電話面接とは「電話によって行われる面接」のことです。遠方にいる応募者や、スケジュール調整が難しい場合などに便利な手段として、採用活動に取り入れている企業もあります。「電話面接では何を聞かれるのだろうか?」「対面の面接とどう違う?」などの不安や疑問を抱えている人のために、組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント粟野友樹氏が、電話面接で聞かれることや電話面接の流れ、上手にアピールするコツなどを解説します。電話の受け方などの例文も紹介するので、参考にしてみましょう。
電話面接で聞かれること
基本的には、電話面接で聞かれることは、対面の面接やWeb面接と大きな違いはないと言えます。以下で、一般的に面接で聞かれることと、回答する内容を紹介します。
自己紹介
面接の冒頭では「自己紹介をお願いします」「自己紹介として、これまでの経歴を簡単に聞かせてください」など、自己紹介を求められる傾向があります。
自己紹介では、以下のような内容を簡潔に伝えましょう。
2:自分の氏名を伝える
3:簡単な経歴を伝える(最終学歴と新卒入社した企業名、所属部署、担当業務)
4:現職について伝える(在籍企業と所属部署、担当業務)
5:今回の面接で特にアピールしたいことを伝える(これまでの経歴での成果や実績、強みとするスキル、これから目指したいことなどの要点)
6:締めの言葉「本日はどうぞよろしくお願いいたします」
転職理由
「なぜ転職しようと思ったのか」を聞かれることもよくあります。面接担当者がこの質問をする意図は、「どのような背景で転職を決意し、転職によってどういったことを実現したいと考えているのか」などを知りたいためと考えられます。
その際、前職(現職)への不満のみを伝えれば「また不満から転職を繰り返す可能性がある」と思われる可能性があります。転職を決意したきっかけが前職(現職)への不満だった場合でも、「転職によって何を実現したいのか=転職の目的」を伝えた方が、ポジティブな印象につながりやすいでしょう。
自己PR
「自己PRをお願いします」という質問をされたら、自分の強みをアピールしましょう。応募企業で働くことをイメージし、どのような場面でどういった強みを発揮できるのか、それにより、どのようなことに貢献できるのかを伝えることがポイントです。
応募企業が求めている人物像や、応募職種の業務で求められることを意識して、自分の強みの中からそこに合致するものを伝えると、よりアピールできるでしょう。
志望動機
志望動機では、どの企業にも当てはまることではなく、その企業ならではの魅力について伝えることが大事です。応募企業のどのような部分に魅力を感じたのかを伝えると同時に、転職理由との一貫性を持たせることで、より説得力を高めることができるでしょう。
「転職によって実現したいこと=転職の目的」に対し、「なぜその企業なら実現できると思ったのか」を根拠とともに伝えることがポイントです。
今後のキャリア
「今後、どのようなキャリアを築いていきたいか」「入社後、どのような成長をしていきたいか」「中長期的なキャリアビジョンをどう考えているか」などの質問をされるケースもあります。
応募企業に入社した場合の1年後、3年後、5年後、10年後などを想定し、どのような経験・スキルを積み、どのような姿になっていたいかを伝えることが大事です。また、入社後に実現可能なキャリアであることも重要です。応募企業のキャリアパスなども調べ、自分の目指すキャリアに合致するか確認しておきましょう。
逆質問
面接の最後に「何か質問はありますか?」と逆質問をされるケースも多く見られます。「特にありません」と回答した場合は、志望度や入社意欲が低いと判断されるかもしれません。
なお、逆質問は、生の情報を得ることができる貴重な機会でもあるため、自分が気になっていることや聞きたいことを、理由を添えて質問することをおすすめします。また、逆質問を用意しても面接の中で疑問が解消される可能性もあるので、複数用意しておくと安心できるでしょう。
そのほかの質問
このほかにも「応募企業に対するイメージ」「長所・短所」「成功体験」「失敗や挫折を乗り越えた体験」などの質問をされる可能性もあります。電話面接も対面の面接やWeb面接と同様の質問をされるので、さまざまな想定質問に回答できるように準備しておきましょう。
電話面接の流れ【電話の受け方の例文あり】
ここでは、一般的な電話面接の流れを紹介します。
指定の日時に電話がかかってくる
指定の日時を確認の上、5〜10分前にはスタンバイしておきましょう。電話が鳴ったら3コール以内に電話を取る方が、相手を待たせることなく安心できます。電話をすぐ取ることができずに相手を待たせた場合には、冒頭で「お待たせして申し訳ございません」など、ビジネスパーソンとして相手に気遣う姿勢を見せることも大事です。指定された時間に電話がかかってこない場合には、10分程度の時間を置いてから電話をかけましょう。
「電話の出方がわからない」「こちらから電話する際にどう言えばいいのか」と思っている場合は、以下の例文を参考にしてみましょう。
電話の受け方【例文】
自分:はい、◯○です。
相手:お世話になっております。株式会社〇〇の△△(相手の名前)と申します。こちら、○○(自分の名前)さんのお電話番号でしょうか。
自分:はい、〇〇(名前)と申します。お電話ありがとうございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
電話がない場合のかけ方【例文】
自分:お世話になっております。本日、○時より電話面接を予定しておりました◯◯◯○(自分の氏名)と申します。
相手:お世話になっております。どのようなご用件でしょうか?
自分:◯時からの電話面接のために、人事部門の◯◯(担当者の名前)様のお電話をお待ちしておりましたが、まだご連絡いただけていないようなので、こちらからお電話いたしました。
恐れ入りますが、◯◯(担当者の名前)様におつなぎいただけますようお願いいたします。
相手:かしこまりました。おつなぎいたしますので、少々お待ちくださいませ。
自分:ありがとうございます。
(つながるまで待機し、相手が出たら先ほどと同様の挨拶から始める)
電話面接開始
面接担当者から質問されるので、意図を把握しながら簡潔に回答していきましょう。また、相手とのやりとりの中で、気になった点や確認したい点などもメモしておくことも大事です。電話が突然切れた場合は、慌てずにかけ直すか、緊急連絡先に問い合わせましょう。
面接終了
電話面接が終了したら「本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました」と、お礼の挨拶をしましょう。また、選考結果が出るタイミングや、今後の流れについても確認しておくと安心できます。電話を切るタイミングは、相手が切ってからにしましょう。
電話面接で上手にアピールするコツ
電話面接でアピールするためのコツを把握しておきましょう。
聞き取りやすいようにハキハキと話す
電話面接は対面の面接とは異なり、声のみのコミュニケーションとなります。相手の聞き取りやすさを意識してハキハキと話すことが大事です。相手に自分の姿が見えていなくても、表情を豊かにしたり、身振り手振りも交えたりした方が、声のトーンにも影響することが考えられるため、より思いが伝わりやすくなるかもしれません。
相槌は細かく打つ
電話面接では、相槌を細かく打つことを意識した方が、相手の話がこちらにきちんと伝わっていることを示しやすくなります。また、電話の音声が途切れても気づかないケースがあるので、きちんとつながっていることを示すためにも、細かく相槌を打っておく方が安心できるでしょう。
長々と話さずに簡潔に要素を伝える
電話面接は相手の顔が見えず、声のみでやりとりするため、「話が長い」と感じることもあるかもしれません。文節を短く区切るなどで、より簡潔に要素を伝えることを意識しましょう。面接対策として、実際に口に出して話している声を録音し、それを聞き直す方法も有効です。改善点を把握しやすくなるでしょう。
模擬面接などで準備しておく
友人や家族などに模擬面接をしてもらうことで、面接当日にも緊張しにくくなるでしょう。話し方や声のトーン、言葉遣い、アピールする要素などについても、客観的なアドバイスをもらうことができれば、改善しやすくなります。転職エージェントを活用している場合は、担当のキャリアアドバイザーに模擬面接を依頼できるケースもあります。
面接当日は集中力を途切れさせないようにする
電話面接の場合は、相手が目の前にいないために集中力が途切れやすくなることもあります。電話を受ける場所の周辺に、集中力を削ぐようなものを置かないようにすることもポイントになるでしょう。また、面接当日は、応募書類などの資料を確認する際にも、相手の話に集中するように意識することが大事です。
大事なことは復唱し、聞き取りにくいことは確認する
今後の選考過程の流れや選考スケジュールなど、企業から大事なことを伝えられたら復唱し、聞き間違いがないか確認しましょう。また、面接の最中に聞き取りにくいことがあったら、そのまま聞き流すことなく、「お電話が遠いようなのですが」などと伝えた上で、再度確認することも大事です。
電話面接の準備のポイント
ここでは、電話面接に向けた準備のポイントを解説します。
通信環境が良く、雑音の入らない場所を確保する
通信状況が不安定な場所では、音声が途切れたり、相手の声が聞き取りにくかったりする可能性があります。通信状況を確認した上で、電話面接を行う場所を選びましょう。事前に問題なく通話ができるか確認しておくと安心です。
また、お互いの話に集中できるようにするため、他の人の話し声や、車・電車の音、音楽などの雑音が入るような環境はなるべく避けましょう。できる限り静かな個室で行うことをおすすめします。家族やパートナーなどの同居人がいる自宅で電話面接を行う場合は、静かな環境づくりに協力してもらえるよう、事前に伝えておきましょう。
手元に置く必要な資料を用意する
電話面接では、必要な資料やメモを手元に準備しておくこともできます。応募書類や企業研究の資料、想定質問に対する回答をまとめたメモなど、用意するものをリスト化しておくと安心できます。
このほか、面接担当者の話を書き留めるメモ帳・筆記具があると便利です。今後の選考スケジュールの調整を聞かれることを想定してスケジュール帳なども用意しておくといいかもしれません。また、事前に人事担当者から電話が途切れた場合の緊急連絡先を案内された場合は、番号をメモしたものも用意しておくことが大事です。
イヤホンやハンズフリー環境の準備もしておく
電話面接が長時間に及ぶこともありますが、直接、電話を耳にあてていると、途中で疲れてきたり、持ち手を変えて相手の話を聞き逃したりする可能性があります。また、周囲からのノイズによって聞き取りにくくなることもあるので、イヤホンを準備しておくことをおすすめします。
また、ハンズフリーで通話ができる環境で行うと便利です。両手を自由に使えれば、メモを取ったり資料を確認したりするのが楽になります。電話面接により集中できる準備をすることで、自分の伝えたいことをうまくアピールできる可能性を高められるでしょう。
電話面接でよくあるQ&A
ここでは、電話面接でよくある疑問にお答えします。
相手の声が聞こえないときはどうすればいい?
「お電話が少し遠いようですが」などと伝えれば、相手の声が聞こえていない状況を理解してもらえます。通信が途切れ、再度、電話をかけ直すことが必要だと判断した場合は、電話を切る前に、「接続が悪いようなので、かけ直させていただきます。失礼いたします」と一声かけておきましょう。
電話面接の時間はどのくらい?
ケースバイケースのため一概には言えませんが、想定時間は人事担当者からあらかじめ伝えられるはずです。伝えられていない場合は、事前に確認してみるといいでしょう。
電話面接の服装は?
電話面接は、こちらの姿が見えないので、どのような服装でも問題はないと言えます。しかし、お互いの姿が見えないことで集中力が途切れやすくなる可能性もあるでしょう。特に、自宅で電話面接を受ける場合は、気持ちの切り替えが難しいケースもあります。集中力を高めるために、きちんとした服装で臨むのも一つの方法です。
電話面接で注意したいNGポイントは?
「もしもし」という言葉を使うことは、避けた方がいいでしょう。一般的にビジネスシーンでは使わないため、相手によっては失礼な印象を抱かれてしまう可能性もあります。また、電話をかける際に自分の氏名を名乗らない場合も、同様のことが言えるでしょう。
電話面接で受かる人、落ちる人の特徴は?
電話面接においても、対面の面接やオンラインの面接と同様に、面接の準備をきちんと行った上で、企業に自分の強みなどをアピールすることが大事です。また、面接の場では、相手としっかりコミュニケーションすることが非常に重要です。「一方的に話す」「1つの質問に対し、話す量が多すぎる」「話の内容がまとまっていない」「リアクションがない」などの場合は、面接担当者が「基本的なコミュニケーションが取りにくい」「確認したいことがわからず、評価につながる材料がない」と判断する可能性があり、選考通過が難しくなるかもしれません。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年03月26日
記事更新日:2024年12月26日 リクルートエージェント編集部