地方に転職することを、一般的にU・I・Jターンと呼んでいます。都会ほど住宅費がかからず、自然が豊かだったり、通勤の負担が軽かったりするなど、地方への移住には魅力が多いものです。その一方で、求人が少ないために、仕事探しに苦心する方もいるようです。そこで、地方への転職のポイントや求人の探し方について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
コロナ禍を機に地方移住への興味が高まっている
株式会社リクルートが、2021年8月に東京都在住の20~59歳の会社員を対象に、地方・郊外移住についてのアンケート調査※を実施しました。まず、地方や郊外への移住に興味があるかを聞いたところ、46.6%が「興味がある」と回答。年代間の回答傾向に大きな差異はなく、年代の違いに関わらず一定数の人が、都内から地方や郊外への移住に関心があることがわかりました。
アンケート調査は、新型コロナウイルスの流行が始まった1年後に実施しています。地方移住に興味がある人に、検討のきっかけと新型コロナウイルスの感染拡大との関係を質問したところ、「新型コロナの影響で、テレワークなどの柔軟な働き方が可能になったため、地方や郊外への移住に興味をもった」が最も高く(43.4%)、時間や場所を選ばない働き方の浸透が、人々の住まいへの意識に影響しているようです。
※出典:「コロナ禍2年目 東京在住者 地方・郊外移住、46.6%が興味あり 障壁は『仕事面の不安』が最多 テレワークの継続実施に関心」(株式会社リクルート)
【ターン種類別】地方移住の3つの種類
一般的に、地方移住は移動の形から、U・I・Jターンの3つに分類されています。それぞれ解説します。
Uターン転職
Uターン転職とは、地方で生まれ育った人が、学校や就職などで都会に移住し、その後、地元に戻って転職することを指します。“U”の文字のように、元の場所に戻ることからその名称がつけられています。
Iターン転職
Iターン転職とは、都会で生まれ育って働いていた人が、地方に転職することを指します。“I”の文字のように、一直線に地方に移住することからその名称がつけられています。
Jターン転職
Jターン転職とは、地方で生まれ育った人が学校や就職などで都会に移住し、その後、故郷とは異なる地方で働くことを指します。生まれ育った地域は求人が少ないために、故郷からほど近い地方都市で働くケースが代表的です。
地方の求人の傾向
U・I・Jターン転職をする場合は、希望するエリアの求人を探す必要があります。地方の求人の傾向をご紹介します。
求人が少ない
地方への転職を希望する際に、障壁のひとつになるのは求人の数です。厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況」の正社員の有効求人数(2022年度)では、上位4地域である東京都、大阪府、愛知県、福岡県の求人が全体の約3割を占めているという状況です。都市部に求人が偏っているため、地域によっては希望の条件の求人がほとんどないというケースも少なくありません。
出典:「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」(厚生労働省)
職種が限定的
地場の企業が多い地域もありますが、基本的に地方は企業が少ない傾向があります。そのため、都会でも求人が多くはない法務や広報などの管理系職種や専門職種は、地方で求人を探すのは難しくなるでしょう。
一方で、一次産業が盛んな地域では、農業・漁業・林業などで求人募集をしているケースが多く見られます。一次産業は人手不足のため、自治体が移住のサポートも含めて就業支援を行っている地域もあります。病院や介護施設などの医療系職種も求人があるため、資格を持っている方は転職で有利に働きます。観光地であれば、宿泊施設や飲食店などのサービス業が増えるため、接客や販売などの求人も多くなるでしょう。また、地域によっては工場関連の求人があることもあります。
給与が安い
都会に比べると、地方の求人は給与が安い傾向にあります。厚生労働省が発表している地域別の最低賃金の一覧でも、都会と地方では賃金に開きがあります。なお、都市部に本社があり、地方に拠点を持つ企業の場合は、地域で賃金を変えるケースは少ないため、地方にいても都市部と同じ給与を得ることができます。
地方への転職を成功させるポイント
地方への転職を成功させるために、知っておきたいポイントを3つご紹介します。
待遇にこだわりすぎない
地方の求人は多くはなく、賃金も都会に比べると低くなる傾向があります。そのため、待遇にこだわりすぎると求人が見つからなくなってしまいます。地方の場合は、住宅費が安くなる傾向があるため、収入が下がったとしても、支出も下がるのであれば使えるお金は同じです。地域によっては食費などが減る可能性があるかもしれません。転職先に求める条件は、生活スタイルや支出も含めて考えるようにしましょう。
地方の都市部を視野に入れる
地域にこだわりすぎると、求人が見つからず移住がままならなくなる可能性があります。希望の地域に移住できるのが理想ですが、求人が少ないようであれば、通勤時間が長くなりますが、希望地域から通える地方都市の求人も視野に入れて探しましょう。
時間をかけて仕事を見つける
希望地域に、条件にマッチした求人がすぐに見つかるとは限りません。もし地方への転職を検討しているのであれば、じっくり腰を据えて求人を探すことも大切です。そのために重要なのは、現在の仕事を辞めてしまわないこと。地方の転職の場合、面接で足を運ぶのに時間や費用がかかるため、退職して引っ越してから転職活動を始めようとする方もいますが、転職先が決まらなかった場合は焦りから不本意な転職をしてしまう可能性があります。できるだけ、転職先が決まってから退職手続きを行うようにしましょう。
地方求人の探し方
地方によっては、都市部のように数多くの求人があるとは限りません。地方での求人の探し方をご紹介します。
求人との出会いをできるだけ増やす
地方への転職では、できるだけ求人との接点を増やすことが大切です。全国の求人を掲載している転職サイトを調べたり、地場企業の採用ページを確認したり、地域のハローワークに相談したりするなど、求人との出会いの機会をできるだけ増やすようにしましょう。
テレワーク可能な企業を選ぶ
希望する地域の求人がなかなか見つからない場合は、都市部でテレワーク可能な企業を選び、地域に住むという方法があります。テレワークが可能で出社する機会がない企業であれば、どこに住んでいても仕事はできるからです。ただし、途中で制度が変わる可能性があるので、転職する場合は地域に移住するため、通勤は難しいことを伝えておきましょう。
地場企業に強い転職エージェントを活用する
地域に根差して転職支援を行っている転職エージェントに相談するのも有効です。その地域の求人動向を知っているため、希望する業界・職種の求人がどの程度あり、自身の経験・スキルで転職することができるかを事前に確認することができるでしょう。地場企業の採用支援を行っている転職エージェントであれば、ポジションを打診してくれる可能性もあります。
地方への転職もリクルートエージェントにご相談を
リクルートエージェントの場合、全国に16の拠点があるため、地方への転職の相談も受け付けています。オンライン面談も行っているため、地方への転職を検討している場合は、ぜひご相談ください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。