転職活動において、「資格を持っていると評価され、選考に有利になるのでは?」と考える人は多いようです。資格は採用選考で評価されるのか、資格を持っている場合はどのようにアピールすれば評価につながるのか。資格を持っていない場合は何をアピールすればよいのかについて、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。
資格があった方が転職活動は有利になるのか?
採用選考において、資格を保有していることが有利になるかどうかは一概にはいえません。応募条件に「必須資格」が記載されているなど、特定の資格を持っていなければ応募自体できない求人もあります。
しかしながら、資格保有について「あれば尚可」、あるいは不問とする求人も多く存在します。アピールとして資格が有効であるケース、資格以外の要素が重視されるケースについてお伝えします。
資格を保有していると転職でアピールできるケース
以下のケースでは、転職活動において、資格が有効なアピール材料として活用できる可能性があります。
募集職種の実務経験・スキルに加え、その業界・職種に関連する専門資格を保有している場合、即戦力としての活躍への期待や信頼感がより高まることがあります。一例を挙げてみましょう。
- 経理・財務職→「簿記」「税理士」「公認会計士」
- 人事職→「キャリアカウンセラー」「社会保険労務士」
- 不動産業界→「宅地建物取引士」「不動産鑑定士」
- 金融業界→「FP(ファイナンシャルプランナー)」「証券アナリスト」
逆に、難易度が高い資格を取得していたとしても、その資格がこれまでの業界・職種と関わりがなく、実務経験が伴っていなければ評価されないケースもあります。
実務未経験の職種に転職する場合
実務経験がない職種・経験が短い職種やポジションに応募する場合、資格取得が「体系的な専門知識を身に付けている」ことの証明となることがあります。
採用担当者に、「基礎知識があれば、実務を早期にキャッチアップできそうだ」という期待を持ってもらえる可能性があります。また、「向上心」「学習意欲」なども伝わり、好印象につながることもあるでしょう。
資格保有よりも経験・スキル・意欲が大切
中途採用の選考においては、資格よりも、即戦力となり得る業務経験・スキル・意欲などが重視されるケースが多いといえます。そのため、資格を持っていなければ業務ができない「業務独占資格」(弁護士・行政書士・税理士・建築士など)を除けば、資格の有無が選考に大きな影響を与えることはあまりないでしょう。
転職に備えて資格取得の勉強をする人もいますが、その資格が転職先への応募に必要不可欠ではない場合、時間とコストをかける価値があるかどうか、もう一度検討してみてもよいでしょう。
資格取得の勉強に費やす時間を、今の仕事で成果・実績を挙げる活動にあて、アピール材料を増やしていく方が、転職実現への近道かもしれません。資格とは、あくまで経験の延長線上にあるものと考えましょう。
資格保有を面接・応募書類でアピールする例文
資格取得の事実のみであれば、履歴書の資格欄に記入するだけで伝わります。資格をアピール材料として活用するのであれば、「これまでの業務で資格をどのように活かしてきたか」、あるいは「資格取得で得た知識・スキルを転職先でどのように活かしていこうと考えているか」などを伝えましょう。
職務経歴書の自己PR欄や面接などで資格をアピールしたい場合の例文を、「営業職」「事務・管理部門職」「エンジニア職」に分けてご紹介します。どのような職種・資格でもアピールポイントは共通していることが多いので、参考にしてみてください。
営業職が「中小企業診断士」資格をアピールする場合の例文
主に中小企業の経営者を対象とする法人営業職として、単にサービスを売り込むだけでなく、顧客の経営課題の解決を意識して取り組んでいます。経営課題を適切につかむため、「中小企業診断士」の資格を取得。その知識を活用し、マーケティングや人材マネジメントなどの観点でも提案を行うことで経営者からの信頼を獲得した結果、新規顧客開拓で支店No.1の業績を挙げてきました。
事務・管理部門職が「日商簿記」資格をアピールする場合の例文
営業事務を務めてきましたが、営業所の日々の数字の動きを管理するなかで、それらの数字が意味するものを深く理解したいと考え「日商簿記2級」の資格を取得しました。その知識を踏まえて自分なりに売上・コストの数字を分析し、課題と感じたことを所長に提案したところ、非常に感謝され、達成感を覚えました。今後は経理の専門職として、会社全体の改善に貢献したいと考えています。
エンジニア職が「PM」資格をアピールする場合の例文
これまで流通業界向けのシステム開発プロジェクトでプロジェクトマネージャを務めてきました。顧客からは納期や予算面で厳しい要望を受けたり、人員不足のため実務と同時に育成を進める必要があったりと課題が山積みでしたが、「プロジェクトマネージャ試験(PM)」の学習を通じて得た知識を活かすことで解決に導いてきました。今後もプロジェクトマネジメントのスキルを高めていきたいと考えています。
資格ではなく、経験・スキルをアピールする例文
資格を保有していない人が、職務経歴書の自己PR欄や面接などで経験・スキルをアピールしたい場合の例文を、「営業職」「事務・管理部門職」「エンジニア職」に分けてご紹介します。
自身の強みのポイントとともに、その強みを発揮したエピソード、その成果などを伝えることで説得力が増すでしょう。
営業職が経験・スキルをアピールする場合の例文
私の強みは顧客自身が気付いていない課題を引き出すことです。現職では、経営陣から新商品の売上の伸び悩みに関する悩みを聴き、自ら現場の営業社員一人ひとりに状況をヒアリング。ターゲット層に対してアプローチ手法が適切ではないという課題を発見しました。解決策としてマーケティングツールの導入を提案した結果、売上○%アップの成果につながり、信頼を獲得しました。
事務・管理部門職が経験・スキルをアピールする場合の例文
私は「業務改善」にこだわり、主体的に取り組む行動力を強みとしています。例えば、現職では長時間労働が常態化し、社員が疲弊して離職が相次いでいました。そこで、部署の生産性向上を図るため、率先して効率化の手法について情報収集を行い、RPAの導入を提案・推進。結果、事務部門の残業時間○%削減を達成しました。
エンジニア職が経験・スキルをアピールする場合の例文
下流~上流工程まで経験後、チームマネジメントを手がけています。直近のプロジェクトでは、チームメンバー一人ひとりがスキルアップできるように業務を配分し、コミュニケーションを重視したマネジメントを行っています。先日はクライアントから「今までで一番パフォーマンスの高いプロジェクトチーム」との評価をいただき、新規の大型プロジェクトを受注することができました。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。