第二新卒で転職を考えている場合、「そもそも転職することが難しいのでは?」「経験・スキルに自信がない。門前払いされたらどうしよう…」などの不安を感じている人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、第二新卒の転職活動が難しいと考えてしまいやすい理由や、第二新卒で転職活動に苦戦する人・転職を実現しやすい人によくある特徴、転職活動の進め方のポイントなどを解説します。
目次
第二新卒とは?社会人何年目までが当てはまる?
第二新卒に明確な定義はなく、企業によって定義や解釈が異なるため、「社会人何年目までが当てはまるのか」は一概には言えないでしょう。
それぞれの企業の中で第二新卒の定義付けがされているケースもありますが、特に定義がない場合は、学校(高校、専門学校、短大、高専、大学、大学院)卒業後、おおむね3年以内の人を指します。
「第二新卒の転職は難しい」と考えてしまいやすい理由
「第二新卒の転職は難しい」と考えてしまいやすい理由について解説します。
早期離職の可能性を懸念される
第二新卒の場合は、新卒で入社した企業を比較的早いタイミングで退職している、もしくは退職を検討している背景があるために、企業から「採用してもすぐに辞めてしまうのではないか」などの懸念を抱かれることがあります。特に、1年未満などのタイミングで退職している場合は、職場環境や仕事に対する耐性を不安視されるケースもあるようです。採用には、コストや時間、労力がかかるため、入社後の定着性に疑問を抱かれた場合は、内定を得ることが難しいと言えるでしょう。
即戦力としての経験・スキルが足りない
中途採用では即戦力を求める傾向があり、実務経験の短い第二新卒の場合は、経験・スキルが足りないと判断されることがあります。特に、「経験者優遇」「経験○年以上」などの記載がある求人は、一定以上の経験・スキルがある人材を求めているものです。そのため、社会人経験の短い第二新卒は、「採用の水準を満たしていない」と判断され、選考見送りになる可能性があります。
ただし、「第二新卒歓迎」「第二新卒OK」としている求人の場合は、ポテンシャル採用を前提としているため、これには当てはまらないと言えるでしょう。
育成のための教育体制が整っていない
企業によっては、第二新卒を育成するための教育体制が整っていないこともあります。新卒採用に向けた新人研修を用意している企業は多く見られますが、「中途採用向けの教育研修の体制は整えていない」という企業もあります。特に、即戦力として教育研修なしで現場に出られる人材を優先的に採用する企業の場合は、第二新卒の転職は難しいと言えるでしょう。
キャリアアップ・年収アップ転職を実現しにくい
第二新卒の場合は、一般的にポテンシャル採用を前提とする傾向があり、新卒入社の人材と同等の条件で採用されることもあります。そのため、即戦力として期待できる実績や高度な専門スキルを持っていない場合、転職先では新卒と同じレベルの業務や年収条件からスタートする可能性もあります。こうした場合は、第二新卒で入社直後からキャリアアップや年収アップを実現することは難しいと言えるでしょう。
企業が第二新卒を採用するのはなぜ?
第二新卒を積極的に求めている企業もあるので、考えられる理由について解説します。
企業が第二新卒を採用する背景
新卒採用で充足できなかった人員を第二新卒で確保しようと考える企業は少なくないようです。また、事業拡大や事業成長などに併せた増員のために、第二新卒を積極採用するケースもあります。このほか、社員の平均年齢が上がったために、経営の中核を担う次世代の人材を育成することを目的に第二新卒を求める企業もあるでしょう。
企業が第二新卒に期待していること
第二新卒は他社で長くキャリアを積んでいないため、企業は「自社の企業文化に馴染みやすいこと」を期待する傾向があります。また、社会人経験が少ないことから、素直さや吸収力、柔軟性、入社後の成長性なども期待されているでしょう。一方、教育研修の体制が整っていない企業の場合は、すでにビジネスシーンにおける振る舞い方などを習得していることにも期待して採用するケースがあります。
第二新卒で転職活動に苦戦しやすい人の特徴
「第二新卒で転職活動に苦戦しやすい人」に見られる傾向を解説します。
前職(現職)への不満だけが転職理由になっている
転職の面接では、必ずと言っていいほど転職理由を聞かれるものです。前職(現職)への不満だけが理由になっている場合は、「また同じ不満を繰り返して早期離職するのでは?」と懸念される可能性があります。また、自分なりに「転職先で実現したいこと=転職の目的」を持っていない場合は、ミスマッチな企業に応募してしまいやすく、選考に苦戦してしまうケースもあります。
転職準備をしないまま求人に応募している
自己分析やキャリアの棚卸しなどの転職準備をしていない場合は、応募書類や面接で自分の強みをアピールすることができないために、選考に苦戦してしまうことがあります。また、転職先に希望することを明確にせず、イメージのみで応募企業を選んでいる場合もミスマッチが発生しやすく、選考通過が難しくなってしまう傾向があります。
このほかにも、転職市場の相場観や自分の市場価値を客観的に理解できず、採用の水準を満たせない企業に応募してしまい、選考が見送りになるケースがあります。
仕事に対する姿勢が受身になっている
仕事においては主体的に取り組む姿勢が求められるものです。面接で前職(現職)の業務について聞かれた際に、主体的・意欲的に取り組んだことを話すことが難しい場合は、「受身の姿勢があり、仕事に対する意欲が低い」「入社後の活躍可能性に期待できない」と判断されてしまう可能性があるでしょう。
ビジネスシーンにふさわしくない振る舞いをしている
第二新卒の場合は、ポテンシャル採用を行う傾向がありますが、先にも述べた通り、「すでに社会人としてビジネスの現場を経験していること」に期待している企業もあるでしょう。
面接の際、ビジネスシーンにふさわしくない振る舞いや言葉遣いをしている場合は、「最低限のビジネスマナーが身に付いていない」と判断され、選考が見送りになることもあるかもしれません。また、応募書類で誤字・脱字が目立っていたり、面接に臨む際の身だしなみがきちんとしていなかったりする場合なども同様のことが言えます。
第二新卒で転職を実現しやすい人の特徴
「第二新卒で転職を実現しやすい人」によく見られる特徴を解説します。
「転職の目的」が明確になっている
「転職の目的=転職することで何を実現したいのか」が明確になっている場合は、ミスマッチが発生しにくく、定着性に期待できると言えるでしょう。転職経験者の中には、新しい仕事の習得や人間関係を構築するまでの期間に苦しむケースもあります。しかし、自分自身で目的を持って転職する場合は、それを乗り越えて成長し、活躍できる人材となる可能性があるので、早期離職を懸念されにくいと言えるでしょう。
企業が求めることにマッチした強みをアピールできる
企業が求めている人物像や、応募職種で求められている経験・スキルなどにマッチした強みを持っている場合は、入社後の活躍可能性に期待できると考えられます。応募書類や面接で、「入社後、自分の強みをどのように発揮し、どういった貢献ができるのか」を具体的にアピールできているかどうかが選考通過において重要なポイントとなるでしょう。
中長期的なキャリアビジョンがある
応募企業で実現可能な「中長期的なキャリアビジョン」を持っていることもポイントです。「入社後、どのような経験・スキルを身につけ、将来的にどのように活躍したいのか」というビジョンがあれば、企業も長く定着して活躍・貢献してくれるイメージをしやすくなります。直近の目標だけでなく、「5年後、10年後などでどのようなキャリアを描いていきたいのか」を伝えることが重要になるでしょう。
前職(現職)での成長経験や成功体験がある
前職(現職)で成長した経験や、成果を認められた成功体験などがある場合は、アピールにつながりやすいと言えます。数字目標の達成など、客観的事実として成果をアピールできる場合は、即戦力として期待できるため、より評価されやすいでしょう。
一方、具体的な成果を挙げていない場合でも、自分なりに創意工夫した取り組みや、周囲から評価されたことなどがあれば、入社後の成長や活躍可能性に対する期待値を高めやすくなります。また、失敗から学んで成長した経験なども、仕事に前向きに取り組む姿勢や吸収力・柔軟性などのアピールにつながりやすいと言えるでしょう。
自ら学ぶ姿勢や仕事に対する熱意がある
第二新卒の場合はポテンシャル採用を行う企業も多いため、自ら学ぶ姿勢を持っていることもアピール要素となります。
また、仕事に対する熱意が高い場合も、一定以上の評価につながるでしょう。応募企業への入社意欲や志望度の高さをしっかりと伝えることができれば、「内定を出したら入社を期待できる」という判断をしてもらいやすくなるはずです。
転職準備をしっかり行い、計画的に進めている
転職準備をしっかりと行うことは、転職実現の重要な要素となります。自己分析やキャリアの棚卸し、企業研究などの準備をきちんとしておくことで、自分にマッチする企業を探しやすくなりますし、応募書類や面接でアピールする経験・スキルや強みなども整理できます。
また、転職したい時期を見据えて活動スケジュールを立てた上で、計画的に進めている場合は、モチベーションも保ちやすくなり、転職活動を長引かせずに済むでしょう。さらに、「いつごろ転職するのか」を想定しておけば、内定を得た際の入社日の調整などもしやすくなるので、よりスムーズに転職を実現できると言えます。
第二新卒の転職活動の進め方のポイント
転職活動を進めていく段階別に、何をすればいいのか、どのようなことを意識すればいいのかを解説します。
1:転職活動の計画を立てる
一般的に、転職にかかる期間は、3カ月程度であるようです。スムーズに進めるためには、転職活動のおおまかなスケジュール感を把握した上で、「いつ、何をするのか」計画を立てておくことが大事です。転職したい時期を想定し、逆算して考えることがポイントになるでしょう。
2:自己分析やキャリアの棚卸しを行う
自己分析を行い、「転職することで何を実現したいのか」を明確にしましょう。その上で、転職先に対する希望条件を整理し、優先順位をつけておけば、応募企業を選定しやすくなります。
また、キャリアの棚卸しを行い、これまで担当した業務を振り返り、アピールできる経験・スキル・強みなどを洗い出しておくことも大事です。自分の力を発揮できる業界・企業・職種などが見つかりやすくなりますし、応募書類の作成や面接での回答にも役立てることができます。
3:応募企業の選定を行う
第二新卒の採用に積極的な求人を探すこともおすすめです。転職サイトなどで「第二新卒歓迎」「未経験者歓迎」などのキーワードで検索すると見つけやすいでしょう。転職市場の相場観も把握しつつ、どのような企業に採用の可能性があるのかを検討してみることがポイントになります。
その際には、自己分析で導き出した「転職の目的」「希望条件」と、キャリアの棚卸しで整理した「経験・スキル・強み」を基に検討することが大事です。自分の希望に合うかどうか、自分の力を発揮できるかどうかを意識することで、マッチングの精度はより高まり、採用の可能性も高めやすくなるでしょう。
4:応募先の企業研究を行い、応募する
応募先の企業研究をきちんと行うことで、ミスマッチの発生を防ぎやすくなります。また、応募企業が求める人物像や応募職種に求められることなどを理解した上で、そこに合致する自分の強みを考えれば、応募書類や面接でよりアピールできるようになるでしょう。
応募書類を作成する際には、アピールしたいことをわかりやすく簡潔に伝えるように意識することが大事です。また、ビジネスパーソンとして、誤字・脱字などにも注意しましょう。
5:面接対策を行う
面接でよく聞かれる質問に対し、どのようなことをアピールするのか整理しておきましょう。
また、面接の場で簡潔に伝えられるようにするためには、口に出して話せるように練習しておくことも大事です。
面接当日に、ドアの開け閉めや挨拶などの振る舞い方がわからなくなってしまうケースもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。清潔感ある身だしなみを整えておくこともポイントです。
6:内定承諾と入社日の調整を行う
内定を得た際、選考を並行している場合には、ほかの応募企業と比較・検討しましょう。後悔しないためにも、「納得できるかどうか」をきちんと判断することが大事です。
今後の退職交渉や業務の引き継ぎ期間などを踏まえて入社日を調整することをおすすめします。
ただし、企業は採用計画や事業計画を基に採用活動を進めているため、転職先が望む入社日に合わせられないと感じた場合でも、なるべく要望に添う姿勢を見せることも必要と言えるでしょう。
また、退職交渉が難航して、どうしても決定した入社日を守ることが難しい場合は、入社日の変更を相談する形になりますが、企業によっては変更に応じていただけないケースもあります。こうした場合は、入社を辞退せざるを得なくなるので注意した方がいいでしょう。
第二新卒の転職を実現するために意識したいポイント
第二新卒の転職活動において、意識したいポイントを解説します。
前向きな転職理由を伝える
転職を決意したきっかけが前職(現職)への不満だった場合でも、前向きな転職理由を伝えることが大事です。不満のみを転職理由としている場合は、「採用した場合でも、同じように不満を理由に短期離職するかもしれない」などの懸念をされる可能性があります。
転職理由を聞かれた際には、「転職で実現したいこと=転職の目的」などを中心に伝えれば、ポジティブな印象につながりやすいでしょう。
成長意欲や自ら学ぶ姿勢をアピールする
第二新卒の場合は、ポテンシャル採用をする傾向があるため、成長意欲や柔軟性、吸収力などをアピールすることも大事です。また、社会人年数が短く、経験・スキルが不足している点を補いたい場合は、自ら学ぶ姿勢を伝えることもポイントになります。「入社後の業務に役立つ知識を学んでいる」「資格取得の勉強をしている」など、具体的に伝えることでよりアピールにつなげることができるでしょう。
入社後のキャリアビジョンを描いておく
入社後にどういった経験・スキルを身につけ、どのように成長していきたいのかを考え、3年後、5年後、10年後などに目指したい姿について話せるようにしておくこともポイントです。
応募企業のキャリアパスなどを踏まえた上で、入社後に実現したい中長期的なキャリアビジョンを明確にしておけば、定着性や活躍可能性をよりアピールすることができるでしょう。
転職理由と志望動機に一貫性を持たせる
先にも述べた通り、転職理由は、「転職先で実現したいこと=転職の目的」を中心に前向きなものとすることがポイントですが、志望動機との一貫性があることも重要になります。転職の目的と志望動機に一貫性がない場合は、「事業内容や仕事内容を理解していないのでは?」「採用してもミスマッチだと感じて早期離職するかもしれない」などの懸念を抱かれてしまう可能性があります。
志望動機を聞かれた際には、転職の目的を基に、「なぜ応募企業でそれができると考えたのか」を伝えることができれば、より説得力を増すことができるでしょう。
転職エージェントを活用する
第二新卒の場合、転職経験がない人も少なからずいるでしょう。「何をどう進めればいいのかわからない…」と悩んでしまわないためには、転職エージェントを活用することもおすすめです。
転職エージェントでは、転職活動の進め方やキャリアについての相談から、自己分析・キャリアの棚卸し、希望に合う求人の紹介、応募書類の作成、面接対策まで、さまざまなサポートを行なっているケースもあります。転職準備や転職活動に必要なサポートを受けることができれば、よりスムーズに転職を実現しやすくなるでしょう。また、選考に苦戦した際にも、転職支援のプロから客観的なアドバイスを受ければ、改善点を見つけやすくなるはずです。
第二新卒におすすめの転職エージェントとは?
転職エージェントは、大きくは「総合型(大手)」と「特化型(中小)」に分類することができます。
「総合型」と呼ばれる大手の転職エージェントは、扱う求人数が豊富であり、幅広い業界・職種に関する転職ノウハウがあります。また、特定の業界・職種専門のチームを持っているケースもあります。
一方、中小規模の転職エージェントは、「特化型」として、採用企業、業界、職種、地域、年代など、専門領域に特化していることが少なくないでしょう。
求人案件の種類も数も豊富な「総合型」のエージェントは、自分の希望に合う求人を紹介してもらえることに期待できます。また、第二新卒の転職支援実績もあるため、転職実現に役立つ的確なアドバイスをもらえるでしょう。「第二新卒だから、経験・スキルに自信が持てない」と感じている場合にも、「総合型」の転職エージェントの活用は、おすすめと言えそうです。
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。