面接の質疑応答で必ず問われる「志望動機」。経験が浅い人が志望動機によって意欲や成長性を評価され、経験豊富な人を差し置いて志望動機で選ばれるケースは少なくありません。どんな会社にも通じる志望動機ではなく、「だから、この会社」という説得力ある志望動機を語れるようにしましょう。
今回は経理職の志望動機について、「リクルートエージェント」のキャリアアドバイザーが解説。ポイントを踏まえた例文もご紹介します。
経理職が「志望動機」を伝えるための4STEP
経理職の皆さんがキャリアアップや転職を考える際、「どの業務の経験を積むか」「どこまで幅を広げるか」といった点を重点的に考える傾向があります。しかしもう一歩踏み込んで、「その業務を行うことによって、何を実現したいのか」までビジョンを広げ、ご自身の志向や価値観を言語化しておくことが大切です。
そして、それが相手企業とマッチし、貢献できるところまでイメージしておくといいでしょう。その一連を「志望動機」という形で語れるようにするために、次のステップに沿って落とし込んでみてください。
【STEP-1】今後どんな業務を手がけていきたいかを整理する
これまでの業務経験を整理すると同時に、今後手がけたい業務の目標を設定します。
例えば、経理・財務に特化したスペシャリストとして「実務マネジメント力を伸ばしたい」「調査分析、業績評価まで手がけたい」「M&Aの支援をしたい」、あるいは経営により近い立場で「コーポレートガバナンス構築まで担いたい」「会計基準・ルールの構築を手がけたい」「経営戦略や事業計画にまで携わりたい」、あるいは「IPO準備を経験したい」など。
【STEP-2】STEP-1で挙げた業務を手がけることで何を実現させたいのかを掘り下げる
「この業務を経験したい」「この業務スキルを身に付けたい」だけで終わらず、その役割を自分が担うことで組織や会社にどんな影響を及ぼし、貢献したいのかを考えます。
【STEP-3】STEP-1・2で定めた方向性を念頭に、企業研究をする
志望企業の研究をします。企業サイトを読み込むのはもちろん、ニュースリリース、メディアのインタビュー記事など、多角的に情報を収集する方法もあります。中途採用であっても、「新卒採用」サイトにも目を通しましょう。学生向けなので、事業や仕事の内容がわかりやすく説明されています。社員インタビュー記事では既存社員がどんな働き方をしているか、どんなやりがいを感じているかがつかめます。
上場企業であれば、IRページなどで決算資料に目を通しておくのもお勧めです。決算資料を見る投資家はその業界の専門家とは限りませんので、事業内容や今後の方針について、かみ砕いて説明されています。中長期ビジョンも記載されているため、目指す方向性を理解しておけば、役員面接で効力を発揮する可能性もあります。
そしてこれらの企業情報を調べるとき、STEP-2で挙げた「実現させたいこと」を意識しながら見てください。相手企業と自分の「実現させたいこと」「大切にしたいこと」の共通点を探ります。
【STEP-4】「企業が目指す=自分が目指す」ものであることを証明する
企業研究でつかんだ、相手企業の「実現させたいこと」「大切にしたいこと」を挙げて、それが自分と共通していることを伝えられるように準備します。
「御社では**を目指しているとのことですが、私も**を目指したいと思います」の一言で終わるのではなく、それを目指すようになった出来事、経験のエピソードを具体的に語れるようにしておきましょう。リアルなエピソードを添えることで、「御社の理念や考え方に共感している」という言葉の説得力が増します。
特に、ベンチャー企業や立ち上げて間もない企業の場合、理念や考え方がフィットしているかどうかが特に重視されるケースが多いため、リアリティをもたせて語れるようにしておきたいものです。
企業規模や風土により、求められる要素が異なる
経理職の場合、企業規模によっても求められる要素が大きく変わります。
大手企業の場合は、年齢層ごとに担う業務がある程度決まっていることが多く、「着実にキャリアを積んでいく」という姿勢を求める企業が多いようです。
一方、ベンチャー企業では、スピード感をもって幅広い業務に対応していく姿勢、事業理念への共感などを重視する傾向があります。いずれにしても、3年~5年後に「自分はどうなっていたいのか」という目標のイメージを描けているかどうかが見られています。
また、「几帳面な人がいい」「他部署との折衝力がある人がいい」など、企業ごとに求める人物タイプは異なります。転職エージェントのキャリアアドバイザーからは、志望企業が選考で重視するポイントについてアドバイスが受けられますので、応募書類作成や面接対策にぜひ活用してください。
経理職の志望動機の伝え方・書き方例文
「私は今後、取りまとめた決算資料の分析や経営層への提案を通じて、会社全体の利益と社員のコスト観点での生産性向上を求め、事業成長に貢献していきたいと考えております。御社(貴社)であれば、同業界で培った決算経験を活かし、早期に財務状況を理解することで、早い段階でコスト管理を行うことができるのではないかと考え志望いたしました。
入社後、まずは御社(貴社)の決算業務を理解することに努めながらも、社内での関係性を構築し、5年以内にはリーダーとしてスタッフの取りまとめができるようになりたいと考えております。10年後までには分析結果の提言ができるレベルを目指します」
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
「私は今後、財務分野まで携わり、会社の経営戦略を支えられるようになりたいと考えております。IT業界を志望した理由は、変化が速く、管理部門である経理であっても柔軟な対応やスピードを求められると考えたからです。その分、早くスキルを磨き、目指す働き方が早期に実現できるのではないかと思っています。
そしてIT業界の中でも御社(貴社)に興味を抱いたのは、異なるフィールドの事業を結び付けることで新たなビジネスを創造していく、という経営理念に共感したためです。前職の業界では、既存事業の枠から出られないまま衰退していく企業を多く見ており、何とかできないものかともどかしさを感じておりました。多くの企業に新たな成長のチャンスを提供できる御社(貴社)の事業に、ぜひ参加させていただきたいと思います」
※面接で伝える場合は「御社」、履歴書に記載する場合は「貴社」
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