キャリアプランを考えたことがない場合は「転職したくても、どんな選択をすればいいのかわからない」「応募書類にどう書けばいいのかわからない」「面接で質問されたら、どう回答すればいいの?」などの悩みや不安を抱えるケースも少なくはありません。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント・粟野友樹氏に、キャリアプランの考え方や応募書類の書き方、面接での伝え方などを解説いただきました。キャリアプランを考えることのメリットなども紹介するので、今後の転職活動に役立てていきましょう。
目次
キャリアプランとは?
キャリアプランとは、自分が今後、どのようなキャリアを築きたいのかを具体化するための「将来、なりたい自分を実現していくための中長期的な見通し、計画」のことを指します。
5年後、10年後などを見据え、どのように行動し、キャリアアップしていくのか計画を立てることは、自分の思い描く人生を実現していくためにも役立ってくれます。
一方、「キャリアビジョン」とは、将来ありたい姿や理想とする自分のことを指します。これを実現するためのプランが「キャリアプラン」です。また、「キャリアパス」は企業内におけるポストなどを目指すためのキャリアの道筋のことを意味します。
キャリアプランの考え方を3ステップで紹介
キャリアプランの考える際に役立つ3ステップを紹介します。
ステップ1:理想の将来像を考える
「自分が将来どうなりたいのか」について、仕事とプライベート、両方の面から理想とする姿を考えてみましょう。
仕事については、どのようなやりがいを感じたいのか、どんなポジションに就いて活躍したいのかを考えると良いでしょう。プライベートについては、理想のライフスタイルを考えると共に、その実現のために必要な収入・働き方などについても考えることがポイントです。
「やりたい仕事がない」「自分が何にやりがいを感じるのかわからない」という場合は、以下の記事も参考にすると良いでしょう。
ステップ2:自分の現在について知る
これまでの経験・スキルを棚卸しして、これまでに身に付けたポータブルスキルや、自分が発揮できる強みなどを理解することが大事です。自分の現在地を知ることで、理想の将来像にどう近づいていくのかを逆算しやすくなるでしょう。また、自分の市場価値を理解することで、転職でステップアップやキャリアアップしていく方法も見つけやすくなります。
ステップ3:今後、実現していくためのロードマップを描く
自分の現在地と理想の将来像の間を埋めていくために、どのような道筋が必要なのかを考えましょう。1年後、3年後、5年後などにマイルストーンを置き、それぞれの段階で実現したいことや、そのためにやるべきこと、経験しておきたいこと、身につけたいスキルなどを書き出してみると良いでしょう。
キャリアプランはアップデートしていくことが大事
キャリアプランは、自分の経験・スキルや、考え方・ライフプランの変化などに応じて変わっていくものです。一度キャリアプランを作成しても、定期的に振り返ることが重要です。「実現できたこと、できなかったこと」について考え、なぜそれができなかったのかという要因を理解することで、やるべきこと、やりたいこと、やらなくていいことが見えてきます。
「短期間にやるべきことを詰め込み過ぎていたから、ここに注力しよう」「やりたいこととズレていたから、方向性を変えよう」「背伸びし過ぎていたから、この先の1年はこう変えよう」「結婚したから育児も見据えた方針に切り替えよう」など、自分が目指したい姿を明確にしていくことがポイントです。キャリアプランを数年ごとにアップデートしていくことで、自分が思い描く姿をより実現しやすくなるでしょう。
キャリアプランが思いつかない人に役立つ3つのヒント
「自分がどうしたいのかわからず、キャリアプランが思いつかない」「漠然とやりたいことはあるけれど、キャリアプランを具体化できない」という人もいるでしょう。キャリアプランが思いつかない、具体化できないという人に役立つ3つのヒントを紹介します。
身近な人をロールモデルにしてみる
自分の身近にいる人をロールモデルとし、5年後、10年後になりたい自分像を考えてみる方法があります。「あの人のように活躍したい」「あんな風に、仕事とプライベートを両立できたらいいな」など、自分が共感できる人を探してみましょう。また、キャリアプランの考え方について、本人に直接聞いてみても良いでしょう。
企業のキャリアパスを参考にしてみる
勤務先の企業が公開しているキャリアパスや、興味がある仕事や企業のキャリアパスなどを調べ、自分にマッチしそうなものを考えてみることもできます。定期的な人事面談がある場合は、「今の自分にとって参考になる社内のキャリアパス事例を教えてほしい」など、具体的なキャリアパスについて聞いてみるのも良いでしょう。
キャリアアップの例から考えてみる
キャリアアップの具体例から、自分にフィットしそうなものをイメージしてみる方法もあります。以下に一例を紹介するので、これをヒントにどんな道筋があるかを考えてみましょう。
<キャリアアップの一例>
・大手企業に転職し、スケールの大きな仕事に携わる
・ベンチャーや中小企業に転職し、幅広い業務経験を積みながら活躍する
・管理職やマネジメントなどのポジションに就く
・自分のやりたいことを実現するために起業する
・自分の専門性を磨き、プロフェッショナル人材として活躍し続ける
・自分がやりがいを持って働ける仕事に転職する
・年収を高め、理想のライフプランを実現する
・社会的地位を高め、活躍の範囲を広げる
キャリアプランの書き方、面接での答え方のポイント【例文あり】
転職の応募書類や面接でキャリアプランを問われた際の書き方、答え方のポイントを解説します。
キャリアプランの書き方、答え方のポイント
自分が目指す理想のみでなく、現在の自分の能力をどう活かし、どのような経験を積んでそれを実現していきたいかを具体的に伝えることがポイントです。応募企業のキャリアパスや仕事内容などに重ねて、入社後にどのようなステップを踏んでいきたいのか伝えると良いでしょう。
実現性や具体性を意識することが大事
実現性があること、具体的に取り組んでいくことなどを伝えることが大事です。現実から大きく離れているキャリアプランや、抽象的なキャリアプランを伝えても、「自社にマッチしていない」「現状を把握する力に欠けている」「実現できる説得力がない」と判断されてしまう可能性もあります。応募職種に対し、直近のキャリアをどう築いていくのかを伝えましょう。
プライベートに偏ったプランは避ける
キャリアプランは、目指すキャリアを実現するための行動計画なので、プライベートに偏った内容にしないことも大事です。また、「将来、起業したい」「いつか海外で働きたい」など、応募職種の業務に当てはまらないプランを伝えても評価にはつながらないので、避けた方が良いでしょう。
キャリアプランの構成
キャリアプランを伝える際には、以下の構成を参考にしましょう。
1:目標=自分が目指している姿
2:計画=具体的に取り組むこと
3:現在、取り組んでいること
4:応募企業で活かせること
以下の回答例文も参考にしてみましょう。
キャリアプランの回答例文【事務職】
後輩を指導できるリーダー的な存在になることを目指しています。
そのためには、PCスキルなどのレベルアップだけではなく、物事を言語化して第三者に伝える力が必要だと考えています。現在、社内の業務改善プロジェクトに参加し、業務を俯瞰して捉えその業務が必要か否かなどを周囲に説明する力を磨いています。
今後は、貴社(御社)の事務領域で、人材育成や組織生産性の向上に貢献していきたいと考えています。
キャリアプランの回答例文【営業職】
最も高い成果を出すトップ営業となることが目標です。
そのためには、既存の方法だけではなく、新しい市場の開拓や営業手法への取り組みが必要だと考えています。
現職では、これまで未開拓だった大手企業のグループ全体への提案に注力し、孫会社から営業をスタートした結果、1年かけて本社提案にたどり着くことができました。
時間はかかっても高い成果を挙げるために、貴社(御社)に入社後も戦略的に取り組んでいきたいと考えています。
キャリアプランの回答例文【未経験からの転職】
【ホテルの接客→IT企業の人事職に転職】
従業員がより満足度高く働ける職場をつくる人事になりたいです。
まずは現場の理解を深め、キャリアについてコミュニケーションの機会を作っていこうと思います。
前職のホテルの現場は、体力的にハードなために離職率も高い環境でした。本社や人事との接点がなく、キャリアが限定されることに課題を感じたため、経営陣との対話の場や現場管理職が集まって現場の声を届ける活動を行い、離職率低減に取り組みました。
今後は、現場の声も大切にしながら、従業員がモチベーション高く働ける環境づくりにこの経験を活かしたいと考えています。
キャリアプランを考えるメリット
キャリアプランを考えるメリットを理解し、目指すキャリアを実現していきましょう。
具体的な行動計画で行き詰まり感がなくなる
キャリアプランを作成することで、自分がどうなりたいのか、具体的にどのような行動をすればいいのかを定めることができます。20代、30代、40代など、キャリアを重ねていく中では、今後の人生のビジョンが見えずに悩んでしまうケースが少なくありません。キャリアプランによって、具体的な目標と行動計画を定めることで、モヤモヤとした行き詰まり感を解消することができるでしょう。
自分の人生のビジョンが見つかる
キャリアプランは、仕事だけでなく、どのような人生を歩みたいのかというプライベートな側面にも関係してくるものです。自分の人生について、キャリアとプライベートの双方について考える良い機会となるでしょう。5年後、10年後に向けて、進むべき道についてビジョンを明確にすることは、より良い人生の実現につながるはずです。
日々の仕事のモチベーションも上がる
自分の目標に向けてやるべきことが見えるため、日々の仕事におけるモチベーションも高めることができます。理想を実現するために、主体的に仕事に取り組めるようになれば、能力を高め、成果を出すことにもつながりやすくなるでしょう。
転職活動で自分にマッチする企業を見つけやすくなる
キャリアプランによって、今後の5年、10年の間にどのような経験・スキルを積めばいいのかが見えやすくなります。転職活動の際、自分の目指す将来像を実現していくための転職先を意識できるようになり、よりマッチする企業・仕事を選びやすくなるでしょう。
面接でキャリアプランを聞かれた際に役立つ
転職活動の面接では、今後のキャリアプランを聞かれることは少なくありません。その企業のキャリアパスを理解した上で志望していることが伝われば、「長く定着して活躍し続けてくれる人材」というアピールにつながるでしょう。
社内のキャリア面談などにも役立つ
転職しない場合でも、社内のキャリア面談で自分の考えを伝えやすくなります。目指すキャリアを実現するために役立つ仕事やプロジェクトなどにアサインしてもらうチャンスをつかみやすくなるでしょう。また、社内公募などで希望部署への異動やプロジェクトに参加を目指す場合にも、その理由や背景について、面接で明確な回答をすることができるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。