
「今の仕事は、自分には向いていない気がする…」とモヤモヤとした気持ちを抱えていても、続けるべきか、辞めて転職するべきかを判断できず、動けなくなってしまう人もいるでしょう。仕事が向いていないと感じるタイミングや理由、対処法、仕事の向き不向きを判断する方法、辞める前にしておきたいことについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
「今の仕事が向いていない気がする…」は甘えではない
「今の仕事は自分に向いていない。そう考えてしまうのは甘えだろうか…」と、悩む人もいます。しかし、必ずしも「甘え」であるとはかぎりません。誰にとっても、どのような仕事でも、向き不向きはあるものです。
向き不向きに悩むのは、今後のキャリアについて考える一つのタイミングでもあります。自分自身に向き合い、中長期的なキャリア形成、目指す将来像について考えてみましょう。
仕事が向いていないと感じやすい、よくあるタイミング
一般的に「仕事が向いていない」と感じやすいタイミングとしては、以下が挙げられます。
新卒入社・異動・転職してからの3カ月間
新卒入社したばかりの時期は、社会人として初めて仕事を経験するため、「ついていけない」「仕事ができない」と感じることもあるかもしれません。また、異動や転職をした直後の時期も、仕事を覚えるまでに時間がかかるため、同様のことが言えます。
新しい仕事に対して自分の能力不足を痛感したり、慣れない仕事にストレスを感じたりしやすく、「向いていない気がするから辞めたい」と思ってしまうケースもあるでしょう。
それでも、3カ月を過ぎる頃には、仕事に慣れ、職場にもなじんで活躍できるようになることもあるものです。
入社1年目
入社1年目の間は、思うように仕事がうまくいかない場面に遭遇したり、入社前にイメージしていた仕事とギャップを感じたりすることもあるでしょう。
しかし、仕事で能力を発揮したり、面白さややりがいを感じたりするためには、必要な知識やノウハウを身につけること、「任せても大丈夫」と判断してもらえるだけの信頼を築くことが不可欠と言えます。知識やスキルが十分に身についていないうちに「向いていない」と判断するのは早いかもしれません。
入社3年目
社会人3年目の頃には、一通り仕事を覚え、一定の裁量権を任されるケースが多くみられます。そのため、自分の判断で仕事を進める難しさを感じる場面もあるでしょう。また、後輩の指導を任されることもあるでしょう。
そのように、これまでより責任が大きくなると「期待に応えられない」「自分には荷が重い」などとプレッシャーを感じ、「この仕事に向いていない」と感じてしまう人もいるようです。
仕事が向いていないと感じる理由と対処法
「仕事が向いていない」と感じるのは、どのような場面なのでしょうか。人や状況によるので一概には言えませんが、よくみられる理由と対処法をご紹介します。
ミスを繰り返してしまう
同じようなミスを繰り返すことで、「向いていないのではないか」と感じるケースがあります。
なぜミスをするのか原因を分析し、ミスしないためにどうすればいいかを考えて工夫してみましょう。ミスが少なくなれば、自信につながるかもしれません。
仕事に対するモチベーションを持てない
仕事を「楽しい」と感じられない、取り扱っている商品やサービスに興味や愛着を持てない場合などは、モチベーションが上がりにくいかもしれません。
そのようなときは、会社から与えられた目標とは別に、自分なりの目標を設定してみましょう。小さなことでも、「今日1日の目標」でもかまいません。
その目標をクリアして達成感を得ることをコツコツ積み重ねていけば、大きな成果につながっていく可能性があります。それにより周囲から評価を得られれば、モチベーションも高まるでしょう。
仕事の成果を出せない
仕事の成果を思うように出せず、「能力不足」「ついていけない」と感じてしまうケースもあります。
成果を出したいなら、そのために必要なことを上司に聞いてみる、あるいは成果を出している同僚を観察して行動を真似してみるところから始めてみてはいかがでしょうか。
実際に成果を出せれば、焦りや不安なども解消され、余裕を持てるようになるでしょう。そうすれば「自分らしいやり方」を見つけられ、自分に向いていると思えるようになることもあります。
自身の経験やスキルが活かせていない
異動や転職によって現在の仕事に就いた場合、前職の経験・スキルが通用せず、仕事とのミスマッチを感じるかもしれません。
今の仕事が向いていないことで、心身の負担を感じているケースもあります。会社に行くことが憂鬱で、過剰なストレスを感じている場合は注意が必要です。
そのような場合、「新たなスキルを身につけるチャンス」と捉えてはいかがでしょうか。近年はビジネス環境の変化が激しく、「リスキリング(学び直し)」や「アンラーニング(学習棄却・学びほぐし)」が重要と考えられています。
過去の経験に固執せず、今の仕事に活かせる知識・スキルを学ぶことで、新たなキャリアの展開につながる可能性があります。
ただし、自分が目指すキャリアの方向から大きくずれていくようであれば、経験・スキルを活かせる仕事への転職を検討してみてもいいでしょう。
職場の人間関係・風土が合わない
仕事そのものよりも、職場の人間関係や風土になじめず「合わない」「向いていない」と感じることもあります。会社が掲げる「企業理念」「ミッション・ビジョン・バリュー」「パーパス」などに対し、共感できずにモヤモヤ感を抱くケースもあります。
そのように感じた場合は、積極的に対話の機会を作ってみましょう。オープンに話し合えば、お互いの理解が深まり、コミュニケーションが円滑化することもあります。それでも違和感を解消できないなら、部署異動・職種転換・チーム替えなどが可能かどうか、上司に相談してみましょう。
企業理念などに共感できない場合は、どのような背景・目的があるのかを調べたり、上司や役員クラスの人に意味を聞いてみたりすることで、納得できる可能性があります。
「向いていない」と上司や周囲から言われた
上司や同僚など、周囲の人から「向いていない」と言われ、悩んでしまう人もいます。しかし、向いていないかどうかを判断するのは、最終的に自分自身だと考えたほうがいいでしょう。
上司や周囲の評価が正当ではないケースもあります。「向いていなくても好きだからやりたい」というモチベーションを保ち続けられるなら、苦手なことも克服して成長できる可能性があります。「自分はどうしたいのか」を判断基準としましょう。
仕事の向き不向きを判断する方法
今の仕事が本当に向いていないのか、やり方などを変えれば向いていると感じられるようになるのか、判断する方法の一例をご紹介します。
自己分析を行い、自分の強みや将来目指すキャリアを明確にする
これまでの経験を振り返り、「クライアント対応で評価された経験」「プロジェクト進行で褒められた場面」などの成果を出せた仕事や周囲の人に褒められたことなどを洗い出して、自分の「強み」を明確化してみましょう。また、将来どのようなキャリアを目指したいのかも考えてみます。
その上で今の仕事と照らし合わせ、自分の強みを発揮できる要素がある場合は、それを意識しながら取り組むことで成果につながるかもしれません。また、将来目指すキャリアの方向性と今の仕事の方向性が一致しているのであれば、「続けたほうがいい」と納得して判断できるのではないでしょうか。
仕事で成果を出せているか検証してみる
向いていないと感じる仕事であっても、部分的には成果を出せていることもあるかもしれません。その部分にフォーカスして、成果につながっている自分の「強み」を伸ばしていけば、「向いている仕事」になる可能性があります。
上司や同僚、家族などに相談してみる
上司・同僚・家族など、周囲の人に相談して、「自分にはどのような仕事が向いていると思うか」「自分の強みはどのようなところだと思うか」などと聞いてみるのはいかがでしょうか。自分では意識していなかった答えが返ってくるかもしれません。自分では「向いていない」と思っていることが、意外にも他者の目には「向いている」と映っていることもあるものです。
適職診断ツールやセミナーを活用してみる
ツールやセミナーなどを利用し、「適職診断」をしてみる方法もあります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」にある無料の「職業適性テスト(Gテスト)」では、Web上で職業診断ができます。
※出典:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET)
「仕事が向いていないから」と辞める前にしておきたいこと
向いていない仕事だと感じても、すぐに会社を辞める前に考慮すべき点があります。後悔しないためにも、会社を辞める決断をする前にしておきたいことを紹介します。
自分自身で改善できることがあれば取り組む
「成果を出せないのは能力不足だから」「苦手な仕事を続けることが辛い」と感じた場合でも、自分の努力や創意工夫で今の状況を改善できる可能性もあります。まずは自分に足りないことを考え、改善に取り組んでみましょう。
上司や人事に部署異動や職種転換などを相談してみる
今の会社を辞めなくても、部署異動や職種転換などによって、自分に合う仕事や職場環境を手に入れられることもあります。社内で実現可能な方法がないかを探ってみてください。
また、社内のキャリアパスの事例を調べてみると、自分が将来目指したいキャリアを実現できる道筋が見つかるかもしれません。
仕事が向いていないと悩んだら転職エージェントに相談するのも一案
向いている仕事に出合うためには、自分の強みや志向を分析し、明確化することが大切です。しかし、自己分析がうまくできず、行き詰まることもあるでしょう。そのようなときは、転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
客観的視点を持つ転職支援のプロと対話する中で、自分の強みや志向に気付けることもあります。今後のキャリアの築き方についても相談し、今の仕事を続けたほうがよいかどうかを判断するための情報やアドバイスも得られるので、転職エージェントのサポートサービスを有効活用してみてください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。