
転職活動を行う際、これまでにも転職を繰り返してきた人は「転職回数が多いと選考のハードルが上がるのではないか」「採用担当者からネガティブな印象を持たれるのではないか」と不安に思うこともあるようです。
転職回数が「多い」と捉えられるのは何回くらいからなのか、採用担当者は転職回数をどのように見ているか、転職回数が多い人が転職を実現させるコツなどについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
転職回数が多いのは何回からを指す?
そもそも世の中のビジネスパーソンはどれくらい転職をしているのでしょうか。株式会社インディードリクルートパートナーズ ((旧)株式会社リクルート)が2024年、全国の20代~50代の男女正社員18,022名を対象に行ったアンケート調査によると、「転職したことはない」と回答した人の割合は20代では約6割(62.3%)ですが、30代では44.5%、40代で34.4%、50代で31.7%と減少しています。
また、転職回数は年代を追うごとに増加し、3回以上転職した経験がある人は、30代で18.8%、40代で33.5%、50代で40%に達します。
こうした相場からも、年代によって転職回数への見られ方が変わると考えられますので、目安として参考にしてください。
(※)出典:転職回数と採用実態の関係 | RECRUIT AGENT
企業の採用担当者は転職回数をどう見ているか
企業の採用担当者に対しても「転職回数」への見方についてアンケート調査を実施。すると、「転職回数は気にならない」と回答した採用担当者は4割弱(37.0%)に達しました。
一方、転職回数を気にする採用担当者では、「3回」から気になると回答した人の割合が23.9%と最も高く、「4回」が13.1%、「5回」が8.9%、「6回以上」が2.1%という結果が表れています。
(※)出典:転職回数と採用実態の関係 | RECRUIT AGENT
「転職回数が気になる」と答えた採用担当者からは、理由として次のような声が寄せられています。
「転職を繰り返していると忍耐力がないと思うから」(その他 5,000人以上)
「転職回数が多いと採用しても長続きしない」(建設業界 3,000~4,999人)
「頻繁に転職している人には意欲が感じられない」(Web・インターネット業界 300~499人)
「定着しない可能性が高いから」(クレジット・信販・リース 100~299人)
「あまり転職回数が多い人は胆力が足りない、または周囲とうまくやっていけない可能性が高いと考えるため」(化学・素材業界 300~499人)
「1社あたりの勤続年数が短くなってくるため、なぜ長く続けられなかったのか理由が気になるから」(医療・福祉業界 100~299人)
「1社あたりの就業期間が短くなるため、腰を落ち着けて仕事に取り組む意識がないと判断してしまう」(その他 300~499人)
「転職を繰り返し、一つのところで長続きしていないということは、うちでもイヤなことがあったらすぐ辞めてしまうのではないかと思ってしまう」(医療・福祉業界 500~999人)
「転職に抵抗がないと思うので、どのようなキャリアを描いて今に至るか気になる」(医療・福祉業界 500~999人)
一方、「転職回数が気にならない」と答えた採用担当者からは、次の意見が寄せられました。
「転職経験がある方が、経験が豊富かもしれないから」(コンサルティング業界 3,000~4,999人)
転職回数の多い人が転職を実現させるコツとは?
上記の「採用担当者の声」も踏まえ、転職回数が多いと感じている人が転職を実現させるために心がけたいポイントをお伝えします。
これまでの転職理由を前向きに伝える
採用担当者は、転職回数が多い人に対し、「不満があるとすぐに辞める人なのではないか」という懸念を抱くように見受けられます。しかし、転職を繰り返した理由や目的に納得すれば、そうした懸念を解消できる可能性があります。
「○○の経験を積みたかった」「○○のスキルを磨きたかった」「○○に強い興味を持ち、チャレンジしたくなった」など、前向きな意欲や目的を持って転職を重ねてきたのであれば、それを伝えましょう。そして、実際に転職によって新たに身に付けたスキルがあれば、それも併せて伝えるとプラス評価に転じるかもしれません。
ただし、これまで明確な目標を持たずに転職を重ねてきたのであれば、過去の転職理由を無理に取り繕おうとせず、「今回の転職の目的」「今後の目標」を前向きに語るようにしましょう。転職を重ねてきた自身の現状と課題を客観的に見据え、「応募企業で何を目指したいのか」という意欲を伝えるといいでしょう。
さまざまな企業での経験を活かせることをアピールする
転職を重ねて複数の企業を経験してきたからこそ、身に付いたこと、学べたこともあるのではないでしょうか。それを応募企業でも活かして貢献できることをアピールするのも一つの手です。
同じ業種・職種であっても、手法や仕事の進め方などは企業によって異なるものです。多様な手法を学んできた経験を伝えることで、「自社の業務改善に活かしてもらえるかもしれない」と期待を持たれる可能性があります。
転職回数をあまり問わない企業に応募する
転職回数への捉え方は、業界・企業によっても異なります。人材流動が活発で転職者が多い業界では、転職回数はあまり問われない傾向が見られます。また、中小企業や成長途上のベンチャー企業などでは、1人が幅広い業務を担うことも多いため、複数企業でさまざまなスキルを身に付けた人、環境変化への柔軟な適応力を持つ人が求められることもあります。
そのような企業へ応募すると、選考通過率が高まるかもしれません。
転職回数が多くて不安な人は転職エージェントに相談をしてみよう
転職回数の多さが気になるようであれば、転職エージェントに相談して、次のようなサポートを受けてはいかがでしょうか。
- 転職回数をあまり問わない企業の求人を紹介してもらう
- これまでの経験を棚卸しし、「強み」としてアピールできるポイントを明確化する
- 「強み」が伝わりやすい職務経歴書を作成する
- 面接で転職回数の多さについて聞かれた場合の、受け答えのコツについてアドバイスを得る
転職エージェントと一緒に選考対策を行うことで、転職実現につながりやすくなるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。