
仕事に対する意欲がわかず「仕事を頑張れない」と感じた経験を持つ人もいるのではないでしょうか。仕事を頑張れない時、どうしたら良いのか悩む人もいるでしょう。
そこで今回は、「仕事を頑張れない」と感じた時の対処法などを、組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏に解説いただきました。
目次
「仕事を頑張れない」のはみんな一緒?
厚生労働省が公表している「新しい時代の働き方に関する研究会 報告書 参考資料(※)」によると、日本企業の従業員エンゲージメントは、世界平均や他国と比較すると低いことが分かります。
(※)出典:「新しい時代の働き方に関する研究会 報告書 参考資料」(厚生労働省)
世界の中でも従業員のエンゲージメントが低い傾向にある日本では、「仕事を頑張れない」と感じる人が一定数存在すると考えられるでしょう。
「仕事を頑張れない」と感じた時に知っておきたいこと
ここでは、「仕事を頑張れない」と感じた時に知っておきたいこととして、下記2つの項目について解説します。
- 仕事を頑張れないのは甘えとは限らない
- 仕事が急に頑張れなくなったなら要注意
仕事を頑張れないのは甘えとは限らない
「仕事を頑張れない」と感じる時、必ずしも「甘え」とは限らないでしょう。
たとえば、長期間にわたるストレスや過労、疲労やモチベーションの低下などが原因で、心身が限界に近づくと、1つの兆候として頑張る力がわかなくなることがあります。「仕事を頑張れない」と感じているにもかかわらず「自分は甘えているだけだ」と思い込み、無理を続けると心身の状態をさらに悪化させてしまう恐れもあります。
まずは、「仕事を頑張れない」と感じる原因の排除に努めたり、根本的な要因を探ったりすることが大切です。症状や状態によっては、心身を休められる環境を整えてみましょう。また、必要に応じて友人や家族などに相談する、専門医の診察を受けるなどの対処も検討してみてください。
仕事が急に頑張れなくなったなら要注意
「これまで頑張れていたのに、急に頑張れなくなった」といった症状が表れた場合、何らかのストレスが原因となり心身に不調が表れ始めているのかもしれません。また、大きなプロジェクトを終えた後などは、バーンアウト(燃え尽き症候群)のような状態になっている可能性も考えられます。
心身が限界に達している場合、無理をせず休息を取ることが大切です。症状によっては、仕事から一時的に離れたり、専門医に相談したりすることも視野に入れておきましょう。仕事の内容や量、働き方を見直すことも1つの方法です。負担と感じる要素を取り除くことで症状が軽減することも期待できるかもしれません。
「仕事を頑張れない」と感じる理由別対処法
「仕事を頑張れない」と感じる理由は、人によって異なります。時には複数の理由が絡み合って「仕事を頑張れない」と感じてしまうこともあるでしょう。
ここでは、「仕事を頑張れない」と感じるよくある9つの理由について、対処法とともに解説します。
- 仕事量が多すぎてついていけない
- 仕事が難しくてついていけない
- 職場の人間関係が良くない
- 顧客や取引先からのクレームが頻発する
- 仕事にやりがいを感じられない
- 役割や地位の変化に対応しきれない
- 収入や待遇面への不満がある
- 理由も分からず無気力になってしまう
- 会社の将来性や雇用の安定性に対して不安を感じる
仕事量が多すぎてついていけない場合の対処法
仕事量が多すぎてついていけないことが理由で、ストレス過多になり「仕事を頑張れない」と感じることがあります。
まずは、上司に現状を正直に伝えてみましょう。業務の優先順位や量、遂行方法を一緒に見直すことが大切です。適切な範囲内に仕事量を調整する、業務プロセスを改善する、などの対策に取り組むことで現状が改善されることもあります。
また、すぐに終わらせるべき仕事と後回しにできる仕事を明確にし、業務を整理していくと、今やるべきことが明確になり心の負担が軽くなる場合もあるでしょう。
仕事が難しくてついていけない場合の対処法
仕事が難しくてついていけない場合は、必要なスキルや知識が足りず、仕事をどう進めて良いか分からなくなってしまうことが原因になっている場合があります。結果的に、仕事に対するモチベーションが低下してしまい「仕事を頑張れない」と感じてしまうこともあるでしょう。
この場合は、疑問点や不明点を明確にして、上司や先輩にアドバイスを求めてみましょう。周囲のサポートを得ながら、1つひとつ疑問点や不明点を解決していくことで、少しずつ仕事への理解が深まり、「仕事を頑張れない」と感じることが減るかもしれません。
また、必要なスキルを補うための研修や勉強会に参加するのも1つの方法です。仕事や業務への理解が深まるため、仕事が難しくてついていけないといった事態を改善できることもあるでしょう。
職場の人間関係が良くない場合の対処法
「仕事を頑張れない」理由の中には、職場の人間関係が良くないことも一因として挙げられます。
まず、自身の感情や状況を整理し、何がストレスの原因になっているのかを明確にしましょう。次に、信頼できる同僚や上司に相談し、アドバイスを求めてみましょう。中には社内に相談窓口を設けている企業もあります。人に相談するだけでも気持ちが軽くなることもあるでしょう。
改善が見込めない場合は、部署異動や勤務形態の変更を願い出たり、転職するなどして環境を変えたりすることも検討してみましょう。
顧客や取引先からのクレームが頻発する場合の対処法
顧客や取引先からのクレームが頻発する場合、精神的に疲弊してしまい、「仕事を頑張れない」と感じられてしまう場合があります。
クレームは、一人で抱え込まずに他のメンバーや上司と共有し、チームで対応することが大切です。また、クレーム対応をマニュアル化し対処方法を標準化することで、精神的な負担を減らせることもあるでしょう。
仕事にやりがいを感じられない場合の対処法
仕事にやりがいを感じられない場合も、「仕事を頑張れない」と感じる一因になるケースがあります。
仕事にやりがいを感じられない場合は、自分がどのような業務にやりがいを感じるのかを再確認してみましょう。その上で、新しい挑戦ができそうなことや、やりがいにつながりそうなことを探してみるのも良いかもしれません。
もし、現状の仕事にやりがいを見出せない場合は、上司に相談し、現在とは違う業務にチャレンジさせてもらうのも良いでしょう。現職で新しい挑戦が難しい場合は、転職に踏み切るのも1つの方法です。
役割や地位の変化に対応しきれない場合の対処法
役割や地位の変化に対応しきれず、「仕事を頑張れない」と感じられてしまうこともあります。例として、昇進や部署異動などで役割やポジションが変わり、新しい責任や期待に対するプレッシャーを感じているなどのケースが挙げられます。
新しい役割や変化に慣れるまでには時間がかかることを念頭に置き、必要以上に自分を追い込まないことが大切です。上司や同僚からフィードバックをもらいながら、少しずつ新しい役割や業務に慣れていきましょう。
収入や待遇面への不満がある場合の対処法
現在の収入や待遇が自分の貢献度やスキルに見合っていないと感じる場合、「仕事を頑張れない」と感じられてしまう原因になる可能性もあります。
在籍している企業に等級(グレード)に応じた給与テーブルがある場合は、今の収入や待遇が自分の貢献度やスキルと見合っているのか確認してみてはいかがでしょうか。また、業界の水準と比較するのも良いかもしれません。
もし、現在の給与や待遇が会社の等級に応じた給与テーブルに見合っていない、業界の水準よりも下回る、などの場合は、待遇の改善について相談してみましょう。
理由も分からず無気力になってしまう場合の対処法
特定の原因が思い当たらないにもかかわらず、無気力状態が続いている場合、仕事に対する意欲が低下することも考えられます。
まずは、自分の行動が原因になっていないか、生活習慣を見直してみましょう。もし睡眠不足が続く、バランスの取れた食事を摂取できていないなどの状況が続いている場合は、生活習慣の改善を図りましょう。会社の環境や仕事に関係することが原因で無気力状態になっている場合は、上司や人事担当者、会社の相談窓口などに相談してみましょう。
症状が深刻な場合は、無理をせず産業医や医療機関への受診も検討してみてください。専門家によるアドバイスを参考に現状の改善に取り組むことで、症状が改善される場合もあるでしょう。
会社の将来性や雇用の安定性に対して不安を感じる場合の対処法
会社の将来性や雇用の安定性に対して不安を感じると、「今の会社で頑張る意味はあるのか?」と働く動機が失われてしまい「仕事を頑張れない」と感じる場合もあるかもしれません。
会社の将来性に不安を感じる場合、まずは会社が公表している決算報告書や有価証券報告書など、事業運営に関するデータや情報を確認してみましょう。自身が把握している情報が不足していることで必要以上に不安になっている可能性があります。確かな情報をもとに現状をしっかり把握できると、不安が過剰であるか冷静に判断できるでしょう。
万が一、会社の将来性が懸念される場合や雇用の安定性に不安を感じる場合は、将来に備えて転職にまつわる情報を集めたり、転職の準備を進めたりするのも良いでしょう。他にも長期的なキャリアプランを考え直すことも有効な場合があります。
次のキャリアを切り拓く準備を進めたりキャリアの方向性を明確にしたりすることで、自分自身の成長に働く動機を見出せるようになることもあるため、仕事への意欲も高まるかもしれません。
「仕事を頑張れない」を乗り切るために日々できること
本章では、「仕事を頑張れない」という状況を乗り切るために日々できることとして、生活環境の観点から下記3つの対処法を紹介します。
- 早寝・早起きを心がける
- ストレスを発散できることを見つける
- 仕事と関係ない人と話す機会を増やす
早寝・早起きを心がける
「仕事を頑張れない」という状況を乗り切る手段として、早寝・早起きが挙げられます。生活リズムを整え、日常的に質・量ともに十分な睡眠を確保することで、心身の健康を保持できると言われています。
適正な睡眠時間は個人差がありますが、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023(※)」によると、一般的に6時間以上の睡眠を確保することが推奨されています。また、睡眠は食生活や運動などの生活習慣や睡眠環境によって睡眠休養感が左右されると言われているため、早寝・早起きする際は、生活習慣や睡眠環境の改善にも努めてみると良いでしょう。
(※)出典:「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(厚生労働省)
ストレスを発散できることを見つける
自分が好きなことやリラックスできることを見つけて、日常生活に取り入れてみるのもおすすめです。運動する、音楽を聴く、映画を観る、自然の中を散歩する、趣味に没頭するなど、ストレス発散の方法は人それぞれです。自分に適したストレス発散法を探してみましょう。
ストレスを発散できる機会を設けることで、緊張状態から解放され、心身ともにリフレッシュできるかもしれません。気持ちが軽くなり、「仕事を頑張ろう」と、前向きな気持ちになることもあるでしょう。
仕事と関係ない人と話す機会を増やす
仕事と関係のない人と話す機会を増やすのも1つの方法です。
仕事とは異なる関係を持つ人と交流することで、視野が広がったり、新たな気付きを得られたりすることもあるでしょう。また、楽しい会話や気心の知れた人との交流は、心を軽くし、ストレスを和らげてくれることも期待できます。こうしたコミュニケーションの時間が仕事への意欲を取り戻す一助になることもあるでしょう。
仕事を頑張れなくて限界を感じている場合の対策
ここでは、仕事を頑張れなくて限界を感じている時に行いたい下記2つの対策について解説します。
- 周囲の人や専門家への相談をすぐに行う
- 転職して新しい環境で働く
周囲の人や専門家への相談をすぐに行う
もし「仕事を頑張れない」と限界を感じている時は、信頼できる同僚や上司に相談してみましょう。業務内容や現状を理解できる同僚や上司であれば、状況に合わせた現状改善やサポートができるかもしれません。ただ、職場関係者への相談が難しい場合やもっと専門的なアドバイスが必要だと感じる場合は、産業医に相談したり医療機関に受診したりすることも検討しましょう。
仕事が辛いと感じる状態が長引くと、心身に影響を及ぼす懸念があります。早めに周囲の人や専門家に相談することで、心身への負担が大きくなる前に解決策を見つけられたり、状況を改善するためのサポートを受けられたりすることもあります。自分を守るためにも、まずは一歩踏み出して周囲の人や専門家に相談してみましょう。
転職して新しい環境で働く
転職して新しい環境で働くことも「仕事を頑張れない」と限界を感じている時の対処法になることがあります。新しい環境で働くことで、今の職場で感じているストレスやプレッシャーから解放されるとともに、自分の能力を再発見できたり、新たなやりがいを見つけられたりできるかもしれません。
転職に対して「現状から逃げている」「甘えている」といったネガティブなイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、「仕事を頑張れない」と限界を感じている状況下においては、自分を守り、より良い環境で働くための積極的な選択肢になることもあるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。