
面接では、採用担当者からキャリアプランを聞かれることがあります。転職活動を始める際は、事前にキャリアプランを立てておくと、今後の方向性が明らかになり、面接で聞かれても一貫性のある受け答えができるようになるでしょう。そこで、キャリアプランの立て方や企業が聞く理由、例文などについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
目次
キャリアプランとは?
キャリアプランとは、自分が目指す姿ややりたい仕事を実現するために、中長期的なキャリア形成の計画を立てることです。現在の経験・スキルと目指す姿とのギャップを把握し、「○○の経験が足りないので、現在の会社で最低でも○年は○○の実務経験を身につける」「○○領域の経験を身につけるためにキャリアチェンジ転職にチャレンジし、○年後は○○として活躍したい」など、なりたい姿の実現に向けたキャリアの見通しを立てます。
また、キャリアプランを立てておくと、転職活動だけではなく社内のキャリア面談で自分の希望を伝えやすくなります。その結果、任せられる仕事内容や人事異動に影響する可能性もあるでしょう。
キャリアプランの立て方
これからキャリアプランを考える方向けに、具体的なキャリアプランの立て方を解説します。
キャリアの棚卸しを通じて自己分析を行う
キャリアプランを立てる前に、これまでに経験した業務を書き出して、「キャリアの棚卸し」を行いましょう。過去の経験を書き出すと、「仕事で大切にしたこと」「やりがいや面白さを感じた場面」「仕事で工夫したこと」「成果を出したこと」などに共通点があることがわかるでしょう。共通する要素が自分の強みや得意分野、仕事でのこだわりになるので、それらを発揮できるキャリアプランにすると、成果を出しやすくなるでしょう。
未来のありたい姿を考える
自分の強みや経験・スキル、大事にしている価値観、やりがいなどを整理して、未来のありたい姿を考えます。
例えば、アイディアを発揮して社内を巻き込むことが得意であれば「営業しやすい販促支援のプランを考え、実行することで自分のアイディアを形にしたい」、効率化が好きでITに興味があれば「RPAに深く関わり、いずれはITコンサルタントとして活躍したい」など、自分の強みや得意分野の延長線にある「ありたい姿」を言語化しましょう。
なお、ありたい姿を設定する場合は、おおよその時期まで定めておくとキャリアプランに具体性が増します。
具体的なステップを明らかにする
未来のありたい姿を実現するために、現時点で不足している経験・スキルや知識を明らかにします。その経験・スキルは所属企業で身につけられるのか、不可能であればどのような企業であれば実現できるのかを考えてみましょう。また、ありたい姿を実現したい時期までに、習得できるかどうかも重要です。
例えば「現在営業5年目。キャリアチェンジしてマーケティング経験を身につけ、10年以内にベンチャー企業のCMO(Chief Marketing Officer)になりたい」という目標を立てたとしたら、10年以内にマーケティング経験を身につけられるステップを明らかにする必要があるでしょう。
面接で企業がキャリアプランを聞く理由
面接でキャリアプランを聞かれることがあります。採用担当者は、どのような意図で応募者のキャリアプランを聞いているのでしょうか。考えられる代表的な理由を解説します。
採用のミスマッチを防ぐため
採用担当者は、応募者のキャリアプランが自社にマッチし、実現の可能性があるかどうかを確認しています。キャリアプランが自社の働き方や仕事内容、人事制度などにマッチしていれば、長く活躍してもらえると期待するでしょう。逆に、キャリアプランが合わない場合は、モチベーションが低下して活躍の機会が減ってしまい、早期離職の原因になると考えている可能性があります。
計画的に行動しているかを確認するため
キャリアプランの質問は、応募者が立てたキャリアプランに従って、計画的に行動をしているかを確認したいという意図もあるでしょう。キャリアプランがなく成り行き任せに行動している場合、入社後も衝動的に辞めてしまうかもしれません。企業側としても、キャリアプランが明確であれば、入社後のキャリア形成の支援がしやすくなるという観点もあります。
成長意欲があるかを確認するため
キャリアプランを聞くことで、将来的にどのような人物になりたいと考えているかを知るという意図である可能性もあります。高い目標を掲げて仕事に取り組んでいれば、「成長意欲」があると判断できるでしょう。成長意欲がある人材は、困難が訪れても「成長機会になる」と前向きに捉えて、壁を乗り越えようとする姿勢が期待できます。
企業が成長するためには、従業員一人ひとりに強い成長欲求があり、前向きに取り組むモチベーションを必要としている場合もあるでしょう。
【職種別】キャリアプランの例文
職種別のキャリアプランの例文を紹介します。キャリアプランの立て方は人によって異なりますが、職種に応じてキャリアプランを立てる際に参考にしてみてください。
事務
【ポイント】
やりたいことだけでなく、「アウトソーシング」や「シェアードサービス」など具体的な手法まで言及し、強い意欲を伝えています。
営業
【ポイント】
営業としての一貫したキャリアプランになっており、営業として成長したいという意欲やスタンスが伝わる内容になっています。
企画
【ポイント】
自身が実現したいポジションややりたいことを伝えるだけでなく、将来的に応募企業にどのように貢献するのかをアピールできています。
エンジニア
【ポイント】
目指す姿を実現するために、入社後に得たいスキルや目標までのキャリアパスを補足することで、計画的なキャリアステップを考えていることが伝わります。
リーダー
【ポイント】
入社後に実現したい目標とプロセスを伝える一方で、中長期的なキャリアパスやチャレンジ精神、事業貢献意欲などもアピールできています。
管理職
【ポイント】
キャリアプランを通じて、これまでに培った経験・スキルがアピールできています。また、管理職としての姿勢も伝わります。
【年代別】キャリアプランの例文
キャリアプランの立て方は年代によっても異なります。年代別のキャリアプランの例文をご紹介します。
20代
【ポイント】
20代はまだ社会人経験が短いため、目標を高くしすぎると現実感が乏しくなってしまうかもしれません。企業に伝えるキャリアプランは、10~15年先までを意識すると良いでしょう。
30代
【ポイント】
社会人経験をある程度積み、リーダーシップを求められることも増えてくるであろう30代では、自身のキャリアとともに推進力や事業・会社へのインパクトなども意識すると良いでしょう。
40~50代
【ポイント】
専門性の高さやマネジメント経験を求められる可能性がある40~50代では、豊富な経験を活かして何を実現したいのかを、根拠を交えながら具体的に伝えましょう。
キャリアプランの気をつけたい例
キャリアプランを伝える際に、気をつけておきたいNG例を解説します。
志望動機や転職理由などと一貫性がない
志望動機や転職理由などと関連性がないキャリアプランを伝えてしまうと、採用担当者はどれが本当のことなのかわからなくなってしまうこともあるでしょう。面接で質問された回答に一貫性がないと、採用担当者からの印象が曖昧になってしまうこともあるので、他の回答とのつながりを意識して答えるようにしましょう。
応募企業で実現できない
例えば、海外展開をしていない国内企業に対して「グローバルに活躍したい」と伝えるなど、明らかに応募企業で実現できないキャリアプランのケースです。採用担当者に、「企業研究をしていない」「深く考えていない」と懸念される可能性があります。事前に応募企業の求人や採用ページなどで、自身のキャリアプランが実現できるかどうかを確認しておきましょう。
自分本位になっている
キャリアプランを聞かれた際に、自分がやりたいことや学びたいことだけを伝えると、一方的で自分本位な印象を与えかねません。また、具体的なキャリアステップがないまま、「将来は社長になりたい」など、実現可能性が低いと感じられるキャリアプランも避けた方が良いでしょう。
採用担当者は、キャリアプランの質問を通じて、自社にマッチし活躍してもらえるかどうかを確認しています。「応募企業でどのように活躍したいのか」「どのような成果を出したいのか」など、自分のキャリアだけでなく、応募企業への関りや影響も意識するようにしましょう。
キャリアプランを聞かれた場合の答え方のポイント
応募企業の採用担当者からキャリアプランを聞かれた場合はどのように答えれば良いのでしょうか。面接で意識しておきたい、3つのポイントをご紹介します。
他の回答との一貫性を意識する
中途採用の面接では、「志望動機」や「自己PR」、「転職理由」などの質問をされるケースがあり、これらの質問を通じて、入社後にどのように働きたいかを確認していることもあります。キャリアプランとこれらの質問の回答に矛盾や乖離があると、回答の真実味に欠けてしまいます。入社後に実現したいこととキャリアプランは、一貫性を意識しましょう。
実現可能なキャリアプランにする
理想を高く持つことは大切なことですが、極端に高すぎて応募企業で実現の可能性が低いキャリアプランは、説得力に欠けてしまいます。また、応募企業に希望のキャリアパスが用意されていない可能性もあるので、事前に応募企業の求人や採用ページなどで情報収集し、キャリアプランが実現できそうかを確認しましょう。
企業研究でキャリアプランが実現できるかわからない場合は、逆質問のタイミングで「私は、キャリアプランとして将来的に○○を実現したいと考えているのですが、御社でそのキャリアは実現可能でしょうか?」と確認するという方法もあります。
応募企業でどのように実現するか伝える
企業は面接の質問を通じて、「自社にマッチした人物か」「どのように貢献してくれるのか」「活躍の可能性があるか」という点を確認しています。面接前に応募企業の求人や採用ページを確認し、入社後の活躍イメージを描いておくことが大切です。自分のキャリアプランを伝えるだけでなく、応募した企業で実現できると考えた理由も明確に答えられるようにしておきましょう。
キャリアプランに迷ったら、転職エージェントに相談してみよう
キャリアプランを設定する場合は、自己分析を行い未来のありたい姿を探り、具体的なステップを明らかにする必要がありますが、納得できるキャリアプランを一人で考えるのは難しいものです。考えている途中で、迷いや悩みが生じることもあるかもしれません。
転職エージェントは、転職市場の動向を掴み、豊富な転職支援実績があります。キャリアプランに迷った場合は、転職エージェントに相談してみましょう。一人では気づかなかった、キャリアのアドバイスを受けられるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年09月19日
記事更新日:2025年03月31日