企業の採用担当者は、求職者の能力やスキルを判断するために職務経歴書に記載された「実績」に注目します。具体的な数字を交えた業績や成果は、応募企業への重要な自己アピールにもつながります。実績の効果的な書き方について、人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
職務経歴書における「実績」の書き方ポイント
職務経歴書にこれまでの実績を記載することは、自分の能力やスキルを伝えるために必要不可欠です。職務経歴書に実績をどう書いたらいいのか、悩まれる方も多いのではないでしょうか。そこでまずは、「実績」の書き方のポイントからご紹介します。
応募先企業にメリットがある実績かを意識する
職務経歴書に実績を書く際は、企業に採用するメリットがあると思ってもらうことが重要です。書かれている実績を生み出したスキルや取り組みが応募先企業にとってどのような貢献をもたらすのか、意識しながら記載するようにしましょう。
できるだけ数字を用いて具体的に伝える
実績を記載する際は、具体的な数字を用いて伝えることも重要です。例えば、単に「担当製品の売上を伸ばした」だけではなく、「担当製品の売上を30%増加させ、売上高を年間5000万円に引き上げた」というように、できるだけ数字を使った表現を用いるようにしましょう。
文章よりも箇条書きで記載する
実績を文章ではなく、箇条書きで記載することで「読みやすい」「情報が整理しやすい」「内容を明確に強調できる」といった効果が期待されます。見た目もすっきりするので、採用担当者にとっても理解しやすいと言えるでしょう。
社内用語や業界専門用語は補足する
社内用語や業界特有の専門用語が含まれていた場合、採用担当者が理解できない可能性があります。社内用語や業界専門用語を使う場合には、補足するようにしましょう。
実績がない、もしくは少ない場合はどう書いたらいい?
職務経歴書に書ける実績がない、もしくは少ない場合は、以下のようなアプローチを取ることができます。
経験が浅く、実績が少ない場合
第二新卒などでまだキャリアが浅く、実績が少ない場合は、これまでの業務内容を詳しく書くことで、採用担当者に業務経験をイメージしてもらうことができます。
仕事で得た専門知識や技術、仕事の進め方や取り組み姿勢、顧客と接するコミュニケーション力など、自分の強みを活かして得た成功経験などを振り返り、実績としてアピールするのもいいでしょう。
チームでの実績が多く、個人の成果を示しにくい場合
チームでの実績はあるものの、個人としての成果を数字などで示しにくい場合は、そのチームの中でどのような役割を担い、貢献してきたかを明記しましょう。また、チームメンバーとの協調性やプロジェクトの調整力、リーダーシップなどのスキルもアピールにつながります。
正社員経験がない場合
正社員経験がない場合でも、アルバイトや派遣社員、もしくはフリーランスや業務委託として経験した実績を記載することができます。例えば、業務効率化を図った経験や業務マニュアルの作成が評価されたことなども、実績として記載するのも有効です。
職種別の「実績」記入例を紹介
職務経歴書に実績を記載する際の例文を、職種別に紹介します。自分に重なる例文を参考に作成してみましょう。
営業職の「実績」記入例
実績をあげるために取り組んだことや、どのような成果につながったのかを具体的な数字とともに記載しましょう。
20XX年度 販売促進活動による売上アップ(前年度比XX%)
20XX年度 既存顧客のリピート率を前年度比XX%向上に貢献
20XX年度 競合他社に先駆けた新商品の提案による契約数XX件アップ
20XX年度 大口顧客の取り込みに成功し、月間売上X,000万円達成
20XX年度 新規取引先との契約締結に成功し、XX%の売上アップにつなげる
20XX年度 クレーム処理の改善により、XX%の顧客満足度の向上に貢献
20XX年度 新商品の開発に携わり、売上XX%アップに貢献
20XX年度 海外展開に成功し、新規取引先をXX件獲得
20XX年度 業務の効率化に取り組み、勤務時間XX時間の短縮に成功
事務職の「実績」記入例
自分が担当した業務やプロジェクトにおいて、どのような成果や改善を実現したかを具体的に記述することで、自己アピールしましょう。業務上の課題や問題を解決したことや、チームのメンバーとして果たした実績も役割を示すことで、記載することができます。
20XX年度 顧客からの問い合わせ対応におけるマニュアル化に貢献
20XX年度 データ入力業務の効率化に取り組み、1日あたりの入力件数を前月比XX%向上
20XX年度 社内の経費精算システムを見直し、処理時間を短縮、業務の効率化に貢献
20XX年度 書類・資料管理システム導入によるデジタル化を進め、紙媒体の減少に貢献
20XX年度 新人教育において、教育マニュアルの作成・改善に貢献
20XX年度 会議資料の作成において、レイアウトの改善による見やすさを向上
20XX年度 有給休暇申請や勤怠管理のシステム化に取り組み、社員の負担軽減に貢献
販売・サービス職の「実績」記入例
販売・サービス職においても、自身が担当した業務やプロジェクトについて、どのような成果や改善を実現したかを具体的に記述することが重要です。また、チームメンバーと協力して達成した実績も明記しましょう。
20XX年度 新商品のプロモーション企画を提案し、売上を前年比XX%増加
20XX年度 商品の陳列方法を改善し、商品の視認性を向上させ、売上を前年比XX%増加
20XX年度 顧客からの問い合わせ対応を改善し、顧客満足度を高める
20XX年度 顧客満足度調査で「販売員の知識・対応力」評価を前年比XXポイントアップ
20XX年度 接客マニュアルを作成し、新人研修コンテンツの充実に貢献
20XX年度 チームメンバーと協力し、販売員の売上目標達成率を前年比XX%アップに貢献
20XX年度 販売促進企画の立案・実施に参加し、売上増加に貢献
エンジニア職の「実績」記入例
エンジニア職であれば、自分が担当した開発プロジェクトにおいて、どのような設計や開発を担当し、改善や成果を実現したかまで具体的に記述することで、自己アピールが可能となります。
新規システムの設計・開発に参画し、要件定義・基本設計・詳細設計・実装・テストを担当
20XX年XX月~XX月
Webアプリケーション開発において軽量化・高速化の改善を担当。レスポンス時間を平均XX%削減
20XX年XX月~XX月
大規模システムの障害対応において、原因分析と改修を実施。復旧時間を平均X分減少
20XX年XX月~XX月
スマートフォンアプリの設計・開発において、UI/UX改善により、ダウンロード数を前年比でXX件増加
20XX年XX月~XX月
業務効率化のために、社内ツールの新規開発・既存システムのリニューアルを担当。社員1人あたりの生産性を平均XX%向上
20XX年XX月~XX月
プロジェクトメンバーと協力して、プロダクト開発のプロセス改善を実施。プロジェクトの品質・スケジュール・コストを大幅に改善
マネジメント職の「実績」記入例
マネジメント職は、自身がリーダーやマネージャーとしてどのような成果を挙げたかを具体的に記述することで、自己アピールすることができます。また、チームや担当部署の生産性向上や業務改善、メンバーのモチベーション向上や育成など、自身のマネジメント能力をアピールすることも有効です。
20XX年度 新規プロジェクトのプロジェクトチームリーダーとして案件を成功に導いた
20XX年度 社内の業務プロセスを見直し、担当部署の作業時間を平均XX%短縮
20XX年度 メンバーのモチベーション向上のため、週1回の1on1を実施
20XX年度 他部署のプロジェクトリーダーを兼任。タスクの優先順位を調整し、プロジェクトの完遂を実現
転職エージェントに添削してもらう方法もある
転職エージェントに実績の書き方について、添削を受ける方法もあります。自分では気づいていなかった強みの伝え方や、応募先企業にアピールできるポイントなどのアドバイスも受けることができます。
プロの目を通すことで、書類選考の通過率を高めることにもつながります。転職エージェントのサポートをうまく活用することで、効率的に転職活動を進めましょう。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。