「あなたにとって働くとは?」という質問は、転職の面接で聞かれる可能性がある質問の一つと言えるでしょう。「何を答えればいいのかわからない」「どのように回答すれば評価されるのだろうか」と迷い、言葉に詰まってしまわないためにも、きちんと準備しておくことが大事です。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、面接で「働くとは?」という質問をする理由や答え方のポイントなどを解説します。
目次
働くとは?「働く意義」や本来の意味も簡単に解説
「働く」という言葉の意味を簡単に説明すると、辞書に記載されている定義では「仕事をする」「労働する」「職業として、生計を維持するために職に就く」ことを指しています。「自分の体力や時間を費やして仕事をすることで、労働の対価として収入を得ること」を意味していると言えるでしょう。
しかし、「働く意義」は、人それぞれに違うものであり、収入を得ることだけとは限りません。例えば、仕事を通じた社会貢献や自己成長に意義を感じるなど、個々の価値観や考え方によっても変わってくると言えるでしょう。
面接で「あなたにとって働くとは?」と聞く理由
転職の面接で採用担当者が「あなたにとって働くとは?」という質問をするのは、応募者の仕事に対する価値観や考え方を確認したいと考えている可能性があります。
一般的に企業が採用を行う際には、基本的に入社後の定着性や活躍可能性を重視する傾向にあります。そのため、働くことや仕事に対する価値観・考え方が自社にマッチするのか、それによって入社後に活躍・貢献ができる人材なのかを見ている可能性が高いでしょう。
面接で「働くとは?」という質問に回答する際は、自分にとっての働く意義や目的を明確に伝えることで、企業に判断材料を提供することができます。
働く目的の代表例
ここでは、アドバイザーの粟野氏の経験をもとに、「働く目的」の代表例とされるパターンと考え方を紹介します。自分の価値観にマッチするものを探してみましょう。
社会貢献に携わりたいため
社会や世の中の人々に貢献することに喜びを感じるパターンです。「多くの人に役立ちたい」と考えるケースもあれば「社会に大きな影響を与えたい」と考えるケースもあるでしょう。
社会インフラを支える仕事など、公共性の高い事業に携わりたい人などによく見られる傾向です。
誰に向けてどのように役立ちたいのか、どのような影響を与えていきたいのかを考えてみることで、働く意義をより明確にすることができるでしょう。
自己成長のため
仕事を通じて、自分自身が成長していくことにやりがいを感じるパターンです。スポーツや勉強、趣味などを通じて、「できないことができるようになる」「自分の能力を発揮できた」「活躍の幅が広がった」など、自己成長を感じる瞬間に大きな達成感を得る人に多く見られる傾向があります。また、新しいことにチャレンジしたい人や、さまざまな経験を積んでいきたい人なども当てはまるでしょう。
自己成長することによって、組織や顧客、社会などに対し、どのように貢献していきたいのかを明確にすることができるでしょう。
自己実現のため
仕事を通じて自分のやりたいことを実現したいパターンです。「仕事そのものが好き」というケースもあれば、「仕事を通じて、自分がやりたいと思うことを実現したい」というケースもあるでしょう。
好きなこと、楽しいと感じることを仕事にしたい人に加え、「会社のプロジェクトや規模感によって、こんな世界を作りたい」など、自分の夢を叶えようとする人もいるようです。
とはいえ、会社は自己実現するためだけの場ではないので、自分のやりたいことでどのように成果を挙げ、どのように組織に貢献できるかまで考えることが大事です。
社会的地位を得るため
社会的地位の高いポジションに就くことを目的とするパターンです。地位や権力を得ることで「人から高く評価されたい」と考えるケースもあれば、「より大きな組織やプロジェクトを動かしていきたい」と考えるケースもあるようです。
入社後に、どのようなポジションを目指していきたいのか、なぜその地位を築きたいのかを明確にするだけでなく、そのポジションに就いて何らかの力を持つことで、組織に対してどのような貢献ができるのか考えることが大事でしょう。
高い収入を得るため
年収など、お金の面を重視するパターンです。「ただ生活のために稼ぎたい」というだけではなく、より高い年収を得て、「自分が望む生活水準を実現すること」を目的とするケースもあるでしょう。
例えば、「やりたいことや趣味に必要なお金を稼ぎたい」「家族との暮らしを豊かにしたい」など、プライベートを充実させることに価値観を置いている人によく見られる傾向と言えます。
高い収入を得るためには、専門性を高めたり、人よりも高い成果を挙げたりすることが必要になるので、希望する年収を実現するためにどのような経験・スキルを身につけていきたいと考えているのか、どのように成果を上げて貢献していけるのかを考えることがポイントになります。
思い描くライフスタイルを実現するため
仕事そのものより、ライフスタイルを重視するパターンです。趣味や家庭生活などのプライベートを大事にするために、理想とするワーク・ライフ・バランスを実現したい人に当てはまるでしょう。
しかし、残業が少なく、休日もしっかり取れるなど、自分の理想にマッチする働き方を実現するためには、短時間で高いパフォーマンスを出すことが必要になるケースもあります。そのため、入社後、どのように実力を身につけていくのか、早期にパフォーマンスを出すためにどのようなことに取り組むのかまで考えることもポイントになるでしょう。
安定した人生を送るため
将来に不安が少ない安定した仕事に就くことで、人生そのものを安定させることを目的とするパターンです。大手企業など、経営基盤が安定している企業や福利厚生などが充実している企業を選ぶ人に多く見られる傾向があります。
しかし、企業が安定した経営を続けることができているのは、時代の変化に対応し続けてきたからこそと言えます。そのため、安定を求めるだけにならず、入社後、変化に対応しながら活躍・貢献していく意識を持った上で、どのように組織を支えていくのかを考えることも大事です。
多くの人とのつながりを持つため
仕事を通じて多くの人と出会い、つながりを持つことを大事にするパターンです。
「仕事とは一人で完結できるものではない」と考え、自分の役割を果たすことに意義を感じる人もいれば、人や社会とつながりを持ち続けることに意味を感じる人もいるようです。
多くの人とつながりを持つことにどのような意義や喜びを感じるのか、自分はその中でどのような役割を果たしたいと思っているのかを明確にしてみることがポイントになるでしょう。
面接で「あなたにとって働くとは」と聞かれた時の答え方のポイント
面接で「あなたにとって働くとは」という質問に回答する際、意識したいポイントを紹介します。
3つの「働く意義」を意識する
働く意義については、以下のような3つに大きく分けて考える方法もあります。
2:自分の能力や個性を発揮し、自己実現する=「個人性」
3:収入を得る=「経済性」
3つの働く意義は、仕事を続けていく上で、どれも必要なことと言えるでしょう。「働くとは」という質問をされたら、3つの働く意義を意識して回答することが大事です。
先に述べた「働く目的例=働くことで得たいもの」から例を挙げると、高い収入が目的の場合は「経済性」、社会貢献が目的の場合は「社会性」、自己実現が目的の場合は「個人性」に当てはまりますが、そのほかの働く意義についても併せて考えておきましょう。
自分の価値観を企業に合わせようとしない
「選考に通過したい」と思うあまり、企業の価値観に合わせようとしてしまえば、ミスマッチが発生する可能性があります。また、評価を得るために企業の価値観を意識しすぎた場合は、表面的な話しかできなくなってしまう可能性もあり、説得力がないと判断されるかもしれません。
面接では、入社後の活躍可能性をいかにアピールするかが大事なポイントとなります。しかし、企業の価値観に合わせて回答するよりも、自分の価値観をベースにした上で、どのように活躍・貢献できるのかを意識したほうが、自分自身にとっていい結果につながる可能性があるでしょう。
具体的なエピソードで説得力を持たせる
自分の価値観に対し、「なぜそう考えるのか」という具体的な根拠を伝えて裏付けすることで説得力を高めることができます。例えば、「収入が大事」という場合も、ただそれを伝えるのではなく、「なぜそれが大事だと思ったのか」という具体的なエピソードを話し、その背景まで伝えることで、説得力や納得感を高めることができるでしょう。
働く目的を達成するために、どのように仕事に取り組むのかを伝える
「働くとは」という質問に対し、自分の価値観やそれを裏付けるエピソードを伝えた後は、その目的を達成するために、どのように仕事に取り組むのかを具体的に伝えましょう。例えば、「お金を稼ぐこと」を働く意義とした場合でも、「そのためには、成果を上げることが必要不可欠であり、顧客獲得に向けて自分のこのような能力を発揮し、組織や顧客に貢献していきたい」と伝えることが大事です。
「あなたにとって働くとは」を聞かれた場合の回答例文
「あなたにとって働くとは」という質問に対し、「社会貢献」「自己成長」を目的とした回答の例文を紹介します。
「社会貢献」を目的とした回答例文
私にとって働くとは、「働きがいのある社会」の醸成に貢献していくことだと考えています。
現職ではITコンサルとして働き、クライアントの非効率業務の改善やITツールなどを導入するDX化を提案してきました。労働時間の短縮などの働き方改革に貢献するだけでなく、「子育てや介護をしている人材も含め、多くの人々がやりたい仕事を継続できるようになった」「個々が自分の役割における本質的なミッションに向き合えるようになり、社員のモチベーションを高めることができている」などの声を多くいただくことができました。
ITコンサルの仕事を通じて、より多くの人が「働きがい」を感じられる社会にしていけることを実感するうちに、それこそが私にとって働くことの意義の一つになったと感じております。
多様な業界の大手企業をクライアントとする御社で、これまでの経験スキルを活かし、多くの人々が働く喜びを感じられるように貢献していきたいと考えております。
「自己成長」を目的とした回答例文
私にとって働くとは、営業として提案スキルや幅広い知識の獲得を続け、ビジネスパーソンとして自己の成長を重ねていくことだと考えております。
営業職として1年目の時期には、顧客からの期待に十分に応えられず、要望されたことに対して決まり切った提案のみをしていました。
しかし、3年、4年と営業経験を重ねていく中で、顧客の顕在課題の解決だけにとどまらず、他業界の事例を活用した斬新な提案や、事前の顧客分析などから潜在課題を仮説立てた提案で、「顧客の期待値を超えていきたい」と考えるようになりました。
その結果、顧客から感謝されたり、業績が大幅に向上したりするなどの成功体験を積むことができ、仕事にさらなるやりがいを感じることができています。
そのため、成長を自己満足で終わらせることなく、自分が成長することによって、顧客により大きな価値を提供できることが重要だと考えております。御社に入社後も自己研鑽を重ね、顧客満足度の最大化に貢献していきたいと思います。
「働く意義」「働く目的」が思いつかない場合は、転職エージェントに相談を
自分一人では、働く意義や目的について掘り下げることができないと感じたら、転職エージェントに相談してみてもいいかもしれません。
転職支援のプロによる面談を通じて、自分が仕事に対して求めることを整理しやすくなり、働く意義や働く目的も見えやすくなるでしょう。
また、客観的なアドバイスをもらう中で、「自分にとって働くとはどういうことか」という価値観も明確にしやすくなるはずです。応募書類の作成や面接対策などをサポートする転職エージェントもあるので、面接で回答する内容の精度をより高めていくために活用することもできるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。