職場の人間関係ストレスを感じ、悩んでいる人は少なくないようです。職場の人間関係にストレスを感じた場合は、どのように対処すれば良いのでしょうか。そこで、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が、職場の人間関係にストレスを感じた場合の、ストレスのチェック方法や悩みの解消方法について解説します。
職場の人間関係がストレスになっている人は多い
厚生労働省が令和4年に実施した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスを感じるビジネスパーソンは82.2%という結果になっています(正社員は86.2%)。さらに、ストレスの内容が対人関係と答えた人の割合は26.2%。4人に1人以上の人が、対人関係で何らかのストレスを抱えながら働いていることが分かっています。
(※)出典:労働安全衛生調査(実態調査)(厚生労働省P13)
同調査では、自分の仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人がいるのは91.4%という結果になっています(P15)。相談できる相手を見ると、「家族・友人」が68.4%と最も多く、次いで「同僚」が68.0%、「上司」65.0%となっています。
職場の人間関係による影響
職場の人間関係が悪化すると、どのような影響があるのでしょうか。組織に与える影響をご紹介します。
仕事へのモチベーションが下がる
職場の人との関わりによって、仕事のモチベーションが変化することも考えられます。周囲から感謝や賞賛の声があればモチベーションは高まりますが、人間関係が悪化してコミュニケーション不全になるとやる気を失ったり、前向きに取り組めなくなったりすることもあるでしょう。
生産性が低くなる
仕事へのモチベーションが下がったままだと、生産性も低くなるでしょう。特に仕事でやり取りする相手と関係性が悪化した場合、円滑なコミュニケーションが図れないため、確認などに時間がかかり業務効率が下がる可能性が高くなります。また、お互いの声がけがないためミスや行き違いも発生することも、生産性が下がる要因のひとつになるでしょう。
チームワークが悪くなる
チームの人間関係が悪化すると、チームワークにも影響を及ぼす可能性があります。チームワークを活かして個人の強みを伸ばし、弱みを補うことで成果を出す職場も多いでしょう。人間関係が悪化した場合、個人がバラバラに行動し支え合わないこともあり、成果が思うように出なかったり、ミスやトラブルなどが発生したりする恐れがあります。
自分のストレスをチェックしてみよう
自分が人間関係のストレスを抱えているかを自覚できている人ばかりではありません。本人には自覚がないまま、ストレスを溜めているケースもあります。厚生労働省が運営している働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、「5分でできる職場のストレスセルフチェック」が提供されています。職場におけるストレスレベルを測ることで、自分の状態を正しく把握できるでしょう。
(※)出典:「5分でできる職場のストレスセルフチェック」(厚生労働省)
対人関係の悩みの解消方法
人間関係に悩みがある場合は、どのように解消すれば良いのでしょうか。代表的な解消方法をご紹介します。
周囲に相談する
ひとりで抱えていると、解決策が浮かばないばかりか、ストレスが蓄積され続ける可能性があります。自分が抱えているネガティブな気持ちを誰かに話すことで、心が浄化され安心感を得られる現象を哲学や心理学、精神医学などの用語で「カタルシス効果」と呼びます。人に悩みを話すことは、それだけで安心感が得られる行動なのです。また、悩みを話しているうちに思考が整理され、問題点や解決策が浮かぶことも考えられます。ストレスや悩みをひとりで抱え込まず、信頼できる周囲の人に聞いてもらいましょう。
リフレッシュの機会を設ける
休みを取ってリフレッシュの機会を設けるという方法もあります。特に、「仕事が忙しくてゆっくり考える暇もない」という場合、心身に疲労が溜まりストレスになっている可能性があります。リフレッシュ期間を設けることで思考が整理され、ストレスも解消されるかもしれません。気持ちを切り替える機会を設けて、心機一転、仕事に取り組むことも一案です。
自分の考え方や接し方を変える
人間関係は相性も大きな影響を及ぼします。人間関係のストレスを抱えている相手を観察し、良好な関係性を築いている人が他にいないか探してみましょう。もし、良好な関係性を築いている人がいたら、どのように関わっているのかを確認し、自分の接し方を工夫することで、関係性の改善が期待できるかもしれません。相手に合わせて接し方を変えるスキルを身につけられれば、コミュニケーション力も高まるでしょう。
仕事だからと割り切る
「仕事だから」と割り切ることも対策のひとつです。仕事で関わる人は、時間とともに異動や転職、担当者変更などで顔ぶれが変わっていくこともあります。働いていると、どうしても相性が合わない人が出てくることもあるでしょう。相性が合わない相手に対して、割り切って対応するのもストレス回避の方法のひとつです。
異動・転職など職場を変える
人間関係の改善が望めずストレスが解消しない場合は、異動で社内の環境を変えることも検討しましょう。ただし、「業績重視で強いプレッシャーをかけるマネジメントスタイルが容認されている社風」「トップダウンで異論がある場合は周囲の協力を得られなくなる」など、社風の影響による人間関係の悩みは、異動で解決できない可能性があります。自分の悩みが異動で解決できるかどうかを検討し、もし難しい場合は転職も視野に入れましょう。
ストレスを我慢せず早めにケアしよう
ストレスを溜めていると、自律神経の乱れや疲労・頭痛など身体面への影響、不安や落ち込みといった心理面の影響、そして生活の乱れや暴飲暴食など行動面への影響が表れる可能性があります。さらに、自律神経失調症や生活習慣病などの身体疾患、うつや不安障害などの精神疾患を引き起こすかもしれません。
ストレスに気づいたら、ストレスの量を測り、どのように受け止め、対処するのかを考えましょう。前述したストレスチェックでストレスを測り、周囲に相談やリフレッシュの機会を設けて、自分なりのストレス解消法を持つことが大切です。所属企業に相談窓口や産業医がいる場合は、問い合わせてみましょう。厚生労働省が運営している「こころの耳」にも、電話相談やSNS・メールでの相談窓口や医療機関など、各種相談窓口の案内があるので参考にしてみてください。
(※)出典:こころの耳(厚生労働省)
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。