自分の強みは「忍耐力」である。そう考えている人は、転職活動で自己アピールをする際、どのように伝えればよいのでしょうか。企業が「忍耐力」を評価するポイント、忍耐力を別の表現で伝える方法、履歴書・職務経歴書・面接での伝え方などについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
自己PRで「忍耐力」を強みとするのは効果的?
そもそも、企業は応募者に対して「忍耐力」を求めているのでしょうか。昨今、ビジネス環境の変化のスピードが加速しており、既存の事業・業務の「変革」や「リスキリング」に取り組む企業が増えています。これらの課題解決は困難を伴うため、忍耐力は重要です。
ただし「じっと耐え忍ぶ」よりは、ストレスフルな環境下でも心折れることなく前へ進んでいける力、壁にぶつかっても乗り越えていける力が求められていると言えるでしょう。
自己PRで企業が「忍耐力」を評価するポイント
応募者が「忍耐力」をアピールした場合、企業側はどのように捉えるのでしょうか。忍耐力を評価するポイントをご紹介します。
失敗してもポジティブに乗り越えられる
ビジネスにはさまざまな要素が絡み合い、正解は一つではありません。失敗したり、すぐに成果が出なかったりすることが多々あります。
そのような状況でもすぐに気持ちを切り替えられる、「経験を積めた」とポジティブに捉えて次のチャレンジに活かしていけると期待されるでしょう。
ストレス耐性が強い
「経験がない仕事を任せられる」「顧客から難しい要望を受ける」「会社から期待される」など、強いプレッシャーがかかる場面もあります。
そんなときも感情的にならずに冷静に対応し、普段どおりに力を発揮できる、場合によってはストレスフルな環境を活用して自分の潜在能力を掘り起こせるという期待を持たれます。
仕事を最後までやりきる力がある
長期間にわたるプロジェクトなどでは、その過程で想定外の事態に直面することやトラブルが発生することもあります。
うまくいかないときも途中で投げ出したり諦めたりすることなく、その時々で最適な解決行動をとり、ミッションのゴールを見据えて継続していけるだろうと期待されます。
目的達成に向けた努力ができる
ビジネスでは、社内外の複数の利害関係者間で意見が対立したり、ビジネス環境が刻々と変化していったりと、時には「当初の目的を達成することが困難ではないか」と思われる状況もあるものです。
そうした局面でも、安易に目先の着地点を探るのではなく、「別のやり方を模索する」「関係者を説得する」など、当初の目標達成へ向けた行動を継続できることが期待されます。
自己PRで「忍耐力」をアピールするポイント
自己PRで「忍耐力」をアピールする場合は、以下のポイントを意識してください。
具体的なエピソードを伝える
単に「私は忍耐力があります」だけでは、採用担当者の納得を得られません。どのような状況において、どのように忍耐力を発揮したのか、具体的なエピソードを語れるように準備しましょう。
「主体的な行動」を伝える
「忍耐」というワードは「つらい状況でも我慢する」というイメージを持たれ、場合によっては「受動的」であると受け取られる可能性もあります。
企業は「我慢できる人」よりも「主体的に困難克服の行動を起こしていける人」を求めていますので、主体性を発揮したエピソードを語ることが大切です。
「成果」まで伝える
忍耐力を発揮したエピソードを語る際には、「このように忍耐力を発揮した」だけで終わらせず、「その結果、どのような成果につながったのか」まで語れるとよいでしょう。
「忍耐力」自己PRで言い換える場合の表現例
これまでにも触れたとおり、「忍耐力」というワードは「じっと耐え忍ぶ」「我慢する」といった印象でとらえられることもあります。よりポジティブな印象を与えるには「継続力「やり切る力」「粘り強さ」「タフさ」といったワードを使用してもいいでしょう。
応募企業の求人情報をしっかりと読み込んで「仕事の特性」「求める人材像」をつかんだうえで、それにマッチする表現を選んでください。例えば、以下のように、同じ「忍耐力」を伝えるにも、その採用ポジションに合った言い換えを工夫してみましょう。
「果敢にチャレンジし、失敗しても諦めない」
「理不尽なクレームに対しても冷静に対処できる」
「困難な状況に遭遇しても、最後までやり切る」
「忍耐力」の自己PR例文【履歴書・職務経歴書編】
履歴書や職務経歴書で忍耐力をアピールする場合の例文を、営業・事務・エンジニアの職種別にご紹介します。「忍耐」というワードをネガティブに捉えられることを避け、同様の意味でポジティブな表現を使用しましょう。
営業【履歴書】
事務【履歴書】
エンジニア【履歴書】
営業【職務経歴書】
事務【職務経歴書】
現職では、顧客管理のデジタル化に取り組んでいます。紙やExcelでバラバラに管理されていたデータを一元化するにあたっては、膨大かつ煩雑なデータ整理・入力作業、営業担当者へのヒアリング作業が難航しましたが、「システム稼働後に円滑に運用できる」ことを目標にやり遂げました。
デジタル化を推進されている貴社でも、私の強みと経験が活かせると考えております。
エンジニア【職務経歴書】
受注管理システムを刷新するプロジェクトにおいては、複数のシステムに影響を及ぼす範囲が大きいため、各部署のキーパーソンとの協議を重ねる必要がありました。部署・職種によって意見や要望が異なることもありましたが、ムダを省いたことで運用コスト20%削減にもつながりました。
私の「やり切る力」を活かし、御社のDX推進にも貢献したいと考えています。
「忍耐力」の自己PR例文【面接】
忍耐力について、「職務経歴書の自己PR欄に記載する」「面接の場でプレゼンする」場合の例文を、営業・事務・エンジニアの職種別にご紹介します。
営業【面接】
中でもトラブルを起こして取引停止となった前任者から引き継いだ顧客では、自社への信頼を失った状況から関係の再構築に取り組みました。
冷たくあしらわれても粘り強くアプローチし、お客様の役に立つ情報を届け続け、取引を再開させました。難しい課題に対してもしっかりと向き合って提案を行ったことで信頼を獲得し、前任者の頃より取引額を3倍に伸ばしました。
御社においても、粘り強さを活かして顧客獲得と売上拡大に貢献したいと考えております。
事務【面接】
現職では、これまで営業担当者が行っていた顧客管理のデジタル化に取り組みました。紙やExcelでバラバラに管理されていたデータを一元化するにあたっては、膨大かつ煩雑なデータ整理・入力作業、営業担当者へのヒアリング作業が難航しましたが、「システム稼働後に円滑に運用できる」ことを目標に、手を抜くことなくやり遂げました。
実際、システムの運用において「分かりやすく役に立つ」と好評を得ています。
現在、デジタル化を推進されている御社においても、私の強みと経験が活かせると考えております。
エンジニア【面接】
受注管理システムを刷新するプロジェクトにおいては、何年にもわたって複数のシステムを継ぎ足してきたことから動作が不安定な状況となっていました。
リプレイスにあたっては影響を及ぼす範囲が大きいため、各部署のキーパーソンとの協議を重ねる必要がありました。部署・職種によって意見や要望が異なることもありましたが、粘り強く調整を重ね、プロジェクトを完遂させました。各部署から「使いやすい」と喜ばれているほか、ムダを省いたことで運用コスト20%削減にもつながりました。
私の「やり切る力」を活かし、御社のDX推進にも貢献したいと考えています。
自己PRで「忍耐力」を効果的にアピールしよう
これまでお伝えしたとおり、「忍耐力」を伝えるにはさまざまな表現があります。応募企業が求めている人材像に合わせ、適切な表現でアピールすることが大切です。
迷った場合は、転職エージェントに相談してみるのもおすすめです。転職エージェントは求人企業が求めている人材像をつかんでいるため、そうした情報を活用し、アピール効果を最大化していきましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。