今の仕事にやりがいが感じられないことで、「やりがいを感じないのが当たり前なのか」「やりがいを求めて転職してもよいものか」と悩んでいませんか。仕事にやりがいを見出せないときは、まずその理由を探ることから始めましょう。それぞれの理由に応じた対処法、転職のきっかけとなるサイン、やりがいある仕事を探す方法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏がアドバイスします。
仕事のやりがいとは?
一般的にやりがいとは、「物事に取り組む際の充足感や手応え、張り合い」を意味します。したがって、仕事におけるやりがいというときは、「仕事や仕事の対価から得られる満足感や充足感」のことを指していると考えられるでしょう。仕事を通じてやりがいを感じることで、日々の仕事に対するモチベーションが向上したり、業務により積極的に取り組めたりすることにつながり、さらなる成果を上げることもできます。そのような意味でも、仕事のやりがいは、ビジネスパーソンにとって非常に重要なものといえるでしょう。
みんなは仕事にやりがいを感じている?
株式会社リクルートが2024年に発表した「働く喜び調査2013―2023年の変化」では、全国の 15 歳~64 歳の就業者の約4割が「働く喜び」を感じているという結果が得られています。また、全体の8割を超える就業者が「働く喜びが必要だ」と回答し、「働く喜び」の重要性を認めています。多くの人が、「働く喜び」の重要性を認識しながらも、実際にはその半数しか喜びを感じていないと見ることもできるでしょう。「働く喜び」は、仕事のやりがいとも相通じるところがあると考えられるため、これを仕事のやりがいに対する実感値とする見方もできそうです。
出典: 「働く喜び調査2013―2023年の変化」(株式会社リクルート)
仕事にやりがいを感じない8つの理由と対処法
仕事にやりがいを感じられない場合、まず「なぜ自分はやりがいを感じられないのか」という理由を分析してみましょう。よくあるパターンをご紹介しますので、自身に照らし合わせたうえで、理由に応じた対処を講じるとよいでしょう。
1:仕事に意義を見出せない
現在の仕事に対して、「何のためにしているのか」「何の役に立っているのか」が分からないことで、モチベーションが上がらず、虚しい思いをしているパターンです。また、仕事の意義を認識している場合においても、「誰にでもできることだ」「自分がやる必要はないだろう」などと感じているケースもあるでしょう。
そのようなときは、「何のためにこの仕事をするのか」という目的を見つめ直してみましょう。社会課題の解決や、自分のキャリアプランにおける位置づけといった視点で仕事を捉えると、取り組む意義や価値を改めて認識できるかもしれません。職場の先輩や同僚に、仕事に対する思いや目的を聞いてみることで、これまで自分にはなかった見方や考え方に気付くことも期待できるでしょう。
2:仕事で成果が出せない
努力しているのにもかかわらず、思うような成果を出せない状況が続いたり、失敗を繰り返していたりすると、「自分には向いていない」と自信を失ってしまうこともあります。
そのようなときは、成果を出している先輩や同僚と話し、やり方や工夫についてアドバイスを求めてみるのも一案です。また、上司などに身につけるべきスキルや仕事の進め方の改善点などの相談をするのもよいでしょう。
3:正当に評価されていない
仕事ぶりや業績が正当に評価されず、報酬にも反映されないと、モチベーションが下がって、やりがいを喪失してしまうケースもあるでしょう。明確な評価制度や仕組みが整備されていない企業で起こりがちな事態です。
そのようなときは、上司が求めていることと自身が努力している方向性がズレていないか、確認するとよいでしょう。例えば「目標数字を達成しているのに評価されない」と不満を抱いて上司と話し合った結果、「チームワークや後輩の育成といった行動が期待されている」と気付いたケースもあります。「何を期待されているのか」「何をすればプラス評価されるのか」など、評価の指標を確認することで、努力目標が明確になるでしょう。
4:仕事内容に飽きてしまった
仕事に慣れて飽きてしまったり、ルーティン化して、張り合いを感じられなくなっていたりするケースです。「できなかったことができるようになった」「より重要な役割・大きな仕事を任される」といった機会がないと、成長実感を得られず、物足りなく感じるようになりがちです。
そのようなときは、今の仕事をより効率的に進める方法を模索する、あるいは業務に必要な専門スキルをオンライン講座などを利用してブラッシュアップすることで、張り合いを感じられるかもしれません。「社内公募」の制度があれば、興味がある部署・職種に手を挙げてチャレンジしてもよいでしょう。
5:希望のキャリアを実現できない
「このまま働き続けても、希望するキャリアプランを実現できない」という状況です。仕事内容そのものが目指すキャリアとズレている場合や、会社の昇進・昇格制度が機能していない場合などに、こういったケースが起こりがちです。
そのようなときは、キャリアプランが実現できる方法を探りましょう。「社内公募」制度の利用を検討したり、上司や人事部に異動や出向などの相談をしたりといった方法があるでしょう。
6:達成したい目標がない
仕事をする上でのゴールが見つからず、目標を見失っているパターンです。また、与えられた目標が高すぎるために、達成意欲が湧かず、モチベーションが上がらないというケースもあるでしょう。
これといった目標がない場合は、自分の強みや得意分野に目を向けて、そのスキルを伸ばす方向の目標を設定するのも一案です。与えられた目標値が高すぎるケースでは、1人で抱え込まず上司に相談しましょう。達成可能な目標に修正してもらえれば、新たな目標に向かってモチベーションが上がることも期待できます。
7:職場環境が自分に合わない
職場の上司やメンバーと相性が合わない、組織風土になじめないなど、周囲の人とのコミュニケーションがうまくいかない状況は、周囲からのフィードバックが受けられないことと相まって、やりがいを阻害する要因となってしまっているようです。
そのようなとき、まずは上司に相談してみましょう。また、上司だけでなく、人事部に相談する方法もあります。場合によっては、他の部署に異動することで問題を解決できる可能性もあるでしょう。
8:人や社会に役立っている実感がない
自身の仕事に対し、「ありがとう」と感謝される機会が少なかったり、人や社会の役に立っている実感を得られなかったりすると、「何のため頑張っているのだろう」と虚しくなり、満足感を得にくいこともあるでしょう。
そのようなときは、趣味の活動や副業に目を転じて、人に喜ばれたり役に立ったりする活動に取り組んでみるのもおすすめです。そうした社外活動でやりがいや充実感を得られることで、本業でも生き生きと働けるようになる可能性があるでしょう。
仕事のやりがいの見つけ方
仕事にやりがいを感じられないときは、上記の8つの理由に応じた対処法に加えて、以下のような見つけ方も試す価値があるでしょう。
ほかの人の「やりがい」を参考にしてみる
周囲の人がどのようなことに仕事のやりがいを感じているかを知ることで、見過ごしていたやりがいを発見できる可能性もありそうです。「自ら戦略を立てて取り組んだプロジェクトが成功したとき」「自身の仕事が社会に影響を与えたとき」「顧客の困りごとを解決して感謝されたとき」「自身の成長を実感したとき」「実績が評価されて責任ある仕事を任されたとき」「思い描いたキャリアが実現できたとき」など、人それぞれのやりがいがあることに気付けるでしょう。
身近な目標を立ててみる
短期間に達成できるような身近な目標を立てて、ひとつひとつ達成することで成功体験を積むやり方です。目標をクリアしていく過程にやりがいを見出せたり、成功体験を繰り返す中で、成果を挙げる達成感や創意工夫する喜びなどが味わえたりすることが期待できます。そこから自身がやりがいを感じるポイントを発見することも可能でしょう。
自分の将来についてあらためて考えてみる
自分が人生に何を求めているのか、どのような将来を思い描いているのかを、あらためて振り返ってみるアプローチです。「自分の未来像の実現のためには、今の仕事を通じて経験を積むことが必要」といった視点で仕事を捉えることで、今の仕事の意義や価値を捉え直せるかもしれません。
趣味や副業でやりがいを探す
仕事からいったん離れ、趣味の活動を楽しんだり、副業に没頭したりする中で、自分なりのやりがいを見つけてもよいでしょう。意外なところから、本業でのやりがいにつながるヒントを発見できるかもしれません。
自分に向いている仕事や楽しいと思える仕事を探す
今の仕事を続けている限り、やりがいが感じられないという場合は、さらに自分に向いている仕事や、楽しいと感じられる仕事を探してもよいでしょう。前述のように、「社内公募」に応募したり、上司や人事に相談して「社内異動」の可能性を探ったりといった方法もあります。
転職活動を始めてみる
今の会社では、仕事のやりがいを感じることが難しそうな場合は、転職を検討するのもひとつの手です。求人サイトなどを閲覧し、「自分に向いていそう」「楽しそう」「成長できそう」「キャリアを実現できそう」など、やりがいを感じられそうな仕事があれば、今後のキャリアも含め、新しい可能性を見つけられるかもしれません。
好きなこと、楽しいことから考える
やりがいのある仕事を求めて転職先を検討する際には、学生時代も含め、過去の経験の中から、好きなこと、やっていて楽しいと感じたことを思い出してみるのもよいでしょう。そして、どのような部分にやりがいや喜びを感じていたのかを考えてみます。「物事を分析することが面白い」「人から感謝される瞬間が嬉しい」「問題を解決するのが楽しい」といった要領で具体的に掘り下げることで自身の志向を明確にできるでしょう。
自分の強みや人から評価されたことから考える
やりがいを重視して転職先を選ぶのであれば、「自分の強みを発揮して活躍できること」を条件とするのも一案です。自分の強みを認識するためには、「成果・実績を出せた要因を探る」「同僚の仕事ぶりと比較してみる」「他者から評価されたときの言葉を振り返ってみる」といった方法があるでしょう。
自分の強みを活かせる仕事を選んだ例としては、「単独で新規開拓営業を行うのは得意でないし、やりがいがない」という人が、「企画立案やプレゼン資料作成のサポートは楽しい」と気付き、営業マネジャーや営業企画を目指した例などが挙げられます。
周囲に「自分に向いていること」を聞いてみる
やりがいが持てる仕事選びに迷いが生じたときは、職場や友人など周囲の人に「自分はどのようなときに生き生きしているか」「楽しそうにしているか」を聞いてみましょう。第三者の客観的な視点から見た自分を知ることで、「向いている仕事」「喜びを感じる仕事」に気付けるかもしれません。
例えば、同僚から「提案前の事前リサーチがとても緻密だよね」と言われて、自分が認識していなかった強みや特性に気付いた人であれば、「情報収集スキルや分析力を伸ばしていく」という方向性などが見つけられるでしょう。
「将来、なりたい自分」について考えてみる
転職によってやりがいを得るために、10年後、5年後、3年後などの自分をイメージし、「将来、こうなりたい」という理想像、未来像を考える方法もあるでしょう。「どのようなポジションで、どのように活躍したいのか」といった、具体的なキャリアを思い描き、そこに向かう道筋を考えてみましょう。
また、仕事ではなく、ライフスタイルから考える方法もあります。「こんな生活がしたい」というイメージを描き、それを実現できる年収・ポジションを目指すことをやりがいとしてもよいでしょう。
仕事を辞めてもいい?転職のきっかけとなるサインは?
仕事のやりがいを求めて、転職という手段も選択肢に入ってきたとき、本当に仕事を辞めてもよいのか迷う人もいるでしょう。仕事のやりがいを求めて転職を検討する場合のヒントを紹介します。
転職のきっかけとなるサイン
これまでに紹介した対処法を実践しても、「モチベーションが上がらない」「今のままでは自分のやりたいことを実現できない」と確信した場合、それが転職のきっかけとなるサインかもしれません。そのタイミングで本格的に転職活動を始めるのも1つの方法といえそうです。
ただし、在職中の場合はすぐに現職を辞めるのではなく、今の仕事を続けながら転職活動をする方法もあります。さまざまな企業や仕事を見ていくうちに視野が広がり、新たな点を得られた結果、現職のメリットや魅力に気付くこともあるためです。
やりがいを持てない仕事を続けた場合はどうなる?
無理をして自分がやりがいを持てない仕事を続けた場合、目指すキャリアに必要な経験を積んだり、スキルを磨いたりする時間をロスしてしまうことにつながる懸念もあります。将来のキャリアビジョンを描くことで今後向かう方向が明確になった場合は、その方向性に注力することも有力な選択肢かもしれません。
「今の仕事を辞めたい」だけで転職しても大丈夫?
自分の将来について真剣に考えることなく、「とにかく今の仕事を辞めたい」「ほかの仕事の方がやりがいありそう」という衝動だけで転職することはおすすめできません。
特に、部署異動などでやりたい仕事に就ける可能性がある場合、安易に転職に踏み切らず、上司や人事部とも相談しながら検討する方がよいでしょう。
また、憧れやイメージだけで転職活動を始めると、結果的に自分にマッチしない仕事や企業を選んでしまい、早期離職につながることもあり得ます。転職を繰り返す事態を避けるためにも、自分にとってやりがいを感じられる仕事とは何なのかを、原点に立ち返って考えましょう。
転職エージェントに相談してみるのもひとつの方法
自分にとってやりがいがある仕事を探すヒントをつかむために、転職エージェントに相談してみるのもよいでしょう。客観的な視点からキャリアの棚卸しや自己分析などをサポートしてもらうことで、自身では気付かなかった強みや志向を明確化できることもあります。
転職エージェントに登録することで、自身の強みや志向にマッチする求人の紹介、選考通過率を高めるための面接対策アドバイスなども受けられます。目的に応じて活用するとよいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年06月25日
記事更新日:2024年09月11日 リクルートエージェント編集部