葉を使います。また、派遣先で働いている期間も、雇用契約を結んでいる相手は派遣元の会社であり、やはり「入社」ではありません。派遣先で働いていたことについては、「就業」という言葉を使いましょう。
働き終わりは「登録解除」と書かなくてもよい
原則として、派遣社員は契約満了まで働くため、契約期間を終えて退職した場合は、「派遣期間満了につき退職」と記載しましょう。契約途中に自己都合で退職した場合は、「一身上の都合により退職」と記載します。
派遣の経歴をアピールするための書き方
派遣の経歴を効果的にアピールするための履歴書の書き方を解説します。
アピールしたい業務内容以外は簡略化する
アピールしたい派遣先や業務内容にスペースを割き、それ以外の派遣先や業務内容については、簡略化しましょう。アピールにつながる派遣先や業務内容は、応募企業が求める人材要件に合致するスキルや経験と考えるとよいでしょう。秘書検定や簿記、TOEIC ®など、スキルを証明できる免許や資格を保有している場合は、「免許・資格」欄に記載することでも、アピールにつなげることができるでしょう。
※ TOEICはETSの登録商標です。このウェブサイトはETSの検討を受けまたはその承認を得たものではありません。
正社員登用や期間延長などで信頼性を示す
派遣社員から正社員へと登用された経験や、派遣期間を延長された経験なども、長期にわたって働いた実績や派遣先からの信頼を示すことにつながり、好印象を与えることができるでしょう。また、「中途入社社員に対する初期業務の導入研修を担当」などのように、派遣先企業から一定の業務を任されていたことが伝わる業務経験にも、信頼度が増す効果が期待できるでしょう。
「免許・資格」欄でもスキルがアピールできる
前述のとおり、「免許・資格」欄に保有している資格を記載するのも効果的でしょう。その際、応募先に関連性の高い免許・資格を優先的に記載したり、「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」欄を併用して、免許・資格を取得した理由などを記載したりすると、より一層の効果が期待できるかもしれません。
派遣の経験が多い場合・少ない場合の書き方
派遣の経験が多い場合と少ない場合の書き方についてケース別に紹介します。
- 派遣元は1つだが「派遣先が複数」のケース
- 「派遣元も派遣先も複数」の経験をしたケース
- 「派遣元も派遣先も1つだけ」のケース
- 「短期・単発など派遣の経験が多いケース
- 「派遣社員から直接雇用」になったケース
- 守秘義務のある派遣先での勤務があるケース
派遣元は1つだが「派遣先が複数」のケース

1行目に「派遣元」の会社名を記入し、2行目以降に各「派遣先」の会社名と「職種名」を記入する方法があります。スペースに余裕があれば、契約終了年月も記載しましょう。さらに余裕がある場合は、派遣先で配属された部署名、業務内容も追加するとよいでしょう。
「派遣元も派遣先も複数」の経験をしたケース

複数の「派遣元」「派遣先」を経験した場合は、「派遣元」ごとにまとめまると、わかりやすくなるでしょう。前出の【派遣元は1つだが「派遣先が複数」のケース】の書き方を参考に、登録した派遣元での派遣先や職種名を記載していきます。
※派遣元・派遣先を書ききれないケース

派遣元や派遣先がスペースに書ききれない場合は、「派遣元」の会社で勤務を開始した年月と退職年月を記入し、詳細は職務経歴書に記載する方法があります。「※詳細は職務経歴書に記載しております」と書き添えておくと親切です。
「派遣元も派遣先も1つだけ」のケース

派遣元も派遣先も1つのみで、職歴欄のスペースに余裕がある場合は、業務内容も記載する方法があります。その際、応募企業の人材要件に合致する業務内容を優先的に記載してアピールする方法もあります。
短期・単発などの派遣の経験が多いケース

1日単位、1週間単位といった具合に短期や単発の派遣アルバイトを経験している場合、一般的に職歴として履歴書に記載する必要はありませんが、何も記載せずにいると、「ブランクがある」と思われてしまう可能性があります。職歴として履歴書に記載する際には、「派遣元」「派遣先」の会社名に続いて、「短期・単発の○○(仕事内容)を複数経験」といった要領でまとめるとよいでしょう。
派遣社員から直接雇用になったケース

2015年に改正された労働者派遣法により、同じ組織単位(事業所)で3年を超えて勤務する場合、派遣元または派遣先が直接雇用の申し入れを行う必要があると定められました 。そのため、3年勤務した後に正社員・契約社員として直接雇用されるケースがあります。
このようなケースでは、派遣社員としての就業歴と担当した業務、派遣期間満了により退職した年月を記載し、行を改めて「正社員(あるいは契約社員)として入社」といった要領で記載するとよいでしょう。現在も勤務している場合は、最後に「現在に至る」と記載します。
守秘義務のある派遣先での勤務があるケース

派遣先の企業の中には、履歴書に業務内容や社名を記載することを禁じている企業もあります。派遣元と派遣先が結ぶ秘密保持(守秘義務)契約などに、そうした要項が含まれていることがあるためです。したがって、履歴書への記載に際して懸念がある場合は、派遣元の担当者に確認しましょう。
守秘義務があることが確認された場合、履歴書には「某○○(派遣先の業種)会社にて、営業事務として就業。業務内容は守秘義務の関係で記載できません」などと記載します。面接の場で詳細を話すことができない場合も、その旨を伝えるとよいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。