転職でキャリアアップやキャリアチェンジを目指す方は少なくありません。しかし、キャリアを活かした転職を実現するには、どのように進めたらいいのでしょうか。そこで今回は、キャリアを活かした転職のポイントや転職事例について、組織人事コンサルティングSeguros、代表コンサルタントの粟野友樹氏がアドバイスします。
キャリアを活かした転職について
転職活動では、キャリアアップやキャリアチェンジを目指すケースがありますが、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。また、キャリア採用と中途採用の違いについて解説します。
キャリアチェンジとキャリアアップの違い
まず、「キャリアアップ」に明確な定義はなく、人によってキャリアアップの捉え方は異なります。例えば「単体決算だけでなく連結決算もできるようになる」「AIのニーズが高いからAIエンジニアを目指す」など、専門スキルを磨いて人材としての価値を高めることがキャリアアップとしている方もいます。また、仕事の幅や裁量範囲を広げたり、収入や役職・ポジションを上げたりすることをキャリアアップと考える方もいます。
一方、「キャリアチェンジ」はこれまでの経験とは別の業界・職種にキャリアを変えることを指します。例えば、「不動産会社の経理から独学でWebデザインを学び制作会社のWebデザイナーに転職」「メーカーの事務から趣味が高じてヨガインストラクターに転身」などが挙げられます。自分にとってのキャリアアップやキャリアチェンジの方向性を明らかにして、キャリアプランを設計するようにしましょう。
キャリア採用と中途採用の違い
中途採用の求人の中には、「キャリア採用」と記載されているものがありますが、キャリア採用とは、即戦力としての活躍が期待できる経験者採用を指します。一方、中途採用は第二新卒や業界・職種未経験者から経験者まで幅広く、新卒以外の採用を指すという違いがあります。
キャリアを活かした転職の進め方
キャリアアップやキャリアチェンジを目指した転職を検討している場合の進め方を解説します。事前にキャリアプランを立ててから転職活動を始めると、求人を探しやすくなるでしょう。
キャリアの棚卸しを行う
転職活動を始める前は、キャリアの棚卸しをしておくとその後の活動がスムーズに進みます。過去の仕事内容を振り返って、担当業務や役割、自分なりのこだわりや実績を洗い出しましょう。評価されたことややりがいを感じたことなども書き出し、時系列にまとめます。
時系列にまとめた過去の経歴は、職務経歴書の作成にも役立ちます。応募書類や自己PRが作りやすくなるので、転職活動前にキャリアの棚卸しを実施しておきましょう。
理想のキャリア・なりたい姿を考える
過去のキャリアを振り返って洗い出したら、これから目指したいキャリアを考えます。過去の経験・スキルをさらに磨いて専門性を高める、専門性に加えて知識の幅を広げ“T型人材”を目指す、新たな業界・職種にチャレンジする、マネジメントポジションを目指すなど、自分が目指したい方向性を明らかにしましょう。転職でキャリアアップを検討している場合は、5~10年先をイメージするとキャリアプランが立てやすくなります。
必要な経験とキャリアプランを考える
目指したい方向性が明らかになったら、理想のキャリアに到達するために、必要な経験や獲得したいスキルを考えます。そして、「○年後までに××の経験を積んで、○年後には△△の業務や役割を任せられて成果を出せるようになる」といった、具体的なキャリアプランを立てましょう。未経験業界・職種にチャレンジする場合は、具体的なキャリアプランをイメージしにくいので、希望する業界・職種の求人や採用ページなどを参考にするといいでしょう。
キャリアプランを実現できる企業を探す
キャリアプランを設定したら、実現できそうな求人を探します。もし自社で理想のキャリアを実現できそうであれば、現職に残るという選択肢も検討しましょう。求人や採用ページには、入社後のキャリアパスが書かれていることもあります。希望する業界・職種が入社後にどのようなキャリアを実現できるのかを確認し、自分のキャリアプランを実現可能か調整することも重要です。
キャリアを活かした転職のポイント
キャリアアップを目指す転職を実現するために、2つのポイントを意識して転職活動を進めるといいでしょう。
「譲れない条件」と「譲歩できる条件」の優先順位を決める
キャリアアップを軸にして求人を探す場合、希望にマッチする求人がなかなか見つからないこともあります。一例として、「経験・スキルを磨けるが希望の年収に満たない」「知識・経験の幅を広げるため業務量が多くワーク・ライフ・バランスが実現できない」などが挙げられます。キャリアアップの実現と待遇など、全ての条件を満たす求人を探すうちに、転職活動が停滞してしまうかもしれません。希望にマッチする求人が見つからない場合は、「譲れない条件」と「譲歩できる条件」の優先順位を決めるようにしましょう。
なお、年収に関しては入社時に希望額に満たなくても、入社後に成果を出すことで引き上げられるかもしれません。年収以外はキャリアプランにマッチしている場合、中長期的に希望年収を実現できる可能性があるため、求人だけで判断せずに応募して面接で評価制度を確認してみましょう。
応募企業のニーズに合わせてアピールする
キャリアアップを目指して転職しようとする場合、志望動機や自己PRで「入社後は○○の経験を積んで○○を目指したい」「○○のスキルを伸ばしたい」など、自分本位のアピールになってしまうケースがあります。企業は経験・スキルを活かして自社で活躍し、成果を出してもらえる人材を採用したいと考えています。自分のキャリアプランの実現を中心としたアピールになってしまうと、採用担当者は入社後にどのように貢献してもらえるのか分からないため、評価しにくくなる可能性があります。
そこで、応募企業にアピールする場合は、求人に記載されている「仕事内容」や「求める人物像」を確認し、共通点となる経験・スキルのアピールを交えて入社後に貢献できることを伝えましょう。キャリアチェンジ転職で業界知識や職種経験をアピールできない場合は、応募する仕事に活かせるポータブルスキルを伝えるという方法もあります。
キャリアを活かした転職を目指すなら
転職でキャリアアップやキャリアチェンジを目指す場合は、キャリアの棚卸しやキャリアプランの設定が必要になりますが、キャリアプランを実現できる求人が見つからずに悩む方も少なくありません。
転職エージェントは、転職市場のニーズや業界・職種別の採用傾向を把握しているので、転職市場の動向を考慮したキャリアプランへのアドバイスも可能でしょう。また、応募書類の添削や面接対策なども行っているので、転職活動を効率的に進めることができます。キャリアアップ転職を目指している場合は、転職エージェントの活用も検討してみるといいでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。
記事更新日:2024年08月05日
記事更新日:2024年10月10日 リクルートエージェント編集部