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未経験でコンサルタントに転職できる?求められる能力と転職活動のポイント

世界規模でビジネスモデルが急速に変化している現在、企業の経営戦略や業務改善を支援するコンサルタントのニーズが高まり、異業種から採用される人が増えているといいます。未経験からコンサルタントに転職するためには、どのような能力やスキルが必要でしょうか?コンサルティング業界の転職動向や、各ファームの採用傾向、未経験者の転職で準備したいポイントについて、リクルートエージェントのアドバイザーが解説します。

未経験でコンサルタントに転職できる?必要な能力や資格

現在、未経験からコンサルタントに採用される人は多い

コロナ禍を経た現在も、コンサルティングファームの中途採用は非常に活況です。一般的な大手企業の中途採用が年間100〜200人規模であるのに対し、大手コンサルティングファームは年間600〜700名、中には1000名以上もの転職者を受け入れるケースもあります。そうした中、現在コンサルタントに転職する方の6〜7割は、コンサルタント未経験者です。

背景には、ITを起点として日本の業界構造が大きく変化していることがあります。

例えば、かつての自動車業界は、生産・販売台数で世界と競うことで事業を拡大してきました。しかし最近は「車は所有するもの」という価値観自体が変化し、移動手段としてのシェアリングエコノミーやMaaSという概念が登場。海外からIT系企業が参入し、日本の自動車メーカーは、既存のビジネスモデルでは太刀打ちできなくなっています。

こうした市場環境やライフスタイルの変化、世界中で進むDXに対応するため、近年は多くの企業がコンサルティングファームに支援を依頼し、経営改革や新規事業の創出に取り組んでいます。それに伴いコンサルタントの需要が爆発的に増加しているため、コンサル業界の採用熱が非常に高まっているのです。

未経験でコンサルタントに転職するのはこんな人材

未経験でコンサルタントに転職した方の前職はさまざまですが、採用実績が多いのは次の2つのカテゴリーです。

ひとつは、大手SIerで企業のシステム開発や導入支援に携わっていた方です。現在、企業の課題解決に関わるプロジェクトのほとんどは、「IT導入」が着地点となります。したがって、多くのコンサルティングファームがITの知見を持つ人材を求めています。

もうひとつは事業会社の基幹部門の方。経営企画、事業企画、経理、財務、マーケティングなどの人材です。企業の内部で経営課題に取り組むことは、コンサルティング業務との共通点が多く、同時に顧客としての視点もコンサルタントに求められる素養だからです。

また、製造業の技術職や研究職、金融業界の営業職、流通の店舗マネジャー経験者など、多様なバックグラウンドの方を幅広く採用する動きもあります。コンサルティングファームの顧客の業種はさまざまであり、業務改善コンサルのフェーズでは、業界知識や業務知識が必要になるためです。

なお、未経験でコンサルタントに転職している方の年齢は、第2新卒から30代半ばがボリュームゾーン。ただ、応募先のファームが重視する領域において、高いレベルの経験・スキルを持つ方が、40代後半で未経験から転職に成功したケースもあります。

未経験者は採用選考でどこを見られるか

たとえ未経験者でも、採用の際に最も重視されるのは「その人は何ができるのか」。つまり、募集するポジションのコンサルティング業務に活かせる経験・スキルです。例えばコンサルティングの中核を成すITや、財務、マーケティング、経営に関する専門知識のほか、製造やサプライチェーンなどの現場を熟知していることなども評価されるでしょう。

経験・スキルがあることを前提に、「コンサルタントとして何を実現したいのか」という志望動機も重視されます。基本的にコンサルタントには、「経営者や部門責任者の悩みを解決するために力を尽くす」というマインドが求められるため、仕事へのこだわりや価値観も適性を判断する材料になるでしょう。

一方、コンサルタントのニーズが爆発的に高まる中で、特定スキルを持たない20代に対して、スタンスやポテンシャルで採用を行うファームも多数あります。学力や論理的思考力、英語力などを判断材料にしつつ、コンサルタントの仕事に対する思いや目的意識、成長意欲を通じて適性を評価しています。

コンサルタントに必須な資格は特にない

基本的に、コンサルタントになるのに特別な資格は必要ありません。

例えば「応用情報技術者」「簿記」「公認会計士」「中小企業診断士」「MBA」など、コンサルティングのテーマによって役立つ資格は多く、実際に保有している方もたくさんいます。ただ選考においては、資格が加点要素になる可能性はありますが、最終的には積んできた経験・スキルや、実現したい理想への熱意、マインドが採用の決め手になるでしょう。

英語についても「絶対に必要」という訳ではなく、英語を使わずにコンサルタントとして働いている方も多数います。ただ、大手のファームは外資系であることが多いため、英語が得意な方が仕事の幅が広がるのは確かです。英語に自信がない方は、高い語学力が求められないポジションに転職し、英語力を磨いてからグローバルプロジェクトを目指すという方法もあるでしょう。

コンサルティング業界の概要と採用の傾向

コンサルティング業界の概要について

顧客の抱えるビジネス上の課題に対して、コンサルティングファームが提供する支援は、業務フローに従って次の3つの領域に分けることができます。

1)戦略コンサルティング…企業の将来を見据え、どのような事業を創出し、どのような経営をしていくかについて戦略を練る。

2)業務コンサルティング…経営戦略が各部門にミッションとして下りてきた時に、業務や事業という単位でプロセス改善を進める。

3)ITデジタルコンサルティング…業務改善に付随するIT戦略と実際のシステム開発・運用。現在は上流の改革がほぼITデジタルに繋がる。

そして、これらの領域のどこを手掛けるかによって、コンサルティングファームは大きく次の5種類に分けられます。それぞれの特徴と採用傾向について解説しましょう。

戦略系コンサルティングファーム

上流となる経営戦略や事業戦略を支援するコンサルティングファーム。一般的に少数精鋭で担当が細分化されておらず、プロジェクトごとにチームを組んで業務を進めるため、1人のコンサルタントが多様な業界やテーマの案件に当たります。採用の入り口も「戦略コンサルタント」などと一本化されているケースが多いようです。

コンサルタント未経験での採用も多く、特に若手はポテンシャルを評価されて採用されるチャンスがあります。ただ「ゼロから1を構築する」といった抽象度の高い案件が多いため、論理的思考力などの基礎能力が高いレベルで求められます。事業会社以外では、医師やNPO職員、国家公務員などからの採用実績も少なくありません。

総合系コンサルティングファーム

戦略から業務、ITデジタル導入まで、全フェーズにおいてサービスを提供するコンサルティングファーム。従業員数が数千人規模の企業もあり、「人事」「物流」といった業務部門や、「製造業」「官公庁」といった業界部門などに組織が細分化されていることもあります。中途採用でも「人事コンサルタント」「製造業界コンサルタント」などのように、領域を指定して募集を行うことが多いようです。

組織が大きい分、多くのコンサルタントを必要とするため、ポテンシャル採用を含めた未経験者採用が最も多いのが特徴です。各社の組織体制から、そのファームが注力する領域を掴み、自分の経験・スキルと紐づくポジションを目指す事が転職のポイントになるでしょう。

シンクタンク系コンサルティングファーム

「○○総合研究所」などの社名で、調査・リサーチを行う研究機関を兼ね備えたコンサルティングファーム。大手証券会社、メガバンクといった日系大手企業の子会社が多いのが特徴です。総合系コンサルティングファームと同様に、民間企業の経営戦略から業務、ITデジタルのコンサルティング、官公庁向けのリサーチなども幅広く手掛けています。

戦略系や総合系と同様、未経験者の転職事例は少なくありません。特に、製造業などの特定業界を顧客に持つファームでは、その業界で研究や技術開発に携わってきた人材を採用する動きが盛んです。IT系のテーマも多いため、SEなどの技術者採用も増えています。

IT系コンサルティングファーム

業務改善に付随するIT戦略、ベンダーの選定、システム開発の支援、保守・運用まで、顧客の抱えるIT領域の課題解決に特化してコンサルティングを行う企業群です。ただ近年はITを武器として、最上流の戦略コンサルティングから手掛けるファームも増えてきました。

コンサルタント未経験者の採用はありますが、ITに関する何らかの経験・スキルは必要とされます。従来は、システム開発の上流、企画ができる人が多く求められていたのに対して、最近は開発、実装の技術を持つ人材までと、ニーズが多様になってきました。

特化型コンサルティングファーム

戦略・業務・ITデジタルというフローによる分類ではなく、例えば「中小企業」や「M&A戦略」「人事・組織戦略」など、特定の領域を専門とするコンサルティングファームです。

一般的に即戦力人材を採用する傾向があり、コンサルタント未経験から転職できる可能性はゼロではありませんが、選択肢は限られるでしょう。人事系なら事業会社での人事の経験、M&A系なら企業の財務状態を判断できるスキルなど、各領域での専門性が重視されます。

未経験からコンサルタントへの転職で重要となるポイント

自分のスキルを明確にし、活かす方向性を探る

未経験からコンサルタントへの転職を目指す時に大切なのは、「自分は何ができるのか」「自分は何のプロフェッショナルか」を明確にすることです。まず、これまで経験してきた業務内容や経験、実績を振り返り、自分のスキルと強みを確認しましょう。次に「自分ができること」と「コンサルタントとして実現したいこと」をリンクさせるために、どのようなファームのどのようなポジションを目指せばいいかを考えてみましょう。

そこでお勧めしたいのは、「コンサルティングファームの扱う案件は、常に世の中のトレンドに沿っている」という視点を持つことです。例えば、現在ビジネス新聞の一面を飾る「○○社が新規事業を開始」「○○社を買収」といったニュースには、ほぼコンサルティングファームが関係していると言っても過言ではありません。

トレンドを通じて社会を見た時に、今の自分の仕事がそこにどう関わるのか、コンサルティング業界の働きかけでそれがどう変化していくのかを日々イメージすれば、進むべき方向性も見えてくるでしょう。

志望動機、キャリアビジョンを深掘りする

コンサルタントへの転職では、「なぜコンサルタントか」という志望動機が最も重要なポイントのひとつです。例えば「日本のものづくりを強くしたい」「人が生き生きと働ける組織改善を支援したい」といった思いを、自身の経験と紐付けて表現できることです。特に若手は志望動機に力があれば、コンサルタントに必要なスキルセットは入社後に伸ばす前提で採用されるケースも少なくありません。

志望動機を明確にするには、将来のキャリアビジョンを描くことも欠かせません。現状の自分と、将来実現したいことの2点を結んだ線上にコンサルタントのキャリアがあり、それがどう紐づくかを整理しておきましょう。例えば、「コンサルタントの経験を活かして事業会社の経営に関わりたい」「特定業界全体の改革に寄与したい」「いずれ起業したい」といった将来のビジョンによって、積みたい経験は変わってくるはずです。

なお、かつてはハードワークのイメージが強かったコンサルティング業界も、今は労働環境が大きく改善されています。コンサルタントの仕事がマッチしている方は長く働き続けることもできますし、ファームからファームへの転職で、特定領域の専門性を高めていくのもひとつの道でしょう。

コンサル特有の選考形式に対策をしておく

主に戦略系や総合系ファームでは、応募者の論理的思考力を見るために「フェルミ推定」「ケース面接」などのテストを採用している場合があります。フェルミ認定とは、実際に調べることができない数量などを、いくつかの手掛かりを元に論理的に概算すること。その応用がケース面接で、例えば「駅前のコーヒー店の売上を3倍にするには?」など、特定の課題について、解決策をディスカッションする形式の面接です。

これらは1つの正解を出すことを求めているのではなく、論理的に説得力のある自分なりの結論を出すまでの「切り口」や「考え方」を評価するものです。

現在は対策本も多数出版されているので、自分自身で取り組み、回答への道筋に慣れることは可能です。ただ、そうした「方程式」を学んだだけでは、実際の面接で評価されにくい側面もあります。その場合は、コンサルティング業界の選考をテーマにしたセミナーに参加したり、転職エージェントで選考対策の支援を受けたりすることもお勧めです。

コンサルタントを目指すなら転職エージェントの活用を

未経験でコンサルタントへの転職を希望する方は、転職エージェントを利用してはいかがでしょうか。転職エージェントでは、面談をすることで、キャリアの棚卸しから経験・スキルの整理、強みの発掘をお手伝いし、それらにマッチした求人情報をご紹介することができます。また、ケース面接などのコンサルティング業界特有の選考にも、模擬面接による対策が可能です。最初の一歩をどう踏み出せばいいか悩んでいる方は、ぜひご相談ください。