職務経歴書を作成する際、志望動機について「書く必要があるのか?」「履歴書と同じ志望動機でもいいのか」などと悩む人もいるでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros代表コンサルタントの粟野友樹氏が、職務経歴書に志望動機を書く意味や書き方、履歴書との違いなどを解説します。職種別の例文も紹介するので、志望動機を書く際の参考にしてみましょう。
目次
職務経歴書の志望動機は必要?書かなくていい?
職務経歴書に志望動機を書くことは必須ではありません。しかし、志望動機を書いた方がよりアピールできる可能性があるでしょう。
「履歴書に志望動機を記載するから書かなくてもいい」という人もいますが、履歴書の志望動機欄はスペースが小さいため、書ける文字数も限られます。
一方、職務経歴書の書式は自由なので、しっかりと志望動機を伝えることができます。職務経歴書に志望動機を書き、入社意欲や熱意を伝えれば、採用担当者によりアピールできるでしょう。
職務経歴書の志望動機は「どこに」「何を」「何行で」書けばいい?
先にも述べた通り、職務経歴書の書式に決まりはありません。志望動機をどこに書けばいいのかわからないという人のために、考え方を解説します。
志望動機はどこに書けばいい?書くことの順番はある?
職務経歴書には、「職務要約・職務概要」「職務経歴」「自己PR」などを記載します。これらの項目を全て記載し、志望動機を最後に書くと良いでしょう。職務経歴や自己PR でこれまでの経験・スキルや自分の強みを伝えてから、最後の志望動機で「応募企業にどのような魅力を感じ、どういったことを実現し、どう貢献できるのか」を伝えれば、より説得力を高めることができます。また、厚生労働省が紹介している「職務経歴書の記載例」でも、志望動機を最後に書くことが推奨されています。
出典:「ハローワーク インターネットサービス」履歴書・職務経歴書の書き方(厚生労働省)
職務経歴書の志望動機の内容は、何を書けばいい?
志望動機には、「その企業を志望する理由」を書きます。具体的には、応募企業に感じた魅力とその背景・理由、根拠となる具体的なエピソード、入社後に実現したいことや貢献できることまで書くことがポイントです。
以降で具体的な書き方を紹介するので、参考にしてみましょう。
文字数制限は?長いとダメ?
職務経歴書の書式は自由に選べるため、志望動機のスペースにも文字数制限はありません。しかし、長すぎる内容を伝えても、採用担当者にとって読みにくく、わかりづらくなってしまう可能性があります。そのため、職務経歴書の志望動機は300〜500文字程度を目安にするとよいでしょう。
職務経歴書の志望動機の書き方
職務経歴書の志望動機の構成や書き方について解説します。
志望動機の構成
志望動機の構成は、以下を参考にしましょう。
1:結論となる志望動機
2:背景・理由と、根拠となるエピソード
3:入社後の活躍・貢献イメージ
1では、「なぜその会社を選んだのか」が伝わるように、応募企業に対して感じた魅力を端的に伝えます。
2では、魅力を感じた背景・理由と、その根拠となる具体的なエピソードを伝え、入社後にどのようなことを実現したいのかも伝えると良いでしょう。
3では、自分の強みを活かして、入社後にどのような活躍・貢献ができるかを伝えましょう。
志望動機を書く際に意識したいポイント
志望動機を書く際には、「その企業だからこそ実現できること・実現したいこと」を伝えることが大事です。競合他社にも通じるような内容とした場合は「うちの会社でなくてもいいのでは?」と判断される可能性もあるので注意しましょう。
また、給与・労働条件・福利厚生などの条件面のみを志望動機とした場合、「仕事そのものへの関心が薄いため、条件が変われば離職するのでは?」などの懸念を抱かれる可能性もあります。仕事内容や事業内容にもしっかりと言及することを意識しましょう。
職務経歴書に書く志望動機の例文【職種別の例文集あり】
職務経歴書に書く志望動機の例文と、職種別例文集を紹介します。
営業職の例文
貴社を志望したのは、近い将来に重要な社会課題となる○○を解決するソリューションを提供し、業界をリードしている企業であると考えたためです。
現職では、特に売上◯億円規模の企業の経営陣に対する営業を◯年間担当しておりました。貴社が強みとする中小企業の経営者に向けた深耕営業と高い親和性があり、これまでの経験を活かせると考えています。また、顧客からの感謝を最大のモチベーションとしているので、貴社の社会的意義が高いサービスに携わることで大きなやりがいを味わえると感じました。
入社後は、◯年以内に上位◯%のトップセールスの一員となり、将来的には専門性や実績を高めつづけ、バイネームで顧客から指名されるような営業を目指したいと考えております。
事務系職種の例文
創業◯年という長い歴史の中、一貫して地域に根ざした事業展開をされ、着実な成長をされている部分に魅力を感じ、貴社を志望いたしました。
現職では◯年間、一貫して営業事務に従事し、担当部署内での業務効率化や業務フローの改善、若手社員の教育指導などを担ってきたことが評価され、リーダー職を任されております。貴社が求める業務フローの改善で各拠点の業務効率化を目指すというミッションに対して、現職での知見で貢献できると考えております。
入社後は、長期的な視点で営業事務の果たすべき役割を見据えて、1つ1つ着実に業務改善や人材育成を行うことを目指し、長く働きながら組織全体に貢献していきたいと考えています。
未経験者の例文
現職での経理・財務経験を活かし、より幅広い経験と専門性を高めたいと考え、国内外の案件を数多く担当している貴社の財務コンサルタント業務を志望いたしました。
新卒入社時は経理・財務としての知識がなかったため、◯年目に簿記2級、直近では簿記1級を取得して自己研鑽に努めております。また企業買収案件の財務デューデリジェンスやバリエーションなどを外部コンサルティング会社と協同で担当し、M&A業務の奥深さを学ぶ経験をしたことで、より強くやりがいを感じるようになりました。
貴社に入社後は、まずはトランザクションアドバイザリーサービス部門での財務デューデリジェンスに携わり、経験・スキルを高めていきたいです。将来的にはPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)などのコンサルティング能力を磨いたり、クロスボーダー案件を担当したりするなどで、より専門性を高めて顧客に貢献していきたいと考えております。
職種別の志望動機の例文集も参考にしよう
職種別の参考記事に掲載されている志望動機の例文を参考にしてみましょう。
職務経歴書の志望動機は履歴書と同じでもいい?
職務経歴書に書く志望動機と、履歴書に書く志望動機の違いを解説します。
職務経歴書と履歴書の志望動機の違いとは?
職務経歴書と履歴書に書く志望動機の違いは、「書けるスペース=書ける文字数」が違うという点にあります。書く内容そのものは、かぶっていても問題ありません。むしろ、全く違う内容を書けば、一貫性がないと思われてしまう可能性があるので注意しましょう。
一般的に、履歴書の志望動機の文字数の目安は多くても200文字程度とされています。より多くの文字数を割くことができる職務経歴書には、より詳しいエピソードや伝えたい思いなどを書くと良いでしょう。
履歴書の志望動機欄が自己PRと同じ欄になっていたら、どちらを書けばいい?
厚生労働省が推奨する履歴書には、志望動機欄ではなく、「志望の動機、特技、好きな学科、アピールポイントなど」を書く欄があります。志望動機と自己PRが同じ欄にまとめられているため、どちらを書けばいいのか悩む人もいるでしょう。
こうした場合は、履歴書には短くまとめた志望動機と自己PR を書き、職務経歴書により詳しい内容を書く方法があります。履歴書には、「志望動機・自己PRの詳細は、職務経歴書をご参照ください」と記載すると良いでしょう。
志望動機が書けない・思いつかない場合の対処法
志望動機が書けない場合や、思いつかない場合の対処法を紹介します。
キャリアの棚卸しと自己分析を行う
これまでの業務経験や身につけてきたスキル、実績などを振り返り、キャリアの棚卸しをして、自分が発揮できる強みを整理しましょう。また、自己分析をして、「転職によって自分が何を実現したいのか」を明確にすることも大事です。
応募企業の企業研究を行う
応募企業のホームページや採用ページなどで、事業内容や企業理念、応募職種の仕事内容や働き方などを調べましょう。社長や社員のインタビューなども確認すると、企業の目指す方針や今後の事業展開、仕事のやりがいや具体的な仕事の進め方なども把握しやすくなります。
自分と応募企業の共通点を探す
キャリアの棚卸し・自己分析の結果と、企業研究の成果を照らし合わせ、自分と応募企業の共通点を探しましょう。
転職先で実現したいことや自分の経験・スキルなどを踏まえ、応募企業でどのようなことを実現できるのか、どのような領域で活躍・貢献できるのかを考えることがポイントです。
職務経歴書に書く志望動機と自己PRの注意点
職務経歴書を作成する際、志望動機と自己PRの書き方で注意したい点を紹介します。
志望動機と自己PR の違いを理解しておく
志望動機と自己PRの違いを理解した上で、書く内容を混同しないことが大事です。
志望動機では「応募企業を志望した理由」を伝えます。その企業のどのような部分に魅力を感じ、入社後にどのようなことを実現したい(もしくは、実現できる)と考えたのかを中心に書きましょう。
自己PRでは「自分の強み」を伝えます。これまでの自分の経験・スキルを応募企業でどう活かし、どのような強みを発揮して活躍・貢献できるのかを中心に書くことがポイントです。
志望動機と自己PRのつながりを意識する
志望動機では、「強みを活かして貢献できること」を伝えることも大事ですが、ここについては、自己PRで伝える内容と重なっています。それぞれに書く内容に一貫性を持たせるために、その企業を志望する理由と、自分がその企業で活かせる強みのつながりを意識することがポイントです。
面接で志望動機と自己PRに一貫性を持たせられるよう準備しておく
面接ではさまざまな質問をされ、職務経歴書や履歴書に書いた内容を深掘りされるものです。その際、それぞれの質問に対する回答に一貫性があるかどうかも見られているでしょう。先にも述べた通り、志望動機と自己PRには重なる部分があるため、一貫性を持たせられるよう、エピソードの内容などもしっかりと振り返って準備しておくことが大事です。
職務経歴書に志望動機と自己PRを書ききれない場合は?
別途で「志望動機書」を作成する方法があります。職務経歴書に書ききれない場合には、自己PRにスペースを割き、志望動機は志望動機書にまとめるのも良いでしょう。志望動機は企業ごとに変わるので、志望動機書に志望動機を書く方式を取れば、職務経歴書を作成し直す手間を省けるメリットもあります。
志望動機がどうしても書けない場合は転職エージェントに相談を
志望動機がどうしても書けない、思いつかないという場合は、転職エージェントに相談する方法があります。転職エージェントでは、プロの視点で客観的なアドバイスを受けることができます。また、キャリアの棚卸しや自己分析、応募書類の作成、面接対策など、転職活動に必要なことをサポートしてくれるケースもあります。より応募企業にアピールできる志望動機の作成や、面接での回答内容を整理することにも役立つでしょう。
組織人事コンサルティングSeguros 代表コンサルタント 粟野友樹氏
約500名の転職成功を実現してきたキャリアアドバイザー経験と、複数企業での採用人事経験をもとに、個人の転職支援や企業の採用支援コンサルを行っている。