職場に馴染むことができずに、「どうすればいいかわからないまま孤立してしまった…」「ほかの同僚は仲がいい現場なのに、馴染めないのは自分のせい?」「1年経っても馴染めないから転職した方がいいの?」などの悩みを抱えているケースは少なくないものでしょう。
職場に馴染めない理由や乗り越えるための対処法について、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が解説します。
目次
職場に馴染めない理由とは?
まずは、「職場に馴染めない」と感じるときによくある理由を紹介します。
入社・異動した新しい職場に慣れていない
入社直後や異動直後などの場合は、組織における暗黙のルールに戸惑ったり、職場の人間関係をつかみにくかったりするものです。新しい職場でどのように振る舞えばいいのかわからず、慣れない環境の中でストレスが溜まってしまう人は少なくないでしょう。しかし、誰しも環境の変化に慣れるまでには一定の時間がかかるものなので、「数カ月経ったら、自然に馴染んでいた」というケースも多いと言えます。
コミュニケーションスタイルが合わない
上司・先輩・同僚などとコミュニケーションスタイルが合わない場合は、人間関係がぎくしゃくしてしまいがちです。例えば、「自分は論理的に対話したいが、感情論で語られる」「自分はプライベートのことを話したくないが、プライベートの話題をよく振られる」などのケースがあります。自分が望まないコミュニケーションを求められることに抵抗感を抱き、「会話することがストレスになっている」「1年経っても職場に馴染めず、居場所がない」などと感じてしまう人もいるでしょう。
仕事のやり方が合わない
新しい職場の仕事のやり方や進め方に戸惑ったり、違和感を覚えてしまったりするケースもあります。例えば、「綿密に計画を練ってから行動に移したい」というタイプの場合は、「まず行動してみて、状況を見ながら軌道修正していく」という仕事の進め方には馴染めないかもしれません。転職後、一定以上の時間が経っても仕事に慣れないと感じてしまうことで、「転職先が合わない」「自分には馴染めない」と思ってしまう人もいるでしょう。
社風が合わない
転職先の社風が合わないことで「馴染めない」と感じてしまうケースもあります。例えば、「管理職がチーム全体を細かく管理し、チームワークで目標を達成していく」という社風もあれば、「個人の裁量が大きく、個々の成果を評価する」などの社風もあります。入社後にギャップを感じたことで「前の会社の方が自分に合っていた」と思う人もいるでしょう。
また、イベントが多い社風や、サークルのように和気あいあいと働く社風などが「合わない」と感じてしまうケースもあります。例えば、「仕事とプライベートをきっちり分けたい」という人にとっては、「イベントに参加したくないが孤立してしまうかもしれない」と悩んだり、「仲が良すぎる職場が合わない」とストレスを感じたりしやすいでしょう。
職場の人間関係で合わない人がいる
職場の人間関係で、合わない人や苦手な人がいるために、馴染めないケースもあります。毎日、同じ職場で一緒に働くために、相性が悪い人がいること自体にストレスを感じて「辞めたい」と思ってしまう人もいます。
また、パワハラ、セクハラのような言動をする上司・同僚などがいる職場の場合は、よりストレスを感じやすいでしょう。
仕事が合わない、楽しくない
「今の仕事は自分に合わない」「仕事が楽しくない」など、仕事そのものに対する不満や物足りなさを感じていることから、「この職場は合わない」「自分には馴染むことができない」と思ってしまう人もいます。例えば、「やりがいのある仕事や役割を任せてもらえない」「周囲から評価されない」「同じ仕事の繰り返しで成長実感がない」「仕事の将来性を感じられない」などのケースが挙げられます。
職場に馴染めない人によくある特徴
「職場に馴染めないのは自分のせい?」と悩んでしまう人もいるでしょう。ここでは、職場に馴染めない人によくある特徴を解説します。自分に当てはまることがないか考えてみましょう。
自分から挨拶をしない
挨拶を交わすことはコミュニケーションの基本であり、ビジネスシーンも含め、人間関係の構築において重要なものと言えます。新しい職場に入った際、一緒に働く上司や同僚などに対し、自分から挨拶をしていない場合は「職場に馴染もうとしていない」と思われてしまう可能性があります。また、「笑顔が乏しい」「目を合わせない」「挨拶されてもきちんと挨拶を返さない」などの場合は、「とっつきにくい」「話しかけにくい」「人間関係を構築しにくい」などの印象を持たれているかもしれません。
転職してから一定以上の時間が経っても自分から挨拶をしなかったり、きちんと挨拶を返さなかったりしたことで、マイナスな印象が根付いて孤立してしまうケースもあります。
仕事を前向きに楽しもうとしていない
「仕事そのものが好きでない」と感じている人の場合、仕事に向き合う姿勢も後ろ向きになる傾向があると言えます。業務の中で「つまらない」「面倒くさい」「やりたくない」「早く帰りたい」など、ネガティブな発言をしたり、仕事を振られることを嫌がるような行動を取ったりするうちに、職場の上司や同僚から「仕事を進めにくい」「信頼できない」と思われてしまう可能性があるでしょう。
人と協力・連携することが苦手
周囲と協力し合ったり、連携したりすることが苦手な人も職場に馴染みにくいと言えます。仕事においては、チームや職場のメンバーと協力・連携することが求められる場面が少なくありませんし、誰かをフォローすることもあれば、自分がフォローしてもらうこともあるものです。
自分のペースで仕事を進めることや、担当する業務範囲に強くこだわりを持ち、協力し合う意識を持っていない場合は、「協調性がない」「全体のことを考えていない」と思われてしまうこともあるでしょう。
コミュニケーションが苦手で会話をしない
コミュニケーションが苦手なために、「職場の人と仲良くならなくてもいい」などと考え、業務に必要なこと以外の会話を避けてしまう人もいます。しかし、業務以外の雑談などを通じて会話するうちに、一緒に仕事を進める相手の考えを理解しやすくなりますし、自分のことも理解してもらいやすくなるものです。
こうした会話を避けることで、周囲から「どのような考え方をする人なのかわからない」「一緒に仕事しにくい」と思われてしまうケースもあるでしょう。
相手の話を聞かない
上司や同僚などの話を聞かず、自分の意見のみを主張してしまう人も孤立してしまう可能性があります。打ち合わせや会議などで、他のメンバーの意見を聞かず、反対意見ばかり出している場合も、ネガティブな印象を持たれてしまいやすいでしょう。
また、転職・異動して1年目の場合などは、新しい仕事に早く慣れることが必要ですが、自分のやり方や前職での仕事の進め方にとらわれてしまい、上司や先輩の話を聞こうとしない人もいます。周囲のアドバイスを受け入れないことで職場に馴染みにくくなってしまうだけでなく、仕事の飲み込みまで遅くなってしまうケースもあります。
周囲の目が気になりすぎてしまう
上司や先輩の評価など、周囲の目が気になりすぎてしまうことで、自然に振る舞えなくなってしまうケースもあります。それによって職場の人間関係をうまく築くことができず、孤立してしまう人もいるでしょう。評価を気にしすぎるあまり、仕事について必要な知識を聞きにくくなってしまう場合は、「仕事を覚えるのが遅い」「安心して仕事を任せられない」と思われてしまうケースもあります。
職場に馴染めない場合の対処法と考え方
「職場に馴染めない」と感じた場合の対処法と考え方を紹介します。
積極的にコミュニケーションを取る
職場の上司や同僚に対し、自分から話しかける機会を増やしましょう。仕事に関する質問や相談をするだけでなく、「何かお手伝いすることはありますか」などと話しかけ、組織や周囲の人々のために役に立とうとする姿勢を見せることでも、信頼関係を築きやすくなります。
また、同僚に趣味や休日の過ごし方などを聞き、自分から雑談をしてみるのもいいでしょう。その際、自分のプライベートも話すなど、「自己開示」をすることで相手との距離を縮めやすくなります。職場の近辺でおすすめの飲食店などを聞き、ランチなどに誘ってみる方法もあります。
「自分から話しかけるのが苦手」という場合は、笑顔で挨拶することから始めてみましょう。「親しみやすい人」「感じがいい人」という印象を抱かれれば、相手の方から話しかけてもらえるようなるかもしれません。
バックグラウンドが近い人とつながりをつくる
社内で自分とバックグラウンドが近い人や共通点がある人を探し、つながりをつくりましょう。例えば、「同時期に中途入社した人」「出身校が同じ人」「共通の趣味を持つ人」「子どもの年齢が近い人」など、自分と共通の話題がある相手なら、より話しやすいでしょう。社内に話しやすい人ができることで、安心感が生まれ、居心地の悪さを解消できる可能性があります。社内でのサークル活動やイベントなどに参加してみれば、より多くの人と会話できるので、そうした相手を探しやすいでしょう。自分の所属するチームや部署以外の人とも仲良くなれるかもしれません。
組織のルールを一旦受け入れてみる
自分に合わないと感じる組織のルールやカルチャーに対しても、「一旦受け入れてみる」というスタンスを持ちましょう。先入観から「自分に合わない」と思い込んでいる可能性があるので、一度、素直な気持ちで受け入れてみれば意外と馴染めるかもしれません。例えば、「服装・身だしなみを合わせる」「社内の言葉遣いに合わせ、社内用語を覚えて使う」「プロジェクト終了後の打ち上げ飲み会などに参加する」などが挙げられます。
また、仕事を進める中で「前の会社のやり方の方がいい」と感じることがあっても、批判することから入らず、一度、受け入れてみることも大事です。その上で、「やはりこのやり方は効率が悪い」などの問題を感じた場合は、チーム全体や周囲のためになることを前提に改善方法を考え、上司に提案してみるのもいいでしょう。
仕事を早く覚え、成果を出すことに集中する
「仕事で成果を出すこと」は、「組織に貢献すること」につながります。早期に仕事を覚えて成果を出していけば、周囲からの評価につながりますし、職場における自分の存在価値を感じることもでき、居心地が良くなるでしょう。
なるべく早く仕事内容をキャッチアップし、成果につなげていくためにも、上司や先輩に質問するだけでなく、「先輩の仕事に同行・同席して見て学ぶ」「資料を読み込んでインプットする」「積極的に情報収集する」「上司からフィードバックをもらう」などに努めましょう。
「職場に馴染む必要はない」と割り切る
「どうしても社風が合わない」「自分から歩み寄った結果、職場の人間関係が合わない」と感じた場合は、仕事は仕事として割り切るのも一つの方法と言えます。「職場に馴染めないのは自分のせいではないか」と自分自身を責め続け、ストレス過多になってしまう人もいるので、「無理をしてまで馴染む必要はない」「仲良くなれなくても気にしないで、仕事をきちんとやればいい」など、割り切って考えた方がいいケースもあります。
自分の役割・業務をしっかりと果たすことに集中することで、ストレスを軽減することができるかもしれませんし、きちんと成果を挙げていくうちに周囲からの信頼を得ることもできます。自分にとって無理のない距離感でつき合っていくことも可能でしょう。
周囲の目や評価を気にしすぎない
周囲の目や評価を気にしすぎてしまう場合は、「気にしない」という意識を持つ方法もあります。最初から「どう思われるか」「評価されないのでは」などと気にしすぎて悩んでしまうより、「目標達成に向かう中で悩んだり迷ったりしたときに、上司や先輩に相談して意見やアドバイスを求める」と考えることが大事です。
また、転職先や異動先の仕事を覚える中で、「こんな質問をしたら仕事ができないと思われるのでは」「質問ばかりすると迷惑に思われるのでは」などと悩んでしまう人もいますが、仕事を早く習得するために必要なことだと考えましょう。
信頼できる相手に相談してみる
家族やパートナー、友人など、信頼できる相手に相談してみれば、客観的に自分が置かれている状況を見つめ直すことができるでしょう。また、第三者のアドバイスを受けることで、改善した方がいいことが見つかったり、「職場に馴染めないのは自分のせいだと思いすぎなくてもいい」と感じたりする可能性もあります。自分一人で悩まず、人の意見を聞いてみることも大事です。
部署異動や転職を検討してみる
さまざまな対処法に取り組んでも「やっぱり馴染めない」と感じた場合は、環境そのものを変えた方がいい可能性もあります。部署異動やチーム替えの希望を出したり、より自分にマッチする環境を求めて転職したりすることを検討してみるのも一つの方法です。
「どうしても合わない」辞めた方がいい職場の特徴とは?
今の職場がどうしても合わないと感じた場合でも、「このまま辞めてもいいのだろうか」と悩んでしまう人もいるでしょう。ここでは、辞めた方がいい可能性がある職場の特徴を解説します。
「パワハラ・セクハラがある」「残業が多い」など、労働環境に問題がある
明らかにパワハラ・セクハラなどがある職場の場合は、転職を検討してみることも大事です。また、「残業が常態化している職場のために残業を断れない雰囲気がある」「慢性的な人手不足の職場のために、有給休暇の申請がしにくく、休日出勤なども当たり前というムードがある」など、労働環境が良くない場合も、辞めた方がいい可能性があります。
一方、早期に成長したい人や仕事で挑戦をしたい人にとっては、「適度に負荷のかかる仕事を任せてくれない」「残業してどんどん仕事を進めたいのに、帰らなくてはならない」「上司や先輩が優しすぎるから、もっと厳しく指導してほしい」など、成長や挑戦ができない環境に不満を抱くケースもあります。こうした場合も、自分にとってどのような環境が適切なのかを検討してみることが必要でしょう。
数年経っても職場に馴染めないと感じている
転職や異動をしてからしばらく経っても「なかなか職場に馴染めない」と感じている場合でも、先に紹介した対処法に取り組むことで、職場に馴染める可能性があります。しかし、自分から馴染もうとする努力をした結果、「やっぱり合わない」と感じてしまう人もいるでしょう。
「職場に馴染めないのは自分のせい」と自分を責めてしまうケースは少なくありませんが、「同僚や上司との距離感が近すぎる職場が合わない」という人もいれば、「個人成果主義の社風に馴染めない」という人もいます。ある程度の時間が経っても職場に馴染めていない場合には、自分によりマッチする職場環境を得るために転職を検討してみる方法もあります。
職場に馴染めず、転職を検討する場合に注意したいポイント
今の職場に馴染めずに転職を検討する場合には、以下のポイントに注意しましょう。
自分に合う職場についてきちんと考える
転職の際、待遇などの条件面のみを重視し、社風や人間関係、仕事内容が合わない職場を選択して後悔するケースは少なくありません。現職の職場に対する不満のみを理由に転職した場合、転職先でも「やっぱり自分に合わない」「馴染めない」という悩みを繰り返す可能性があります。まずは転職先に求めることを明確にし、自分に合う職場を選択することが大事です。
応募企業の職場環境や社風を確認する
応募企業の職場環境や人間関係、社風、仕事内容などをしっかりと確認しましょう。企業の採用ページで、企業理念や企業文化、仕事の進め方などを確認したり、先輩インタビューを読み込んだりすることで、自分に合う職場環境があるのか検討しやすくなります。企業のSNSなどで、事業の方向性、仕事内容、仕事の進め方、キャリアパス、評価制度などの情報を発信しているケースもあるので、チェックしてみましょう。
また、選考過程や内定後などに、先輩との面談や職場見学をさせてくれる企業もあります。直接聞きたいことを質問したり、職場の雰囲気を見たりすることで、自分にマッチするか判断しやすくなるでしょう。
転職エージェントに相談してみる方法もある
転職エージェントでは、求職者の希望や経験・スキルにマッチする企業を紹介してくれます。待遇などの条件だけでなく、職場環境や人間関係・社風などについても希望を伝えて相談することができることもあるので、自分に合う職場が見つかりやすくなるでしょう。
また、担当のキャリアアドバイザーが紹介する企業についてより詳しい情報を把握していることもあります。求人票や企業ホームページのみでは把握できない職場環境についても、教えてもらえる可能性があるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。