求人市場におけるエンジニアのニーズは高く、特にITエンジニアは選択肢が豊富な環境といえます。チャンスを活かして希望通りの転職を実現するためには、しっかりと計画を立て、選考に向けての準備を行って臨みたいものです。エンジニアが転職活動をする場合の大まかな流れ、それぞれのプロセスでやるべきこと、心がけるべきポイントについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
目次
エンジニアの転職活動にかかる期間の目安とスケジュールイメージ
転職活動のフェーズは、大きく「事前準備/応募」「面接」「内定」「退職/引き継ぎ(在職中の場合)」に分かれます。準備開始から入社までに要する期間は、一般的に「3カ月程度」が目安です。
すでに退職している場合、面接日程を柔軟に組めること、退職交渉や引き継ぎが不要であることから短縮できるかもしれませんが、仕事を続けながら転職活動を進めた場合、3カ月以上かかることもあります。
ITエンジニアの場合は採用ニーズの高い企業が多いように見受けられ、一般的な選考スピードよりも早く選考が進むこともあるようです。オンライン面接も一般化していることから、面接日程調整がスムーズに運び、短期間で転職活動を完了できるケースも増えています。
なお、選考時期が大型連休期間と重なったり、面接担当者が長期出張に出てしまったりすると、面接の日程調整が難航し、長引くこともあるため注意が必要です。
エンジニアの転職活動の流れ
エンジニアの転職活動の流れは、他職種と大きな違いはありませんが、エンジニアの転職活動において、各ステップで心がけたいポイントをご紹介します。
【STEP-1】転職までの計画を立てる
前段でご紹介した転職活動期間の目安を参考に、活動の計画を立てます。エンジニアの場合、担当プロジェクトの終了、あるいは一区切りついたタイミングでの退職を目指すと、スムーズに退職しやすいと思われます。退職の目標時期から逆算し、情報収集や応募を開始するとよいでしょう。
自身の業務の繁忙期と面接時期が重ならないように調整することも大切です。忙しすぎて企業研究や面接対策が不十分なまま面接に臨むと、評価を得られない可能性があります。
【STEP-2】目的を整理する
「とにかく今の状況から抜け出したい」「会社の将来性に期待できない」など、現状の不満・不安を解消したくて転職を考えている場合、それだけにとらわれて転職活動を進めると、企業選択を誤ったり、面接をクリアできなかったりする事態に陥ることがあります。
「今後、エンジニアとしてどのようなテーマに取り組みたいのか」「どのようなキャリアを積みたいのか」「将来、どのようなエンジニア像を目指すのか」など、目的を定めましょう。同時に、「最低限必要な収入額」「勤務地」「休日休暇」など、こだわりたい条件も整理しておきます。
【STEP-3】業界動向や求人などの情報収集をする
業界のトレンド情報や求人情報を収集する手段は多様化しています。一つの情報源だけでなく、複数を併行して活用することで幅広く情報収集でき、選択肢が広がるでしょう。
以下に情報収集の手段をご紹介します。
転職サイト・スカウトサービス
転職サイトでは、開発環境や言語、商品やサービス、興味がある分野などのキーワードで検索すれば、該当する求人情報を閲覧することができます。
また、匿名で職務経歴や希望条件を公開しておけば企業や転職エージェントからオファーが届く「スカウトサービス」の利用もおすすめです。どのような企業が自分の経験・スキルに興味を持ってくれるのかが分かり、自分の「市場価値」を把握できるでしょう。
転職エージェント
転職エージェントでは、専任のキャリアアドバイザーから求人の紹介を受けられます。転職サイトや企業の採用ページに記載されていない「非公開求人」の情報を入手できることもあります。
また、自分では想定していなかった業界や企業に、経験・スキルが活かせるポジションがあることを発見できるケースもあります。
これまでの経験・スキルや志向を踏まえた今後のキャリア構築の相談もできますので、「今の企業にとどまるべきか、転職すべきか」「今後、どのような経験・スキルを身に付ければ市場価値が高まるか」といったヒントも得られるでしょう。
知人・友人の紹介(リファラル採用)
同じ業界で働く知人や友人を介すれば、興味ある分野の仕事に携われる企業、社風が合いそうな企業に出会えるかもしれません。企業では、自社の社員から友人・知人を紹介してもらって選考を行う「リファラル採用」の制度を導入するケースが増えており、企業規模に関わらず「友人・知人経由の転職」が叶いやすくなっていると考えられます。
ただし、この方法は「視野が広がりにくく、選択肢が狭まる」「内定を辞退しづらい」「入社後に退職しづらい」といったデメリットも想定されますので、注意が必要です。
勉強会・イベント・ビジネスSNSなど
エンジニアが集まる勉強会・セミナー・イベント、あるいはビジネスSNSなどで求人情報を入手できることもあります。業界のトレンド情報を収集しつつ、求人情報にもアンテナを張ってみるといいでしょう。
【STEP-4】応募書類を作成する
履歴書・職務経歴書を作成します。職務経歴書で必ず記載しておきたい項目は以下のとおりです。
- 開発環境、開発言語、使用したツールなど
- 担当した製品・サービス、プロジェクトの概要・規模(メンバー数・金額など)
- 担当した工程
- プロジェクトリーダー、プロジェクトマネジャーの経験
このほか、以下も記しておくと評価アップにつ)(顧客折衝、外部パートナーとの交渉・調整、メンバー育成などながる可能性があります。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)関連プロジェクトの経験
- 業務の改善・効率化などへの取り組みと成果
- 技術面以外の自己PR
【参考記事】
- IT業界・SE(システムエンジニア)の職務経歴書の書き方と見本・フォーマット
- Webエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- インフラエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- サーバーエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- データベースエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- セキュリティエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- 制御ソフトエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- 組み込みソフトエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- サービスエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- セールスエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- プロセスエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
- プラントエンジニアの職務経歴書の書き方見本とフォーマットダウンロード
【STEP-5】面接対策をする
エンジニアの面接でよく聞かれるのは以下の項目です。受け答えの準備をしておきましょう。
経験・技術スキルの確認
担当プロジェクトの概要だけでなく、自身がどの工程にどの程度関わり、どのような役割を果たしたかが正確に伝わるように整理しておくことが大切です。また、実務では使っていなくても、独自に勉強して身に付けているスキルがあれば、それも伝えましょう。
転職理由
転職を考えたきっかけが「不満」「不安」であったとしても、それをそのまま伝えるだけではネガティブな印象を与えてしまうかもしれません。不満をきっかけに自分のキャリアを見つめ直し、「これから何をしたいのか」「これから何を目指すのか」まで語れるようにしておきましょう。
志望理由
どの会社にでも通用するような志望理由を語っても、採用担当者に響きにくいでしょう。「なぜこの会社なのか」を語れるようにするためには、企業研究が必要です。
企業のホームページ、採用ページ、ニュースリリース、社長やトップエンジニアのインタビューなどに目を通し、「自分がこだわりたいこと」「自分が目指すもの」「自分が希望する働き方」などと共通する部分をピックアップしてください。
自分と相手企業が「大切にしているもの」の共通性を語ることで、志望理由に説得力を持たせられます。なぜそれを大切にしたいと思ったのか、きっかけとなったエピソードがあれば、それも具体的に語れるといいでしょう。
【参考記事】
【STEP-6】内定~退職~入社
内定を得て入社意思を決定したら、在籍企業に退職意思を伝えます。強く引き留められることもありますが、転職活動中から引き継ぎの準備を進めておくことで、退職交渉がスムーズに進みやすくなることもあります。
例えば、マニュアルを文書でまとめておく、他メンバーに情報共有や指導をするなどして後任者を育てておく……など、自分が抜けてもなるべく業務に支障をきたさないように準備しておくといいでしょう。
エンジニアの市場価値・採用ニーズ
「リクルートエージェント」の求人件数の分析(※出典1)によると、2017年から2022年の5年間で、ITエンジニアの求人件数は2.7倍に増加しています。2022年度時点で、コロナ禍前の水準を超えました。
DXへの取り組みは引き続き活発であり、ITエンジニアのニーズは今後も高水準で推移すると見込まれます。
※出典1:「『リクルートエージェント』求人件数の分析」(リクルート)
未経験からのエンジニア転職は可能?
リクルートエージェントの求人を分析したところ、未経験者も対象とするIT系エンジニアの求人件数は、2018年度を基準とすると、2022年度には2.6倍に増えています(※出典2)。
※出典2:「未経験求人が2018年度比で3.2倍に増加。2022年度で急増 新たな業界・職種へチャレンジできる機会が増加」(リクルート)
ITエンジニアのニーズが高まる中、経験者の採用が困難となっているため、未経験者を採用して育成する動きが活発化しているのです。つまり、未経験からITエンジニアに転職できるチャンスは広がっているといえるでしょう。
未経験者の選考では、「主体的な学習」「成長意欲」が注目されています。技術の進化のスピードが激しいため、企業側は「学び続ける姿勢」を重視する傾向があります。「入社後、研修で学ぼう」ではなく、独自に勉強を始めていると、プラス評価につながりやすいでしょう。
転職活動に悩んだら転職エージェントに相談してみよう
技術の進化が進む中、求人市場も移り変わっていくことが考えられます。求められる経験・スキルの要件も変化していくため、アンテナをはって情報収集を続けることが大切です。その手段として、転職エージェントを活用してはいかがでしょうか。
ITエンジニアの場合、IT業界に限らず多様な業種の事業会社で求められているケースが多いでしょう。自身の経験・スキルが思いがけない分野や企業で活かせることもありますので、転職エージェントをパートナーとして可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
キャリアの棚卸しや自身の考えの整理、応募書類作成・面接対策へのアドバイスなど、転職活動のあらゆるフェーズでのサポートサービスも活用してください。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。