「第二新卒でも転職できるのか不安…」「第二新卒の転職は厳しいと聞くけど、本当?」など、転職したくてもなかなか行動に移せない人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、第二新卒の転職市場の現実や、転職に対する不安を解消する方法、第二新卒で転職が難しいと感じやすい人の傾向と対策などを解説します。
目次
第二新卒で転職するのは不安?転職市場の現実を解説
まずは、第二新卒の転職市場について解説していきます。
「第二新卒」とは、社会人何年目までを指す?
第二新卒に明確な定義はなく、企業によって定義や解釈が異なるため、「社会人何年目までが当てはまるのか」は一概には言えないでしょう。それぞれの企業の中で第二新卒の定義がある場合は、その定義によって変化します。特に定義がない場合は、「学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内」の人を指します。
第二新卒の転職市場の現実を解説
「第二新卒の転職は甘くないという話を聞いた」「新卒2年目で転職するのは早い?」などの不安を抱く人もいるようですが、実際のところはどうなのでしょうか。
株式会社リクルートが発表した「Z世代(26歳以下)の就業意識や転職動向」(※)では、「リクルートエージェントにおける「第二新卒歓迎と記載がある求人」の推移」も発表しています。調査によれば、2009~2013年の平均を基準とした場合、「第二新卒を歓迎する求人数」は、2022年には63.5倍まで増加していることがわかっています。
「第二新卒の転職は厳しい」と考え、転職することに不安を感じる人もいるかもしれませんが、実際には、第二新卒をターゲットとして採用を行う企業が大幅に増加していると言えるでしょう。
(※)参考資料:Z世代(26歳以下)の就業意識や転職動向(株式会社リクルート)
転職によくある「不安になる理由」と対処法
ここでは、転職においてよくある「不安になる理由」と、それぞれへの対処法について解説していきます。
20代が感じる不安のトップは「転職したいと思える仕事が見つかるか」
リクルートが転職活動者に向けて行った調査(※)で、「転職活動中に不安だと感じること」について聞いたところ、「希望する年収を得られる仕事が見つかるかどうか」が最も多く、全体の20.6%、次いで、「転職したいと思える仕事が見つかるかどうか」が20.0%を占めていました。
同調査によれば、第二新卒に当てはまる20代が「不安に思うこと」のトップ5は以下のようになっていました。
2位:希望する年収を得られる仕事が見つかるかどうか(20.4%)
3位:勤務場所や勤務時間等、希望の勤務条件で働ける仕事が見つかるかどうか(16.5%)
4位:職場の上司または同僚と合う仕事が見つかるかどうか(15.4%)
5位:これまでの経験・スキルが評価されるかどうか(7.3%)
以降で、それぞれの不安解消に役立つ対処法を紹介していきます。
(※)参考資料:転職活動者調査 第2弾 転職活動中の「不安」や「企業に提示してほしい情報」の世代別の傾向 20~30代は他世代と比べ、働き方、環境について関心高い
転職したいと思える仕事が見つかるか不安な場合
応募したい企業を探す際には、業界・業種・職種・企業規模などを絞り込みすぎないことも大事です。「転職の目的=転職先で実現したいこと」を明確にした上で、それができそうな仕事にはどのようなものがあるのか探してみましょう。
業界・業種・職種の幅を広げてみることで、自分では思ってもみなかった求人や企業に魅力を感じる可能性もあります。また、気になる企業の採用サイトなどで先輩インタビューなどを読むこともおすすめです。仕事内容や仕事のやりがいなどに対して、より具体的にイメージしやすくなるでしょう。
希望する年収を得られる仕事が見つかるか不安な場合
転職先で希望年収を実現できるかどうかは、自分の経験・スキルに加え、応募する業界や職種、応募企業の規模感なども関係してくるものです。
例えば、IT関連などの成長業界や、高い専門性が求められる業界・職種などは、給与水準が高い傾向があります。また、大手企業の場合は、同業界のほかの企業と比較すると給与水準が高い可能性があるでしょう。
異業界や異職種への転職にチャレンジすることで、年収アップを望めるケースもあります。しかし、評価につながる経験・実績や高い専門スキルなどを持っていない場合は、選考通過に苦戦する可能性もあるでしょう。
年収の相場観をつかむためには、志望する業界・業種・職種の給与水準などを調べることが大事です。その上で、現在の自分の経験・スキルでも希望年収を実現できそうか検討してみるといいでしょう。
勤務場所や勤務時間等、希望の勤務条件で働ける仕事が見つかるか不安な場合
希望する勤務条件に合致する求人を探してみる方法があります。ただし、勤務時間は繁閑期や配属先の部署などによって変化する可能性もあり、求人に掲載されている情報からは実態をつかみにくいかもしれません。
こうした場合は、面接選考の中で具体的な勤務条件や繁閑期の実態などを確認することがおすすめです。また、転職エージェントを活用する場合は、応募企業の勤務状況や過去の傾向などについて詳しい情報を確認できるケースもあります。
職場の上司または同僚と合う仕事が見つかるか不安な場合
職場の人間関係や風土、企業文化などは、求人に掲載されている情報だけではつかみにくいかもしれません。企業の採用ページに掲載されている社員インタビューの記事などで、どのような人物が働いているのか、職場の人間関係はどのようなものなのかを確認してみることが大事です。
また、企業によっては、選考過程の前に先輩社員とのカジュアル面談を実施していたり、選考過程の中で職場見学や先輩社員との面談を設定してくれたりするケースもあります。職場の人間関係や社風などに不安を感じる場合は、こうした機会を積極活用していきましょう。
これまでの経験・スキルが評価されるか不安な場合
自分の過去の経験・スキルを求めている業界・企業・職種に応募することが大事です。その上で、応募企業の仕事内容や仕事の進め方などをイメージし、応募書類や面接で、そこに合致する経験・スキルや発揮できる強みをアピールすることがポイントになります。そのためには、キャリアの棚卸しでこれまでの経験・スキルを洗い出すことと、応募先がどのような経験・スキルを求めているのかを知るための企業研究をしっかり行うことが重要になるでしょう。
「自分では応募企業の求める人材像に合致しているか判断できない」「経験・スキルを評価してくれそうな求人の探し方がわからない」という場合は、転職エージェントを活用してみるのもひとつの方法です。
転職エージェントは、求職者の希望や経験・スキルに合致する企業を紹介するので、自分の希望条件に合っていると感じたら応募してみるとよいでしょう。
第二新卒の転職は厳しいと感じやすい理由と、企業が第二新卒を採用する理由
「第二新卒の転職が厳しい」と感じてしまう人もいますが、第二新卒の採用に積極的な企業もあります。それぞれの理由について紹介します。
第二新卒の転職が「厳しい」と感じやすい理由
中途採用では即戦力を求める傾向があるため、社会人経験が少ない第二新卒は、経験・スキルが十分ではないと判断されることもあります。
特に、第二新卒を育成するための教育研修を整備していない企業の場合は、即戦力人材を採用する傾向もあるようです。即戦力人材と比較すると、企業にアピールできるような経験・スキルが不足している傾向があるため転職が難しいと言えるでしょう。
こうしたことから、「第二新卒は転職が難しい」と感じてしまいやすいかもしれません。しかし、先にも紹介した通り、実際には第二新卒を積極採用する企業は増えています。転職活動の進め方のコツをつかめば、希望に沿う転職を実現することも可能でしょう。
企業が第二新卒を採用する理由
先の調査で紹介した通り、第二新卒を歓迎する企業は少なくありません。その理由としては、以下のような点が挙げられます。
- 社会人経験の年数が短く、新卒入社した企業で働いた期間も短いため、自社の企業文化に馴染みやすい
- 社会人としてビジネスの現場を経験しているため、ビジネスシーンにふさわしい振る舞いができ、新たに教育研修を行う必要がない
第二新卒で転職が難しいと感じやすい人の傾向と対策
ここでは、第二新卒で転職が難しいと感じやすい人の傾向と対策を紹介します。
転職の目的を明確にしていない
「転職先で実現したいこと=転職の目的」を明確にしていない場合は、書類選考や面接で応募企業に対する志望動機も明確にしにくいため、「説得力がない」「志望度が低い」と判断される可能性があります。
対策
自己分析をしっかりと行い、転職することによって何を実現したいのかを考えた上で、希望条件を整理することが大事です。仕事内容、勤務時間や休日数などの勤務条件、年収などの待遇、将来のキャリア、福利厚生や働きやすい制度、勤務地など、さまざまな角度から希望条件を考えた上で、優先順位をつけておきましょう。
「転職先で実現したいこと」をベースに応募企業を探せば、自分の希望にマッチする企業を探しやすくなる上、志望動機にも説得力を持たせることができます。また、希望条件に優先順位をつけておけば、内定を得た際にも「承諾するべきか、ほかの応募企業の選考を続けるのか」などを検討する際にも役立つでしょう。
応募書類や面接で経験・スキルをアピールできていない
応募企業・応募職種に合致する経験・スキルや、発揮できそうな強みを整理していない場合、応募書類や面接でアピールすることができず、選考見送りになるケースもよく見られます。
対策
過去の経験・スキルを振り返り、キャリアの棚卸しをして、応募書類や面接などでアピールできることや自分の強みを洗い出しましょう。企業研究を行い、応募企業の求める人物像や、応募職種で求められていることを把握することも大事です。応募書類や面接では、企業の求めていることに合致するような自分の経験・スキル・強みをアピールすれば、評価につながりやすくなります。
また、仕事内容だけでなく、仕事の進め方やワーク・ライフ・バランス、職場の風土・社風・企業文化などが自分の考え方にマッチしているかどうか検討することもポイントです。ミスマッチの企業に転職して後悔しないためにも、仕事内容や待遇などの条件面だけでなく、こうした部分も理解しておくことが大事だと考えましょう。
応募企業を絞り込みすぎている
自分の希望にこだわりすぎて応募企業を絞り込んでいたり、大手企業・人気企業など競争倍率の高い求人のみに応募していたりする場合は、採用の可能性を狭めてしまうこともあります。
対策
転職の目的を実現できそうな業界・業種・職種を視野に入れて、幅広い企業に応募することで、自分を求めてくれる企業に出合える可能性が広がるでしょう。
また、「1社ずつ応募してじっくり取り組みたい」と考える人もいるようですが、1社ずつ選考結果を待つことになり、時間がかかるケースもあります。複数社に応募して選考を並行したほうが、より効率的に転職活動を進められるようになるでしょう。
キャリアに一貫性がなく、転職後のキャリアビジョンがない
前職(現職)で担当していた業務と応募職種の仕事内容が異なっている場合は、キャリアに一貫性がないと判断される可能性があります。こうした場合、「イメージのみで応募しているのでは?」「採用しても、入社後にミスマッチが発生し、早期離職するかもしれない」懸念を抱かれ、選考見送りになるケースもあります。
また、「入社後にどのような経験・スキルを身につけて成長していきたいのか」「将来的にどのようなキャリアを築いていきたいのか」を自分なりに考えていない場合も、同様のことが言えるでしょう。
対策
転職理由と志望動機に一貫性を持たせることが大事です。「転職先でどのようなことを実現したいのか」「なぜその企業・職種ならそれができると思ったのか」を伝えられるようにしておきましょう。
さらに、「入社後にどのようなキャリアを築いていきたいのか」を明確にしておくことで、より定着性をアピールしやすくなります。応募企業のキャリアパスなども想定し、1年後、3年後、10年後などの姿をイメージしておくとより説得力を高められるでしょう。
転職活動の進め方やポイントを把握できていない
情報収集や応募書類の作成、面接対策など、転職準備の進め方やポイントを把握していない場合、選考に苦戦するかもしれません。一方、転職活動にかかる期間や転職したい日などを想定せず、具体的な活動計画を立てていない場合も、長引いてしまう可能性があります。
また、在職中に転職活動を進めている場合は、平日の昼間などの業務時間内の面接が難しいため、日程調整ができずに長引いてしまうケースもあります。
対策
転職活動のおおまかな流れや転職準備に必要なことなどを紹介する記事を読むと、全体像を把握しやすくなります。転職活動にかかる期間の目安を知った上で活動計画を立てれば、転職準備も進めやすくなり、期間を区切ることでモチベーションも保ちやすくなるでしょう。また、面接日程の調整が難しい場合は、応募企業に在職中であることを伝えれば、業務時間外に設定してもらえるケースもあります。
転職支援のプロである転職エージェントを活用することもおすすめです。希望にマッチする企業の紹介だけでなく、転職準備のサポートや改善のアドバイスをしてくれるケースもあります。面接日程の調整をサポートしてくれるので、よりスムーズに転職活動を進めることができるでしょう。
第二新卒の転職活動をうまくいかせるためのコツ
ここでは、第二新卒の転職活動をうまくいかせるためのコツを紹介します。
転職市場の相場観を把握する
転職活動では、企業と求職者のニーズがマッチしていることが重要になります。転職サイトなどを調べ、自分の経験・スキルに合致しそうな求人をチェックすることで、転職市場の相場観を把握しやすくなるでしょう。「自分が転職できる可能性のある企業はどのようなものなのか」を理解した上で応募企業を選定すれば、選考通過や内定獲得の確率をより高めることができるはずです。
中長期的なキャリアビジョンを考えておく
転職する際には、将来に向けて中長期的なキャリアビジョンを考えておくことも大事です。自分がイメージするキャリアの実現に役立つような転職先を選択したほうが、時間を有効に使うことができるためです。転職後、「やっぱり違う」と感じて早期離職した場合、次の転職先では、また一から仕事を覚えることになるでしょう。
応募企業の選定や、内定承諾をする際には「自分が目指したいキャリアに役立つような経験・スキルを身につけることができるか」「将来、思い描く姿を実現できるキャリアパスがある企業なのか」についても、しっかり検討したほうが後悔につながりにくいでしょう。
前職(現職)への不満を転職理由にしない
面接で転職理由を聞かれたとき、前職(現職)への不満のみを伝えた場合は、「入社後にまた同じ不満を繰り返すのでは?」「早期離職するかもしれない」などの懸念をされて、選考見送りになる可能性もあります。
前向きな転職理由を伝えたほうがポジティブな印象につながりやすいので、不満がきっかけになった場合でも、「その不満を解消するために、転職先でどのようなことを実現したいのか」をしっかりと考えておくことが大事です。
転職エージェントを活用する
転職エージェントでは、求職者の希望や経験・スキルにマッチする求人を紹介してくれます。自己分析やキャリアの棚卸し、応募書類の作成、面接対策などのサポートをしてくれる転職エージェントもあります。
転職活動全般のサポートをしてもらうことで、スケジュール感や転職準備に必要なことなど、全体像を把握しやすくなります。また、転職支援のプロによる客観的なアドバイスを受けることで、改善点も見つけやすくなり、選考通過に役立つでしょう。
第二新卒の転職で不安を感じやすいことのQ&A
第二新卒で転職する際に不安や疑問を感じやすいことについてお答えします。
第二新卒でも大手企業に転職できる?
大手企業の場合でも、新卒採用で充足できなかった人員を第二新卒で補おうとするケースがあります。また、欠員補充や事業拡大に伴う人員拡大などを背景に、第二新卒のポテンシャル採用を行うケースもあります。第二新卒にも大手企業に転職できるチャンスはあると言えるでしょう。とはいえ、大手企業や人気企業は応募者が多く、競争倍率も高くなる傾向があるので、応募書類や面接でいかにアピールできるかが重要になります。
第二新卒で転職する場合、最低何ヶ月は勤務したほうがいいの?
勤務した期間より、勤務先の企業でどのような経験を積んだのかが重要だと考えましょう。自分なりの成長や達成経験を得てから転職活動をすると、応募書類や面接で強みなどをアピールしやすくなります。
例えば、「担当業務の基礎的な部分を習得できた」「一人で業務を遂行できる」「目標に対し、一定の成果・実績を出せた」などが挙げられます。企業によっても、独り立ちする時期や担当業務の内容などが違うため、一概に「最低何ヶ月」と区切ることは難しいでしょう。
新卒で大手企業に入社したけれど辞めたい。周囲から「もったいない」と言われたけれど、どう考えればいい?
仕事に求めるやりがいや将来目指したいキャリア、働き方、ライフスタイルなど、人それぞれに求めていることは違うものです。そのため、自分自身として「仕事を通じてどのようなことを実現したいのか」を考えることが大事でしょう。
また、「今の仕事が合わない」と感じていても、経験・スキルを積んだ後には、異動希望を出すなどでやりたいことを実現できる可能性もありますし、「今の会社のままでは、将来目指したいキャリアやライフスタイルなどを実現できない」というケースもあります。転職するかどうかを決める前に、自分が望んでいることを明確にすれば、後悔しない選択ができるでしょう。
第二新卒の転職の内定率はどのくらい?
内定率は、個人によっても企業によってもケースバイケースなので一概には言うことは難しいでしょう。内定率には、「自分にマッチする企業に応募しているか」「応募企業にアピールできる経験・スキル・強みを伝えることができているか」が影響することはもちろん、「ほかの応募者と比べて、抜きん出ている要素があるか」「企業が求めている人材像にマッチしているか」なども関係してきます。
転職活動において内定率を重視している場合は、「自分の経験・スキル・強みを評価される可能性が高い企業に応募すること」が大事と言えるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。