「キャリアを積む」とよく耳にするものの、具体的にはどのようなことを指しているのか実は知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では「キャリアを積む」意味をはじめ、その方法や志望動機を伝える例文について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
キャリアを積むとは?
キャリアとは「経歴」を指す言葉ですが、キャリアについて厚生労働省では下記のように定義しています。「キャリア」とは、一般に「経歴」、「経験」、「発展」、さらには「関連した職務の連鎖」等と表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念とされています。また「キャリア」を積んだ結果として「職業能力」が蓄積していくと解説しています。
つまりキャリアとは、仕事の経験を積む中で身につける技術や知識ほか、人間性も含め磨いていくことだといえるでしょう。
キャリアを積むの言い換え例
- 職能を磨く
- 職業能力の向上をする
- キャリアアップする
- キャリアを上げる
など
転職市場で評価される可能性のあるキャリアとは?
転職市場で評価される可能性のあるキャリアとはどのようなものか紹介していきます。
現職で自分なりの創意工夫や実績を残しておく
中途採用の場合、これまでの仕事で実績を出していることで即戦力性があると見なされ、高評価につながる可能性があります。また自分なりに創意工夫していることは、再現性の高さを持っていると評価され、選考において有利に働く場合もあります。
しかし「こういう資格を持っているので〇〇の知識がある」、「〇〇のポータブルスキルを持っている」と自分が認識しているだけは説得力が弱いため、まずは仕事の中で普段から小さなことでも工夫をしてみましょう。
目立つ成果ではなくても、過去の自分と比較した場合の成長度合いや改善策などを出してきた実績が、説得力あるエビデンスとなり評価される前提になるでしょう。
ポータブルスキルを持っている
これまでの仕事や過去の成功体験だけでなく、別の業界・会社・職種などでも活用できる下記のポータブルスキルを持っていることは※VUCAの時代に評価されやすいといえます。
仕事のし方
- 現状の把握:取り組むべき課題やテーマを設定するために行う情報収集やその分析のし方
- 課題の設定:事業、商品、組織、仕事の進め方などの取り組むべき課題の設定のし方
- 計画の立案:担当業務や課題を遂行するための具体的な計画の立て方
- 課題の遂行:スケジュール管理や各種調整、業務を進めるうえでの障害の排除や高いプレッシャーの乗り越え方
- 状況への対応:予期せぬ状況への対応や責任の取り方
人との関わり方
- 社内対応:経営層・上司・関係部署に対する納得感の高いコミュニケーションや支持の獲得のし方
- 社外対応:顧客・社外パートナー等に対する納得感の高いコミュニケーションや利害調整・合意形成のし方
- 上司対応:上司への報告や課題に対する改善に関する意見の述べ方
- 部下マネジメント:メンバーの動機付けや育成、持ち味を活かした業務の割り当てのし方
厚生労働省が提唱する仕事の仕方別、人との関わり方別に分けられた9つのポータブルスキルは、業界・業種の枠を越えて持ち運べるポータブルスキルです。1つでも持っていれば市場価値は高まる傾向があるうえに、難しいことにチャレンジする必要はなく、今の職場であっても日ごろから意識して磨くことができるスキルです。
出典:ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)(厚生労働省)
※Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字。時代の特性。
専門性を持つことで希少性を高める
複数領域の専門性や資格を持つ人材も、企業によっては評価される可能性があるでしょう。具体的な一例として以下のような人材を挙げてみました。
T字型人材
特定の領域で高い専門性を持ちつつ、専門領域以外にも知見がある人材です。広い守備範囲と専門性、多様な視点を持って新しい価値を提供しやすい傾向にあります。
π型人材
異なる2つ以上の専門性を持つ人材です。
一例として「エンジニア×人事」「経営コンサル×製造業の品質管理」「金融×IT(ブロックチェーン技術など)」このような専門性の掛け合わせを持つ人材を指します。
転職市場の動向を把握しておく
採用の需要が高い業種や職種を意識し、経験スキルを身につけることも必要でしょう。転職市場の価値は需要と供給で決まる部分もあるため、企業側の需要が高く、該当する人材が少ない場合は市場価値が高まる傾向にあります。
反対に募集が少なく需要が少ない場合、仮に豊富な経験スキル実績を持っていても該当する人材が多数いる場合は市場価値がそこまで高くないケースもあります。一般的に、DX人材(データ、AI、エンジニアなど)は需要が高い傾向にありますが、最新の動向は転職エージェントに確認してみると、正確な情報を元にアドバイスを受けられるでしょう。
評価されやすいキャリアを積む方法は?
企業から評価されやすいキャリアを積む方法について紹介していきます。
キャリアの棚卸しをして足りない要素を強化する
自分に必要な要素を強化するために、これまでのキャリアの棚卸しを行い、どのような経験・スキルが身についているのかを明確にしていきます。
時間が経過している過去の業務内容は忘れてしまうことも多いので、当時の部署やメンバーなどを思い出しながら、経験・スキルを書き出していきましょう。将来目指したいキャリアに必要なスキルや資格、経験などの要素を洗い出すことで、具体的に必要な行動ができるようになるでしょう。
キャリアプランを考える
キャリアプランとは、自分が将来どのようなキャリアを積み上げていくかの行動計画のことです。自分の将来の目標と企業のニーズが交差するポイントを意識することで、評価されるキャリアを積むことにつながるでしょう。
将来仕事で実現したいことや大切にしたい価値観を整理してみることで、これからやるべきことを整理してみましょう。そして目指す姿に必要な経験・スキルを現在の自分と比較してみて、必要な期間や身につけ方の計画を立てていきます。何に取り組むべきか明確になるため、日々の業務のモチベーションも上がりやすくなります。
市場価値を把握する
転職市場において、自分にどれだけ企業から需要があるかを把握しておくことも必要です。自分の市場価値を知っておくことは自分の現在地が明確になり、不足している要素やどのようなことを強化すべきかが認識できるため、キャリアを構築する際には必要不可欠といえるでしょう。また応募先企業を選ぶ際の判断基準にもなります。
現職でできることを検討するか、転職も視野に入れる
現職で異動や昇進などを含め、自分が目指すキャリアを実現できる方法がないかも考えてみましょう。将来目指すキャリアを上司に相談したり、新しい業務に取り組んだりして検討するのもひとつの方法です。現職でできることをよく検討しないうちに転職してしまうと、社風や人間関係、働き方に違和感を覚えた場合に後悔してしまう可能性もあるからです。
しかし現職で理想のキャリアを実現できる見込みが薄いと感じた場合は、現時点で自分に足りていないスキルや経験を積める企業を探してみてもよいでしょう。
キャリアアップ・スキルアップが理由の志望動機【例文】
組織にどう貢献できるか、という視点を意識しながら伝えましょう。
キャリアアップ
キャリアアップとは、より専門的な知識や高い能力を身につけ、経歴を高めて自分の市場価値を上げることに使われることが多いでしょう。
しかしキャリアアップの定義は人により異なります。大きなプロジェクトに携わること、多くの人に使われるサービスを手掛けること、責任範囲を広げること、マネジメント人数の規模を増やしたい、事業や組織作りをゼロから担当したい、上流から携わりたいなど、何をもってキャリアアップとするかは人それぞれといえるでしょう。
人事の志望動機例文
SEの志望動機例文
直請けでPMや業務コンサルなどのキャリアパスを目指せる企業で働きたく貴社を志望いたしました。
スキルアップ
より具体的なスキルの向上に焦点を当てましょう。例えば100名規模組織のマネジメントスキル、新規事業を作りあげるスキル、組織を再建するスキル、顧客と直接折衝して提案する上流工程のスキル、などが挙げられます。スキルアップを目指した結果、キャリアアップにつながる場合もあるでしょう。
IT企画の志望動機例文
しかし、より会社の経営に直結するようなIT戦略構築から、企画立案を通じたプロジェクトマネジメントスキルを身につけたいと考え貴社を志望いたしました。
営業の志望動機例文
キャリアの積み方は転職エージェントに相談することも可能
キャリアの積み方についてご紹介しましたが、キャリアプランを考えたり、転職市場の状況を把握したりするのはひとりでは難しい面もあります。
そのような時は転職エージェントに相談して、転職市場の状況を教えてもらいながら、キャリアの積み方について検討してみることもおすすめです。転職支援のプロのアドバイスによって、ひとりでは思いつかなかったキャリアの積み方や、転職先の選択肢の幅を広げられるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。