上司との関わりは、普段のコミュニケーションだけでなく評価や査定にも影響するため、関係性が良くないとストレスの原因になります。嫌いな上司がいる場合、どのように付き合い、対処したらいいのでしょうか。
嫌いな上司への対処法や退職するかどうかの判断軸を、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職のきっかけは、4人に1人が「上司のマネジメントへの不満」と回答
株式会社リクルートが転職活動中の個人に調査を実施したところ、転職を考えるようになったきっかけは「会社の将来が不安」「成長できる環境で働きたい」「より責任ややりがいのある仕事がしたい」という回答が上位となっています。
ただし「上司のマネジメントに不満を感じるため」という回答も「全体で25.9%」と4人に1人が転職のきっかけに感じていることが分かりました。上司への不満は、仕事の満足度に影響を及ぼす原因のひとつと言えそうです。
出典:「転職活動者調査 第3弾 魅力的な職場の上位は、人間関係の良さと成長機会の多さ」(株式会社リクルート)
異動や転職の前に改善努力が重要
上司に不満を持っていたとしても、未来永劫同じ状態が続くとは限りません。組織変更や上司の退職・異動などで、関わりがなくなる可能性があります。また、嫌いな上司がいなくなったとしても、代わりに配属された新しい上司のことを嫌いになる可能性もゼロではありません。
心身に不調がある場合は例外ですが、嫌いな上司がいるからといって、直ちに転職や異動を考えるのではなく、まずは現状で改善できる余地がないか探してみることが大切です。努力をしても現状を打破することができず、ストレスが高じるようであれば異動や転職を検討しましょう。
嫌いな上司がいる場合の対処法
粟野氏のご経験をもとにすると、嫌いな上司がいて、どのように対処したらいいか分からない場合は、まず置かれている状況を4つの象限で整理すると判断しやすくなるようです。
縦軸はストレスの強さです。上司との関係性に強いストレスを感じているほど上になります。横軸は時間の長さです。ジョブローテーションや組織変更による人事異動が多い企業で、この状況が長く続きそうにない場合は左、異動がほとんどなくこの状況が長く続きそうであれば右に近づきます。
①左下:ストレスが弱く時間も短い場合
ストレスをあまり感じておらず、同じ状況が長く続きそうにない場合は、ストレスを感じない状態に身を置くことが重要です。上司について深く考え込むとストレスになってしまうため、休みを取って気分転換し気持ちの切り替えを行いましょう。
②右下:ストレスが弱く時間が長い場合
ストレスは感じていないものの、嫌いな上司がいる状態が長く続きそうな場合は「上司が変わる」「自分が変わる」「双方が変わる」の3つの選択肢が挙げられます。
上司と話し合う余地があれば、対話の場を設けて改善してもらえないか相談してみましょう。上司だけでなく、自分も変わる必要があれば対応します。
一方、上司が聞く耳を持たない場合は、自分が変わる方法を検討しましょう。上司と上手に付き合っている人を探して、コミュニケーション方法を真似してみるのも手です。さらに「嫌いな人と付き合うスキルを身につけている」など、上司との関係性構築をポジティブに捉えるという方法もあります。
③左上:ストレスが強く時間が短い場合
ストレスは強いものの、上司との関係性を続ける時間が短い場合は、上司の上司や人事、メンタルヘルス窓口や産業医などの社内の関係者に相談し、ストレスがこれ以上強くならないように働きかけを行いましょう。仕事と割り切って、上司の言動を正面から受け止めない姿勢も重要です。関わる時間が短いことが分かっているのであれば、関わらないように工夫することでストレスを回避できる可能性があります。
④右上:ストレスが強く時間も長い場合
ストレスが強く、この状況が長く続きそうな場合は、放置しておくとストレスから体調不良が生じてしまうかもしれません。状況の改善が見込めないようであれば、異動願や転職を検討しましょう。
嫌いな上司と関わらざるを得ない場合の付き合い方
どうしても嫌いな上司と関わる必要がある場合は、向き合い方を工夫しましょう。3つの方法をご紹介します。
成長するための修行の機会として向き合う
嫌いな上司以外でも、社内外で苦手な人物とコミュニケーションを図る機会が訪れることもあるでしょう。嫌いな上司の存在は、自分がビジネスパーソンとして成長するためのきっかけのひとつになるかもしれません。上司との上手な付き合い方を発見すれば、関係性が改善する可能性もあります。成長の機会だと捉えて、前向きに向き合いましょう。
相手の言葉を100%で受け止めすぎない
上司の発言を正面から受け止めすぎてしまうと精神的に疲れてしまい、上司のことを嫌いになってしまうかもしれません。上司にあれこれ言われたとしても、自分が納得できる意見だけを参考にして、それ以外は気にしないようにすることも大切です。ストレスにならない程度に受け止めましょう。
相手の良い面を見つけようと試みる
苦手意識が高まると相手の何もかもが嫌になってしまうかもしれませんが、大半の人は、良い面と悪い面を持っているものです。相手の良い面が見つかると、苦手だった言動を許せるようになったり、尊敬する気持ちが生まれたりするかもしれません。嫌いだと思っていると、態度から気持ちが伝わってしまうことがありますが、良い面を見つけて眼差しが変わることで、雰囲気も良くなり関係性が和らぐでしょう。
嫌いな上司だからといってとらない方がいい行動
嫌いな上司がいるとしても、自分自身の行動にも気をつけたいところです。嫌いな上司だからといってとらない方がいい行動を2つご紹介します。
反抗する
上司が嫌いだからといって、反抗することは避けましょう。たとえ上司の指示や方針に同意できなくても、冷静に対応することが大切です。感情的な反発は、職場の雰囲気を悪化させ、自分の評価にも影響しかねません。
嫌いな上司だとしても、建設的な提案をしたり、対話を通じて理解を深め合ったりすることが重要です。どうしても解決しない場合は、人事部や信頼できる先輩に相談するのも一つの方法です。
陰口を言う
嫌いな上司の陰口を言うのも避けましょう。陰口は職場の人間関係を悪化させ、自分の評判も下げてしまう可能性があります。
また、陰口を言ったことが上司に伝わってしまう恐れもあるでしょう。たとえ人に直接話すことなくSNSなどに陰口を書き込んで投稿したとしても、社内の人が目にしてしまう可能性もあります。上司との関係に悩んでいる場合は相談として周囲の人に伝えることがおすすめです。
転職する場合の注意点
転職の面接では、転職理由を聞かれる可能性があります。面接で「上司と合わない」ことのみを転職理由にしてしまうと、ネガティブな印象を与えてしまう上に、合わない上司にあたった場合にまた転職を繰り返すのではないかと懸念される可能性があります。例えば「批判的なマネジメントではなく、お互いを尊重して切磋琢磨できる環境で成長したい」など、上司への不満だけでない前向きな転職理由を考えておきましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。