転職活動では、自己PRを通じて経験・スキルや強みを応募企業に伝える機会があります。しかし、「アピールポイントが見つからない」「何をアピールすればいいのかわからない」など、アピールポイントに悩む人は少なくありません。そこで今回は、アピールポイントの見つけ方や伝え方のポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
企業が自己PRで見ているポイント
自分のアピールポイントを考える前に、企業が自己PRでチェックしているポイントを把握しておきましょう。
自己分析ができているか
企業の採用担当者は、自己分析を通じて自身の強みや得意分野を理解できているかを確認していると考えられます。客観的に自分の強みや弱みを捉えている人は、強みを伸ばし足りない部分を補おうとする傾向にあります。自己分析ができていれば、キャリアの方向性が明らかになる可能性があり、 入社後も自律的に成長することが期待できます。
募集している仕事内容にマッチし活躍できるか
企業によって、仕事の進め方は異なります。自己PRを確認することで、募集している仕事内容にマッチする人材かどうかを判断することができます。仕事内容にマッチしていれば、入社後にすぐに活躍してもらえる可能性が高くなります。
企業研究ができているか
一般的に採用担当者は、応募者のアピールから企業研究を行っているか、意欲を確認しています。 企業研究を行っていれば入社後のギャップも少なくなり、意欲的に働いてもらえることが期待できます。応募する仕事で強みを活かせることをイメージできていれば、成果も出しやすくなるでしょう。
アピールポイント別自己PR例文
「コミュニケーションスキル」「柔軟性」など、5つのアピールポイントを軸にした例文をご紹介します。
コミュニケーションスキル
プロジェクトを推進するコミュニケーション力が強みと考えています。
前職では、新規サービスのプロジェクトリーダーを務めていました。プロジェクトの進行や目標達成においては、 プロジェクトメンバーだけでなく、営業や商品企画、管理部門など関係部署との円滑なコミュニケーションが求められます。プロジェクト内外から意見を引き出し、調整しながら協力体制を築くことで、大きなトラブルもなく新サービスをリリースすることができました。また、顧客とのコミュニケーションにおいても、勉強会の開催やクレーム対応マニュアル・トークスクリプトを作成することで、チーム一丸となって顧客満足度を向上させることができました。御社でも積極的にコミュニケーションを図りながら、目標達成に貢献したいと考えています。
柔軟性
どのような変化にも対応する柔軟性が強みです。
前職で担当した開発プロジェクトでは、進行中に予算変更と追加要件が発生し、計画が見直されることになりました。開発スケジュールと目標を設定し直しましたが、要件変更に戸惑うメンバーも多かったため、状況を共有し一人ひとりに対してフォローを行いました。その際に、より良いプロジェクトの在り方・進め方を話し合うことで、創造的な解決策を見つけることができました。御社においても変化する環境下で柔軟な発想や対応力を活かし、チームや組織の成長に貢献していきたいと考えています。
問題解決力
問題解決力を発揮した経験が強みです。
前職でリーダーを務めていたプロジェクトにおいて、予定されていたリソースが突然利用できなくなる状況に陥ったことがありました。リソース不足を補うために、他チームのメンバーと協力し、タスクを分担しました。緊急の状況下で迅速かつ効果的な解決策を見つけるために、タスクの優先順位を見直し、効率を重視した新たな作業プロセスを導入しました。結果として、締め切りを守りながらプロジェクトを成功に導くことができました。
こうした経験から、プレッシャーの中でも冷静に対処し、複雑な問題に対しても解決策を見つける能力を身につけました。御社での目標は、新しいチームで問題解決のスキルを活かし、成果に貢献することです。
傾聴力
「傾聴力」を発揮した経験が強みと考えております。
現職では、スタッフのシフト調整の難しさや離職率の高さが課題となっていました。 チームリーダーとして、ルールを徹底するだけでは課題解決の見込みが薄いと判断し、一人ひとりに不満や悩みを聞くことを徹底しました。話を聞いていると、数多くの改善点が見つかったため、上司に報告して解決策を実行することになりました。
結果として、シフトの要望を受け入れてもらえるスタッフが増え、離職率も30%程度改善することができました。今後も相手の立場に立って傾聴し、職場改善を続けていきたいと考えております。
行動力
○○エリアにX軒の店舗を持つ飲食店でSVを任されています。各店舗の店長と連携して売上の最大化を目指す役割ですが、店舗運営に対する指導だけをしていても目標が達成するわけではありません。店長は仕入れや売上管理、スタッフの採用や育成、顧客対応や業者とのやり取りなど 、常に忙しくしているため、信頼関係を構築し課題があればサポートすることが重要となります。そこで私は、常に店長と情報共有を行い、困ったことがあればすぐに駆けつけるようにしていました。また、他エリアで売上が高い店舗があれば担当のSVや店長にも話を聞き、応用できることがあれば積極的に担当エリアの店長に共有。○○エリアを担当して1年で昨対120%の売上を達成することができました。御社においても行動力を活かして売上アップを図り、事業成長に貢献したいと考えております。
アピールポイントの効果的な伝え方
素晴らしい強みも、うまく伝えられないと評価に結びつかない可能性があります。応募企業に効果的にアピールポイントを伝える方法を解説します。
応募書類での伝え方
最初にアピールポイントを書く
アピールポイントを冒頭に書くことで、印象づけやすくなります。アピールポイントを伝えた上で、その理由や実績などを続けるとわかりやすいでしょう。
具体的なエピソードを書く
強みを伝える際は、数字や固有名詞を交えた具体的なエピソードを書きましょう。売上実績やプロジェクト期間・人数などの規模、担当した業界・商品名などを挙げることで説得力が増し、伝わりやすくなります。
応募先企業で活かしたいことを書く
「〇〇という経験を活かして、□□の仕事にチャレンジしたい」など、応募先で活かしたい経験・スキルと仕事をアピールポイントで示すことも効果的です。根拠や意図も交えて書きましょう。
読みやすさを意識する
長い文章は読み手となる企業の採用担当者の印象に残りにくく、応募書類のスペースも限られていることから、できる限り端的な文章でまとめましょう。
面接での伝え方
要点を伝えられるようにしておく
面接では「1分以内で」「3分間で」と、話す時間を設けられるケースもあります。また、掘り下げて聞かれる可能性もあるため、短時間でアピールポイントの要点を伝えられるように準備しておきましょう。
採用担当者の反応を見ながら話す
面接は事前に練習しておくと安心して臨むことができます。練習風景を動画撮影して、話すスピード、話し方や声のトーン、表情などを調整すると良いでしょう。また、面接では一方的に伝えるのではなく、採用担当者の反応を見ながらテンポを合わせて会話することも大切です。
アピールポイントの見つけ方
アピールポイントを見つけるには、いくつかの方法があります。代表的な5つの方法をご紹介します。
これまでの経験・キャリアから探す
これまで経験してきた仕事内容や実績などを振り返り、強みや保有しているスキルを書き出し、整理します。以下のスキル一覧を参考にピックアップしてみましょう。
- 他人に関わる力(協調性・指導力・育成力・傾聴力・プレゼンテーションカ・調整力・交渉力など)
- 自分に関わる力(継続力・実行力・挑戦心・成長意欲・責任感・探究心・柔軟性など)
- 課題に対する力(論理的思考力・課題発見力・企画力・計画力・想像力・提案力・分析力・正確性など)
自分の得意なことから探す
これまでのキャリアを振り返り、得意な仕事や評価された仕事について、具体的な事例や実績とともに伝えるのも1つの方法です。得意なことが浮かばない場合は、苦手だと思っていたことや自分の短所を前向きに言い換えると良いでしょう。
・短所:心配性 → 長所:責任感が強い、慎重に物事を進める、計画性がある
・ 短所:負けず嫌い → 長所:向上心が強い、目標達成意欲がある
友人・知人・家族などに聞いてみる
職場の上司や同僚、顧客や取引先など、周りの人からの評価などを参考にするのも有効な方法です。自身では気づいていなかったことが、周囲からは評価されていることもあるでしょう。
診断テストを活用する
アピールポイントがわからない場合は、自己分析や適職診断ツールを受けてみるのも一案です。自分では把握しきれていない強みが見つかるかもしれません。なお、厚生労働省では、複数の自己診断ツールを公開しています。無料で診断できるので活用してみましょう。
出典:「職業情報提供サイト(日本版O-NET)job tag」(厚生労働省)
自己分析セミナーなどに参加してみる
自己分析の方法を実践で学ぶことができる「自己分析セミナー」を活用する方法もあります。近年はオンライン開催も増えており、「企業の選び方」「職務経歴書の書き方」「面接力向上」「キャリアを考える」など、さまざまなテーマのセミナーが開催されています。セミナー内容を転職活動の参考にすると良いでしょう。
参考:開催中の転職セミナー・イベント・フェア(リクルートエージェント)
転職エージェントに相談する
アピールポイントが見つからない場合、転職エージェントに相談するという方法も有効です。転職エージェントのキャリアアドバイザーに相談することで、キャリアの棚卸しや自己分析をサポートしてもらえるでしょう。
アピールポイントは自分の言葉で伝えることが重要
自己PRは、職務経歴では伝わらない人柄や仕事へのこだわりなどを伝えるための項目です。抽象的な自己PRになってしまうと、採用担当者が人柄をイメージすることができません。アピールポイントを伝える際は、できる限り自分の言葉を使って具体的に伝えることを意識しましょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。