面接で聞かれることの多い質問のひとつが「自己PR」です。今回は、「積極性」を自己PRで伝える場合の例文やアピールする際のポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
「積極性」とは
積極性とは、自ら進んで働きかけを行う姿勢を指します。仕事では、基本的に受け身ではなく、主体的に行動する姿勢が求められます。そのため、積極性を自己PRでアピールする場合は、自ら行動を起こして周囲を引っ張り、成果を出したエピソードを伝えると効果的です。
積極性はどのような職種でも有効ですが、営業や販売などの対人系職種や、プロジェクトマネジャーやプロジェクトリーダーなど目標に向かってプロジェクトを牽引する役割、後輩を指導するリーダーなどの自己PRに向いているでしょう。
積極性の自己PR例文
積極性を伝える自己PRの例文を3種類の職種別にご紹介します。
営業の自己PR例文
営業活動では、積極性を強みとしています。
前職では、前任から引き継いだ時点で、9割以上の顧客は担当者としか会うことができない状態でした。そこで、決裁者と顔を合わせる機会を作るために、特別セミナーを開催して招待したり、商品企画とトライアルキャンペーンを設定して案内したりしました。その結果、6割程度の顧客で決裁者にアプローチすることができ、決裁スピードを大幅に短縮することに成功。また、積極的にご案内をした結果、顧客の社内紹介が増え、部門新規を月に5件以上獲得することができました。カスタマーサクセスとも連携して、新規顧客のアップセルも実現しています。こうした実績を活かして、貴社(御社)のサービス拡大に貢献したいと考えております。
販売の自己PR例文
店舗では、積極的な顧客対応を心掛けています。
現職での顧客対応は声かけが主だったのですが、「話しかけられたくない」「ゆっくり選びたい」と感じるお客様も多いので、従来とは異なる効果的なアプローチ方法が課題となっていました。そこで、無料コーディネートサービスの導入を提案。お好みをお伝えいただくか、事前にスマートフォンで手持ちのアイテムを撮影してもらえれば、予算内でお店の商品をご提案するというサービスです。SNSでもコーディネート例を発信したところ好評だったので、オンラインでもご相談を受けることにしました。サービス導入後の売り上げは165%アップと、とても良い成績をおさめることができました。今後も積極的な販売戦略を実行して、売り上げに貢献していきたいと考えております。
事務の自己PR例文
私は、積極性を意識しています。
現職では事務手続きのミスを防ぐために、紙のチェックシートを用いてダブルチェックを行っていたため、業務の生産性が低いことが課題となっていました。ただ、ミスを恐れて誰も進め方の見直しを行わなかったため、自ら「生産性向上プロジェクト」を立ち上げ、チェックフローをデジタルに変えた時にどのくらいミスが発生するのかを計測することにしました。その結果、業務によっては仕組みでミスを回避できることが分かり、業務量を月に10時間減らすことができました。現場の課題を解決しながら、事業に貢献していきたいと考えています。
積極性をアピールする場合のポイント
自己PRで積極性をアピールする場合のポイントについて解説します。
積極性がイメージできるエピソードを交える
自己PRのエピソードは、応募企業の採用担当者がイメージしやすいように、できるだけ具体的に伝えるようにしましょう。例えば「積極性を意識して顧客に働きかけました」だけだと、その人ならではのこだわりや具体的な行動が分かりません。自己PRは人柄や仕事に対する姿勢を確認する項目なので、自分の言葉を使って伝えるようにしましょう。
積極的に行動した結果を伝える
行動プロセスだけでなく、数値などを交えて結果も伝えることが大切です。「アピールできるほどの成果が出ていない」と遠慮してしまう方もいるようですが、数値で成果が出ていない場合は、「行動によって学んだこと」「自分や周囲に影響を及ぼしたこと」などを伝えるといいでしょう。
どのように応募企業で活かせるか伝える
自己PRの最後に、自身の強みがどのように応募企業で活かせるかを伝えると、より効果的です。求人の募集要項を確認して、アピールしたいこととの共通点を確認するといいでしょう。例えば求人に「リーダーシップを発揮して、周囲を引っ張る人材を求めています」と記載されていたら、「積極性を活かしてチームワークを高めたい」など、求める人物像にフィットした自己PRだと理想的です。
面接でははきはきと伝える
積極性を強みにする場合、人物像からも積極性が伝わらないと説得力がありません。面接で聞かれたことには、はきはきとした前向きな姿勢で臨み、納得感を与えることが大切です。
積極性を自己PRで伝える場合の注意点
積極性を自己PRで伝える場合に、気をつけておくことを2点ご紹介します。
応募する仕事とマッチしているか
積極性に限らず、自己PRの強みは応募する仕事とマッチするかどうかが大切です。例えば、求人に「ミスなく正確に仕事を進めることができる方」「お問い合わせに対して丁寧に対応できる方」などと記載されている場合は、積極性でも問題はありませんが、もし複数の強みを持っている場合は、「正確性」「コミュニケーション力」「ホスピタリティ」などの方がマッチするかもしれません。できるだけ、応募する仕事とマッチする強みを選ぶといいでしょう。
独りよがりになっていないか
「どんなことでも積極的に対応してきた」と、行動スタイルだけをアピールしてしまうと、採用担当者によっては独りよがりの印象を受けてしまうかもしれません。自分なりの目的意識や課題があって積極的に行動したということを、ひとつのストーリーとして伝えることが大切です。
自己PRの作り方の基本
自己PRの作り方の基本事項を解説します。基本事項を押さえて、強みを効果的に伝えましょう。
自己PRの基本的な構成
②強みの根拠となるエピソード
③強みを活かして活躍できること
①アピールしたい自分の強み
私の強みは〇〇だと考えております。
②強みの根拠となるエピソード
現職(前職)では○○業務に携わっていたのですが、○○という課題がありました。解決するために○○を提案し、実行に移したところ○○という壁にぶつかりました。プロジェクトの進め方を見直し、段階に分けて○○を導入するなどの工夫をしました。
課題を解決したことによって生産性が上がり、残業時間を○割削減することができました。
③強みを活かして活躍できること
この経験を活かして、御社の生産性向上に貢献していきたいと考えております。
自己PRをまとめる際のポイント
最初に伝える強みは、自分の経験・実績に基づいた内容に工夫することが大切です。例えば、「チャレンジ精神」を強みとする場合は「現状に満足せず、次の課題に向かい続けるチャレンジ精神」「未知の領域でも積極的に飛び込んでいくチャレンジ精神」など、経験・実績を端的に補足することで、冒頭だけで具体性が増し、他の応募者と差別化を図ることができるでしょう。
また、②のエピソードでは、取り組んだことだけでなく、成果や周囲からの評価を客観的に伝えましょう。できるだけ数字を盛り込み、状況をイメージしやすいキーワードを交えると、規模や状況が分かりやすくなります。
③の締め部分は、応募企業が力を入れていることに沿っていると、さらに効果的です。
自己PRに迷った場合は転職エージェントに相談を
転職エージェントは、求人の紹介だけでなく、キャリアの棚卸しのサポートや応募書類の添削なども行っています。もし自己PRの伝え方に迷っている場合は、転職エージェントに相談し、自己PRのポイントについて教えてもらいましょう。自己PRは応募企業から必ず聞かれる項目です。事前準備を万端にして、転職活動に臨みましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。