転職エージェントのキャリアアドバイザーと面談を行う際、「何を話せばいい?」「電話やオンラインでの面談は可能?」「土日も面談できる?」「面談時の服装は?」など、さまざまな疑問が生じる人もいるでしょう。
本記事では、転職エージェントとの面談の流れや必要な準備、最適な求人を紹介してもらうコツを、組織人事コンサルティング、Seguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
なぜ転職エージェントと面談を行うのか
転職エージェントが求職者との面談を行う目的は、「適切な求人紹介、転職活動のサポートを行うため」です。転職エージェントが求職者の経験・スキル、強み、志向や価値観、転職の理由・目的、転職先希望条件などを理解することで、よりその求職者にマッチする情報の提供が可能になります。
なお、転職する意思が固まっていなくても、転職エージェントに相談することは可能です。中長期視点でのキャリア構築を視野に入れて会話することもできます。実際、「今すぐ転職するのではなく、しばらくは現在の会社で経験を積んだほうがいい」とアドバイスすることもあります。
転職エージェントとの面談は、今後のキャリアの方向性を一緒に考え、お互いの信頼関係を築く場でもあると考えられます。
転職エージェントとの面談の流れ 6 STEP
ここでは、転職エージェントとの面談の流れの一例を、次の6つのSTEPに分けて紹介します。
- 互いに自己紹介を行う
- 経歴やスキルを伝える
- 転職理由を伝える
- 転職先の希望条件を伝える
- キャリアアドバイスを受ける
- 求人案件を紹介してもらう
STEP1:互いに自己紹介を行う
まずは、互いに自己紹介を行います。キャリアアドバイザーからは、自己紹介を兼ねてこれまでの支援実績や自身の経歴を説明することもあるでしょう。
求職者は、数ある転職支援サービスの中でも、なぜ転職エージェントを利用するに至ったのかを伝えておくと、キャリアアドバイザーも支援の要望を汲みやすくなるでしょう。また、転職に対する温度感(今すぐ転職したいのか、条件の良い求人があれば転職を考えるのか)やキャリアに対する悩みも伝えておくと、その内容を踏まえながら面談を進めてくれるでしょう。
面談冒頭の自己紹介は、緊張をほぐすとともに、互いの距離を縮める時間とも考えられます。
STEP2:経歴やスキルを伝える
続いて、経歴やスキルを伝えましょう。
この時、ただ単に「営業を〇年間していた」と伝えるよりも「法人営業で〇年携わり、〇社担当した。営業は新規開拓が主であり、○○エリアを中心に電話や紹介を中心に新規開拓を行った。」のように、詳細が分かる伝え方を意識してみてください。数字を交えながら伝えると、キャリアアドバイザーも規模感やスケールを把握しやすくなるでしょう。
また技術職やクリエイティブ職への転職を希望している場合は、保有資格を伝えたりポートフォリオを共有したりするのも良いでしょう。
キャリアアドバイザーは、この時ヒアリングした内容をもとに求人を選定します。伝える内容に抜けや漏れがあると、希望に沿った求人の紹介を受けられなくなる懸念もあるため、認識のズレや伝え漏れが生じないよう留意しましょう。
STEP3:転職理由を伝える
転職理由は、なるべく率直に伝えましょう。転職理由は転職活動の軸にもなる、重要なポイントです。
転職理由については、伝えたくないことを伝える必要はありませんが、転職を決断するに至る動機を共有することで、より良いサポートが受けられる可能性もあります。
なお、転職理由を伝える際は、転職によって何を実現したいのか、転職の「目的」もセットで伝えることが大切です。思い描く転職を実現できる可能性を高められるような求人を選定してくれるでしょう。
STEP4:転職先の希望条件を伝える
転職先に希望する条件は、遠慮せず、まずは全て伝えましょう。希望条件を全て満たす求人があるとは限りませんが、希望が通る可能性があるかどうかアドバイスしてもらえるでしょう。
希望条件が多すぎたり、要望が高すぎたりすることで選択肢が狭まってしまう場合は、希望条件の優先順位を付けるためのアドバイスも受けられます。
STEP5:キャリアアドバイスを受ける
次に、キャリアに関するアドバイスを受けます。
キャリアアドバイスでは、まずキャリアアドバイザーからのヒアリングを中心に、求職者の「キャリアの棚卸し」を行い、これまでの経歴から転職市場でアピールできる強みや長所を洗い出していきます。
洗い出した強みや長所から、どのようなキャリア選択を取れるのかをアドバイスしてもらえるでしょう。時には、想定していなかったキャリアの道筋を提案してもらえることもあります。
STEP6:求人案件を紹介してもらう
面談当日に、条件や希望に応じた求人の紹介を受けられることもあります。
紹介された求人に興味を持った場合は、応募にすすみます。、また、紹介された求人に応募する気が湧かない場合は、興味を持てない理由や引っかかるポイントを伝え、新たな求人を紹介してもらいましょう。
もし、なかなか求人の紹介がない場合は、自らキャリアアドバイザーに求人の紹介を希望する旨を伝えてみるのも良いでしょう。
転職エージェントとの面談までに必要な5つの準備
本章では、転職エージェントとの面談までに準備しておきたい下記5つの準備項目について解説します。
- 可能であれば履歴書や職務経歴書を先に送付しておく
- 希望条件や転職に求めるものを事前に伝えておく
- 転職エージェントに期待することを整理しておく
- 転職活動の状況を整理しておく
- 過去の転職活動経験を整理しておく
準備1:履歴書や職務経歴書を先に送付しておく
必ずしも必須ではありませんが、面談前に履歴書や職務経歴書など、経歴が分かる情報を共有しておくと、面談当日は送付した情報を踏まえ、ヒアリングを効率的に進めてもらえることもあります。
準備2:希望条件や転職に求めるものを事前に伝えておく
転職エージェントによっては、面談前に転職先企業や転職後に就くポジション、職種などに関する希望条件を伝えておくと、面談当日までに希望に合った求人を探してくれていることもあります。実際の求人を見ながら希望や要件を伝えられるため、希望を細かくすり合わせられるでしょう。
準備3:転職エージェントに期待することを整理しておく
転職エージェントにどのようなサポートをしてほしいのか、ポイントを整理しておきます。例えば、「できるだけ多くの求人を見たい」「キャリアの方向性について相談をしたい」「応募書類の書き方をアドバイスしてもらいたい」「日中の電話連絡には対応できないので基本的にメールで連絡してほしい」などが挙げられます。
準備4:転職活動の状況を整理しておく
すでに転職活動を開始している場合は、現在の転職活動状況を整理しておきましょう。例えば「転職サイト経由で○社に応募し、書類選考中」「他の転職エージェント経由で応募し、○社で面接に進んでいる」といったように整理します。
面談時、開示できる範囲で正直に伝えたほうが、転職エージェント側としては支援がしやすくなります。自分自身のためにも、それぞれの進捗状況は、随時調整・確認しておくと、スムーズに転職活動を進めることができるでしょう。
準備5:過去の転職活動経験を整理しておく
過去に転職活動や転職をしたことがある場合は、どのような転職活動を行い、どのような判断軸で転職先を決めたのかを振り返っておくと良いでしょう。面談で伝えると、自分に合わせた適切な支援やアドバイスを受けられる可能性が高まります。
転職エージェントとの面談で質問・相談すると良い5つの項目
本章では、転職エージェントとの面談で質問・相談すると良い5つの項目を紹介します。
- 転職市場の動向
- 自身の市場価値、強み、それらの自己PRの仕方など
- キャリアの方向性
- 転職活動の全体像や流れ、スケジュール、進め方など
- 担当キャリアアドバイザーの経歴・得意領域・転職支援に対する考え方など
転職エージェントは、キャリアを考える材料になる情報やデータを保有している場合もあるので、ぜひ積極的に質問・相談し、キャリアプランや転職活動の参考にしましょう。
転職市場の動向
人材ニーズは社会情勢や景況などによって変動します。特定の職種やポジションについて、大量に求人が出ている時期もあれば、求人が減る時期もあります。
転職エージェントは、それぞれの業界・職種の求人動向を把握していることもあるので、自身の経験・スキルと転職市場の状況を照らし合わせ、今のタイミングで動くことが有効か、意見を聞いてみると良いでしょう。
自身の市場価値、強み、それらの自己PRの仕方など
転職エージェントは、転職市場においてどのような人材のニーズがあるかについて、日々情報収集しています。ですから自身の「現在の市場価値」について、客観的な視点からアドバイスがもらえるでしょう。求職者が自分の強みと認識していたスキルが実はあまり転職市場で評価されないこともあれば、反対に、思いがけない経験が評価されることもあります。
転職活動にあたり、自身のどのような強みを活かし、どのようにアピールすれば選考通過率を高められるか、アドバイスを受けることをお勧めします。
キャリアの方向性
目先の転職だけでなく、中長期視点でのキャリアの方向性も相談してみるといいでしょう。
例えば「このまま営業としてのキャリアを積んでいくなら、どのような業界がおすすめか」「いずれ異職種にキャリアチェンジを図りたい場合、どのような経験を積んでおくといいか」などです。
転職活動の全体像や流れ、スケジュール、進め方など
転職活動のスケジュールは、自分の思い通りになるとは限りません。自身が想定していたより選考が早く進むこともあれば、長引くこともあります。特に在職中の方であれば、最初に転職希望時期を伝え、スケジュール感や進め方も相談しておくと見通しが立てやすくなります。
担当キャリアアドバイザーの経歴・得意領域・転職支援に対する考え方など
キャリアアドバイザーの経歴は、新卒から人材業界に入った人、異業界から転職してきた人などさまざまです。経歴や得意領域を聞くことで「特にこの分野について教わろう」など、サポートをより有効活用できるでしょう。
また、「なぜ転職エージェントで働いているのか」「転職支援にどのようなやりがいを感じているのか」などを聞くことで、信頼感を持てるかもしれません。
転職エージェントとの面談ではどこまで話す? 3つの事例を解説
本章では、次の3つの事例別に、相談のポイントを解説します。
- 職歴が多い、派遣先が複数の場合
- 言いにくい転職理由の場合
- 成績や評価でアピールする実績がない場合
職歴が多い、派遣先が複数の場合
履歴書には、すべての職歴等を記載することが必要になります。とはいえ、職歴が多い場合や、派遣先がいくつも変わった場合など、全てを説明すると時間がかかってしまう人は、先に転職エージェントにその旨を伝えておきましょう。面談での説明だけでなく、応募書類のまとめ方や企業への経歴紹介のアドバイスを受けることもできるでしょう。
言いにくい転職理由の場合
「リストラ」や「職場の人間関係の問題」など、言いにくい転職理由を持つ場合も、伝えられる範囲で伝えましょう。キャリアアドバイザーは、転職活動に至る背景を知ることによって、より要望に沿ったサポートができるようになるでしょう。
なお「転職理由」をうまく言葉にできない人は、面談の時にその旨を率直に伝え、キャリアアドバイザーの力を借りながら転職活動に至った背景を共有していきましょう。
成績や評価でアピールする実績がない場合
職務経歴書や面接などで伝えられるような輝かしい成果や実績を持っていないと考えている人も、率直に転職エージェントに相談することをお勧めします。どのように企業にアピールしたらいいかを、一緒に考えてくれるでしょう。
転職エージェントに正直に話したとしても、そのまま企業に伝わるわけではありません。
「会社が何度も分社化と合併を繰り返した」「途中にアルバイトが含まれている」「無職期間が長い」など、どのように伝えたらいいのか分からない時は、面倒でも端折ったりせずに、まず転職エージェントに応募書類や面接でどのように伝えたらいいのかをご相談ください。企業への伝え方や、アピール方法のヒントを得るきっかけになるかもしれません。
転職エージェントとの面談を有効に活用するために留意したい3つの注意点
ここでは、転職エージェントとの面談を有効に活用するために留意したい注意点を次の3点に絞って解説します。
- 他の転職エージェントの利用状況も素直に話す
- 言いにくいことも本音で伝える
- 考えがまとまっていなくてもすべて伝え切る
注意点1:他の転職エージェントの利用状況も素直に話す
転職エージェントとの面談では、他の転職エージェントの利用状況も伝えることをおすすめします。その理由として、他サービス経由での転職状況も共有しておくことで、同一求人への応募を防げたり、転職活動の状況を整理できたりするからです。
なお他の転職エージェントとの併用を継続する場合は、初回面談に限らず、こまめに他の転職エージェントを経由して応募した企業の選考状況を共有するといいでしょう。最新の状況を汲んだ上で転職支援の方針やペースを調整してくれるでしょう。
注意点2:言いにくいことも言える範囲で伝える
転職エージェントに対しては、言える範囲で、言いにくいことも伝えておくことをおすすめします。一遠慮から本音を伝えられないでいると、希望がうまく伝わらず、希望とは異なる支援を提供されたり、要望に沿わない求人を紹介されたりすることもあるかもしれません。
言いにくいことであっても本音で伝え、キャリアアドバイザーと信頼関係を築いていきましょう。
注意点3:考えがまとまっていなくてもすべて伝え切る
考えがまとまっていなくても、まずは思っていることや考えをすべて伝え切りましょう。全て伝え切ることで伝え漏れを防げるでしょう。。キャリアアドバイザーは転職支援のプロでもあるため、伝えた情報の中から必要な情報を精査してくれるでしょう。
うまく伝えられるか不安な人は、事前に考えや要望がまとまっていない旨を伝えておくのも1つの方法です。必要に応じてキャリアアドバイザーが質問を重ねてくれるでしょう。
転職エージェントの面談に関するQ&A
本章では、転職エージェントとの面談に臨むにあたって、多くの求職者が抱く疑問と疑問に対する回答を紹介します。
Q1.転職エージェントとの面談に必要な持ち物は?
A.筆記用具や面談時に受けたアドバイスを書き留められるメモ帳などを用意しておきましょう。また、今後の予定を確認できるもの(スケジュール帳やスマートフォン)も持参しておくと安心です。他にも転職エージェントから持参を依頼されることの多い持ち物には、履歴書や職務経歴書などがあります。
対面での面談の場合は求人票や資料を持ち帰ることもあるため、A4の書類が入る程度の大きさのカバンを持っていくと安心です。
Q2.転職エージェントとの面談に適した服装は?
A.転職エージェントにもよりますが、多くの場合、面談は必ずしもスーツである必要はなく、私服でもいいでしょう。面談では、経験や転職の希望条件などを確認するため、リラックスして話ができる服装がベターです。
もし服装や身だしなみに関するアドバイスを求める時は、面接と同様の服装を着用しましょう。好印象を与えるポイントや服装の疑問についてのアドバイスをもらえるでしょう。
Q3.対面面談・電話面談・オンライン面談、どれがお勧め?
A.勤務時間、忙しさの度合い、居住地、プライベートなどの事情を踏まえ、面談を受けやすい方法を選びましょう。いずれの方法でも転職支援の内容は変わりません。
なお、対面での面談に関しては、多くの転職エージェントがオフィス内に面談できる個室を用意しています。できるだけリラックスして相談ができるように配慮されているケースが多く、周囲に気を遣うことなく安心して相談できるでしょう。
リクルートエージェントの場合は、業界知識を持った経験豊富なキャリアアドバイザーが面談を担当いたしますので、転職先への希望条件や転職で実現したいことだけでなく、不安に思っていることや迷っていることなども遠慮なくご相談ください。
Q4.転職エージェントとの面談時間はどれくらい?
A.面談にかかる時間は、1時間程度が目安です。ただし、キャリアプランや転職活動の方向性、具体的な希望が固まっていない人は、面談が長引く場合もあります。
多少、面談時間が長引くことも想定し、時間に余裕を持たせておくと安心です。
Q5.転職エージェントとの面談は土日や夕方以降でもできる?
A.転職エージェントが営業していれば、平日夕方以降や土日でも面談可能です。平日夕方以降や土日に面談希望が多いことを想定し、対応できる体制を整えている転職エージェントもあるかもしれません。転職エージェントよって対応は異なるため、事前に確認しておきましょう。
土日や夕方以降の面談は、仕事を続けながら転職活動に取り組む求職者からの予約が集中する可能性があり、面談の予約が取りにくい場合も想定されます。予定の目処が立つようであれば、早めに面談を予約しましょう。
Q6.転職エージェントとの面談後はどのようなサービスが受けられる?
A.面談後は、面談時に伝えた希望の条件に合う求人の紹介を受けられます。その他、下記のサポートサービスを受けられるため、必要に応じて活用しましょう。
- アピール効果が高まる職務経歴書の書き方のアドバイス
- 面接日程の調整
- 面接対策のアドバイス(応募先企業が選考で重視するポイントなどの情報提供)
- 面接後、企業側の感想・評価のフィードバックおよび次回の面接対策
- 給与・待遇などの条件交渉に対するアドバイス
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。