転職エージェント トップ > 転職成功ガイド > 転職準備 > 中小企業に転職するメリット・デメリットとは?企業選びのポイントを解説

中小企業に転職するメリット・デメリットとは?企業選びのポイントを解説

大手企業から中小企業へ転職しようと考えるときに、「リスクが大きいのではないか」「後悔しないか」といった不安や迷いを抱く人も多いのではないでしょうか。中小企業に転職するメリット・デメリット、自分に合う企業を見極めるポイント、中小企業への転職事例について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏が解説します。

中小企業と大手企業の違い

まずは「中小企業」と「大手企業」の定義について理解しておきましょう。

中小企業とは

そもそも「中小企業」とはどのような企業を指すのでしょうか。中小企業基本法では、中小企業者の範囲を以下のように規定しています。

●中小企業者の定義

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

●小規模企業者の定義

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 従業員20人以下
商業・サービス業 従業員 5人以下

※出典:FAQ「中小企業の定義について」(中小企業庁)

中小企業にも、さまざまな経営方針を持つ企業があります。「拡大しない」という方針で何十年も体制を維持している中小企業もあれば、「大企業」になる目標を掲げて拡大中の中小企業もあります。前者の場合、中途採用は「欠員補充」であるケースが多く、後者は「増員」であるケースが多いといえます。

大手企業とは

「大手企業」の定まった定義はありませんが「従業員数や資本金など、企業規模にかかわらず、業界の中で知名度やシェアの高い企業」を指すことが多い傾向にあります。

「会社法」では資本金5億円以上、または負債総額200億円以上の株式会社を「大会社」と定義しています。しかし一般的には、規模の大きさに限らず、業界内でのシェアや売り上げ、知名度などが上位に入る企業は「大手企業」として認知されているようです。

中小企業に転職するメリット

中小企業への転職には、どのようなメリットがあるのでしょうか。中小企業を選んで転職した方々の事例をご紹介します。

裁量権が大きく、任される範囲が広い

従業員数が少ない中小企業の場合、大手企業ほど機能・役割ごとに組織が細分化されていないことが多いため、1人が複数の役割や業務を兼務することもあります。また、1人に与えられる裁量権が大きく、自身の判断で進められる場面も多いようです。幅広い経験を積みたい人にマッチする環境といえるでしょう。

社会人経験が短くても責任のあるポジションを経験できる

従業員の高齢化により世代交代を進めている老舗企業、あるいは急拡大中のベンチャー企業などの場合、入社から早いタイミングで責任あるポジションを任され、早々にリーダーやマネジャーの経験を積める可能性があります。

特に、拡大を目指すベンチャー企業であれば、組織の新設や増員に伴って新たなポストが生まれてくるため、大手企業と比較すると早期昇進のチャンスが多い傾向が見られます。

経営の視点やノウハウを身に付けやすい

組織が小規模であるだけに、社長をはじめ経営幹部との距離が近く、コミュニケーションをとる機会が多くあります。経営者の視点や考え方を間近で見て学べるため、経営感覚やノウハウを身に付けやすい環境であるといえます。将来、独立起業を考えている方にもメリットがあるでしょう。

部門間連携がしやすく、風通しがいい

組織が小規模、かつ複雑ではない分、部門間同士や従業員同士の連携やコミュニケーションがスムーズに進みやすいようです。経営者や上司の考え方にもよりますが、「風通しが良く、情報交換がしやすい」「自分の意見を発信しやすい」という声が多く聞かれます。

決裁が早く、スピーディに物事を進められる

大手企業では、物事を決める際に何重もの稟議を重ねたり、事前に関係者への根回しが必要であったりすることが多い一方、中小企業は経営層にスムーズに稟議が回ることも多く、スピーディに進めやすい傾向が見られます。

自分の働きが会社業績に及ぼす影響を実感しやすい

中小企業では1人が任される範囲が広く、裁量権を持って働くことが多いため、自分の働きが会社業績に影響を及ぼしやすいといえます。「自分が貢献できていることを実感しやすい」という声が聞こえてきます。

大手企業に比べると、転勤の可能性が低い傾向にある

拠点数が少なく、今後も多拠点展開を進める計画がない企業であれば、不本意な転勤を命じられる可能性は低いといえます。勤務地が長く固定されるという点では、居住地を固定して住宅購入などに踏み切りやすいといえるでしょう。

中小企業に転職するデメリット

企業にもよりますが、中小企業への転職には、メリットがある一方でデメリットもあります。デメリットも理解した上で検討しましょう。なお、人によってはデメリットとは捉えず、デメリットと表裏一体となっているメリットに魅力を感じるケースもあるようです。

雑務は自分でやらなければいけない場合がある

大手企業であればアシスタントスタッフがサポートしてくれるような雑務も、中小企業では自分でやらなければならない場面もあるかもしれません。自身の専門領域の業務のみに集中したいという志向の人は、ストレスを感じる可能性があります。

社内の専門部署・専門家を頼れず、自身で対応することがある

例えば、「システム」「法務」「教育・研修」といった分野は、大手企業であれば社内に専門部署が設けられており、相談すればサポートを受けられます。しかし、中小企業では社内に専門家がいないケースもあり、自身で調べたり学んだりして対応しなければならない事態も発生しやすいようです。そうした対応に時間をとられ、本来の業務が進まないことにストレスを感じるケースがあるようです。

予算を確保できず、新たな取り組みが制限されることもある

大手企業と比較すると、中小企業は資金が潤沢でないことが多いものです。新たなアイデアを実行に移したくても、予算を確保できず、取り組みが制限されてしまうケースも見られます。

人間関係が悪化しても「異動」という手段を取れない場合もある

小規模な組織では、人間関係が悪化するなどして職場の居心地が悪くなったとしても「部門異動」によって解決することが難しいといえます。つまり「逃げ場がない」状態に陥ることもあるようです。

研修体制や評価制度などが十分に整っていない企業もある

中小企業には、研修体制が十分に整っていないことも多く、最新の知識・スキルをキャッチアップするためには独自で学ばなければならないこともあります。また、人事評価制度がなく、経営者や上司の主観で評価がなされるケースも多く、納得感を持てないこともあるようです。

大手企業と比較して、福利厚生・待遇に差がある傾向にある

大手企業と比較し、「給与水準が低い」「各種手当がない」「福利厚生が充実していない」といった点に不満を抱くこともあります。特に大手企業から中小企業に転職した場合、そのギャップが気になる可能性があります。

転職で中小企業を見極めるポイント

中小企業への転職で後悔しないため、自身に合う企業を見極めるためのポイントをお伝えします。

企業研究を入念にする

求人票、企業サイト、企業サイト内の採用ページ、メディアに掲載された記事、ブログ、SNSなど、多方面から企業を調べてみましょう。

経営者個人の考えや価値観が強く反映される企業もあるため、企業の理念は何かに注目し、自身が共感できるかを考えてみてください。「財務諸表」や「資金調達の状況」も確認すると、今後の成長可能性もつかめるでしょう。

働く環境・働き方などを確認する

大手企業では進んでいるデジタル化も中小企業では導入が不十分な場合もあり、業務にやりづらさを感じる可能性があります。職場環境についても確認しておくといいでしょう。

また、企業によっては、テレワークやフレックス勤務といった働き方について、「制度」としての整備が進んでいないこともあります。しかしながら、「ルールに縛られる大手企業よりも中小企業の方が、融通が利きやすく、柔軟な働き方ができる」という声もあります。

一緒に働く人と話す機会を作る

企業研究をして魅力に感じた点や、社内の活気などについて知るためには「実際はどうなのか」を見極めることが大切です。企業によっては事前に相談することで、カジュアル面談や面接時に現場の人と話す機会を設けてもらえる場合もあるので打診してみましょう。

同じチームで働く予定となる同僚、上司になる人たちと話せるので、現場のリアルな話を聞ける貴重な機会です。大手企業に比べ、中小企業では一人を採用することの組織への影響や採用コスト面での負荷がより大きく、入社後のミスマッチをなるべく防ぎたいと考えるため実施の希望を受け入れてもらえる可能性が高いでしょう。

給与や待遇などの条件をすり合わせる

給与条件・待遇が納得できるものかどうか、しっかりすり合わせる必要があります。大手企業の場合、採用者を受け入れるにあたっては給与テーブルや待遇条件などが定められていることが多い傾向にありますが、中小企業の場合は社長や役員がその都度判断するケースもあるでしょう。

提示された給与額に不満がある場合は「どのような成果を挙げれば、どれくらいのペースで、どれくらいまで給与を上げられるか」などを確認してみましょう。大手企業から中小企業に転職する場合、年収ダウンとなることもあります。

しかし昇給の規定が厳密に決められている大手企業とは異なり、中小企業では、成果を挙げれば早期の昇給・昇格が実現することもあるため、条件を擦り合わせて納得した上で内定承諾をしましょう。

口コミサイトなどで評判を知る

転職先の中小企業について、転職サイトの口コミなどを見て社員の定着率などを調べておくこともひとつの方法です。実際に在籍していた人のリアルな意見を見ることができるため、入社後のイメージがしやすいでしょう。

しかしながら、口コミサイトは退職者が書き込むこともあり、主観を感情的に書いていたり情報が古かったりすることもあります。実態が正しく記載されているとは限らないため、注意が必要です。参考程度にとどめ、気になる点は面接で確認するといいでしょう。

中小企業への転職事例

中小企業へ転職した方の事例をご紹介します。転職の目的、決断の理由などを参考にしてみてください。

中小IT企業・営業企画へ転職したAさん(30代)

Webサービス会社・営業企画→中小(スタートアップ)IT企業・営業企画

現職の大手Webサービス会社は、企業・サービスのブランド力があるので自分の介在価値がないように感じてしまっていたAさん。

大手Webサービス会社の前には、大手IT企業で営業をしており、独自の営業施策を開発し全国トップクラスの業績を挙げていたAさん。強みとする独自性や主体性を発揮する場を探し、転職を決意しました。

転職した中小IT企業が売上拡大を目指しさまざまな新規施策に取り組み段階であったため、Aさんの特徴である「主体性」「独自性」と大手Webサービス会社での営業企画経験が相まって活かされ、会社全体の営業企画を経営陣と担当。将来的な幹部候補として期待されています。

中小IT企業・UI/UXデザイナーへ転職したBさん(30代)

小学生の頃、大人になって仕事をするのが嫌で布団の中で泣いたことがあるんです。学校ですら嫌なことがあるのだから、大人が行く会社はもっとつらいことがたくさん待っているに違いない、と思ったんですね。でも、大人になると学校より社会の方が自由だった。広告のコピーや書籍の編集、ゲーム制作にテレビ出演など、いろんな仕事をやらせていただけるようになりました。でも、別に多方面にいろんなことをやっているわけではなく、

大手Webサービス企業・UI/UXデザイナー→中小IT企業・UI/UXデザイナー

大手Webサービス企業でUI/UXデザイナーを務めるBさんは、ほぼ完成されたプロダクトを長く担当し、自身の価値を十分に発揮できていないと感じていました。副業を通じて多様なデザイン案件を手がける中、中小企業の方が経験・スキルを活かせる可能性に期待し、転職を決意。上場を目指す30名規模のITスタートアップに、デザイナー部門の立ち上げを担うマネジャー候補として採用されました。

経営陣とダイレクトに仕事ができるダイナミズムやスピードの速さ、自身が一からデザインを担当したプロダクトが世にリリースされていくやりがい、新たなプロダクトを経験してスキルアップが図れることなどに魅力に感じて入社を決意したのです。

中小人事コンサルティング会社へ転職したDさん(20代)

小学生の頃、大人になって仕事をするのが嫌で布団の中で泣いたことがあるんです。学校ですら嫌なことがあるのだから、大人が行く会社はもっとつらいことがたくさん待っているに違いない、と思ったんですね。でも、大人になると学校より社会の方が自由だった。広告のコピーや書籍の編集、ゲーム制作にテレビ出演など、いろんな仕事をやらせていただけるようになりました。でも、別に多方面にいろんなことをやっているわけではなく、

大手人材サービス企業・営業→中小人事コンサルティング会社・コンサルタント

人材サービス業の営業職として大企業クライアントや大規模プロジェクトの担当を数多く経験し、やりがいを感じていたDさん。しかし、社内外の関係者の調整業務が多くを占めるようになり、クライアントの潜在的・本質的な課題になかなか取り組めないことに物足りなさを感じていました。

そこで、クライアントの経営課題を人事領域から深掘りでき、自身の経験・スキルを活かせる仕事を求め、中小人事コンサルティング会社に転職。規模は小さいものの、大手のコンサルティング会社や事業会社での経験が豊富な人材が集っている点に魅力を感じての選択でした。入社後は、企画力・提案力・行動力を活かして活躍し、成長を遂げています。

企業選びに悩んだら転職エージェントに相談してみよう

中小企業に転職した場合のメリット・デメリットとなるポイントは、人によってさまざまです。例えば、急成長中の中小企業の場合、戦略や組織の変更が頻繁にあるかもしれません。「変化」を楽しめる人にとっては刺激的で面白い環境ですが、安定感を求める人にとってはつらいと感じるかもしれません。

自分はどのような企業にマッチするのか悩んだ場合には、転職エージェントに相談してみるのもひとつの方法です。これまでの経験や自己分析を通して、プロの視点から企業選びのアドバイスを受けることができるでしょう。

組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏

約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。

記事作成日:2019年06月24日
記事更新日:2024年01月31日
記事更新日:2024年09月11日 リクルートエージェント編集部

リクルートエージェントでは、転職でお悩みの方に適切なアドバイスをお送りしています。また、企業の面接対策や職務経歴書の作成サポートや、スムーズな退職のためのサポートを行っています。お悩みの方はぜひ一度相談に来てみてください。