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志望動機で「安定して長く働きたい」と伝えるのはあり? 安定性を伝える場合の例文

志望動機 安定

転職先を探す際に「安定している会社で長く働き続けたい」と考える人は少なくないものです。しかし、その一方で「安定性を志望動機にするとマイナス評価されるかも」「安定性以外の志望動機が思いつかない…」などの不安や悩みを抱えてしまうケースもあります。今回は、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏に、志望動機を安定性とした場合の企業の評価や注意ポイントについて伺いました。失敗事例や安定性を志望動機とする例文も紹介するので参考にしてみましょう。

志望動機で「安定性」を伝えるのはあり?

志望動機を「安定性」とした場合、企業がどのように評価するのかを解説します。

そもそも企業における安定性とは?

企業における安定性の例については「業績が安定しているため、雇用も安定的している」「ネームバリューがあり、社会的地位が安定している」「給与・待遇などが安定している」「働きやすい環境が充実しているため、安定して働ける」「福利厚生や各種制度が充実しているため、ライフプランの変化に合わせて、安定して働き続けられる」などが挙げられるでしょう。

しかし、どんなに安定的に業績を挙げていても、社会状況や経営状況の変化によって倒産したり、従業員を解雇したりする可能性はあるものです。また、経営改善や経営方針の転換などによって、事業方針や雇用方針が変化することもあります。これらは大企業や世間の認知度が高い企業も含め、全ての企業に言えることであり、経営状況や雇用条件が突然変化するケースもあります。自分が企業に対して想定している「安定」についても、必ずしも続くとは限らないと考えたほうが良いでしょう。

安定のみを志望動機にすれば転職後に後悔する可能性も

安定のみを条件に企業を選べば、仕事のやりがいや今後のキャリア、社風、企業文化などがマッチしていない企業に入社してしまう可能性があり、実際に後悔するケースも少なくありません。ミスマッチの企業を選択してしまわないためにも、安定は転職先に希望する条件の一つと考え、そのほかの部分についてもきちんと考えることをお勧めします。

また、先にも述べたように、そもそも現在の安定性がこの先も続くとは限りません。なおかつ、働く中で自分が仕事に求める条件が変化する可能性もあります。転職先で経験・スキルを積み重ねていく中で「キャリアアップや年収アップを実現したい」と考えて再度の転職を目指すケースはよくあります。そのとき後悔しないためにも、自分が「将来目指したい姿」を想定した上で、実現するために役立つ経験・スキルを身につけておくことも大事だと考えましょう。

安定のみを志望動機にしないほうがいい理由

安定を志望動機とするケースでは「将来への不安がない安定した企業で働きたい」「安定した収入を得たい」「ワークライフバランスを安定させたい」などの理由が挙げられるでしょう。
しかし、安定のみを志望動機とした場合は、仕事への意欲や組織に貢献する姿勢が見えないため、選考にも通過しにくくなる可能性があります。

安定を志望動機にしたら、企業から懸念される?

安定性が高い企業はほかにもあるため、採用担当者は「なぜうちの会社を選んだのかがわからない」「志望動機が説得力に欠ける」「企業研究不足ではないか」など、マイナスに評価されたり、ミスマッチを懸念されたりする可能性があります。

また、企業における安定性は従業員の働きによって生み出されるものであるため、自ら組織に貢献しようという意欲や積極性がないことを懸念されるケースもあります。「仕事そのものに対する興味が薄い」「入社後に活躍・貢献する姿をイメージできない」「安定性が失われそうになったら離職するのではないか」などの不安視をされ、選考見送りとなることも少なくないでしょう。

安定性のみを理由に企業を選択することの危険性は?

志望動機をしっかり練っていない場合は、志望度や入社意欲が低いと判断され、選考の通過率が下がってしまう可能性があります。また、先にも述べたように、転職先で実現したいことが明確でないため、ミスマッチの企業を選択してしまうケースは少なくありません。その結果、入社後に後悔し、再度の転職に向かうケースもありますが、短期で離職すれば、企業に早期離職を懸念される可能性が高まり、その後の転職活動に不利になることもあります。以降で失敗事例を紹介するので、参考にしてみましょう。

安定を志望動機にした失敗事例を紹介

安定を志望動機にしたことで失敗した人の事例を紹介します。背景や選考の結果、失敗の要因を知り、志望動機を練る際の参考にしてみましょう。

【背景】安定した環境を求めて大手企業を志望

Yさん(27歳)は、従業員数100人規模のSIerでネットワークエンジニアとして働いていました。しかし、2次・3次請け案件を中心とする勤務先の業績は不安定で、不況の影響で受注案件も減少。将来への不安から転職を考えたYさんは、「安定していること」を理由に大手企業や大手グループ企業を志望し、年収100万円アップも希望条件としました。

【選考結果】数十社に応募したが、ほぼ書類選考に落ちた

転職エージェントから「スキル不足のため、希望の企業は難しい」とアドバイスを受けたYさん。しかし、譲歩せずに大手系列を中心に数十社に応募しましたが、スキル不足のため、ほぼ書類選考で不採用に。数社の面接選考には進むことができたものの、全て一次面接で選考に落ちました。

Yさんが面接で選考見送りになった理由は「志望動機があいまい」「当社で何をしたいのかがわからない」と企業から評価されたためでした。実際、志望動機について聞かれた際、Yさんは「安定したい」という本音をごまかすためにあいまいな返答をしたと感じていました。

その後、転職エージェントから「大手にこだわらず対象を広げる」「まずはスキルアップできる企業に転職する」などのアドバイスを受けましたが、Yさんはやはり譲歩せず、転職サイトで見つけた公共団体の求人に自分で応募して年収50万円アップで採用に至りました。

しかし、入社後、Yさんは業務に自分のスキルが追いついていないことに気づきます。仕事を抱え込み、深夜まで残業を続ける日々を送ることになり、休日も勉強のために休むことができず、短期間で再度の転職を決意しました。

Yさんは再び転職エージェントを頼って転職活動を開始しましたが、短期で離職したことがネックになり、納得のいく転職先が見つからない状況が続いています。

【失敗の要因】どうすれば良かった?

Yさんが多くの企業の書類選考に落ちた要因は、安定のみを志望動機とし、大手企業など採用水準が高い企業ばかりを受けたことと、志望動機があいまいだった点にあると言えるでしょう。では、Yさんはどうすれば良かったのでしょうか。以降で失敗の要因とポイントを解説します。

1.転職エージェントのアドバイスを受け入れなかった

応募企業を選択する際には、自分自身の経験・スキルが企業の採用水準にマッチしていることも重要です。求人の募集要件に記載されている経験・スキルを満たしていない場合は、書類選考に通過できない確率が高まります。

Yさんは転職エージェントから「志望企業に対してスキル不足であること」を指摘されましたが、それを受け入れずに「安定性の高い大手企業」にこだわっていました。転職エージェントは転職市場の相場観を把握しているため、転職希望者の経験・スキルをもとに採用の可能性がある企業を教えてくれます。エージェントのアドバイスを受け入れ、自分の市場価値を理解した上で応募企業の裾野を広げれば、書類選考に通過する確率を高めることができたでしょう。

2.複数の選考に落ちた時点で軌道修正しなかった

複数の選考に落ちてしまった場合は、落ちた要因について考え、方針転換や軌道修正をすることが重要です。応募企業を絞り込み過ぎることで転職活動が長引くケースは少なくありません。複数企業の書類選考に落ちた時点で「大手企業の安定性」「年収100万円アップ」という条件に縛られず、応募企業の幅を広げてみることが必要だったと言えるでしょう。

面接選考で落ちた後にも、転職エージェントのアドバイスを受け入れていれば「現時点ではスキルアップできる企業に転職し、経験・スキルを身につけてから希望を満たす大手企業にチャレンジする」という方法を取ることもできたはずです。

3.面接対策をきちんとしていなかった

面接で志望動機を聞かれた際にあいまいな回答をしてしまったのは、応募企業の魅力についてきちんと整理していなかったためでしょう。安定性だけでなく、仕事内容やキャリアパス、社風などについてどのような魅力を感じているのか整理し、自分なりに考えをまとめておけば、面接で「安定志向を隠さなくては」と焦る必要もなかったでしょう。その企業でなくてはならない理由をしっかり伝えていれば選考に通過できた可能性もあります。

転職エージェントでは、自己分析やキャリアの棚卸、面接対策などのサポートも行いますが、面接を受けるのはあくまで自分自身なので、きちんと考えをまとめて伝えられるように準備することが大事です。

4.安定性にとらわれてミスマッチな転職先を選んだ

Yさんは安定性を求め、自分で応募した公共団体に転職することを決めました。年収50万円アップにも成功しましたが、自分自身がスキル不足であることを理解していなかったため、入社後、業務についていけず、再度の転職を決意することになりました。

内定を得ることができている以上、採用担当者はYさんの経験・スキルについて「一定以上、採用水準を満たしている」と判断したと言えます。しかし、Yさん自身にも面接の際に「企業が求めるスキルレベル」についてきちんと確認しておく必要があったでしょう。特に、大幅な年収アップを実現する場合には、そのぶんだけ高い能力が求められたり、任される責任範囲が広くなったりするケースが多いので、そうした部分も確認しておくことが大事です。

入社後に後悔しないためには、転職市場における自分の価値を踏まえ、希望条件と企業から求められる水準をすり合わせることも必要です。安定性や給与アップなどの条件のみにとらわれてしまえば、現在の能力に見合っていない仕事やミスマッチな転職先を選んで苦しむ可能性があります。さらに、再度の転職活動を進める際、短期間で離職したことが不利になることもあるでしょう。転職先を決める際には自分にマッチしているかどうかをきちんと判断することが重要です。

安定性を志望動機として伝える際の注意ポイント

ここでは「どうしても安定性以外に志望動機が見つからない」という人のために、面接で志望動機を伝える際の注意点を解説します。

どのような安定性に魅力を感じたのかを具体的に伝える

「大手企業は経営が安定しているから」「ワークライフバランスが安定しているから」「福利厚生が充実していて安定して働けるから」など、条件面のみを志望動機とすることは避けましょう。同じような条件を備えている企業はほかにもあるため、その企業を志望する説得力に欠けると判断されてしまいます。

まずは、その企業が持つ安定性についてどのような部分から判断したのかを伝えることが大事です。業界の動向や企業の業績、競合との優位性、事業の将来性などを調べておき、面接では数値なども交えながら自分なりの考えを説明すると良いでしょう。さらに、そうした安定性に対し、どのような魅力を感じたのかまで具体的に伝えれば、企業研究をきちんとしていることを理解してもらえます。「うちの会社ではなく、他社でもいいのでは?」「ミスマッチでは?」などの懸念を払拭できるでしょう。

安定性を通じて何を実現したいのかを伝える

仕事のやりがいや今後のキャリア形成、将来のライフプランなどについて「応募企業で働くことで何を実現したいのか」を明確に伝えましょう。例えば「シェアが高い魅力的な商品を提案できるため、やりがいが大きいと考えた」「安定した業績の中、新しい事業や組織マネジメントにもチャレンジしていけると考えた」「将来、結婚・出産を経ても長く働き続けたいので、安定的に働ける制度・環境に魅力を感じた」などが挙げられます。入社後のビジョンを具体的に示せば、早期離職の懸念を払拭できるでしょう。

自分が貢献できることを伝える

応募企業に対し、自分の強みを活かしてどのようなことで活躍・貢献していきたいのかを伝えることもポイントです。例えば「現在、展開している新規事業で、顧客獲得に貢献していきたい」「ユーザー数の多さに甘んじず、シェア拡大に貢献していきたい」「大規模な組織のマネジメントや組織改善に貢献していきたい」などが挙げられます。組織に貢献していく意欲や姿勢を具体的に伝えることで、入社後に活躍する姿をイメージしやすくなります。

安定性を志望動機にした例文

安定性を志望動機にした2パターンの例文を紹介するので、参考にしてみましょう。

【営業職】安定したシェアを誇る商品を扱う仕事」に魅力を感じて志望

営業職として顧客の本質的な課題解決をしていきたいと考え、御社を志望いたしました。
現職では、商品力の部分で競合他社に劣る部分があり、価格競争や人間関係の構築、対応スピードの速さなどをアドバンテージに提案を続けてまいりました。
もちろん、それも営業力の1つだと考えて提案力を磨いてきましたが、やはり顧客の本質的な課題をしっかりと解決できる商品を扱いたい、自信を持てる商品を提供していきたいと感じるようになりました。御社は業界シェア〇%を持っている上、顧客満足度が高いという調査結果も拝見したため、自分の思いを実現できると考えました。
現職で培ってきた提案力を活かし、多くの顧客の課題解決とさらなるシェア拡大に貢献していきたいと考えております。

【経理職】「安定した環境の中、結婚・出産を経ても長く働き続けたい」と考えて志望

経理・財務の経験を積める環境で働き、将来的には管理部門の仕事全般を担うキャリアを歩みたいと考えて御社を志望いたしました。また、チャンスがあればマネジメントにもチャレンジしたいと考えております。
現職の会社は30代以降や既婚女性・子育て中の女性の割合が全体の○%と少なく、結婚・出産を機に退職していくことが多いため、管理職の◯割を男性が占めている状況があります。御社の採用ホームページや、厚生労働省が公表している「女性の活躍推進企業データベース」を拝見し、女性の管理職比率の高さや、柔軟な働き方ができる制度が整備されていることを知り、長期視点でキャリア形成をしていきたい自分にとって非常に魅力的だと感じました。
経理職に〇年間携わってきた専門性や、リーダーとしてグループ会社の経理業務を取りまとめた経験を、御社でも活かしていきたいと考えております。

受かる志望動機とは?

「安定して働きたい」という考えを転職の軸とし、それを志望動機として伝えることに問題はありません。ただし、きちんと企業研究をした上で「なぜその企業でなくてはならないのか」を整理し、自分なりの志望動機をまとめることが大事です。ここでは、志望動機を聞かれる理由や、志望動機の考え方を解説していきます。

志望動機を聞かれる理由

企業が志望動機を聞く理由は「応募者が自社に対してどのような魅力を感じているのか」を知りたいと考えているためです。志望動機を通じて応募者の考えを知り「入社後に活躍・貢献できる人材であるか」「早期離職せず、長く働き続けてくれる人材であるか」「入社意欲が高く、内定辞退の可能性が低いか」などを総合的に判断し、採用選考に役立てています。

そのため、志望動機を伝える際には、転職の目的や仕事への考え方、意欲などを明確にし、応募企業でどのような活躍・貢献ができるのかまで具体的に話すことが大事です。

志望動機の考え方

転職理由・退職理由と志望動機を混同しないことがポイントです。前職の職場に不満を感じたことをきっかけに「将来に不安がない安定した企業で働きたい」「年収を上げたい」「休日数を増やしたい」「働きやすい制度や福利厚生が充実している環境で働きたい」と考えるケースは多くあります。しかし、これらは転職や退職の理由であり、志望動機ではありません。

志望動機は「その企業で働きたい理由」を伝えるためのものです。自己分析とキャリアの棚卸、企業研究をしっかりと行った上で「転職で実現したいこと」「その企業で実現できると考えた理由・背景」「自分の経験・スキルをもとにどう活躍・貢献できるか」を考え、簡潔に伝えることが重要です。

転職活動で失敗しないためにも、転職エージェントを活用しよう

転職エージェントは、自己分析やキャリアの棚卸し、企業研究などをサポートしてくれる上、現在の自分の市場価値に対し、採用の可能性がある企業を紹介してくれます。現状の経験・スキルでは希望の企業や職種に転職することが難しい場合には、必要な経験・スキルを身につけられる転職先などについてもアドバイスしてくれるでしょう。

転職エージェントを活用すれば「安定」だけでなく、さまざまな面から自分にマッチする企業を見つけやすくなり、採用の可能性もより高めることができます。応募書類の作成や面接対策などのサポートも受けられるので「安定性以外に志望動機が思いつかない」という人も、自分の志望動機により説得力を持たせることができるでしょう。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏


約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

リクルートエージェントでは、転職でお悩みの方に適切なアドバイスをお送りしています。また、企業の面接対策や職務経歴書の作成サポートや、スムーズな退職のためのサポートを行っています。お悩みの方はぜひ一度相談に来てみてください。