
転職活動では、これまでの職歴をまとめた職務経歴書の提出が求められるケースが一般的です。しかし、経験が短かったり実績が出せていなかったりする場合、「職務経歴書に書くことがない」と感じるかもしれません。
そこで本記事では、職務経歴書に書くことがないと感じる理由や記述内容に困った時の対策などを、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
職務経歴書に書くことがないと感じる主な理由
本章では、職務経歴書に書くことがないと感じるよくある3つの理由について解説します。
- 職歴が少ない
- 実績を振り返りにくい・覚えていない
- 活かせるスキルが見つけにくい
理由1:職歴が少ない
職務経歴書に書くことがないと感じる理由の1つとして、職歴が少ないことが原因になる場合があります。
次のようなケースに該当する人が一例として挙げられます。
- 転職回数が多く各社の在籍期間が短い
- 第二新卒で社会人経験が短い
- アルバイト経験のみである
転職回数が多く1社あたりの在籍期間が短い人や第二新卒など社会人経験が短い人は、責任のある仕事やスキルが求められるような業務を任される機会が限られていることもあるかもしれません。そのようなケースでは、アピールできる内容が思いつかず、「何を書けば良いのかわからない」と悩んでしまうこともあるでしょう。
理由2:実績を振り返りにくい・覚えていない
これまでの職歴の中で特筆できるような実績を残せていなかったり、具体的な成果を思い出せなかったりする場合も「職務経歴書に書くことがない」と感じる理由の1つだと考えられます。
一例として、下記ケースに該当する人が挙げられます。
- 会社自体の売上が悪く業績が上げられていない
- 会社・組織としての業績は良いが個人として実績を振り返りにくい
会社の業績が低迷しているなど業績を上げられない環境下にいた場合や、個人として実績を振り返りにくい場合は、数字で成果を示しにくくなってしまいます。そのため、「職務経歴書に書くことがない」と悩むこともあるでしょう。
また、これまでの職歴の中で具体的な成果を残した経験を失念している場合や、経験はあるものの「アピールできる成果がない」と思い込んでいる場合も、職務経歴書に書くことが思いつかず、なかなか書き進められないこともあります。
理由3:活かせるスキルが見つけにくい
募集職種や求人情報を見て活かせるスキルが見つけにくい、「職務経歴書に書くことがない」と感じるパターンもあるでしょう。
具体的には、次のような事例に該当する人と考えられます。
- 直近で長い離職期間がある
- 社会人経験は長いがルーティンワークがメイン
直近で長い離職期間がある人の場合、業務に必要な知識がアップデートされていないなどといった可能性があります。そのため、特定のスキルを持っていたとしても「自分のスキルは活かされないかもしれない」と感じられてしまい、職務経歴書に書くことがないと思い至る場合もあるでしょう。
ルーティンワーク中心の業務を担っていた人も、これまでの仕事の成果を具体的な数値で表しにくく職務経歴書の内容が薄くなってしまう場合があります。このように、アピール方法や訴求ポイントがわからず、「職務経歴書に書くことがない」と悩んでしまうケースもあります。
職務経歴書に書くことがないと感じるケース別の書き方
ここでは、下記7つのケース別に職務経歴書の書き方例を紹介します。
- 転職回数が多く各社の在籍期間が短い
- 第二新卒で社会人経験が短い
- 直近で長い離職期間がある
- アルバイト経験のみである
- 社会人経験は長いがルーティンワークがメイン
- 会社自体の売上が悪く業績が上げられていない
- 会社・組織としての業績は良いが個人として実績を振り返りにくい
ケース1:転職回数が多く各社の在籍期間が短い
転職回数が多く各社の在籍期間が短い場合、1つの業務やスキルを習熟できていない、責任ある仕事を経験していないなどが原因となり、「職務経歴書に書くことがない」と感じてしまうことがあるかもしれません。
転職回数が多い場合は、その理由や背景を一貫したキャリアの軸に結びつけて、全体を通じてどう成長してきたかを示す方法があります。職歴を会社ごとにまとめるのではなく、プロジェクトや担当業務ごとにまとめるのも良いでしょう。
また、複数回の転職を通じてスキルの幅が広がったことや、好奇心旺盛でさまざまな分野に挑戦できる意欲や積極性などをアピールするのも1つの方法です。
ケース2:第二新卒で社会人経験が短い
社会人経験が短い第二新卒の場合、職務経歴が少ないため、職務経歴書に記載することがないと感じる場合があります。
ただ、第二新卒も歓迎している企業の場合、応募者の社会人経験が短い旨は既に認識しています。企業は、経験やスキルよりも成長意欲を重視すると考えられることから、経験が短い中で何を学び、どう成長したのか、学んだこと次の仕事にどう活かしていきたいのかをアピールする記述を意識してみましょう。
ケース3:直近で長い離職期間がある
直近で長い離職期間がある場合、離職期間中のことについてアピールできる内容にうまく転換できず、「書くことがない」と悩んでしまうケースもあります。直近で長い離職期間がある場合は、端的に離職期間がある理由を述べるとともに、離職期間を経てどのようにキャリアを再構築しようとしているのか、など再就職への意欲を示すことがポイントの1つです。
離職期間があるからといって、職務経歴書に書くことがないと諦めるのではなく、ポジティブにアピールできる内容を探してみましょう。
ケース4:アルバイト経験のみである
アルバイト経験のみである場合、正社員としての経験がないため、「職務経歴書に書けることがない」と職務経歴書を作成する際に苦労することがあるかもしれません。アルバイト経験のみである場合でも、工夫した点や成長した部分を具体的なエピソードを交えながら示すことで、成長意欲や前向きな姿勢を持ち合わせている旨をアピールできるでしょう。
ケース5:社会人経験は長いがルーティンワークがメイン
社会人経験が長くても、ルーティンワークが中心業務だった場合、職務経歴書に何を書けば良いのかと悩むことがあるかもしれません。しかし、ルーティンワークであっても業務改善や効率化、品質向上への取り組みなど、書き方を工夫することで採用担当者に前向きな印象を与えられるでしょう。自分なりに工夫した点や業務効率化のために課題を改善した経験があれば、職歴と一緒に記載しましょう。また、強みやポテンシャルをアピールする方法もあります。
ケース6:会社自体の売上が悪く業績が上げられていない
会社自体の売上が悪く、業績を上げられていない場合、数字で実績を示しにくいと感じることもあるかもしれません。このようなケースでは、個人として努力したことや工夫した点、自分が果たした役割や成果、状況を打開しようとした取り組みや姿勢などを伝えることを意識してみましょう。
ケース7:会社・組織としての業績は良いが個人として実績を振り返りにくい
会社・組織全体の業績が好調でも、個人の実績を振り返りにくい場合、職務経歴書を作成する際に「アピールポイントがない」と悩むケースもあるでしょう。
企業や応募職種によっては、チームワークを築ける点や協調性などが評価されることもあります。個人の成果が見えにくい項目でも、これまでの努力や貢献が企業にどのような影響を与えることができたのかを記載することで、採用担当者に「この人がいれば会社にプラスの影響を与えてくれる」と感じてもらえるかもしれません。
職務経歴書に書くことがない時に試したいこと
職務経歴書に書くことがないと悩む時は、次の4つの取り組みを試してみましょう。
- これまでのキャリアの棚卸しを行う
- 応募先企業との接点を見つける
- 希望職種の職務経歴書サンプルを参考にする
- 転職エージェントと会話してアピール箇所を洗い出す
これまでのキャリアの棚卸しを行う
まずは、これまでのキャリアを棚卸ししてみましょう。その際、1つの経験を深く掘り下げることがポイントです。また、紙などに書き出してみるのも良いでしょう。目に見える形で職歴やキャリアを掘り下げていくことで、忘れていた経験や実績を思い出したり、実績に紐づく経験やスキルが整理できたりします。
応募先企業との接点を見つける
応募先企業が求めている人材との接点や共通点を探してみるのも有効です。応募先企業が求めている人材要件を整理し、自分の職歴と重ねてみることで、アピールポイントが明確になるでしょう。
どんなに充実した職歴を持っていたとしても、採用担当者が「自社の求める人材とマッチしない」と感じられる内容では、採用されないこともあります。企業が求める人材と接点になる職歴を中心にスキルや経験を深掘りして、内容を充実させましょう。
希望職種の職務経歴書サンプルを参考にする
職務経歴書に書くことがないと悩む時は、希望職種の職務経歴書サンプルを参考にするのも1つの方法です。転職サイトや転職エージェントの公式サイトには、職務経歴書のサンプルが公開されている場合もあります。
特に職種ごとの職務経歴書サンプルは、職種ごとにアピールしたいポイントを押さえた内容になっている場合もあり、職務経歴書を書く際のヒントを得られることもあるでしょう。
下記はリクルートエージェントで公開されている職務経歴書のサンプルです。職務経歴書に書くことがないと悩む人は、ぜひ参考にしてみてください。
※参考資料:【リクルートエージェント】職務経歴書のサンプル
転職エージェントと会話してアピール箇所を洗い出す
職務経歴書に書く内容が思いつかない時は、転職エージェントに登録し、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーの力を借りながら職務経歴書を作成するのも1つの方法です。
転職エージェントは、これまでにも「職務経歴書に書くことがない」と悩む求職者の転職活動を支援してきました。これまでの支援ノウハウを活かし、アピール箇所を明確にするための棚卸しをサポートしてくれるでしょう。
また、応募先企業ごとにアピールすべきポイントを絞り込んでもらえたり、魅力的に感じられる職務経歴書の書き方をアドバイスしてくれたりすることもあります。
職務経歴書に書くことがない時に避けたいこと
本章では、職務経歴書に書くことがない時に避けたい下記3つの行為について解説します。
- 事実でないことを盛り込む・内容を誇張すること
- 一部の職歴を省略すること
- 文章量が著しく少ない状態で職務経歴書を提出すること
事実でないことを盛り込む・内容を誇張すること
職務経歴書に事実でないことを盛り込んだり、記載内容を誇張したりしてはいけません。虚偽の情報を記載した場合は、経歴詐称を疑われる場合もあります。事実に沿った内容を正直に記載しましょう。
一部の職歴を省略すること
職務経歴書を作成する際は、一部の職歴を省略して書くことも避けましょう。転職回数が多い場合や在籍期間が短い職歴がある場合、一部の職歴を省略したくなるかもしれません。
しかし、職歴を省略すると詐称とみなされる可能性があります。記載を控えたい職歴や応募職種との関連性が低い職歴に関しては、簡略化するなど、記載方法を工夫してみましょう。
反対にアピールしたい職種について詳しく記載することで、アピールポイントが伝わりやすくなり、メリハリのある職務経歴書に仕上がります。
文章量が著しく少ない状態で職務経歴書を提出すること
職務経歴書に書ける経験やスキルがないからといって文章量が著しく少ない状態で提出してしまうと、応募先企業の採用担当者に「入社意欲が低い」「熱意がない」と捉えられてしまう可能性があります。
文章量が少なくなってしまう人は、長所や強みをアピールする欄を設けるなど、意欲や熱意をアピールできるよう工夫してみましょう。
職務経歴書に書くことがないと感じたら、転職エージェントに相談しよう
職務経歴書に書くことがないと感じ、書き方や内容に悩む時は、転職エージェントに相談してみてはいかがでしょうか。
転職エージェントでは、転職支援のプロであるキャリアアドバイザーから職職務経歴書の書き方に関するアドバイスや記載内容の添削などのサポートを受けられます。また、面談を通じて、キャリアの棚卸しや経験やスキルの整理もサポートしてくれるため、職務経歴書に書ける新しい事柄が見つかることもあるでしょう。
思うように職務経歴書を作成できないと悩む人は、ぜひ転職エージェントに相談し、職務経歴書の作成サポートを受けてみてください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。