
今の仕事にやりがいが感じられないことで、「やりがいを感じないのが当たり前なのか」「やりがいを求めて転職してもよいものか」と悩んでいませんか。仕事にやりがいを見出せないときは、まずその理由を探ることから始めてみましょう。それぞれの理由に応じた対処法、転職のきっかけとなるサイン、やりがいある仕事を探す方法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
仕事のやりがいとは?そもそもやりがいは必要なの?
一般的にやりがいとは、「物事に取り組む際の充足感や手応え、張り合い」を意味します。したがって、仕事におけるやりがいというときは、「仕事や仕事の対価から得られる満足感や充足感」のことを指していると考えられるでしょう。
仕事を通じてやりがいを感じることで、日々の仕事に対するモチベーションが向上したり、業務により積極的に取り組めたりすることにつながり、さらなる成果を上げることも期待できるでしょう。そのような意味で、仕事のやりがいは、ビジネスパーソンにとって重要なものの一つであることが考えられます。
仕事にやりがいは必要?お金とやりがいのどちらが大事?
個々によって仕事に対する価値観は違うため、仕事にやりがいを求めるかどうかもそれぞれに違うと言えます。例えば、「やりがいのある仕事で人生を充実させたい」という人もいれば、「仕事はお金を稼ぐものだから、やりがいや楽しさは不要」という人もいるでしょう。
とはいえ、仕事とは、「人生を豊かにする要素」の一つに挙げられるものです。やりがいを感じる仕事に就くことで、日々のモチベーションがアップしたり、成果を上げて評価されたりすることで充実感を味わうケースもあります。一方、家庭や趣味などプライベートの要素を重視し、仕事とのバランスをとりながら人生を充実させていくケースもあります。
「お金とやりがいのどちらを重視すべきか」と悩むケースも見られますが、一概には言えないため、自分自身の仕事に対する価値観や将来に実現したい姿を考えてみることが重要になるでしょう。
「働く喜び」の重要性を感じている人は8割
株式会社リクルートが2024年に発表した「働く喜び調査2013―2023年の変化」では、全国の15歳~64歳の就業者の約4割が「働く喜び」を感じているという結果が出ています。また、全体の8割を超える就業者が「働く喜びが必要だ」と回答し、「働く喜び」の重要性を認めています。
多くの人が「働く喜び」の重要性を認識しながらも、実際にはその半数しか喜びを感じていないと見ることもできるでしょう。「働く喜び」は、仕事のやりがいとも相通じるところがあると考えられるため、これを仕事のやりがいに対する実感値とする見方もできそうです。
出典: 「働く喜び調査2013―2023年の変化」(株式会社リクルート)
仕事にやりがいを感じない8つの理由と対処法
仕事にやりがいを感じられない場合、「なぜ自分はやりがいを感じられないのか」という理由を分析してみましょう。考えられる理由の一例を紹介するので、自身に当てはまるものを探し、対処法を実践してみることをおすすめします。
1:仕事に意義を見出せない
現在の仕事に対して、「何のためにしているのか」「何の役に立っているのか」がわからないために、意義を感じられず、モチベーションも上がらないケースがあります。また、仕事の意義を認識している場合においても、「誰にでもできることだ」「自分がやる必要はないだろう」などと感じるケースもあるでしょう。
対処法
「何のためにこの仕事をするのか」という目的を見つめ直してみましょう。社会課題の解決や、自分のキャリアプランにおける位置づけといった視点で仕事を捉えると、仕事に取り組む意義や価値をあらためて認識できるかもしれません。職場の先輩や同僚に、仕事に対する思いや目的を聞いてみることで、これまで自分にはなかった見方や考え方に気づくことも期待できるでしょう。
2:仕事で成果が出せない
努力しているのにもかかわらず、思うような成果を出せない状況が続いたり、失敗を繰り返していたりすると、「この仕事は、自分には向いていない」と自信を失い、自己肯定感も下がってしまうことがあります。
対処法
成果を出している先輩や同僚に仕事の進め方や工夫しているポイントについて聞き、アドバイスを求めてみるのも一案です。また、上司などに身につけるべきスキルや仕事の進め方の改善点などの相談をすることで、解決策が見つかるかもしれません。
3:正当に評価されていない
自分の仕事ぶりや成果が正当に評価されていないと感じたためにやりがいを見失ったり、報酬に反映されないことでモチベーションが下がったりすることがあります。明確な評価制度や仕組みが整備されていない企業などで見られるケースです。
対処法
上司が求めていることに対し、自分が努力していることの方向性がズレていないか、確認してみましょう。例えば「目標数字を達成しているのに評価されない」と不満を抱いて上司と話し合った結果、「チームワークや後輩の育成などで活躍することが期待されている」と気付くケースもあります。「何を期待されているのか」「何をすればプラス評価されるのか」など、評価の指標を確認することで、努力目標が明確になるでしょう。
4:仕事内容に飽きてしまった
仕事に慣れて飽きてしまったり、ルーティン化したために張り合いを感じられなくなっていたりするケースです。「できなかったことができるようになった」「より重要な役割・大きな仕事を任される」といった機会がないと、成長の実感を得られず、物足りなく感じてしまうこともあるでしょう。
対処法
「今の仕事をより効率的に進める方法を模索する」「業務に必要な専門スキルを自ら学んで身に付ける」、など、自分なりの成長目標に向かうことで張り合いを感じられるかもしれません。「社内公募」の制度があれば、興味がある部署・職種に手を挙げてチャレンジすることで、新しいやりがいや成長機会を得られるケースもあります。
5:希望のキャリアを実現できない
「今の会社でこのまま働き続けても、希望するキャリアプランを実現できない」と感じ、仕事に対する意欲が下がるケースもあります。仕事内容そのものが目指すキャリアとズレている場合や、会社の昇進・昇格制度が機能していない場合などに起こりがちなケースです。
対処法
社内のキャリアパスや先輩社員のキャリア事例などを調べ、目指すキャリアプランを実現できる方法を探しましょう。「社内公募」などの制度を利用できないか検討したり、上司や人事部に異動や出向などの相談をしたりすることもできます。
6:達成したい目標がない
仕事において達成したいことが見つからず、目標を見失っているパターンです。また、与えられた目標が高すぎるために、達成する意欲が湧かず、モチベーションも上がらないというケースもあるでしょう。
対処法
これといった目標がない場合は、自分の強みや得意分野に目を向けて、そのスキルを伸ばすことを目標にするのも一案です。与えられた目標値が高すぎる場合は、1人で抱え込まず上司に相談しましょう。達成可能な目標に修正してもらえれば、取り組むモチベーションを高められるかもしれません。
7:職場環境が自分に合わない
「職場の上司やメンバーと相性が合わない」「組織風土になじめない」など、周囲の人とのコミュニケーションがうまくいかないことで、仕事のモチベーションが低下するケースもあります。また、こうした状況の中、周囲から仕事に対するフィードバックや評価を受けられなくなることで、やりがいを見出せなくなるケースもようです。
対処法
まずは上司に相談してみましょう。状況改善に向けた対処やチーム替えなどの対応をしてくれるかもしれません。また、上司だけでなく、人事部に相談する方法もあります。場合によっては、他の部署に異動することで問題を解決できる可能性もあるでしょう。
8:人や社会に役立っている実感がない
自分の仕事に対し、「ありがとう」と感謝される機会が少なかったり、人や社会の役に立っている実感を得られなかったりすることで、「何のために頑張っているのかわからない」と感じ、満足感や充実感を得られないケースもあります。
対処法
趣味や副業などを通じて、人に喜ばれたり、役に立ったりする活動に取り組んでみるのもおすすめです。そうした社外活動でやりがいや充実感を得られることで、本業の仕事でもいきいきと働けるようになる可能性があるでしょう。
仕事でやりがいを感じる瞬間の例
「仕事でやりがいを感じる瞬間」について、考えられる例を紹介します。
自分の成長を感じたとき
仕事を通じて自分の成長を感じたときに、やりがいを感じられるケースがあります。これまではできなかった業務をひとりで遂行できるようになったり、目標を達成できるようになったりした瞬間などが挙げられるでしょう。また、成長する中で、自分の思い描いていたキャリアに近づいていくことでよりやりがいを感じやすくなるケースもあります。
周囲に認められたとき
自分の仕事が評価され、上司や同僚に褒められたり社内で表彰されたりすることにやりがいを感じられるケースもあります。社内の関係部署や取引先、顧客などから頼りにされることで自分の能力に自信を持てるようになり、よりモチベーションがアップするケースもあるでしょう。
また、評価によって、より責任ある仕事を任されたり、昇級・昇格につながったりすることにやりがいを感じることもあるようです。
人から感謝されたとき
顧客から感謝の言葉をもらう瞬間などに、自分の力が人に役立つ喜びを感じられたり、自分自身の存在意義を実感できたりするケースがあります。また、職場の上司や同僚、関係部署の人々などに感謝されることで、信頼関係を築く喜びを味わえるケースもあるでしょう。
頑張りに対する報酬が得られたとき
自分の働きが認められ、頑張りに見合った報酬を得られることでもやりがいを感じられるでしょう。一方、「仕事の成果としてお金を得て、それをもとに趣味や家庭などのプライベート面を充実させる」という考え方もできるため、そこにモチベーションを感じるケースもあります。
目標達成や夢を実現できたとき
仕事を通じて、自分の目標を達成したり、夢を実現したりすることもやりがいの一つに挙げられます。自分なりに目標を掲げて達成していくことで、自己肯定感を高められるかもしれません。また、「こんなことに挑戦したい」「こんな世界を実現したい」という夢を持ってその仕事を選んだ場合は、その過程からやりがいを感じ、実現したときには大きな達成感を得ることができるでしょう。
仕事のやりがいの見つけ方11選
仕事のやりがいを見つけるために役立てられる11の方法を紹介していきます。
ほかの人の「やりがい」を参考にしてみる
周囲の人がどのようなことに仕事のやりがいを感じているかを知ることで、今まで気づかなかったやりがいを発見できる可能性があります。
例えば、「自ら戦略を立てて取り組んだプロジェクトが成功したとき」「自身の仕事が社会に影響を与えたとき」「顧客の困りごとを解決して感謝されたとき」「自身の成長を実感したとき」「実績が評価されて責任ある仕事を任されたとき」「思い描いたキャリアが実現できたとき」など、人それぞれにやりがいは違うので、周囲の人々に聞いてみることでヒントが見つかるかもしれません。
身近な目標を立ててみる
短期間に達成できるような身近な目標を立てて、ひとつひとつ達成することで成功体験を積み重ねていく方法もあります。目標をクリアしていく過程にやりがいを見出せたり、成功体験を繰り返す中で、成果を挙げる達成感や創意工夫する喜びなどが味わえたりすることが期待できます。そこから自身がやりがいを感じるポイントを発見することも可能でしょう。
周囲に「自分に向いていること」を聞いてみる
やりがいが持てそうな仕事を探してみても「何がしたいかわからない」「自分に向いている仕事がわからない」と感じるケースもあります。こうした場合は、職場や友人など周囲の人に「自分はどのようなときにいきいきしているか」「楽しそうにしているか」を聞いてみましょう。第三者の客観的な視点から見た自分を知ることで、「向いている仕事」「喜びを感じる仕事」に気付けるかもしれません。
例えば、同僚から「提案前の事前リサーチがとても緻密だよね」と言われて、自分が認識していなかった強みや特性に気付いた場合は、「情報収集スキルや分析力を伸ばしていく」という方向性で新しい目標を設定することもできるでしょう。
趣味や副業を通じてやりがいを探す
仕事から一時離れ、趣味の活動を楽しんだり、副業に没頭したりする方法もあります。好きなことや集中して取り組めることの中から、自分なりのやりがいを見つけることができるかもしれません。意外なことがヒントになり、本業でのやりがいにつながる可能性もあります。
好きなこと、楽しいことから考えてみる
やりがいのある仕事を求めて転職先を検討するときには、学生時代も含め、過去の経験の中から「好きなこと」「やっていて楽しいと感じたこと」を思い出してみるのもおすすめです。どのような部分にやりがいや喜びを感じていたのかまで考えてみましょう。「物事を分析することが面白い」「人から感謝される瞬間が嬉しい」「問題を解決するのが楽しい」など、具体的に掘り下げていけば、自分の志向や価値観を明確にしやすくなるでしょう。
自分の強みや人から評価されたことから考えてみる
やりがいを重視して転職先を選ぶのであれば、「自分の強みを発揮して活躍できること」を条件とするのも一案です。自分の強みを認識するためには、「成果・実績を出せた要因を探る」「同僚の仕事ぶりと比較してみる」「他者から評価されたときに言われたことを振り返ってみる」などの方法に取り組んでみましょう。
自分の強みを活かせる仕事を選んだ例としては、「単独で新規開拓営業を行うのは得意でないし、やりがいがない」という人が、「企画立案やプレゼン資料作成のサポートは楽しい」と気づき、営業マネジャーや営業企画を目指したケースなどが挙げられます。
自分が人生に求めていることを考えてみる
自分が人生に何を求めているのか、どのような将来を思い描いているのかを、あらためて考えてみましょう。その上で、「自分の求めることや将来像を実現するために、必要な経験は何か」を洗い出すことで、今の仕事に意義や価値を見出せるかもしれません。
また、仕事よりも趣味や家庭などのプライベートを重視する場合には、より充実させるために必要なお金について考え、収入をアップしていくことにやりがいを見出すこともできるでしょう。
「将来、なりたい自分」について考えてみる
10年後、5年後、3年後などの自分の姿をイメージし、「将来、こうなりたい」という理想像や未来像を考えることでも、やりがいを発見できるかもしれません。「どのようなポジションで、どのように活躍したいのか」といった、具体的なキャリアを思い描き、そこに向かう道筋を考えてみましょう。
また、仕事ではなく、ライフスタイルから考える方法もあります。「こんな生活がしたい」「プライベートを大切にするために、こんな働き方がしたい」などのイメージを描き、それを実現できる年収・ポジションを目指すことをやりがいとすることもできます。
「目標にしたい」と思える人を探してみる
自分の周囲から「こんな風に活躍したい」「この人のような存在になりたい」「この人のようにバランスよく働きたい」と思える人を探してみる方法もあります。将来の目標となるロールモデルを見つけることで、目指すキャリアや働き方などを具体的に実現していく道筋が見え、そこにやりがいを見出せるかもしれません。
「自分に向いている」「楽しい」と思えそうな仕事を探してみる
「今の仕事を続けている限り、やりがいが感じられない」という場合は、自分に向いている仕事や、楽しいと感じられる仕事を探してもみるといいでしょう。前述のように、「社内公募」に応募したり、上司や人事に相談して「社内異動」の可能性を探ったりすることもできます。
転職すると決めずに転職活動を始めてみる
「何にやりがいを感じるのかわからない」という場合は、転職すると決めないまま、転職活動を始めてみるのも一案です。求人サイトなどを閲覧し、「自分に向いていそう」「楽しそう」「成長できそう」「キャリアを実現できそう」など、やりがいを感じられそうな仕事を探してみることで、今後のキャリアも含め、新しい可能性を見つけられるかもしれません。
今の仕事にやりがいが見つからない場合は、転職するのも一つの方法
先に紹介した対処法を実践しても、「今の仕事に対するモチベーションが上がらない」「自分のやりたいことや、将来目指したいキャリアを実現できる環境がない」と確信した場合は、転職を検討してみる時期として捉えることもできます。
また、「とにかく今の仕事を辞めたい」「具体的なイメージはないけれど、転職したほうが自分の可能性を広げられるのでは?」などと感じている場合は、すぐに辞めるのではなく、今の仕事と並行して転職活動を始めてみるのも一つの方法です。さまざまな企業や仕事について知り、比較検討していく中で、現職のメリットや魅力に気付く可能性もあります。
例えば、憧れやイメージだけで転職活動を始めた結果、自分にマッチしない仕事や企業を選んでしまい、早期離職するケースもあります。一方、応募企業と現職を比較検討してみた結果、「今の仕事のほうが自分に合っている」「現職に残るほうが目指すキャリアを描きやすい」など、転職をしない結論に至るケースもあります。「自分にとってやりがいを感じられる仕事とは何なのか」を考え、転職活動でその可能性を探ってみることもおすすめです。
やりがいある仕事を探すために転職エージェントを役立てよう
自分にとってやりがいがある仕事を探すヒントをつかむために、転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。客観的な視点からキャリアの棚卸しや自己分析などをサポートしてもらうことで、自身では気付かなかった強みや志向を明確化できることもあります。
転職エージェントによっては、自身の強みや志向にマッチする求人の紹介に加え、選考通過率を高めるための面接対策アドバイスなども受けられるでしょう。やりがいある仕事への転職を実現するためにも役立てることができるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年06月25日
記事更新日:2024年09月11日
記事更新日:2025年03月18日 リクルートエージェント編集部