初めて転職したいと思った場合、「何から始めればいいのかわからない」「仕事しながら転職活動できるの?」「スキルがないから転職できるか怖い…」など、不安を抱えている人もいるでしょう。組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタントの粟野友樹氏が、転職活動の流れや準備期間、やることなどを解説します。やることリストや、スキルに自信がない場合や未経験転職の考え方も紹介するので、初めての転職活動に役立てていきましょう。
目次
初めての転職活動、「不安」「怖い」は当たり前
リクルートが2023年に公開した「転職活動者調査 第2弾 転職活動中の「不安」や「企業に提示してほしい情報」の世代別の傾向」(※)によれば、転職中に感じた不安については、「希望する年収を得られる仕事が見つかるかどうか」(20.6%)、「転職したいと思える仕事が見つかるかどうか」(20.0%)が上位を占めていました。
年代別の特徴を見ると、20〜30 代は「勤務場所や勤務時間等、希望の勤務条件で働ける仕事が見つかるかどうか」、40〜50 代は「年齢によって不利になるのではないか」という不安が、他の年代と比べて、5 ポイント以上高くなっていました。
転職活動を進めても、採用されるかどうかについては、社会情勢や各社の採用状況、ほかの求職者の状況などにも影響を受けるものです。明確な合格基準が見えず、希望に合う仕事に就けるかどうかもわからないと感じて、不安になってしまう人は少なくありません。また、転職で環境が大きく変わるため、未知の世界に踏み込むことを怖いと感じるのも、当たり前のことと言えるでしょう。
(※)出典:転職活動者調査 第2弾 転職活動中の「不安」や「企業に提示してほしい情報」の世代別の傾向(株式会社リクルート)
何から始めればいい?転職の流れと準備期間
転職活動の全体の流れは、「事前準備 (キャリアの棚卸し・情報収集・応募書類作成)~応募」「面接」「内定」「退職交渉・引き継ぎ」(※在職中の場合)が一般的です。
【事前準備~応募】 | 【面接】 | 【内定】 | 【内定・退職】 |
・キャリアの棚卸し ・情報収集 ・応募書類の作成 ・応募(書類選考) |
・面接日程の調整 ・面接対策/面接準備 ・面接選考 |
・内定承諾 | ・退職交渉 ・引き継ぎ ・退職・入社に必要な書類のやりとり |
約1~2週間 | 約4週間 | 約5週間 |
転職準備にかかる期間の目安としては、自己分析やキャリアの棚卸し、情報収集、応募書類の作成などに約1〜2週間を要することが一般的でしょう。
また、選考過程にかかる期間の目安は、書類選考を経てから面接選考に進み、複数回の面接を受けるケースがほとんどのため、約4週間とされています。
内定を得た後、退職交渉や引き継ぎなどを行う期間は、約5週間程度を目安に考えると良いでしょう。
ただし、応募社数、選考状況、退職交渉・引き継ぎの進み具合などによっても変化します。するため、一般的に、転職活動は3か月程度かかりますが、状況によっては 3~6カ月程度かかるケースもあります。
転職活動のやり方|段階別「やること」徹底解説
転職活動のやり方について、具体的にやることについて段階ごとに解説していきます。
「最初にやること」は、転職活動のスケジュール作成
まずは、自分が転職したい時期から逆算して、転職活動のスケジュールを立てましょう。
先にも述べた通り、一般的に転職活動は3か月程度かかります。繁忙期や引き継ぎにかかる期間なども想定して、無理のないスケジュールを立てることがポイントです。
【転職準備】キャリアの棚卸しと自己分析
「キャリアの棚卸し」で、過去の仕事や取り組んだ業務内容を振り返り、これまでの経験・スキルを洗い出しましょう。成果を出したことや評価されたことなどから自分の強みも考えてみることが大事です。
「自己分析」では、なぜ転職したいのかという理由を考えた上で、転職によって実現したいことを明確にしていきましょう。そこから、仕事内容、年収、ポジション、ワーク・ライフバランス、職場の人間関係、社風、今後のキャリア、福利厚生などの希望条件を考えることができます。希望条件に優先順位をつけておき、応募企業を探すときには優先度の高い条件を軸にすると良いでしょう。
【転職準備】情報収集・企業研究
転職の軸をもとに、転職サイトやハローワーク、転職検索エンジンなどで自分の希望に合いそうな求人の情報を収集しましょう。また、転職エージェントは、一般には出ていない求人情報を持っている可能性もあるので相談してみるのもおすすめです。
志望企業を絞り込んだら、企業のホームページや採用ページなどからそれぞれの特徴を把握し、自分にマッチするポイントなどを探していきましょう。
【転職準備】応募書類の作成
一般的に、転職活動で求められる応募書類は履歴書と職務経歴書の2点です。
履歴書にはこれまでの職務経歴を全て書きましょう。職務経歴書では、それぞれの職務経歴の詳細を書き、応募企業・応募職種で求められるスキルや発揮できる自分の強みをアピールします。自己分析や企業研究の成果をもとに、応募企業にマッチする部分を考えてみることがポイントです。
【面接選考】・応募・面接日程の調整
応募企業は1社に絞り込まず、複数の企業の選考を並行することがおすすめです。比較検討の材料になってくれるでしょう。
書類選考に通過したら、応募企業の担当者と面接日程を調整します。転職エージェントを活用している場合は、日程調整のサポートを任せることが可能です。
【面接選考】面接対策
面接でよく聞かれる質問に対し、回答する内容を整理しておきましょう。「自己紹介」「転職理由」「志望動機」「自己PR」「逆質問」などは、どの企業でもほぼ聞かれるので押さえておくことが大事です。面接の場でしっかりとアピールするためにも、口に出して練習し、簡潔に伝えられるようにしておきましょう。
【面接選考】面接準備
面接に臨む準備として、清潔感ある服装を用意し、髪型も整えておきましょう。また、対面の面接では、扉の開け方、着席の仕方などの振る舞いがわからずに焦ってしまうケースもあるので、事前に確認しておくことが大事です。オンライン面接の場合は、必要なツールの準備や通信環境の良い場所の確認などをしておくことも忘れないようにしましょう。
【面接選考】一次面接〜最終面接
転職の面接選考は、一次面接、二次面接、最終面接を行う企業が多いでしょう。企業によっては、二次面接が最終面接になったり、さらに面接回数を増やしたりするケースもあります。
また、一次面接は人事担当者や現場の社員、二次面接以降は現場の責任者や役員が担当するなど、面接のフェーズによって質問の角度が変わる可能性もあります。それぞれに向けた回答の準備をしておきましょう。
【参考記事】
【内定】内定承諾など、内定後にやること
内定の通知が来たら、選考を並行している企業と比較検討するだけでなく、現職に残る場合の可能性も考えた上で、内定承諾をするかどうかをしっかり考えましょう。
内定承諾する場合は、その旨を応募企業に連絡します。転職エージェントを活用する場合は、担当のキャリアアドバイザーに伝えれば大丈夫です。
また、選考を並行している他社や内定承諾を待ってもらっている会社がある場合には、迅速に辞退の連絡をすることも忘れないようにしましょう。
内定を得た際には、企業から提示される労働条件通知書の内容をきちんと確認し、内定承諾するかどうかを検討することが大事です。
【退職準備】退職の申し出・引き継ぎ・各種手続き
内定先の企業と入社日の調整をし、入社日が決定したら、現職の企業の就業規則で退職の申し出期間を確認した上で、上司などに退職の申し出をしましょう。その後、引き継ぎの期間も踏まえて退職日を決定する退職交渉に入ります。
退職日が決定したら現職の就業規則に基づいて退職届を提出し、業務の引き継ぎを行います。
【退職・入社】退職・入社の手続き
退職時には、会社から貸与されたものや健康保険証などを返却し、必要な書類を受け取ります。また、転職先の企業の指示に従って、入社に必要な書類を準備することも忘れないようにしましょう。
【やることリスト】転職準備から内定・入社までにやることを確認
転職活動の「やることリスト」を以下に紹介します。何から始めればいいのか、やることを再度確認した上で、一つひとつ進めていきましょう。
□ | スケジュール作成 |
□ | キャリアの棚卸し・自己分析 |
□ | 情報収集 |
□ | 転職サービスへの登録・転職エージェントの申し込み |
□ | 応募書類作成 |
□ | 求人検索 |
□ | オンライン面接準備(接続環境など) |
□ | 対面面接準備(服装・鞄・靴・持ち物など) |
□ | 面接対策 |
□ | 内定承諾 |
□ | 退職の意思を伝える(在職中の場合) |
□ | 退職手続き(在職中の場合) |
□ | 引き継ぎ準備(在職中の場合) |
□ | 入社手続き |
初めての転職活動に役立つ自己分析ツールと応募書類のテンプレート
転職活動に役立つ自己分析ツールや応募書類のテンプレートを紹介します。
無料・登録なしで診断できる自己分析ツール
無料の適職診断を活用し、やりたい仕事、向いている仕事を探すきっかけにするのも良いでしょう。厚生労働省による「職業適性テスト (Gテスト)」では、Web上で職業診断ができます。
一方、同じく厚生労働省による「マイジョブ・カード」のWebサイトでは、興味診断・スキルチェック・価値観診断などのツールを提供しています。いずれも無料・登録なしで利用できるので、気軽にチャレンジしてみましょう。
職業適性テスト (Gテスト)
出典:job tag(厚生労働省職業情報提供サイト(日本版O-NET))
マイジョブ・カード自己診断一覧
出典:マイジョブ・カード
応募書類の作成に役立つテンプレート
転職活動の応募書類となる履歴書・職務経歴書は、無料でダウンロードできるテンプレートを使用すると便利です。履歴書は、厚生労働省が推奨している書式を利用すると良いでしょう。
職務経歴書の書式に決まりはなく、時系列に職務経歴を書く編年体形式、現職から遡って書く逆編年体、職務経歴ごとに書くキャリア式があります。自分がアピールしたいことを書きやすいテンプレートを選択することがおすすめです。
「初めての転職が怖い」「何がしたいかわからない」場合の対処法
初めて転職する場合、漠然とした不安から「怖い」と思うケースや、「転職したいけれど、何がしたいかわからない」というケースもあるでしょう。以下の対処法を参考にしてみましょう。
初めての転職が怖い場合は何をすればいい?
初めて転職活動する場合、漠然とした不安で動けなくなってしまうケースもあります。
その理由としては、「今の会社で数年しか勤務していないから早すぎるのでは?」「スキルに自信がないため、内定を得ることができないかもしれない」「異業種転職したいけれど、自分にやっていけるか不安」「転職することで失敗したらどうしよう」などが挙げられます。
転職活動を始めても、必ず転職しなくてもいいので、まずは動き始めてみることがおすすめです。転職活動を進めることで、自分の市場価値や転職市場の相場観がわかったり、希望している職種の仕事内容を具体的に理解できたりします。今後のキャリアの可能性や現職の職場の良い点なども見えやすくなるので、再度、「今の仕事を辞めて転職したいかどうか」を考えた上で、納得のいく選択をしましょう。
何がしたいかわからない場合は転職エージェントを活用する方法もある
「何がしたいかわからない」という場合は、転職エージェントを活用してみる方法もあります。自己分析やキャリアの棚卸しなどのサポートを受ければ、自分が転職で実現したいことや、強みを発揮して活躍できる職種なども発見しやすくなるでしょう。また、自分の希望にマッチする企業や、採用の可能性がある企業を紹介してもらうことで、意外な職種・仕事が向いていることに気づくこともできます。応募書類の作成や面接対策などのサポートを行う転職エージェントもあるので、自分一人で転職準備を進めることが不安なら相談してみるのもおすすめです。
転職したいけどスキルがなくて不安…。未経験でも可能性がある職種は?
「転職したくてもスキルに自信がない」「未経験でも採用してくれる職種があるのか不安」という人もいるでしょう。
スキルに自信がない場合は?
キャリアの棚卸しをきちんとやることが大事です。専門スキルに自信がない場合でも、幅広い領域で役立つポータブルスキルを強みとしてアピールすることもできます。また、アピールできる経験・実績がないという場合は、現職で必要な経験を積めそうなプロジェクトに参加してみたり、リーダーポジションや後輩育成などの経験を積んでみたりすることもできます。
未経験から転職できる可能性がある職種は?
採用予定人数が多い職種の場合は、未経験者でも歓迎するケースは少なくありません。例えば、営業職などの場合は、定期的に大量採用している企業もあります。また、人材不足の業界などは、未経験者採用に積極的な傾向があるでしょう。例えば、IT業界ではエンジニア人材が不足している状況があるため、未経験者の育成に注力している企業もあります。こうした業界に着目して探してみるのも一つの方法です。
また、「やりたい仕事はあるけれど、未経験者では無理だろう」と思い込んでいる場合、まずは希望の職種で未経験者を歓迎している求人を探してみることをおすすめします。「やっぱり未経験者には厳しい」と感じた場合は、ステップアップしながら転職を目指すのも一つの方法です。必要な経験を積める職種や企業に転職し、スキルを身につけてから再度チャレンジしてみるなどで、未経験職種への転職を実現しているケースもあります。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。