転職活動を始める前にキャリアプランを立てておくと、応募企業を探す際や面接での受け答えにも役立ちます。今回は、キャリアプランの立て方や面接で聞かれた時の答え方について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
キャリアプランとは?
キャリアプランとは、自分がなりたい姿ややりたい仕事を実現するために、中長期的なキャリア形成の計画を立てることです。現在の経験・スキルとなりたい姿のギャップを把握し、「○○の経験が足りないので、現在の会社で最低でも5年は○○の実務経験を身につける」「○○領域の経験を身につけるためにキャリアチェンジ転職にチャレンジし、10年後は○○として活躍したい」など、なりたい姿を実現するためのキャリアの見通しを明らかにします。
キャリアプランを立てておくと、転職活動だけではなく社内のキャリア面談で自分の希望を伝えやすくなります。その結果、任せられる仕事内容や人事異動に影響する可能性もあるでしょう。
企業がキャリアプランを聞く理由
面接でキャリアプランを聞かれることがあります。採用担当者は、どのような意図で応募者のキャリアプランを聞いているのでしょうか。考えられる代表的な理由を解説します。
自社にマッチしているか
応募者が実現したいキャリアプランは、自社にマッチし実現の可能性があるかどうかを確認しています。実現の可能性が低いと仕事へのモチベーションを維持できず、活躍してもらえない可能性があるからです。また、十分に企業研究ができているかを確認するという意図もあります。
計画的に行動しているか
自身のキャリアプランに従って、計画的に行動をしているかを確認したいという意図もあります。キャリアプランがなく成り行き任せに行動している場合、入社後もその場の気分で衝動的に辞めてしまう可能性があるからです。企業側としても、キャリアプランが明確であれば、入社後のキャリア形成の支援がしやすくなるという観点もあります。
成長意欲があるか
キャリアプランを聞くことで、将来的にどのような人物になりたいと考えているかを知るという意図もあります。高い目標を掲げて仕事に取り組んでいれば、「成長意欲」があると判断できるでしょう。成長意欲がある人材は、困難が訪れても「成長機会になる」と前向きに捉えて、壁を乗り越えようとする姿勢が期待できます。企業が成長するためには、従業員一人ひとりに強い成長欲求があり、前向きに取り組むモチベーションが必要だからです。
キャリアプランの立て方
これからキャリアプランを立てようとする方向けに、具体的なキャリアプランの立て方を解説します。
キャリアの棚卸しを通じて自己分析を行う
自分の強みや得意分野を発揮できる仕事でキャリアを積んだ方が、成果は出しやすくなります。キャリアプランを立てる前に、まずこれまでに経験した業務を書き出して、「キャリアの棚卸し」を行いましょう。過去の経験を書き出したら、「身につけたスキル」「仕事で大切にしたこと」「やりがいや面白さを感じた場面」などを洗い出し、強みや得意分野、自分のこだわりを明らかにします。
未来のありたい姿を考える
自分の強みや経験・スキル、大事にしている価値観、やりがいなどを整理して、未来のありたい姿を考えます。例えば、アイディアを発揮して社内を巻き込むことが得意であれば「営業しやすい販促支援のプランを考え、実行することで、自分のアイディアを形にしたい」、効率化が好きでITに興味があれば「RPAに深く関わり、いずれはITコンサルタントとして活躍したい」など、自分の強みや得意分野の延長線にある「ありたい姿」を言語化しましょう。なお、ありたい姿を設定する場合は、おおよその時期まで定めておくとキャリアプランに具体性が増します。
具体的なステップを明らかにする
未来のありたい姿を実現するために、現時点で不足している経験・スキルや知識を明らかにします。その経験・スキルは所属企業で身につけられるのか、不可能であればどのような企業であれば実現できるのかを考えてみましょう。また、ありたい姿を実現したい時期までに、習得できるかどうかも重要です。例えば「現在営業5年目。キャリアチェンジしてマーケティング経験を身につけ、10年以内にベンチャー企業のCMOになりたい」という目標を立てたとしたら、10年以内にマーケティング経験を身につけられるステップを明らかにする必要があるでしょう。
【職種別】キャリアプランの例文
キャリアプランの立て方は職種によって異なります。職種別のキャリアプランの例文をご紹介します。
事務
「業務効率化を推進する力を身につけたいと考えています。デジタルツールを導入するだけでなく、業務フローを明らかにして各プロセスの必要性を見直したり、事業環境の変化に応じてアウトソーシングやシェアードサービス企業との連携を行ったりと、抜本的な業務改革に関与していきたいと思います」
営業
「マーケティング観点や提案ノウハウを備えた営業として、マーケット開拓をリードしたいと考えています。そのために、SFAやCRMツールなどを活用した分析力、課題解決力も鍛えていきたいと思います。将来的には営業マネジャーとして、営業人材の育成も手がけたいです」
企画
「将来的にはCxO(COO/CFO/CMOなど)のポジションに就き、グループ会社の経営を担う人材になることを目指しています。DXを推進(M&Aを推進/IPOを実現/海外市場を開拓など)し、事業規模を拡大してシェアトップ獲得を牽引していきたいです」
エンジニア
「BtoB領域で、社会課題の解決につながる自社サービスを安定的に開発・運用していきたいと考えています。そのため、技術力と並行してピープルマネジメントのスキルも身につけ、エンジニアリングマネジャーを経て、将来的にはVPoEとして活躍することを目標としています」
管理職
「経理・財務および人事・総務など管理部門での実務経験を活かし、部門全体をマネジメントできる経験を積んでいきたいと考えています。経営層に対して戦略的な提案を行う、『攻めの管理部門』の構築を目指しています」
キャリアプランを聞かれた場合の答え方のポイント
応募企業の採用担当者からキャリアプランを聞かれた場合はどのように答えればいいのでしょうか。面接で意識しておきたい、3つのポイントをご紹介します。
他の回答との一貫性を意識する
中途採用の面接では、「志望動機」や「自己PR」、「転職理由」などの質問をされる傾向があります。これらの質問は、どれも志望理由や経験・スキル、強みを通じて、入社後にどのように働きたいかを確認していることもあります。そのため、キャリアプランとこれらの質問の回答に矛盾や乖離があると、回答の真実味に欠けてしまいます。入社後に実現したいこととキャリアプランは、一貫性を意識しましょう。
実現可能なキャリアプランにする
理想を高く持つことは大切なことですが、極端に高すぎて応募企業で実現の可能性が低いキャリアプランは、説得力に欠けてしまいます。また、応募企業に希望のキャリアパスが用意されていない可能性もあるので、事前に応募企業の求人や採用ページなどで情報収集し、キャリアプランが実現できそうかを確認しましょう。企業研究でキャリアプランが実現できるか分からない場合は、逆質問のタイミングで「私は、キャリアプランとして将来的に○○を実現したいと考えているのですが、御社でそのキャリアは実現可能でしょうか?」と確認するという方法もあります。
応募企業でどのように実現するか伝える
企業は面接の質問を通じて、「自社にマッチした人物か」「どのように貢献してくれるのか」「活躍の可能性があるか」という点を確認しています。面接前に応募企業の求人や採用ページを確認し、入社後の活躍イメージを描いておくことが大切です。自分のキャリアプランを伝えるだけでなく、応募した企業で実現できると考えた理由も明確に答えられるようにしておきましょう。
キャリアプランに類似する質問の回答方法
キャリアプランと同様に将来的に目指す姿を聞くために、違う聞き方をされることもあります。質問への回答のポイントをご紹介します。
Q.将来の夢はなんですか?
採用面接での質問なので、「海外に別荘を持ちたい」「スポーツカーを所有したい」など、仕事に関係のない夢は避けましょう。応募企業で実現可能性のある、仕事やキャリアを通じて実現したい「夢」を伝えることがポイントです。
Q.10年後はどのような仕事をしていたいですか?
自分のキャリアプランを10年先まで見通している場合は、10年後の姿を伝えましょう。もし10年後まで考えていなかった場合は、その場しのぎで言及することは避け、「○○年後に○○を実現したいというキャリアプランは考えておりましたが、10年後となるとイメージできていないかもしれません」と、正直に答える方法もあります。
「5年、10年後はどのような仕事をしたいか」という質問は、聞かれるケースも少なくないので、事前に考えておくといいでしょう。
キャリアプランに迷ったら、転職エージェントに相談してみよう
キャリアプランを設定する場合は、自己分析を行い未来のありたい姿を探り、具体的なステップを明らかにする必要がありますが、納得できるキャリアプランを一人で考えるのは難しいものです。考えている途中で迷いや悩みが生じることもあるでしょう。
転職エージェントは、転職市場の動向を掴み、豊富な転職支援実績があります。キャリアプランに迷った場合は、転職エージェントに相談してみましょう。一人では気づかなかった、キャリアのアドバイスを受けられるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。