地方で転職活動を行う場合や、U/Iターンなどで地方転職を目指す際に「転職エージェントを活用できるのだろうか」「どのような転職エージェントを選ぶと良いのか」と考える人もいるでしょう。今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、地方転職に強いエージェントの特徴や選び方、上手に活用する方法などを伺いました。
地方転職に強い転職エージェントは2タイプある
転職エージェントには求人情報が都市部に偏っているケースもあります。地方転職を目指す場合は、地方の情報にも強いエージェントを選ぶと良いでしょう。
地方転職の相談ができるエージェントには、全国でサービスを展開する「全国・総合型」のエージェントと、地元の地域に絞ってサービスを展開する「地方特化型」のエージェントがあります。以降でそれぞれの違いや特徴を紹介します。
全国・総合型の転職エージェントと地方特化型の転職エージェントの違い
タイプ | サービス展開地域 | 保有する情報の特徴 | 利便性 | 地方在住でも利用可能か |
全国・総合型転職エージェント | 全国各地 | 求人情報の保有数が多い。総合的にさまざまな業界・職種の求人情報を網羅している | 近くに拠点がなくてもオンラインで対応してくれる | ○ |
地方特化型転職エージェント | 特定の地域 | 地域密着型の独自の情報網がある | 地方在住の場合、地元エリアに拠点があると通いやすい | ○ |
全国・総合型の転職エージェントの特徴
全国・総合型の場合は、全国各地に拠点を持ち、各拠点地域の情報も持っています。大手企業のため、求人情報の保有数が多く、U/Iターン転職を専門とするキャリアアドバイザーが相談に乗るケースもあります。
また、総合的に業界・職種を網羅しているため、求人情報がバラエティに富んでいる点も特徴です。求人の幅が広いため、自分の希望に合う仕事や企業を探しやすく、選択肢も増えるでしょう。
全国の拠点で共通の転職サポートを提供し、その内容も充実しているため、自己分析から企業探し、書類作成、面接対策までサポートしてもらえます。昨今はオンラインでの面談などにも対応することが多く、近場に拠点がなくても相談に乗ってもらえるでしょう。また、U/Iターン転職を目指す場合、地方の企業の面接をオンラインなどで設定してもらうことも可能です。
地方特化型の転職エージェントの特徴
地方特化型の場合は、拠点のある特定の地域でサービスを展開しており、地域に特化した情報を持っている点が特徴です。地方の企業には、全国的に求人情報を出さないケースもあるため、地方特化型の転職エージェントが独自の求人情報を持っていることもあります。
また、地元の企業の動向や年収などの相場観も熟知している点や、土地勘がある点なども特徴でしょう。ただし、企業規模が小さな転職エージェントもあり、サポート体制がそれぞれ違うため、各種転職サポートが充実していないケースもあります。
地方在住で転職活動を行う場合、求職者の地元エリアに拠点があれば転職エージェントのもとに通いやすいでしょう。一方、U/Iターン転職を目指す場合は、直接訪問して相談することが難しいと言えます。また、求人情報を近隣地域のみなどに限定公開している地方企業を紹介された場合は、オンライン面接などに対応していないケースもあるでしょう。
地方転職は厳しい?転職エージェントを使うメリット
地方転職の市場状況と、転職エージェントを使うメリットを紹介します。
地方転職の市場状況が厳しい理由
地方は都市部と比較すると企業数そのものが少ないため、地方転職の市場も圧倒的に求人数が少ないという状況があります。また、都市部よりも業界・職種などの選択肢が限られやすい上、都市部とは物価や最低賃金の相場なども違うため、給与や待遇などで納得できる条件を探しにくいでしょう。
特に、U/Iターン転職の場合、地方の転職事情がわからず、相場観もわかりにくいので、転職先に希望する条件と募集要件の擦り合わせがしにくいと言えます。また、土地勘などもないために、勤務先までの通勤時間や交通事情を把握できていないため、自分で通える企業なのかを判断することが難しいでしょう。
地方転職で転職エージェントを使うメリット
地方に強い転職エージェントを使うメリットとしては、まず「地方の求人情報を収集しやすい」という点が挙げられます。転職サイトには掲載されていない独自の求人を紹介してくれる可能性もあるでしょう。
また、転職エージェントは地方転職の相場観や交通事情なども把握しているため、希望条件にマッチし、通勤可能な企業の求人を探しやすいと言えます。希望する地方・地域において盛んな産業・業界なども教えてもらえるため、応募企業の選択肢をより広げることができるでしょう。
さらに、企業の事情や求める人物像なども把握した上で、求職者の経験・実績・スキルによりマッチする企業を紹介してくれるため、転職成功の確率を高めることもできます。それぞれの企業の社風や働き方なども把握しているため、より具体的に実態を知ることができるでしょう。
転職活動を進めていく中では、キャリアの棚卸しから企業探し、書類作成、面接日程の調整、面接対策などのサポートを受けられます。地方転職では、転居や各種手続きなどの生活基盤を整える準備などを並行することも必要なため、転職サポートを受けた方がよりスムーズに進めやすいでしょう。
地方転職を成功に導く転職エージェントの選び方
地方転職を目指す際、転職エージェントを選ぶポイントは以下の3つです。
1.求人情報をたくさん持っている
2.転職活動におけるさまざまなサポートをしてくれる
3.面接設定や内定後の動き方などにも柔軟に対応してくれる
以降でそれぞれについて解説するので、転職エージェント選びの参考にしてみましょう。
1.求人情報をたくさん持っている
先にも述べたように、地方転職は求人数そのものが都市部より少ないため、より多くの求人情報を持っている転職エージェントなら選択肢の幅を広げることができます。幅広い業界や職種の求人を紹介してもらうことで、自分の視点とはまた違う転職先を見つけられる可能性があります。また、多くの求人情報を得る中で、地方における転職市場の相場観を理解でき、希望条件にも優先順位をつけやすくなるでしょう。
2.転職活動におけるさまざまなサポートをしてくれる
自己分析、企業探し、応募書類作成、面接対策、面接日程調整、内定後の手続きや企業との条件擦り合わせなど、転職活動のさまざまな局面をサポートしてもらえることも、転職エージェントを選ぶ際の大事なポイントとなります。
自己分析や企業研究などにおける転職サポートを受けることによって、転職先に求める条件を明確にでき、納得できる企業を探しやすくなるでしょう。また、応募書類や面接対策にも客観的なアドバイスをもらうことができるため、より自分をアピールできるようになり、採用の確率を高められます。
特に在職中の転職活動は、現職の業務と並行するために多忙となります。転職エージェントのサポートを受けた方がスムーズに準備を進められ、内定までのスピードも早くなるでしょう。また、内定後の動き方や、転居の準備・各種手続きなどの注意点を教えてもらうことで、今後のスケジュールを立てやすくなる点もメリットです。
3.面接設定や内定後の動き方などにも柔軟に対応してくれる
U/Iターンで地方転職する場合は、面接日程の調整やオンライン面接の希望などにも柔軟に対応してもらえることが大事です。現地を訪問する際には、時間も交通費も掛かってしまうので、こうした点にも注意しましょう。
また、内定後には引越しなども必要となるため、入社日を決める際には、内定先の企業との間に入って交渉してもらえることもポイントです。
地方転職で、転職エージェントを上手に使うコツ
転職エージェントを活用する際には、転職先に対する自分の希望条件や考え、地方転職を目指す背景などをキャリアドバイザーに伝え、しっかりコミュニケーションを取ることが大事です。熱意や意欲が高い人はより応援してもらいやすいものなので、自分の思いを伝えて理解してもらいましょう。また、転職サポートをどんどん利用し、応募書類や面接で話すことなどをよりアピールできる内容へと改善していくこともポイントです。アドバイスをもらったら素直に受け入れ、改善に役立てる意識を持つことで、よりブラッシュアップしていくことができるでしょう。
転職エージェントに興味のない企業を紹介されたら?
希望条件に合わない企業や職種を紹介された場合、意図や理由、背景などを聞いてみることが大事です。最初から否定せず、一度話を聞いてみてから判断することで、自分にとっての選択肢を広げることができます。地方転職は、都市部の転職よりさらに求人数が限られるため、より強くその意識を持つことが必要でしょう。
どうしても希望に合わない企業を紹介された場合は、より具体的に「何がマッチしていないのか」「なぜそう思ったのか」「どのような企業を紹介してほしいのか」をきちんと伝えましょう。キャリアアドバイザーとの相性が悪いと感じた場合も同様に、まず「どのような対応を望んでいるのか」を伝えることが大事です。その上で、やはり相性が悪いと感じた場合は、担当者を変えてもらうこともできます。いずれにしても、受け身ではなく、自分からもしっかりとコミュニケーションを取り、思いや要望を理解してもらうことがポイントです。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。