転職では職務経歴書を求められるケースが一般的です。職務経歴書とは、これまでの職歴をまとめた応募書類を指しますが、未経験業界・職種に転職する場合はどのようにまとめればいいのでしょうか。
そこで、未経験業界・職種に転職する場合の職務経歴書の書き方と自己PR・志望動機例文について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
業界×職種で構成を考えよう
未経験分野にチャレンジする場合は、「業界」と「職種」に分解して考えると分かりやすくなります。「異業界×同職種」「同業界×異職種」「異業界×異職種(キャリアチェンジ)」の3つのパターンについて解説します。
業界未経験の場合
業界未経験の場合は、職種は同じなので応募する業務内容との共通点が多くなる傾向があります。求人を確認し、これまでの職種経験で活かせそうなことを中心に職務経歴をまとめましょう。また、事務職であればMOSなどのPC操作スキル、経理であれば日商簿記検定、個人向け営業であればファイナンシャル・プランニング技能士(FP)など、応募する職種に活かせる資格・スキルがあれば、職務経歴書でしっかりとアピールしましょう。
職種未経験の場合
職種未経験の場合は、業界特有の専門知識があることを中心にアピールしましょう。例えば不動産業界であれば宅地建物取引士、人材業界であればキャリアコンサルタント資格や社会保険労務士、外資系企業であれば TOEIC® L&R TEST など、応募する業界で求められやすい資格があれば記載しておきます。また、職種が未経験だとしても、「課題解決力」「ホスピタリティ」など、職種を横断して持ち運べる「ポータブルスキル」があるはずです。応募する仕事に活かせそうな強みがあれば、自己PRでアピールしましょう。
※ TOEICはETSの登録商標です。このウェブサイトはETSの検討を受けまたはその承認を得たものではありません。
業界・職種どちらも未経験の場合
業界・職種どちらも未経験の場合は、応募する求人や企業研究を行い、アピールできる接点を探すことが重要になります。職種未経験と同様に職種を横断して持ち運べる「ポータブルスキル」をアピールできないか確認するほか、これまでに培った職務経歴のうち、応募する仕事でも活かせる経験・スキルがないか探してみましょう。
職務経歴書では、応募する仕事と接点の少ない経歴は箇条書きにするなど簡潔にして、できるだけアピールできる項目を中心にまとめることがポイントです。
未経験の場合の職務経歴書作成のポイント
未経験の場合の職務経歴書作成のポイントをまとめました。
ポータブルスキルをアピールする
未経験の場合は、職種や業界を横断して持ち運べる「ポータブルスキル」がアピールのポイントになります。「強みが分からない」という場合は、キャリアの棚卸しや自己分析を行い、自分の強みや転職の軸となるスキルを明らかにしておきましょう。また、ポータブルスキルをアピールする場合は、できるだけ応募する仕事に活かせるスキルを選択することも重要なポイントです。
自己PRや志望動機でアピールする
職務経歴書は履歴書のようにフォーマットが決められていません。そのため過去の経歴がアピールしにくい場合は、職歴を細かく伝えるよりも自己PR欄を十分に設けて人柄や強みを伝えるという方法もあります。職務経歴書とは別に「志望動機書」を作成して入社意欲を伝えてもいいでしょう。なお、自己PRや志望動機を作成する際は、数値や実際のエピソードなど客観性を意識してまとめることがポイントです。
熱意や学習意欲も伝える
「社会人としての経験が短く、アピールできることが少ない」「職務経歴書に書くことが浮かばない」という方もいるかもしれません。もしアピールすることが見つからない場合は、熱意や学習意欲を伝えるという方法もあります。例えば、「業界や仕事を知るために、競合も含めて○○店舗に足を運んで研究した」「知識をつけるために○○資格を取得予定」など、未経験をカバーするための熱意や学習意欲が伝わる行動を起こすことも大切です。
自己PR作成の基本構成と未経験例文
未経験の場合の自己PRの書き方について解説します。
自己PRの基本構成
自己PRを作成する場合は、基本構成を理解しておくと分かりやすくなります。冒頭で自身の「強み」を伝え、その根拠となるエピソードを交えて自己PRを具体的にして、応募企業でも活躍できることをアピールします。
(1)結論となる「強み」
冒頭で端的に強みを伝えることで、採用担当者が自己PRを理解しやすくなります。
例:「私の強みは○○です」
(2)根拠となる「具体的なエピソード」
強みを伝えてからエピソードを続けると、イメージがしやすくなります。エピソードはできるだけ具体的に伝え、実績や効果は数値を交えるといいでしょう。
例:「現職(前職)では、○○に取り組みました。○○が課題であると考え、○○や○○などの工夫をした結果、営業目標をXX%達成できました」
(3)強みを活かして「貢献・活躍できること」
強みが応募企業でどのように活かせるのか、どのように貢献できるのかをまとめます。採用担当者が、入社後の活躍イメージを描けるように伝えましょう。
例:「この経験を強みとし、貴社に入社後は○○に貢献していきたいと考えております」
未経験の自己PR例文
私の強みは計画性です。
現職では進行管理として全体のスケジュールを作成し、進捗を管理していました。進行が遅れやすいタスクはボトルネックを明らかにして、解決のために事前にメンバーや関係部門に調整・交渉をしていました。入社までは3名で進行管理を行っていましたが、事前に問題解決をしたことによって工数の削減につながり、1.5名の工数でも業務は回るようになりました。未経験ではありますが、これまでに培った計画性、進捗管理力は貴社の人事採用業務でも活かせると考えております。
志望動機の基本構成と未経験例文
未経験の場合の志望動機の書き方について解説します。
志望動機の基本構成
自己PR同様に、志望動機を作成する場合も、基本構成を理解しておくと分かりやすくなります。冒頭で自身の価値観や志望するきっかけや理由を伝えて、入社後に貢献できることをアピールします。
(1)書き出し
志望動機の冒頭で自分が大切にしていることや志望のきっかけなどを端的に伝えることで、人物像が掴みやすくなります。
例:「事務職として、より成長できる環境で働きたいと考えて貴社を志望しました」
(2)応募企業を志望する理由
応募企業を志望する理由を伝えます。「応募企業ならでは」の志望理由を記載することが理想ですが、難しい場合は「現職企業では実現できないこと」を挙げてから志望理由を伝えると説得力が増します。
例:「現職の事務職はサポート職という立ち位置で、キャリアパスが限定されていました。貴社では、事務職が組織横断でチームを組んで業務の改革に取り組み、プロジェクトを主導されています。また営業や開発部門だけでなく、事務職の貢献を会社として表彰する仕組みもあると伺い、大きな魅力を感じています」
(3)入社後に貢献できること
貢献できることは、「転職理由」や「自己PR」との一貫性があると、人物像のアウトラインがくっきりします。
例:「ITツールの導入や制度作りを通じた業務改善への取組みに貢献したいと考えております」
未経験の志望動機例文
現職はホテルスタッフです。職場に予約管理ツールが導入された時にITの利便性に衝撃を受け、システムの提供側としてホテル・旅館業界のIT化や生産性の向上、働き方改革に貢献したいと感じました。貴社のサービスは類似商品の中でも圧倒的に使いやすく、「○○○」というミッションにも共感しております。○年の業界経験を活かして、貴社サービスの拡大に貢献したいと考えております。
職務経歴書作成で悩んだら転職エージェントに相談を
書類選考で重要となる職務経歴書ですが、「まとめ方が分からない」と悩んでいる方も多いようです。転職エージェントでは、転職支援サービスの一環として応募書類の添削も行っているので、積極的に相談してみましょう。また、未経験の転職についてのアドバイスも得意としています。転職先の選び方やアピール方法など、不安なことを解消しておくと転職活動をスムーズに進めることができるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルティングを行っている。