「仕事がつらい」「仕事に行きたくない」と感じながらも、どのように改善すればいいか分からず悩んでいる方は多いようです。まずは自身がどのような点を「つらい」と感じているのかを自己分析してみましょう。仕事をつらいと感じる主な原因、対処法などについて、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏がアドバイスします。
仕事がつらいと感じるのは甘えではない
「仕事をつらいと感じてしまう自分は甘えているのだろうか」と思う方もいらっしゃるようです。しかし、仕事に対してつらいと感じることは、大多数の方々が経験しています。
厚生労働省が発表した「労働安全衛生調査(実態調査)」(令和4年)によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は8割強(82.2%)に達しています。
出典:「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)の概況」(厚生労働省)
当然ながら人によって状況は異なりますし、同じ状況であっても感じ方は人それぞれです。同じ仕事で頑張って成果を挙げている人などと比べ、「自分は甘い」と落ち込んでしまうこともあるかもしれません。
だからといってつらい状況に耐え続けていると、ストレスが蓄積して体調不良を起こし、成果が挙がりにくくなってさらにつらくなるという悪循環に陥りかねません。つらいと感じる原因を見極め、改善に向けて対処しましょう。
仕事がつらいと感じる主な原因は?
まずは、自分が何に対して「つらい」と感じているのか、客観的視点で分析してみましょう。主な原因として挙げられるのは、次のようなケースです。
仕事内容に原因がある場合
仕事内容の原因としては、以下が考えられます。
仕事の量が多すぎる
会社から与えられる仕事量が多すぎると、余裕がなくなってつらさを感じるでしょう。業務量に対して人員が足りておらず、1人にかかる負荷が大きくなっている職場は多々見られます。
所定労働時間内に業務を終えることが難しく、残業や休日出勤が多く発生していることで十分に休息が取れておらず、疲労が蓄積しているのかもしれません。
仕事の責任が重すぎる
失敗が許されないような重要な案件を任されていたり、責任が大きな役割を担っていたりすると、緊張してプレッシャーを感じます。適度なプレッシャーなら良い刺激になりますが、過度にプレッシャーを感じるとストレスが増大するでしょう。
与えられる目標が高すぎる
営業職であれば売上の数値目標など、会社から与えられる目標やノルマが高すぎる場合、目標に届かない状況が長引くとプレッシャーを強く感じてしまいます。
仕事環境に原因がある場合
仕事環境が原因と考えられるケースとしては、以下が挙げられます。
人間関係がうまくいかない
上司や同僚が苦手なタイプの人物であったり、相性が合わなかったりすると、日々のコミュニケーションがうまく取れずにストレスを感じることも多いものです。
特に仲が悪い人がいるわけではなくても、同じチームのメンバーと考え方や価値観が合わないと、居心地の悪さを感じてしまうでしょう。
労働条件が厳しい
残業や休日出勤が当たり前となっている職場など、自身の努力では変えられない状況にストレスが蓄積することもあります。
適正に評価されない
評価の仕組みや制度が整っておらず、上司の主観などで評価がなされる場合など、「頑張っているのに評価されていない」と不満を抱くこともあります。報酬にも成果が反映されないとなれば、モチベーションが下がってしまっても無理はないでしょう。
この先のキャリアを見通せない
現状に大きな問題や不満はなくても、「次のキャリアステップが見えない」「スキルアップが望めない」など、先々のことを考えると不安が募ることもあります。昇進・昇格制度が機能していないことで、行き詰りを感じるケースも少なくありません。
自分自身に原因がある場合
もちろん自分自身に原因がある場合もあります。例えば、以下のようなケースです。
仕事の成果が出ない
頑張っているのに目指す成果につながらないと、続けていくことにつらさを感じるものです。さらにミスや失敗などがあると、「自分には向いていないのではないか」と悩むこともあるでしょう。
仕事の意義・価値を見出せない
現在の仕事に対し「何のためにしているのか」「何の役に立っているのか」が分からなければ、モチベーションがなかなか上がらないものです。
また、仕事の意義を認識していたといても、「誰にでもできる」「自分がやらなくてもいい」などと感じていると、取り組みがいを感じられないかもしれません。
そもそも「やりたい仕事」ではない
もともと興味がある仕事ではなく、会社の知名度・条件・待遇面で選んだ、あるいは希望しない部署・職種に配属されたなど、「やりたい仕事」ではない場合、続けていくことがつらくなってしまうこともあります。
仕事がつらいと感じたときの対処法
仕事がつらいと感じたときは、その原因を踏まえ、次のような対処法を試してみてください。
周囲に相談し、アドバイスを求める
「業務量が多すぎる」「仕事の責任が重すぎる」「与えられる目標が高すぎる」と感じている場合、1人で抱え込まず上司に相談しましょう。上司は「これくらい大丈夫だろう」「できるだろう」と考え、負荷がかかりすぎていることに気付いていないのかもしれません。相談することで、他のメンバーに業務・役割を割り振ったり、達成可能な目標に修正してもらえたりする可能性があります。
また「評価されなくてつらい」と感じている場合、上司が求めていることと自身が努力している方向性がズレていることもあるものです。「何を期待されているのか」「何をすればプラス評価されるのか」、評価の指標を上司に確認することで、努力目標が明確になって悩みが解消されることもあります。
職場の人間関係で悩んでいる場合、現在の仕事に意義や価値を感じられない場合、上司だけではなく、人事部に相談する方法もあります。他部署に異動することで悩みを解決できる可能性があります。
仕事の成果が出ない場合、成果を出している先輩や同僚と話し、やり方や工夫についてアドバイスを求めましょう。また、楽しそうに働いている先輩や同僚と話をしてみるのもおすすめです。「この仕事のどのようなところに面白みや魅力を感じているのか」について聞くことで、新たな視点を発見し、仕事への捉え方がポジティブに変わるかもしれません。
自分に自信を失っているときには、職場の仲間や友人に「自分の良い部分」について聞いてみるのも一つの手です。客観的視点から自分の長所や強みを知ることにより、自己肯定感が高まり、仕事へのモチベーションを取り戻せることもあるでしょう。
自分が手がける仕事の目的・意義などを考える
「仕事の意義・価値を見出せない」「そもそもやりたい仕事ではない」という場合、「何のためにこの仕事をするのか」を見つめ直してみましょう。
「社会のこのような課題を解決したい」「このような人々の役に立ち、喜ばれたい」、あるいは「自分が目指す将来像の実現のため、今の経験が必要」といった視点で仕事を捉えることで、取り組む意義や価値を認識できるかもしれません。
また、活躍している先輩や同僚と話をして、この仕事への思いや目標を聞いてみると、自分にはなかった視点や考え方に気付けることもあるでしょう。
仕事に役立つスキルや知識を学ぶ
仕事の量・責任・目標に対するプレッシャーやストレスが強い場合、「学ぶ」ことで解消できることも多いものです。
効率的に仕事を進める方法を習得する、あるいは業務に必要な専門スキルなどをブラッシュアップすることで、仕事がはかどるようになり、成果にもつながることが期待できるでしょう。
近年は空き時間に手軽に学べるオンライン講座・オンラインセミナーも充実しているので、活用してはいかがでしょうか。
趣味や副業で気持ちを切り替える
一つの職場に閉じていると、行き詰まり感をおぼえてつらくなってしまうこともあります。そのようなときは、趣味の活動や副業をしてみるのもおすすめです。職場とは違う場所で人と関わったり新しい知識・スキルを習得したりすることで、生活にメリハリがつき、ポジティブな気持ちに切り替えられる可能性があります。
思い切って休む
有給休暇を取得するなどして、思い切って仕事を休むのも一つの方法です。仕事から離れてリフレッシュすることで体調やモチベーションが回復することもあるでしょう。
つらさの原因となっている課題の解消に、転職エージェントを活用しよう
さまざまな対処法を試してみても、つらさを解消できない場合は、転職も検討してみてはいかがでしょうか。実際に転職するかどうかは別として、「転職活動」をしてみるだけでも新たな可能性の広がりを感じ、気持ちがポジティブに変わることもあるでしょう。
転職エージェントに相談し、自身が抱えている課題、現状への不満や不安を伝えてみてください。まずは自身のつらい気持ちを言語化し、第三者に伝えるだけでも気持ちが軽くなるものです。
キャリアアドバイザーから自身では想像していなかった提案を受け、今後の選択肢が広がることもあります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。